~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「この男の名は、エクス。私の兄妹です。つまり、私と同じ、有機ヒューマノイドです」
「兄妹……?それって、同じ型番とかってそういう……」
「私とエクスは、元々人間だったのです」
マキナは、旬にかぶせてそういった。
その瞬間、旬に悪寒が走る。
衝撃的な事実と、彼女が淡々とそれを語る状況が、旬にとってはとても恐ろしかった。
「……マキナ、それってようするに、国が人間をヒューマノイド化させる実験をしてるってことじゃ」
「はい。私達はMIAの研究機関で生まれ、ヒューマノイド化もそこで行われました」
「人間を……、機械に……」
旬は、思わずマキナから顔を逸らしてしまう。
「エクスの方が先に開発され、各国の紛争地域で実戦投入されていたそうです」
「軍事用……ってことなのか。ってことはマキナも……」
「いえ、私が出来たのはつい最近なのです」
「そ、そうなんだ……」
旬は膝をつきながら、愕然とした。
国ぐるみで秘密裏に人間をヒューマノイドにする計画が成功している。
その事実は、日本はMIAのディストピアとなってしまうことを意味しているのだ。
父親の存在が旬の脳裏に過ぎった。
実用化されていけば、国民に診療や検診という名目で施術できるようになる。
そうすれば、日本を文字通り思い通りに動くヒューマノイドばかりのディストピアにすることが出来る。
しかし、疑問はある。
なぜ、マキナとエクスには自我があり、反社会的な行動をも取れるのか。
それがミスであるなら、MIAがこの2人を処分しないのはおかしい。
つまりわざと。
ディストピアが目標としてあるのなら、なぜマキナやエクスを野放しにしている?
「……でも、それならマキナやエクスはなぜ自我を持って行動出来ているんだ?MIAに従うように出来ているなら、こんな変なことしないだろ」
「それは……」
マキナは、またも俯いた。
「そうか、言ってくれてありがとう」
そう言ったあと、旬はしばらく何も言えなかった。
「私にも、なぜMIAがこのようなことをしているのか不明です。私達の存在が何を意味しているのかも……」
「……ディストピアだろ」
「ディストピア……」
マキナは思い詰めたような顔をする。
「だって、マキナたちは人間からヒューマノイドになることが出来た。なら、今生きてる人間にもヒューマノイド化の施術はできるようになるだろ?」
「ええ」
「マキナやエクスには自我を持たせてるのかもしれないけど、そんなことが出来るなら、その過程で国の思うように洗脳することは可能なはずだ」
「……だから、日本をディストピアできる、と」
「……そうだ」
しばらく考えた後、マキナは旬からエクスへ視線を下ろす。
「しかしその件はそれとして、このドローン騒ぎは確実にエクスが犯人です」
マキナは、エクスを見つめている。
「MIAのことは後で考えるとして、今はこの事件と、エクスをどうするか決めましょう」
「それも、そうだな」
旬は、冷静さを欠いていた。
どんどん非現実的な事件に巻き込まれていく内に、旬の理性はだんだんと混乱の渦に巻き込まれていって、疲労しているのだろう。
「この蜘蛛、これは、エクスがとある兵器用ドローンを改造したものです」
「そうなのか?」
民間には、国の軍事力は一切明かされていない。
そういう報道規制がされているし、国民にも憲法改正前の非戦論が根付いているためだ。
だから、旬にとっても国がどのような兵器を用いているのか詳細には分からない。
「小型の潜入型ドローンを、恐らくエクス仕様に改造したものだと思います。私にもこれの位置が分かる」
「なぜそんな事まで……」
「……」
「言わなくていいぞ。色々、言いたくないこと言わせちゃったし」
「ありがとうございます」
「うん、俺もごめん。マキナみたいに、強くなければ色々できるわけじゃないのに」
「私は……」
マキナは勿体ぶって口を開ける。
「私は、物騒なことに見目さんが巻き込まれて欲しくないのです……」
「……そっか」
路地が静寂で満たされる。
「……この男、エクスは起き上がらないのか?」
「多分、エクスはこのドローンが胸に刺さっていないとろくに動くことすら出来ません」
「これが動力源なのか」
旬の手に握られたカサカサと動く不気味な装置は、鈍く赤い光を発していた。
「……私も正直、エクスについて知ってることはあまりないのです。私が知らない所で、様々な改造が施されているように見えます」
「たしかに、エクスは動力源がこういう固形燃料っぽいのじゃなきゃだめなのって、マキナとだいぶ違うよな」
「ええ」
「というか、こいつこのままにしてたらまた起き上がっちゃうんじゃ?」
エクスは、安らかに眠っているような面持ちで横たわっている。
今にも起き上がり、2人を襲いそうだ。
「これは私の推論ですが、この蜘蛛ドローンは東京、もしくは日本の各地にばらまかれています」
「……あの夕方の1件は、この蜘蛛の1匹が公務ドローンに取り付いて引き起こされたってことか」
「そうすれば、蜘蛛がエクスに集まってまた起き上がります」
「残基無限かよ……」
「だから、ここで破壊しなければ……」
マキナは、エクスの顔を見る。
その顔には、陰りが見えた。
「……破壊しなければ……」
「マ、マキナ?」
「……エクス」
マキナは、エクスの身体を首筋から胸にかけて指でなぞった。
「破壊、しなきゃ……」
「やめなよ」
旬は恐る恐る口を開いた。
その声は、自分でもわかるほど震えている。
「……兄妹を殺すなんて、して欲しいなんて思わないし、させたくない」
「……でも!」
「でもだ。幸い、話は少し出来る。俺はさっきこいつと少し話した。
多分起き上がっても、民間人にターゲットは向かない。向くとしたら俺と、マキナ」
「でも起きたら、また見目さんに危険が……」
「だから、ずっと俺のそばにいて欲しい。これは約束だ」
旬は、自分小指をマキナの前に出した。
「俺は、エクスを傷つけようとしない。だから、マキナは俺と他の人間を守れ」
「……はい」
マキナの指が、旬の指にからむ。
「指切りげんまん。うーそついたーらー晩飯抜ーき」
「えー、ひどい」
「じゃあ守って」
「はーい」
指をからめながら、お互い一緒に立ち上がった。
「にしても、ここで野ざらしにしとくのもなぁ」
「運んで帰りましょ……」
「誰かー、居るのかー」
恐らく警察である声が聞こえると共に、路地の出口の方から懐中電灯の明かりが見えた。
「まずいっ」
マキナはそれを見た瞬間にエクスの腕を持ち、さらに奥の方の路地へとエクスを放り投げた。
「ばかっ、なにやって」
小声で話す。
「早くおんぶっ」
「お、おう」
旬は急かすマキナの背中に再び乗った。
マキナは、再び跳躍。
さっきの建物の上に再び乗った。
「くっ、やっぱ怖っ」
「静かにしてください……」
警察がライトで先程2人が居た辺りを照らしている。
2人は、固唾を飲んでその状況を建物の上から見ていた。
「こっちくるな、あっちいけ」
「頼むから見つけないで……」
すると少しして、
「うーん、野良犬かなんかか?」
警察は首を傾げ、去っていった。
「ふう、よかった」
「あんな大きな音出てたのに、いままでよく気付かれませんでしたね」
「ここ、案外入り組んでて、音もあんま反響しないっぽいんだよ」
さっき男が音もなく近づけた例のように、わざと音を出そうとしない限り、音が地面や古い壁に吸収されてしまうようだ。
「なるほど、ではこれで帰れますか?」
「うん、多分もう降りれないだろうし」
「ですね」
2人は、登ってくる朝日を見た。
気づけば、一晩あの騒ぎで時間を費やしていたのだ。
旬は、ため息をついた。
「はぁ、疲れた」
「もう、あんまり危ないことしないでくださいね」
「マキナも、居なくなるなよ」
「ごめんなさい」
「いいよ、俺も悪かった」
登ってくる夕日が眩しすぎて、2人の影は真っ黒になっていた。
それに気付かず、2人はゆっくりと昇る朝日を眺めていた。