~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
「おはよ……う。ふぅ」
旬は起き上がって、腕を伸ばした。
「……むにゃ。もうむり……」
薄い布団に繭のようにくるまって、地面に転がっているのはマキナだった。
「もう朝だぞ。起きろ」
「……えー、それは別腹でぇ」
「学校!今日は学校だぞ!」
昨日はエクスの一件があったため、1日ニュースを確認しながら家に篭っていた。
エクスがこれから何をするかは分からないが、前回のようなテロじみたことをすれば再び恐ろしい事になる。
それを危惧して、昨日は休息も兼ねて家にいたのだ。
「ロボットのくせに自分で起きれないのかよ」
「……むにゃ」
昨日のニュースは、東京でのドローン騒ぎについてで埋め尽くされていた。
“原因不明”のドローン暴走として。
そして、国内では現代のドローンやAIに頼りきった政治体制を見直し、それに反発する流れが起こっている。
現在、反MIA派の人間は国会議事堂やMIAに殺到し、デモ活動を行う様子も、昨日のニュースと伴って報道されているのだ。
ドローンやAIの不安定さについては遥か昔から言われていて、反MIA派は一定数存在していたが、露骨に報道されるほど勢いが加速しているのに旬は驚いた。
そして恐らく、ドローンに取り付いた蜘蛛は発見されていない。
原因究明がなされないとなると、エクスも野放しとなっているのだろう。
このご時世に国民の反乱が起こるのは、国際情勢的に非常に厳しい状況だ。
つまり、今エクスによって、日本全体が恐怖と混乱の渦に陥れられている。
「学校!学校ー!」
「……見目、さん?おはよう……ございま……」
「ほんとよく寝るなぁ」
「はあぁ……すみません、学校に行くのですよね」
やや半目でふやけた顔をしながら、旬の顔を見ていた。
「まだ時間はあるけど、支度しとけよ」
「あるんですか。ではおやすみなさい……」
「寝るんじゃない!起きろ!」――
○
旬は、やっとのことでマキナを布団から引きずり出して共に登校した。
今、1限目が終わった所で、旬はぼーっとタブレットの画面を眺めている。
検索エンジンのまっさらなブラウザを眺めていた。
「マキナ……、エクス……」
ふと、マキナとエクスという単語の並びが検索で引っかからないか気になった。
『マキナ エクス』
検索。
「なんか元ネタが……あっ」
『デウス・エクス・マキナ』
デウス・エクス・マキナとは、複雑に絡み合った糸のような局面を絶対的な力によって解決させる演出技法。
日本語で、『機械仕掛けの神』
「(エクスとマキナが居るってことは、他にもう1人、デウスって奴が居るのか……?)」
旬は思い出した。
『泣ける再会を演出ってか。ハハハッ』
エクスの声が脳内で響く。
無意識に、検索欄に入れた文字は
『デウス』
検索のボタンにカーソルを合わせようとする。
その瞬間
「見目さん、何してるんですか?」
「うわっ!なにっ!?」
後ろからマキナがこちらを見ていた。
旬は、マキナやマキナの周りのことをこっそりと嗅ぎ回っていると知られたくなかったため、余計に驚いてしまったのだ。
それマキナに気づかれれば、なんて思われるか知れたものではないと考えていたからだ。
「なん、なんでもないよ!」
「えっちなやつ?」
「ちがう!……とりあえず、外で話そう」
旬は席を立ち、小さく手招きをするジェスチャーをしてマキナを教室の外へ連れていった。
一昨日マキナと話した階段にて。
「あのさ、学校で『見目さん』って呼ぶの、家族なら完全に不自然だからやめて?」
「あっ、そうですね。気付きませんでした」
「なんか変なとこ抜けてるよな」
「前は人間っぽいって褒めてくれたのに……」
「それはそれだ。これからは、苗字で呼ぶのはやめてくれ」
「じゃあ、なんて呼べばいいですか?」
「それは……、マキナに決めて欲しい」
「私が、決める……」
マキナは、旬の瞳を凝視し始めた。
「な、なんだよ」
「……私、決めました」
「お、おう。言ってみてよ」
「……『旬くん』なんてどうでしょう!」
「旬、くん。なんか違和感が……」
学校の人間とは、事務連絡でしか話したことの無い旬にとっては、下の名前で呼ばれることは実に初めての経験だった。
「嫌ですか?」
「いや、いい、いいな。新鮮だよ」
「やった!」
「伝えたかったのはそれだけ。ごめんな、人気者なのにいちいち呼び出しちゃって」
「なんで謝るんですか?」
「だって……」
旬が壁沿いに立ち、マキナが壁側を向く状況なので、旬からは階段の上から覗くギラギラとした視線が丸わかりだったのだ。
「なんか、すごい主張が激しいから……」
「主張?」
「まぁ、とにかく友達と話してきなよ。そして、今日から一緒に帰んなくてもいいし。お金も少し渡してあるだろ。遊んできたら?」
「は、はい……」
マキナは、少し寂しそうな顔をした。
でも、旬にとってはこれが正解だと信じていた。
マキナは、ロボットとしてこの世を知り始めた。
だから、マキナにはより広いこの世界を体験して欲しかった。
狭い世界でしか生きれなかった旬は、マキナには、沢山の人に囲まれて幸せな経験をして欲しいとせめて願ったのだ。
「うん、じゃあ、俺は下のトイレ行くから」
「……では」
マキナが後ろを振り返ると、上から見ていた女子連中がぱっと顔を隠した。
不思議そうに首を傾げながら、マキナは階段を登って行った。
黒い艶やかな髪がなびく後ろ姿は、普通の女の子。
旬は、不思議な感じがした。
そのまま下に降りていって、旬が着いたのは、階段の横の埃っぽい空きスペース。
ここは、暗くて人も寄り付かないから、旬はここで過ごすことも多かった。
「……仲間なんて言ったけど……」
旬は、大きなため息をついて背中を仕方なく伸ばした。
○
しばらくして教室に戻ると、マキナを中心に人の群れが形成されていた。
「うわっ、なに」
思わず声が出た。
「真紀奈ちゃんって、すごい綺麗な顔してる!」
「ねー、お人形さんみたい!」
「肌も白くて、羨ましい……」
マキナを賛美する声が止まらない。
転校生人気も、ここまで来ると気味が悪くなってくる。
「あら、可愛らしいお嬢様ですこと!」
その声が発せられた瞬間、クラスの全員の時が止まったかのように静まり返った。
前方の出入口から聞こえる声に目を向けると、風貌が明らかに他の生徒と異なる女子生徒が居た。
今の日本は鎖国していて、ほぼ外国人は残されていないのに、何故か髪の色は金。綺麗な縦方向の螺旋、俗らしさはなく、ただひたすらに煌びやか。
しかも、後ろに2人、他の女子生徒を立たせている。
まるで、従者と主人。
圧倒的に他の生徒と格が違うことは、一目で明らかだった。
「オーッホッホッホ!貴女が転校生?」
甲高い高笑いで、穴を空けられたかのようにマキナの周りにいた人々が彼女の前から退く。
彼女は、ゆっくりとマキナに歩み寄る。
「は、はい」
「貴女、ほんとにお人形さんみたいですわね。まぁ、お嬢様と言うほど裕福には見えませんけど」
「ええ、はい……」
「でも安心なさって!この私、ペトラ・アルバートがあなたを“友達”にしてあげますわ!」