~ぼっちな俺の家にロボットの女の子が来た結果、その女が想像以上のやべーやつだったため、最悪の陰謀に巻き込まれます~機械創世記・MaKina 作:ハーレム好き男
その言葉に、旬は呆気に取られてしまう。
「(あの雰囲気で、友達なんだ……)」
「わ、分かりました……」
あのマキナですら強引に押されているところを見ると、相当な覇気なのだろう。
遠目から見ても、そのインパクトのある風貌と態度はなかなか圧倒される。
アルバートというのは、唯一日本に残っている海外資本、シモン・アルバートシステムズという同族経営会社の家名で、現在はMIAやその傘下の工場や研究室と提携し工業部品を大規模製造している超大企業だ。
まさか、そんな有名な会社の令嬢がこの学校に居るとは、学校の情報にまるで疎い旬は知りもしなかった。
「またあとで会いましょう。オーッホッホッホホッ!」
そう言い残し、ペトラ・アルバートは従者らしき生徒を連れて、教室から消えていった。
そうして、すこしすると教室はふたたびざわざわしはじめる。
「真紀奈ちゃん、大丈夫?」
「気にしないほうがいいよ、あんなやつ」
どうも、あの御令嬢の評判はかなり悪いようだ。
「えぇ、でも私なにも知らないですし……」
「あいつ、いっつもあんな感じでみんなから嫌われてるから。ねー」
クラスの雰囲気を見るに、あの令嬢が嫌われているのは、あの横柄でかなり癖のある態度で全員に接しているからなのだろう。
「あんな召使いみたいなの連れちゃってさ」
「あの2人、めっちゃ貰ってるらしいよ。結局お金なんだよね、おかね」
さっきの明るかった空気から一変、令嬢の悪口大会のような険悪な雰囲気に変わり、その場の中心にいるマキナもかなり居心地の悪そうな顔をしている。
「あはは……」
見ていてやりきれない状況に、旬は目を覆った。
○
昼休みの時間になった。
すると、またあの甲高い声が聞こえる。
「お迎えに来ましたわよ!お人形さん!」
「は、はい……」
ペトラ・アルバートは、今度は従者を連れずに現れた。
場の空気が凍りつく中、マキナの方へつかつかと歩いていく。
「お弁当、持ってるんですの?」
「いえ、これから買おうと……」
「私も購買へ行こうと思ってましてよ!さぁ!一緒に行きましょう!」
「は、はぁ……」
完全に困惑しきっている。
マキナをここまで丸め込む令嬢は、一体何者なのだろうか。
そう考える旬には、2人の間柄がどうなっていくのか興味があった。
マキナの手を握り、購買へと急ごうとする令嬢。
さっきは気付かなかったが、令嬢はマキナよりかなり身長が低い。
従者を連れていた時の後光が凄すぎて、旬も令嬢のスケールを見誤っていた。
まるで、子供に引っ張られる親や姉のようなマキナ。
「(さて、俺も購買行くか……)」
マキナたちの後をさりげなくついて行くように、旬も廊下へ出た。
○
「お名前はなんて言うんですの?」
「見目真紀奈、です」
「可愛らしい名前ですわ。わたくし、ペトラっていうの。よろしくお願いしますわ!」
「ええ、よろしくお願いします」
旬は、若干離れた位置に並び、遠目でペトラとマキナを観察していた。
教室の雰囲気から開放されると、マキナは普通にペトラと会話ができていた。
表情もにこやかで、それに旬は安心した。
マキナは、恐らく“友達”というのをかなり欲していた節があったので、マキナに初めてのちゃんとした友達が出来たことに旬は内心喜んでいた。
学校という社会において、友達というのは一言で言い尽くせないが、マキナとペトラは今のところ、あのクラスの連中との雰囲気とは違うところを感じる。
マキナの表情が、教室と比べかなり砕けているからだ。
「真紀奈さんは何がお好きで?」
「私は、おにぎりとか好きです!」
「わたくしもよ!おにぎりは小さいころからよく食べていましたの」
「羨ましいです……。私は全然おにぎりなんて食べたことないのです……」
「あら、ではこれからわたくしとたくさんおにぎりを食べましょう!」
「はい!ぜひ!」
「(食べ物に弱すぎるな)」
旬は思わず笑ってしまう。
その時初めて、マキナと会ってから笑うことが増えたなと実感した。
しかし、旬は疑問に思った。
なぜシモンアルバートの令嬢たるペトラが、購買を利用しているのか。
旬の想像では、一流のシェフとかが調理した絶品の弁当を持ってきているものだとばかり考えていた。
家の方針とかで、保存料が効いた購買の食べ物など良しとされてなさそうなものだが。
旬が考え事をしているうちに列はすっかり進んでいて、マキナたちはどこかに行ってしまっていた。
「(しまったなぁ)」
なんて考えながら、旬は1番安い惣菜の詰め合わせ弁当を購入した。
そして列から外れ、階段をそのまま駆け上がってマキナたちを探す。
旬とマキナの教室がある階まで登ると、あの独特な甲高い声が上の方から聞こえた。
この上の階は、屋上へ通じる扉がある。
そこの階段で一緒に昼食をしているのだろう。
旬は、何を話しているのかとてつもなく聞きたくなった。
上の階段から丁度死角になる位置まで登り、背中を真ん中の壁に添わせるよう、まるで忍者のような動きでマキナとペトラの会話を聞こうとした。
すると
「ねぇねぇペトラさん」
「さんは付けないで欲しいですわ。私たち友達ですもの」
「あっ!わかりました。ペトラちゃん」
「ペトラちゃん……」
甲高かった声が、萎縮するように小さくなる。
「いやでしたか……?」
「いえ、違いますの。ペトラちゃんって呼ばれるの、初めてでして」
「ふふっ、そうなんですね。私の仲間と同じようなこと言ってる」
その『仲間』という言葉を聞いた時、旬ははっとした。
旬のことを仲間だと認めてくれた。
その不自然な使い方がおかしくなって、少し笑ってしまったのと同時に、旬はすこし感動してしまった。
「仲間……?仲間って、どなたですの?」
「旬くん。見目旬くんって言うんです。」
「見目って、同じ苗字じゃなくて?兄弟ですわよね?」
「兄弟って言うか、私は勝手にそこに居ただけというか」
旬は、マキナのその言葉に恐怖を覚えた。
「(何変なこと言ってんだ!)」
「……変ですわね」
「(怪しまれてるじゃねーか!)」
今飛び出てしまうかどうか、旬は葛藤した。
聞き耳を立て盗み聞きしていた変態として裁かれるのではという懸念と、マキナが重大なことを口走って怪しまれる懸念、どちらともあり、どちらも最悪の結末まっしぐらだ。
「(覚悟しろ、旬……!)」
旬は、前傾姿勢になって飛び出そうとする。
「……ペトラちゃん。すみません、聞き取れませんでした」
「大変ですわねと、言いましたわ。……本当にごめんなさい!」
唐突な謎の展開に、旬は飛び出すのをやめた。
ふたたび背を壁につけ、様子を見る。
「真紀奈さんにそんな大変な家庭事情があるとは知らなくて、大変な無礼を働きましたわ。本当にごめんなさい」
先程の話し方と、律儀に誤っているペトラを見るに、こいつは本当にクラスの連中が言うような悪いやつでは無いだろうと旬は思った。
だから旬は、なぜペトラがここまで嫌われているのか疑問だった。
「いえいえ、そんな深く頭を下げないでください!私も申し訳なくなってしまいます!」
「ああ、ごめんなさい。わたくし、あまり人付き合いが得意ではなくて。従者はおりますが、友達も真紀奈さんが初めてでしてよ」
「えっ!そうなんですか!」
「……ええ、ですから、お許しを」
「お許しなんて、そんな……」
ペトラも、大きな問題を抱えている気配がする。
「では今度紹介しますね、旬くんを!」
「えっ!いいんですの!?」
「ええ!どうぞ家にも遊びに来てください!」
「(なんか、話がとんでもない方向に進んでいってないか?)」
旬は、マキナの恐ろしい提言に戦いた。