革命機ヴァルヴレイヴ 現代に欲望のまま生きる自分本位の鬼達 作:怪物怪人怪獣さん
バッフェ強行偵察型 主にドルシア宇宙軍の偵察艦が利用するバッフェのバリエーション機の一つ。Nw507Beバッフェ有人式の優れた機動力を利用し、戦略偵察機として転用したものである。基本構造は通常バッフェと変わらない物のユニット化された探知システムを搭載した、マイナーチェンジ機体ともいえる。ドルシア軍の意図で戦闘時にユニット交換を行うことで、即時武装化を行うという点に拘っていたが、試作型がロールアウトされてから方向性が変わり、敵の追跡を振り切る為に、機体の軽量化に追加の緊急離脱用ロケットといった改良を施され機内の燃料スペースも通常バッフェより10%多く増やし両肩のアイゼン・ガイストやデュケノワ・キャノンといった武装や装甲を外されて代わりに偵察用のカメラユニットが装備されている。頭部にはツインカメラを覆う情報収集用に開発された高精度・複合バイザーカメラが装備されている。
最低限の自衛用にビーム・ガトリングガンを装備しているが、基本は情報収集用のカメラガンを換装し実質非武装で運用されおり、戦闘には向かない。そして軽量化と機動力を増した結果パイロットは高Gに耐える為にヘビースーツを着用する必要がある。
モチーフ元はザク強行偵察型
61式パンツァーガルム 22.6mのヴァルヴレイヴに匹敵する大きさを持つドルシア陸軍が開発した陸の番犬の異名を持つ超弩級戦闘車両。カラーは濃いカーキ。
ドルシア軍が運用する戦車達の中で一番デカく装甲も厚く硬く強くコストもその分高い。1両に付きイデアール約4機分。主兵装は各種砲弾は勿論、強力な粒子砲を発射可能の主砲である三連装滑腔砲、車体左右に装備された4連装120mm機関砲、後部には2連装ミサイルポッドを装備。また短時間とはいえ車両下部にあるブースターを使ったブーストジャンプが可能。
多脚歩行戦車を遥かに超える巨大さ故に活躍の場が限定されて敵要塞や市街地の侵攻よりも拠点防衛を主に運用されている物のコストの高い故に生産も当然少数で活躍の場が宇宙の宇宙軍は勿論、陸軍自身余り運用しない。
後にイデアール[ブルーメ]級機動殲滅機が実戦運用されてからは活躍の場を更に奪われる。
モチーフ元はガンダムIGLOOに登場するモビルタンクヒルドルブなのだがもう半分はPSアーマードコア プロジェクトファンタズマのOPにチラッと登場する武器腕タンク型AC。
闘牙 カードゲームではデュエル・モンスターズとデュエル・マスターズのコレクションを集めている決闘者。勝敗よりも相手と楽しくカードゲームをやる事を重視する。好きなデッキテーマは特になし。
愈史郎 アニメでアニオリカードが出る度に、ツッコミを言う。ギャンブルデッキを使う。カードゲーム限定のギャンブラー。
ブラック・マジシャン・ガール たまに無限城に現れるカードの精霊、勝手に闘牙のお金で欲しい物を通販購入しており、過去の闘牙とのデュエルした際の約束で週一は露出度が殆どない服を(ジャージやスポーツウェア)を着用している。
魔法使いの癖に無限城内の禁止カード有りのデュエルでは魔法使い族のデッキではなくガチで情け容赦ないデッキを使用しブラック・ホールとサンダー・ボルトは三枚必ず用意している。勝つ為には一切の妥協しない決闘者の鏡。
モジュール77内⋯⋯光も通らない咲森学園の地下施設一つの独房。
「昨日からヤケに地上(そと)が騒がしいのぅ⋯⋯」
独房前から定期的にジオール軍の兵士が用意する食事が既に昨日からの夜の分、更に今日の朝と昼の分が来ていない。
「⋯⋯⋯。」
昨日の夜の内に非常事態を告げる喧しい警報があちこちから聞こえた物の独房の格子戸の電子ロックが騒ぎになっても解除されていない為に外へ出られなかった独房にいた人物は空腹を感じながら様子見していた。
会話に親しさが欠片もない事務的なことしか言わない顔馴染みのジオールの若い兵士の姿は勿論、誰1人自分に会いにくる者は現れず状況が分からぬまま時間だけが過ぎていた。
「⋯⋯そろそろ空腹も限界じゃな⋯⋯腹が減ったわい。」
独房にいた人物は1人自分以外に誰もいない独房内でそう呟きながら体力の温存に勤める。
見慣れたモジュールの天蓋が映し出す青空の景色の中で何時も通りの見慣れた通学路を進む⋯⋯気になる子がいる咲森学園へ⋯⋯同じクラスで黙っていれば美人のその子は子どもの頃から小学中学と一緒にいた幼馴染で⋯⋯この学園に入学してから同じ陸上部に所属していて他愛のない喧嘩や勝負だってする。明るい性格でたまに変な行動や言動もする時もあるけどそれ以上に何時も見せる目の前で振り返った彼女の太陽のような眩しい微笑みをミサイルの爆炎が全てを飲み込む。
「ハルトっ!?」
「っ!?」
耳が聞き慣れた犬塚の声にハルトは目を見開きハッとした表情で顔を上げる。此方を心配するキューマとアイナ。
「⋯⋯大丈夫か?ハルト。」
「⋯犬塚先輩⋯⋯」
ドルシア軍の侵攻によって骨折した左腕には真新しいギプスが巻かれており走る度に見慣れた建物や通学路はバッフェ達の空襲によってかつて面影すら残さない程、滅茶苦茶にされており先頭を走るキューマが武器を持ったドルシア軍の兵隊に遭遇しないように周囲を警戒しては移動する。
結局、三人は防弾チョッキやジオール軍の連絡通信機等は闘牙達に貰ったが、武器になるような銃火器は一つも貰わなかった。そもそもが銃火器をロクに扱った事のない学生。渡されても構えてるだけで銃火器の引き金を引いた所で狙った的にちゃんと当たる補償もない。更に三人の内、ショーコの仇を討つ考えを強く持つハルトに銃の類は危険とこの時の闘牙は判断した。自衛の武器を持たされていない為にその分、ドルシア軍の兵隊の遭遇した際の危険は数倍増し⋯普段悠々自適と歩き慣れた通学路でさえもキューマ達はかつてない程に慎重に移動せざるを得なかった。
そんな中、ハルトは無意識に、学園の方へ目を向ける。同級生が、ショーコが死んだ場所へ⋯⋯
「もう少ししたら咲森学園だ。闘牙の仲間達が学園の皆を助けてくれてる筈だ。」
「⋯⋯はい。」
(僕はこんな所で何をしているんだ?殺された好きな子や同級生の仇も討てなくて⋯⋯先輩達の足手まといになって⋯⋯)
危険な戦場を突っ切って咲森学園を目指して走る度に起きる振動が骨折した左腕に小さな痛みを運び、その痛みを歯を食い縛って耐える。その痛みが感じる度に骨折の原因⋯⋯あのバッフェの攻撃が嘘でない事実にハルトの心の中で嫌と言う程に現実と教える。踏み締めた足元の床が一瞬で粉々に砕けて真っ暗な奈落の底まで真っ逆さまに落ちるように⋯⋯自分から生きる気力を奪っていく。それでも完全な無気力な状態にならないのは⋯⋯ハルトの中で沸々とドルシアという理不尽によって大切な人を奪われた事、あの時ショーコを止めれなかった事、あの時守れなかった事、力が無かった事、其れ等と共に只々自分自身の無力さや悔しさが無気力になる事を拒ませ己を奮起させるのだ。
「⋯⋯⋯。」
「⋯⋯。」
(畜生⋯⋯こんな時、この状況で参っている後輩に気の利いた言葉の一つも言えない自分がムカつくぜ。)
そんな後ろからついていくハルトの様子を振り返りながら見たキューマ達は難しい表情をするハルトを気遣う為に何か声を掛けたい物の肝心の言葉が出ずに気持ちを無理にでも切り替えて前を見て必死に走る。
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【ピキーン!!】
「⋯⋯来る!?」
額から閃きのようなエフェクトを走らせて自分の直感に従い飛来するミサイルのタイミングに合わせて両手首から赤い燐光⋯硬質残光を光の盾状に形成し至近距離で大きな爆発が起こり、衝撃がコクピットを小さく揺らす。イデアールから放たれたミサイルが遮蔽物に利用した隕石を吹き飛ばしたのだ。
迫りくる恐怖に染まるサキを他所に冷や汗をかきながらも闘牙は己を鼓舞しイデアールを見る。
(落ち着け⋯⋯冷静に対処しろ!?イデアールの武装も勿論、相手の攻撃傾向も大体分かってきただろ!!)
危機的状況に関わらず闘牙はヴァルヴレイヴを操縦し、その動きは時間が経つ度に研ぎ澄まされた刃物のように洗練されていく。
(タイミングを絶対に逃すな!?)
飛来する追尾ミサイル群を躱しながらアードライのイデアールの攻撃箇所を予め決めた闘牙は反撃しようとフォルド・シックルと十文字槍を構え反撃に出る。
(エルエルフが搭乗するヴァルヴレイヴの動きに無駄がどんどん減っていく⋯⋯)
追い詰めていたヴァルヴレイヴにイデアールの追尾ミサイルが防がれる回数が増えてきた。
エルエルフがジオールの機体に慣れてきたのか考えるアードライ。モニターに映るヴァルヴレイヴはバッフェやイデアールではとても真似出来ない⋯⋯まるで宇宙に飛ぶ鳥のように自由に、襲いくるミサイルをことごとく回避する。
「なっ!?」
新たにスクリーンモニター画面に小さく映る追尾ミサイルの残弾数を確認して驚くアードライ。幾らヴァルヴレイヴ相手に誘爆の危険の為に左側のマイクロミサイルポッドをパージさせたとはいえ用意したミサイルが今まで経験した幾つもの戦いでこんなに減った事は一度も無かった。
「っ!?」
誘導技術を使ったミサイル攻撃を控える事を考えているアードライにスクリーンにアラートが鳴る。
回避し続けたヴァルヴレイヴが近接武器を両手にそれぞれの装備した状態でイデアールに向けて距離を一気に詰める。
「エルエルフゥゥゥウウウ!!」
状況反射的に急接近するヴァルヴレイヴに向けて怨嗟の咆哮を上げて両手のマニピュレーターから粒子ビーム砲を発射させるアードライ。後の彼はこの時の事をこう述べる。
【接近してくるヴァルヴレイヴを見た瞬間、色々と思考していた頭の中が一瞬でカッとなって正直、冷静さを欠けていた。私も色々と疲れていたんだと思う⋯⋯】
【ピキーン!?】
「そこ!?」
ビーム砲を躱してながらスピードを上げてイデアールのマイクロミサイルポッドに向けてヴァルヴレイヴは十文字槍を投擲。吸い込まれるようにミサイルポッドの射出口に槍が深々と突き刺さり両手首から放つ対人用レーザー砲ハンド・レイで追い撃ちをする。
「くっ!」
アードライは右翼下の残りのミサイルポッドを手早くパージさせ反撃のビーム砲をヴァルヴレイヴに向けて放つ。ビーム砲を次々と躱してはハンド・レイを放ちつつ接近し振り上げたフォルド・シックルを振り下ろすヴァルヴレイヴ。白い装甲を傷つけながらもマニピュレーターを使い接近するヴァルヴレイヴに応戦するイデアール。
「ビルギットさん!?俺に力を貸してくれ!?」
脳裏に過ぎるは機動戦士ガ◯ダムF91の登場人物の名を思わず叫ぶ闘牙。
『しょうがねーな。』
何処かから聞こえてくるビルギット・ピリヨの声に思わず反応する闘牙達。
「ビルギットさん!!」
「誰よその人!?」
全く脈絡もなく現れた人間にツッコミを入れるサキ。
【次元の壁からヘビーガンが参戦】
「何か知らないロボットが現れた!?」
次元の壁を越えてビルギット・ピリヨが操縦するヘビーガンが出現しヴァルヴレイヴにビーム・ライフルの援護射撃をする。
『何だアレは!?』
アードライは全く見た事のない人型機動兵器の出現に驚きイデアールはヘビーガンの攻撃を貰う。
『じゃあ、後は頑張れよ!?闘牙。はっ!!ああああああああああああ!!?』
【本当に援護射撃しかしないヘビーガンが現れた次元の壁からビルギットを殺す為にバグが出現しヘビーガンが真っ二つになる。】
「ビルギットさああああああああああああああああん!!?」
(知らない人が知らないまま殺られた!!)
【バグはヘビーガンを破壊した後、何事もなかったかのように次元の壁に戻り霞のように次元の壁も消失する。】
「チクショウ!?ドルシア軍め!?良くもビルギットさんを!?」
ビルギットの最期を目撃しコクピット内で男泣きする闘牙。
「いやビルギットさん。完全に違うのにやられてたんだけど!?」
一連の目撃者であるサキはツッコむ。フォルド・シックルの間合いではないと判断しビーム砲を放つ前にイデアールに向けて跳び蹴りを叩き込むヴァルヴレイヴ。人型ロボットの利点を此れでもかと利用する闘牙。次々と打撃を始め様々な攻撃をイデアールに叩き込むもイデアールのマニピュレーターがヴァルヴレイヴを捕まえようと迫る。攻撃を辞めて迫るマニピュレーターを何とか躱し続けていたが移動先を先回りされて機体が掴まれると一気に放り投げられて距離を突き放されるヴァルヴレイヴ。
「何回、投げられているのよ!!」
「好きで掴み技を貰っている訳じゃない!!」
すかさず機体のバランスを戻しながらイデアールのビーム砲の追撃を急いで回避行動に移るヴァルヴレイヴ。
言い合うサキと闘牙達を見ながら、エルエルフは考えていた。
(どうなっているんだ⋯⋯?俺がアードライを始めドルシア歩兵達を撃った記憶はない。しかし、記憶にない右腕の傷に服装の汚れ⋯⋯俺が知らない内に、俺の肉体に何があった?)
『否、警備していた歩兵に技術士官達を遠慮なく撃ってたぞ。綺麗なタワーブリッジを決めていたし』
『涎を垂れ流して全力疾走していたし、MAKIDAIとノリノリに踊っていし、バーテンダーになってカクテルをシェイクしていたわ。』
アードライのイデアールから逃げている時にこの二人が言った俺の身に覚えのない行動や奇行の数々。勿論、その奇行に対しての記憶もない。無意味な事をするとも覚えない。考えたくもないし想像したくもない。
だが目の前の二人の言葉に少なくとも、其れ等の疑問のつじつまを合わせる答えが、一つだけ思い浮かぶ。
(導き出される結論は)
どんなにあり得なく思えても、全ての状況が、その結論を指し示している。
(⋯⋯⋯体を、操られた⋯⋯誰に?)
考えられるのは、1人しかいなかった。
『エェルエルフゥゥゥウウウ!』
激しい怒りと憎悪に全身を打ち震えさせるアードライが操縦する黄色いイデアールがヴァルヴレイヴの背中に向けて両腕を重ね、左右二門の粒子ビーム砲を同時に放つ。二本の粒子ビームは極大の一射となり、障害物を次々砕きながらもその威力をほとんど衰えさせる事もなく、真っ直ぐヴァルヴレイヴへと突き進む。
「くっ、背中から普通にヤバい!?」
避けられないと判断した闘牙は機体を振り返りながら漂うバッフェの残骸を次々と砕いては迫る粒子ビーム砲の様子を見てありったけのレイヴ・エネルギーを放出させる。赤い硬質残光で光の盾を形成し極大ビームを防ぐ。
「南無三!!?」
それでも激しい衝撃が機体全体を揺らし、軋ませる。
「しまった!?」
闘牙は激しく揺れるコクピット内でモニタの熱量表示が100%を一気に振り切り、200%を超えてさらに上昇するのを目撃する。
100%になる⋯⋯それは、ヴァルヴレイヴにオーバーヒートが起こり、活動機能を停止を意味していた。
動かないロボットなど、戦場ではもはやただの狙いの的や棺桶だ。
(防ぐのではなく回避すべきだった!?)
「もう駄目だ〜〜おしまいだぁ〜〜!!」
滅茶苦茶にレバーを動かしてもヴァルヴレイヴが応える様子もなく進◯の巨人のライナーの顔芸で何処かで聞いた事のある嘆きの台詞を上げながら号泣する闘牙の様子を見て隣のサキも流石に顔色を変える。
「オーマイガー!?チクショウ!?柄にもなくやる気を出して行動した結果がこれなら根暗オタクらしく無限城で大人しく引きこもっておけば良かった!!勇気出して格好つけるんじゃなかった!!」
進◯の巨人のライナーの変な顔芸のまま頭を両手に抱えてオーバーリアクションをしてドルシア軍の侵攻における自分の一連の行動に後悔する闘牙。だが⋯⋯闘牙の脳裏に浮かぶのは咲森学園で此れまで出会った面々の姿。何気なく過ごした日々⋯⋯物凄い速さで闘牙の頭を駆け抜けていく走馬灯である。
『おう。闘牙。』
『お〜い。闘牙。』
『闘牙。』
『闘〜牙〜。』
『闘牙先輩。』
『操真君。これは生徒会が没収する。』
『ほい。闘牙。』
「っ!?チクショウ〜〜!?こんな時に⋯⋯なんでなんだよ!!まだアイツらが生きてたんだ!まだ何かっ!?」
思わずコンソールを拳で叩く。敵の執拗な猛攻に追い込まれて機体も動けなくなり情けなく諦めの気持ちになろうしていたのに⋯⋯駆け抜けていく皆との思い出が、諦めようとする自分を諦めさせてくれない。
(っ!?⋯⋯⋯熱量表示の目盛りの最大値が100%から変化している⋯⋯)
今まで見ていた時には最大値が100%であったのに⋯⋯666%に変わっていた事に闘牙とエルエルフは気付く。
(どうして最大値が666%に変わった?いや、それよりも⋯⋯666って⋯⋯ジオールは兎も角、確か⋯ARSUやドルシアといった西洋では不吉な数字を指すんだったよな。)
666⋯⋯切っ掛けは色々見過ぎてジャンルは忘れたが漫画かゲームやアニメかのオタクカルチャーで知り黙示録の"獣の数字"は新約聖書のヨハネの黙示録に記載された数字で
【また、小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しき者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、すべての者にその右手か額に刻印を押させた。そこで刻印がある者でなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印は獣の名、あるいはその名は数字である。ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるか考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は六百六十六である。】
666の意味は色々な諸説があり皇帝ネロや当時のローマ教皇にニーコン総主教、エホバの証人とこじつけが多い。
⋯⋯この数字はキリスト教では不完全さを表す6の数字を3つ重ね並べる事で悪魔や反キリストを象徴した数字だと言う事⋯⋯⋯
つまり⋯⋯⋯
(いや、普通に分かるか!?何で精密機械にこんな厨二病の連中が喜びそうな数字を無駄に採用した!?もっと他に分かり易い数字とか表現とかあるだろう!!)目を物凄く見開かせながら動揺する闘牙。
戦闘兵器に採用させる数字ではないのは確実で設計者の奴は間違いなく頭が変な奴だ!?結局何を指すのか。その真の意味を闘牙は知らなかった。
(だが無意味に採用した訳じゃない筈だ!!)
最初に登場した際にコンソールにあった"あの質問"を脳裏に過ぎらせながら闘牙は落ち着いて思考する。
(機体はオーバーヒートして活動停止。ラジエーターの類の冷却システムは稼働している様子も無い。)
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宇宙で激闘を繰り広げているのと同様にモジュールでも異変は起きていた⋯⋯
モジュール77内の港に停泊する5隻のドルシア軍艦の中で一番の積載量を持つ一隻の戦車揚陸艦から履帯が織り成す無限軌道の轟音とも呼ぶべき駆動音と共に濃いカーキ色の戦車が港に上陸する。通常の戦車に歩行用の脚が付いた多脚歩行戦車に比べたら如何にもな対空戦車らしい外見をしているも、その大きさは多脚歩行戦車らに比べ物にならない巨大でありそれこそ戦車部隊を次々と格納していた戦車揚陸艦の虎の子であり陸の番犬の異名を持つ超弩級戦闘車両パンツァーガルム。
その姿は分裂体達の後を追った無人飛行機の空撮カメラも捉えていた。
咲森学園 アキラSide
「デカっ!⋯⋯何あれ⋯⋯戦車?」
ダンボールハウス内のPCモニター画面で無人飛行機の空撮カメラの映像を見ていたアキラはヴァルヴレイヴに匹敵する巨大戦車の姿に驚きを隠せない。
残った5隻の軍艦を破壊しようと進軍していた分裂体達も轟音と共に港へ上陸した巨大戦車の存在に気付き足を一度止める。
「っ!?全員付近の遮蔽物に隠れるでおじゃる!?」
使い魔達を一瞬で消して捨麿の一言を聞いた朱天大将を除いた分裂体は付近の遮蔽物に身を隠す。
「愈史郎の奴に貰った紙目を貼って姿を隠せ」
分裂体達は予め愈史郎から貰った紙目の呪符を貼る。
白怒火と狼牙丸が軍艦から出撃した1台の巨大戦車の遮蔽物の影から覗き見る。
「あれって⋯⋯ドルシア軍61式戦車パンツァーガルムじゃないか?」仮面の奥で物珍しそうな目でパンツァーガルムと呼ばれる巨大戦車を見る白怒火。
「⋯⋯どう見てもモジュールを攻め込むのに使う兵器じゃないだろ⋯⋯占領地の重要基地拠点を局地防衛する為にわざわざ輸送してきたのか?」
「どうする?倒すのに時間が掛かるぞ?無視して停泊している艦を落とすか?」
「その場合、あのガルムの学園の方へ向かう危険性がある。」
普通の戦車よりも遥かに巨大な超弩級戦闘車両だ⋯⋯遭遇しただけで生徒達に途方も無い絶望感と威圧感を与えるだろう。
愈史郎の紙目のお陰で相手から姿が見えない為に横一列に分裂体達は集まりガルムへの対処をどうするか意見を出し合う。
「とか意見を出し合う時間もなさそうだ。」
「え?」
「朱天大将は愈史郎の呪符を貰っていない⋯⋯ガルムと会敵しやがった⋯⋯」
占領地での突然、謎の敵戦力の襲撃によって迎撃に向かった残存部隊達から連絡が次々と途絶えた状況⋯⋯迎撃部隊の生存が絶望的と考えた戦闘揚陸艦のデニス艦長は、迎撃部隊を壊滅させた謎の敵戦力の次の狙いがモジュール77内の港に停泊している残存戦力の自分達と睨んだ艦長は艦内で待機していたベテラン戦車兵に出撃命令を発令し占領地の局地防衛任務として輸送した超弩級戦闘車両ガルムを港に上陸させて謎の敵戦力に対する迎撃態勢を整える。
聞こえてきた迎撃部隊の通信記録も姿が消えたとか熱いとかまたは逆に寒いとか要領を得ない内容の物ばかりで敵がどんな兵器や装備を使って此方の戦力を倒しているのか不明の状態で敵が此方に進行するであろう方向に主兵装の三連装滑腔砲を向けて警戒態勢を整えて敵戦力が姿を見せるのを待つ。
「⋯⋯⋯うん?」
ガルムの戦車兵は周囲を警戒しているとガルムの搭載された全周囲モニターが人影らしき物に気付き
「⋯⋯っ!?」
自然と謎の敵戦力と考え警戒態勢から臨戦態勢に変え人影らしき対象を外部カメラでズームし戦車兵はその姿に驚愕する。
真っ赤な鬼の面を被り陣羽織に中世ジオールの甲冑を身体の各部に装着させた存在は人間では明らかに出せない速度で此方に接近しようとしていた。
《⋯まさか⋯⋯アイツが⋯⋯迎撃部隊の連中を⋯⋯》
想像では迎撃部隊を壊滅させたのはジオール軍のエースが操縦するスプライサーの類の仕業と考えていた物のいきなり主兵装の三連装粒子砲を放つ訳にもいかず車体前方にある対人機関銃の発射準備する戦車兵。
先頭を爆走する朱天大将の後を追うように分裂体達は並走し狼牙丸が朱天大将とガルムを見ながら言う。
「方針は?」
「パンツァーガルムの撃破。どの道、無視して進行先の港へ向かうにもコイツの存在は厄介すぎる。」
「大将の奴はどうせ好き勝手に暴れる。なら大将にガルムの注意を引き付けて貰っている間に俺達はガルムを正面以外から攻撃するぞ。」
「使う技や血鬼術は?」白怒火は忍血刀と片手に並走する狼牙丸に訪ねる。
「勿論⋯⋯⋯大技に決まっているだろ。来るぞ!?」
「各自散開!!」
「「っ!?」」
ガルムの対人機関銃の動き始めた事に気付いた狼牙丸と白怒火は分裂体達に声を掛けると共に姿を急いで隠す。
ガルムの対人機関銃が迫る朱天大将をロックし機関銃の銃口が火を噴く。
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イデアールと活動を停止したヴァルヴレイヴの様子をドルシア軍偵察艦から発進したバッフェ強行偵察型は情報収集してした。バッフェ特有の両肩の大型盾『アイゼン・ガイスト』や展開式ビーム兵装『デュノケワ・キャノン』は取り外されて代わりに偵察用のカメラユニットが装備されている。ツインアイに情報収集用に開発された高精度・複合バイザーカメラを下ろしその外見は不気味な単眼の怪物を彷彿とさせカメラは黙々と回転・拡張しては活動停止したヴァルヴレイヴの様子を見ていた。
「ヒャヒャヒャ⋯⋯ジオール特一級戦略目標。活動を沈黙しました。」
《万が一の可能性もある。接近はせずにそのまま偵察を続けろ。》
「了解。」
宇宙服の役割を持つヘルメットの中で口から長い舌を出しながら暗視装置を自称する双眼鏡をつけた北◯の拳のシーカーそっくりのドルシア軍偵察隊の兵士が偵察艦と連絡していた。
距離を離していたイデアールが相手との一定の距離を維持して相手の出方を見ていた。色々と説明が分からない攻撃手段の数々に警戒していた物の⋯⋯突然行動しなくなったヴァルヴレイヴを包囲しようとイクスアイン達が居るバァールキート級ドルシア戦艦の命令を貰った無数のバッフェ。そのバッフェの後方に待機するドルシア戦艦。二機の重戦術兵器イデアールは損傷した状態でこちらに砲門を向けており、そしてヴァルヴレイヴは全然動かない。普通に絶対絶命の状況である。此処から逆転する術は⋯⋯普通は無い。
絶望の静寂が支配するコクピット内では
「⋯⋯。」
無言で両手から琵琶を形成させる闘牙。
そして全てを悟った表情で不安気な表情をしたサキ達の方へ振り返り
「じゃあ、脱出準備するぞ。」
何事もなかったように二人に話し掛ける闘牙。
「簡単に諦めるな!?藻掻きなさいよ!?現実と!?」
「その現実が詰みかけているんだよ!?例えるならコードギ◯スでルルーシュが黒の騎士団に色々と隠している秘密がバレた状態で幹部の人達を必死に説得する並みに普通に難しいわ!?無理だろ!?ギアスの暴走&軽弾みな一言で起きた特区の惨劇の真実を知ったら卜部でも離れるわい!!」
「⋯⋯本当に此れで終わりなの?」
(やめろよ。そんな悲しい顔をしないでくれよ⋯⋯)
俺以上に不安そうな顔をするサキを見て申し訳ないと心の底から思う。俺だって出来る事ならこの絶対絶命の状況を何とかしてやりたい。諦めたいのに諦めるのが怖いのか俺の身体が俺の意思に反して諦めさせてくれない。この666に切り替わった熱量表示の目盛りの意味だって気になり過ぎる。
「⋯⋯⋯。」
エルエルフは無愛想な表情で俺と変わらずに熱量表示の目盛りを見ていた。
(俺達の絶望に関係なく尚も熱量は上昇していく。本当に何が起きるんだ?熱エネルギーを何処かに溜めているのか?)
ドルシアやARUSの保有する兵器の中には通常よりも威力を上げる為にチャージをして放つ兵器は存在する。
仮に其れ等の兵器と同じならこの操縦する機体の何処かに溜めた熱エネルギーを放出する部分が存在する筈だ。
(いや、そもそも通常の熱量よりも既に大量の熱量を機体に発生しているのにコクピット内部の温度は何故変化しない?)
何かの機能に繋がる物とは考えられるがその何かが分からない。
目の前の熱量表示メーターの変化から気になる事は多すぎるがそれでも後ろにいる二人の安全を考えたら機体を捨ててでも脱出すべきだ。
「待て。」
「えっ?」
二人を無限城に移動させる為に琵琶を動かそうした闘牙の肩に突然片手を置きエルエルフはそう呟く。
「集中したいから少し静かにしろ⋯⋯それとその楽器はまだ鳴らすな。」
「あっ、はい。」
唐突に有無を言わせぬ無愛想の表情でそう言われてエルエルフは静かに目を閉じる。
「⋯⋯。」
無言でサキと視線を交わしながらエルエルフの行動に疑問を覚える二人。
(何考えてるんだろう。)
(分からん。)
(しれっと私の頭の中に声を⋯⋯って何で私の頭の中で先輩の声が聞こえるのよ!?)
驚いた表情で闘牙を見るサキ。
(コイツっ!?直接俺の頭の中に⋯⋯もしかして流木野ってニュータイプ?)
(分からない用語をどんどん入れないで。)
(今なら面白いショートコントやボケが言える!?)
(この切迫した状況で!?えっ!?死ぬ直前にソレ聞くの私!?)
その時、エルエルフは閉じていた瞼を開く。
「41ヘルツ、34マイクロパスカル」
「え⋯⋯⋯」
「機体は確かにオーバーヒートによって活動を停止しているが⋯⋯エンジン音は異常の様子も無く継続している。」
熱量が100%になってから闘牙が必死な表情で滅茶苦茶にレバーを操作しても機体が動かない行動を演技ではないと確認しその次に聴覚を集中させて動かない機体の中でオーバーヒートでありながら熱ダレのような性能低下といった問題なく稼働し続けるエンジン音にエルエルフは気付いたのだ。
(まだこのヴァルヴレイヴは完全に機能を停止していない。)
唐突なエルエルフの言葉の意味が、サキと闘牙は余りに突然過ぎて理解出来ていない。その二人の様子に構わずにエルエルフは畳み掛けるように言葉を紡ぐ。
「熱量の目盛りを見ろ。現在値が100を超えた瞬間に最大値が666に切り替わった。統一されたフォントや几帳面さから見るに、これが無意味な仕様とは考え難い」
「目盛りの切り替りには早い内に気付いていたさ。」
「えっ!そうなの!?」闘牙とエルエルフの言葉にサキは始めてコンソールモニタの熱量表示の目盛りの変化に視線を向けて改めて変化に気付く。
「いや、気付いてなかったのかよ!?」
「しょうがないでしょう。ロボットが動かなくなって慌てている先輩の方に意識を向けちゃったのよ!?」
会話しつつサキはコンソールモニタの熱量目盛りの最大値は二人が言うように先程見た100から確かに666になっている。だが、今現在の熱量は472%、現時点ですでに危険を知らせる真っ赤なアラートが全周囲モニタースクリーンを埋め尽くしている状態だ。
「⋯⋯じゃあ、何で目盛りの最大値が666の数字なのかドルシア軍の君ならその意味が分かるか?」
気になる事を敵であろう者に尋ねる闘牙。その質問に対して
「知るか。俺がこの機体を設計した人間だと思うか?」
眉間に皺を寄せて険しい表情で有無を言わせずに返事を返すエルエルフ。
(うわ〜スゲェー塩対応⋯⋯俺でなかったら傷付くレベルだ。)
あれ?何か目から流れてきた。そりゃあ彼に対して色々と変な奇行や言動をしてキャラ崩壊をさせてしまったが⋯⋯こうも皮肉のないストレートな辛辣の物言いは女子に普通にキモいと言われると同じくらいキツイ対応だ。
「闘牙先輩⋯⋯えっ、泣いてるんですか!?」
「違う⋯これは目から出る只の塩水さ⋯⋯けして相手の塩対応に泣いてるとか傷付いたとかそんなんじゃない。」
「余計な無駄話は後にしろ。」
「でも、こんなにアラートが出ているなら666になったら爆発とかしない?」
サキが熱量表示に不安そうな視線を向けながらエルエルフに質問する。
「爆発が起きるほどの温度や内圧が高まっていれば、俺なら直ぐに神経系や呼吸器系への異常を感じ取る事が出来る。」
「良い物をお持ちで。」
「つまり爆発とかじゃないってわけね。」
エルエルフの見解を聞きつつ闘牙達は最大値が切り替わった熱量表示の目盛りを改めて見て
「じゃあ⋯⋯この黙示録の獣の数字である666の先に、何があるって言うんだ⋯⋯?」
傷付いたクラッシュハートを応急処置して闘牙はエルエルフに真面目な追求に、エルエルフは意外なほど真っ直ぐな瞳で闘牙を見返し、言う。
「可能性だ」
その力強い瞳に、何か確信のような強いものを感じ取る闘牙。
長く生きてると時折、こういう瞳をする人間と出会う事がある。凡人には見えない先見の明と言った見抜く瞳を持つ人達だ。その未来を確実に見たからその選択肢をした等ではなく未来は見えなくてもその選択肢が間違いないと自分の中で確信する。その自信は一体、何処から来るのか。ホントにもう⋯⋯
(間違いなくウォーズマンはこの機体の特性を俺と同じで把握し切れていない。)
此方が把握したのは、機体の特性があらゆる戦いで臨機応変に活躍出来る汎用型で汎用故に外部からの装備に頼りがち⋯⋯豊富な支援ありきなタイプの機体だなと言う感想である。外部から武装を装備しなくてならないから人知れず"あんな物"を開発する必要があったのに⋯⋯
「本当に可能性があると思うのか?」
「無い場合はお前達はこのまま機体の鹵獲と一緒にドルシア軍の捕虜になるだけだ。」
「現実的な意見をどうもありがとう。」
「⋯⋯機体の秘められた可能性に俺達の運命やら未来を賭けるしかないなんて分の悪い博打だぜ。」
「本当は?」
「状況から普通に不謹慎だろうけど一か八かの賭けは嫌いじゃない⋯⋯少しテンション上がってきた。」
熱量の数字に目をやると、ちょうど500%を突破したところだった。
絶対絶命の状況⋯⋯機体の秘められし力が戦況を覆す逆転の鍵になる⋯ロボットアニメのオタクなら喜ぶシチュエーションだが、秘められし力が何なのか知らない場合は普通に博打と変わらない。そもそもちゃんと動くのか?最大値になってもその機能がオミットとかリミッター掛けられていたら普通にゲームオーバーだ。ガ◯ダムのビームジャベリンでさえ出撃前の整備の最中に漸くサーベルにリミッターが掛けられているとアムロ達が知ったからリミッター解除したのに⋯⋯
「⋯⋯先輩。やっぱりさっきのデカい滝に戻るのは?」
どんどん上昇する様子に爆発の危険は無くなったのは分かった物のドルシア軍人のエルエルフの怪しさは消えていない為にサキは闘牙に意見を言う。
「どの道、今この機体の両腕が操作出来ないから無限城に移動も無理だ。その戦法をやるなら熱量表示が100%になる前にすべきだった。」
「そんな⋯⋯」
「諦めろ。男なら時には潔く覚悟を決める時がある⋯⋯覚悟を決めよう。」
「⋯⋯私は女よ。」真面目の闘牙の言葉にジト目でツッコミを言うサキ。
「知ってる。⋯⋯今の内にお互いの好みの人のタイプでも話すか?」
まるで仲の良い友人のように気さくに話し掛ける闘牙。
「誰が貴様なんかに教えるか。」真顔で会話に入るエルエルフ。
「そしてコイツしれっと会話に入るの!?」
「読書で読む本の種類は?」
「ライトノベル。」
「戦術本。」
「⋯⋯読んでて面白い本全般。」
そんな緊張感が欠ける会話を三人でしていると再び、衝撃。アードライのイデアールが、機能を停止したヴァルヴレイヴをアームで挟み、締めつけている。装甲の軋む耳障りな音が、コクピット内を満たす。
『まずは手足をもぎ取る』
「うわ普通に酷っ!?他国の新型にやる対応じゃない!」
「同感だ。自軍の脅威なのは分かるが機体の損傷が余りに酷いと鹵獲した際の機体分析調査に無駄な時間が掛かる。アードライめ。」
「冷静に言ってる場合!?手足がもぎ取られたら戦えないわよ!?」
「だから操作が出来ないんだよ。」
慌てるサキの気持ちに答える事もなくヴァルヴレイヴは微動だにしない。このまま降伏しなければ、本当にそうなるだろう。
だが、アードライは最後の最後でアームの出力を上げる事が出来ない。
先程の接触通信回線で聞こえた言い回しといい⋯⋯ヴァルヴレイヴの妙な戦い方といい⋯⋯何かがおかしい。あのエルエルフが、こんなにあっさりとやられるだろうか?
エルエルフ。アードライは、エルエルフとならいずれ新たなドルシアを支える二本の柱になれると思っていた。自分の片腕として隣に立つのはエルエルフしかいない、そう思っていた。
『降伏してくれ、エルエルフ!私は、君を⋯⋯!』
コクピット内
「ええ~と、武装解除信号は⋯⋯⋯⋯⋯⋯ダメだ。武装解除信号も機能しない。」
アードライの苦悶の声を聞き申し訳なさを感じていた闘牙は分厚いVVVの操作マニュアルを片手に武装解除信号をだそうとするも
「武装解除信号は出すな。」
小声で再びエルエルフに肩を掴まれて止められる。
「おい。さっき言っていた事と逆の事を言ってるな⋯⋯」
『お願いだ!?何か言ってくれ!?エルエルフ!!』
「⋯⋯」
「仮にもお前と苦楽を共にした友達がお前の事を思って降伏を促しているんだぞ。銀髪ウォーズマンには聞こえないのか?彼の搾り出すような葛藤や苦悶に満ちた声が?」
「その原因を作った元凶が良くも抜け抜けとほざくな。」
「⋯⋯俺は悪いとは思っているが武器を持たない何の罪もない普通の学生達をお前の仲間達が撃とうとしたんだ。此方だって知り合いを生かす為なら反撃だってするさ。逆の立場だったならお前だって仲間を守る為に同じ事をするだろ。」
エルエルフに闘牙は咎められるも自分の行動は周りから見て悪であろうと闘牙は後悔はしていない。もしその行動をしなかったのなら、サキ達はもう生きていない可能性だってあったのだから⋯⋯
「「⋯⋯⋯」」
向き合う⋯⋯否、両者鋭い眼孔で射殺す程に睨み合うエルエルフと闘牙。
『エルエルフ!!』
聞こえてきた懇願とも言えるアードライの声に対してエルエルフは闘牙からアードライのイデアールに視線を移しイデアールの頭部⋯⋯コクピット内のアードライの姿を幻視する。
「⋯⋯⋯」
エルエルフは、共に過ごし目的を語りあったアードライにも、所属する仲間達がいる特務機関にも⋯⋯そして生まれた祖国であるドルシアにさえも、執着していなかった。
脳裏を駆け抜けるのは自分を調教したあの男がいる特務機関に入る切っ掛け⋯⋯俺の生きる理由となったあの日、降り積もった雪の中、幼い自分の命を救ってくれた人の後ろ姿。絶望の闇の中で闇を払ってくれた俺の希望の光⋯⋯その光の為なら俺は⋯⋯
(死ねない⋯⋯死ぬワケにはいかない!!俺には⋯⋯命を懸けて救わねばならない光がある!!)
エルエルフの最終目的は、ただ一つ。その為なら、碌な思い出もない特務機関で教えられた事だろうが、敵対関係である他国の人間だろうが、目的の為に俺は全てを利用する!!その過程で何れ程の血が流れて屍の築こうとも⋯⋯必ず成し遂げなければならない。
それを果たすための手段として、今、この瞬間エルエルフが選択したのは所属していたドルシア軍ではなく――ヴァルヴレイヴを操縦し自分を理解不明な数々で追い詰めたジオール人の学生、闘牙だった。
熱量が600%を超えた。
エルエルフの返事がない事に痺れを切らし、アードライがイデアールのアームの出力を上げる。
熱量が631%に。
鈍い音を立て、ヴァルヴレイヴの肩の装甲が破壊される。
「戦いが終わった後で⋯⋯機体整備するの俺かよ。」
周りの誰に話し掛ける訳でもなくこの後の取り組むべき仕事の数々を想像してげんなりした表情で独り言を呟く闘牙。
熱量が657%。
「もう戦いに勝った気でいるのか?」
その独り言にエルエルフは反応する。もしかして最後になるかもしれないから闘牙は軽くエルエルフと会話を紡ぐ。
「お前は⋯⋯死ぬ為に戦ってるのか?」
「まさか?俺は貴様らと道連れはごめんだ。」
「ちょっと!?」
良かった⋯⋯銀髪ウォーズマンがコードギア◯ 亡◯のアキトのアキトみたいな性格じゃなくて⋯⋯本当良かった⋯⋯もし肯定していたら、可哀そうな人って坂本様ボイスで言わないといけなかった。
「始めて銀髪ウォーズマンと意見が合って嬉しいぜ。⋯⋯絶対に生きて帰んぞ⋯⋯」
665%。
「一時的とはいえ敵である貴様らに命を預けるんだ。だから⋯⋯必ず⋯」
「分かってるよ。その為に⋯必ず!」
闘牙達の気持ちに答えるかのように宇宙の暗闇を切り裂く黄金の光が、ヴァルヴレイヴを包み込んだ。
「「勝て/勝つぞ!!」」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先制攻撃を放つガルムの対人機関銃から銃弾が絶え間なく放たれて飛来する銃弾の雨を蛇行移動で次々と躱し続けながら間合いを詰める朱天大将。
《速い!?》
対する戦車兵はガルムを後方へ下がらせながら対人機関銃を使い朱天大将を狙い撃ち続ける。
「火速っ!?」
直撃しても傷つかない物の鬱陶しいと感じた朱天大将は走る速度を上げてガルムに急接近、弾を絶えず放ち続ける対人機関銃の射程外に一気に移動してから捉えられるより早く大振りの斬艦日輪刀を両手で振り上げて対人機関銃の銃身を呼吸音と共に全力で叩きつけるように振り下ろし対人機関銃の銃身を斬り裂く。
《嘘だろ!?対人機関銃を生身で破壊したのか!?》
火器管制システムにある対人機関銃の破壊を中心のコンソールから確認して素直にビックリする戦車兵。
「⋯⋯っ!!」
二撃目を仕掛けようと攻撃動作の途中でガルムが後退ではなく前進してくる為に朱天大将の全身は車体の前面に叩きつけるように無理やり押し付けられる。並みの人間なら何が起きたのか理解出来ずに即死⋯⋯運が良くても重症になる大怪我も炎竜鬼の分裂体にはダメージにはならず硬い装甲に全身を押し付けられる感覚を味わいながら朱天大将は前進するガルムを睨みつける。
《何だ!?》
潜伏しているであろう残りの敵戦力を一掃する為に港から市街地へ移動しようとするもその進行方向の先に分厚い巨大な氷壁が下から突き上げるようにそれは突然出現する。
「⋯⋯。」
氷壁の内側では絶対零度の冷気を身に纏った捨麿が冷静に相手の行動を封じていた。
(粒子砲も放てるのは勿論、様々な種類の砲弾を放てる主兵装の三連装滑腔砲に瞬間火力が強い左右にある4連装120mm機関砲、後部左右は2連装ミサイルポッド⋯⋯倒し甲斐がある相手でおじゃる。)
《仕方ねぇ!?》
戦車兵は氷壁の出現に驚くも主兵装の砲撃の誘爆を危惧して左右の4連装機関砲を稼働させて氷壁の破壊しようと対人機関銃よりも強力な機関砲から大口径の弾丸が氷壁に向けてダダダダダっと一斉掃射され氷壁を削り始める。
「喧しい音でおじゃる。」
既に氷壁の内側から氷壁に意識を向けていたガルムへ攻撃する為にガルムの右側面へアイススケートのように道を凍らせて滑る移動していた捨麿は機関砲の排莢口から排出されていく焼けた薬莢を躱しつつ機関砲の轟音に文句を言いながらガルムを氷漬けにしようと強力な冷気を放つ。
《ぬっ!》
ガルムの右側面が突然、原因不明の白い氷に覆われ始めて戦車兵は急いで後方へガルムを下げる。砲塔や車体を動かす事で覆われた氷を引き剥がして側面方向に外部カメラを向けるも原因らしい物は見つからない。
「⋯⋯⋯。」
ガルムの戦車兵が氷の原因を探している隙に狼牙丸は死角からガルムの左側に接近し銃弾が連射される機関砲の装甲部分に左籠手部分から生やした鬼爪を突き刺して右籠手を一気に引いて
「仁王掌!!」
闘気を込めた拳の一撃を目の前の装甲部分に抜き放つ。硬い複合金属装甲が放たれた拳の一撃によって衝撃と共に円形に凹ませる。
《のわっ!!な、何だ!!》
衝撃がガルムの車体を大きく揺らしその揺れはコクピットにいた戦車兵にも伝わる。中心のコンソールでダメージチェックを急いですると右側の機関砲が何かの攻撃を貰い損傷した事を確認する。
《まさか⋯⋯さっきの奴か!?》
対人機関銃を破壊した朱天大将を怪しいと感じた戦車兵は氷が覆われた原因を後回しにして敵戦力である朱天大将を急ぎ探す。
「硬いな⋯⋯流石にそこらの戦車と違うか⋯⋯なら次だ。」
打撃による円形の大きな凹みを作るも多脚歩行用戦車や通常戦車を次々と破壊した仁王掌の一撃に耐えたガルムの頑丈さに感心しながら次の攻撃準備に移る為ガルムの装甲部分を壁のように蹴りその反動でガルムから距離を取る。跳躍力を活かし氷壁に鬼爪を突き刺して氷壁の上を目指してよじ登る狼牙丸。
「⋯⋯。」
死角であるガルム車体下部に潜んでいた九荷と白怒火。九荷の尻尾に身体を引っ掛けて宙ぶらりんの体勢になった白怒火は影から突撃銃を取り出し車体下部に向けて素早く連射するも銃弾は装甲の硬さに負けて次々と弾かれる。
「ちっ!なんつう硬さだよ⋯⋯生半可の銃火器じゃビクともしねぇ⋯⋯こりゃあガ◯ダムのビーム・ライフルやハイパーバズーカとか必要だろ。」
ロケットランチャーの類は影の中にある物の通常の戦車よりも巨大な戦車が相手だと有効打に欠ける。
「⋯⋯装甲部分の攻撃は他の奴らに任せて俺達はあの喧しい連装機関砲を何とかするか。九荷。」
「⋯⋯。」
「行くぞ!?」
そう伝えると九荷と共に車体下部から忍者顔負けの俊敏な動きで左側の機関砲のある方へ移動する白怒火。九荷は白怒火とは別に右側の機関砲を目指す。
《⋯⋯っ!!》
「鬼闘術!!闘氣破動弾!!?」
氷壁上部で全身の力と闘気を溜める動作から目標に向けて両掌で一気に抜き放つ動作し破壊力がある長距離の氣弾が放たれるも、
戦車兵はアラートが反応するよりも早く攻撃を察知しガルムを動かし狼牙丸の闘氣破動弾の直撃を避ける。
「直撃を避けただと!!」
《少し掠っちまった!?でもガルムを狙った攻撃で間違いないよな!?》
戦車兵は素早くコクピットの天井部分に格納された引き出しタイプの直接照準装置ターゲットスコープを展開させて回避行動をしたガルムは相手がいるであろう氷壁に向けて主兵装の三連装粒子砲を向けて
「っ!?」
《FIRE!?》
掛け声と共に握り締めたレバーに付いた発射スイッチを親指で押し三連装滑腔砲の主砲部分から黄色い強力な粒子砲が直線状に放たれる。
狼牙丸は急ぎ氷壁の後方へ落ちるように落下、自分がさっき立っていた氷壁上部に強力な粒子砲が穿つように貫き粒子砲の余熱で氷壁の貫かれた内側が溶ける。
狼牙丸は落下途中に出現した障子の中に入り無限城に一度帰還。
「世話がやけるでおじゃる。」
捨麿は狼牙丸が無限城に帰還した事を確認し己の血肉で形成した琵琶を背中に背負ってガルムの周囲に幾つ物の分厚い氷壁と巨大な氷柱を足元から作り出し行動を封じようとする。
《うおっ!何だ!?》
周囲から氷壁や氷柱の出現に驚きながら戦車兵はガルムを走らせて氷壁や氷柱の範囲外に移動しようする。
「ガタイに似合わずにすばしっこいな!?」
舗装地でありながら氷壁や氷柱の出現で不整地同然に変わっている悪路でも問題無く突破する戦車の履帯の強みを各分裂体に思う存分に見せつけながらも捨麿の氷壁によってガルムは港に停泊する艦隊と分断される。
(これで軍艦が停泊する港へは後進は出来なくなったでおじゃる。)
「うへっ!危ねぇ!!」
白怒火はガルムに気付かれずに移動していると目の前に突き出るように出現した捨麿の氷柱に激突しそうになる。氷柱の柱を蹴り上げて激突を躱しをガルムに跳び乗る。
「ふぅ⋯⋯⋯このガルムを囲むように展開された氷壁と氷柱、捨麿の野郎だな。」
《誰だか知らないがこのガルムを封じ込める気か?ガルムを甘く見るなよ!!》
ガルムのメインウェポンである三連滑腔砲から粒子砲を放ち前方にある氷壁を粉砕しつつ後部左右の2連装ミサイルポッドが稼働し左右に出現した氷壁に向けてターゲットロックして放つ。4連装機関砲に比べて破壊力が高い2つのミサイルがポッドから発射されて氷壁を粉砕させる。
ガルムの攻撃の数々に氷壁は次々と数を減らし粉砕された氷の欠片がガルムの周囲に崩れる。
「こりゃあ⋯⋯街走らせたらモジュール1の暴れん坊になるな⋯⋯」
ガルムのフェンダー部分の外部カメラの死角にいた白怒火は氷壁や氷柱を破壊する光景を見てモジュール77内の市街地のビルを壊すのを連想する。
「⋯⋯市街地に向かわせる前に絶対に撃破しないとな。」
そう呟くと破壊する部分に白怒火は向かう。
「ガルムめ⋯⋯滅茶苦茶しやがるな⋯⋯ぬおっ!」
無限城から戻ってきた狼牙丸は半壊した氷壁に素早く背を預けるように隠れて粒子砲やミサイル攻撃をやり過ごしながら戦況を確認する。その際に貼り付けていた呪符が破れて狼牙丸の姿がガルムから見えるようになる。
捨麿が市街地へ向かおうとするガルムの行動を封じ込めようとしてガルムは移動の為に障害になる氷壁を破壊していると理解していると氷壁近くにミサイルが迫り急いでその場から移動する狼牙丸。狼牙丸の後方からミサイルの爆発音と衝撃が響き渡る。
粉砕する度に再び無数の氷壁が囲むように出現し戦車兵は鬱陶しいと感じながらもガルムで氷壁を破壊する。
「血鬼術 蓮葉氷」
ガルムの注意を氷壁に向けている間に捨麿は扇子を踊るように振るい無数の氷の蓮の花を形成させてガルムを凍結させようとする。
(通常の多脚歩行戦車サイズなら兎も角、車体の大きさもあって氷漬けにするのに時間が掛かるでおじゃる。)
《またかよ!!》
原因不明の凍結現象に頭を悩ませながら戦車兵はガルムの車体下部に内蔵されたブースターを起動させる。雪上戦を想定していない為にガルム各部にヒーターは取り付けておらず凍結の危険を考えてガルムを一度ブースタージャンプさせる。
自身を囲むように展開された氷壁より高く上昇して氷壁の真上を通り過ぎるガルム。
「⋯⋯⋯っ!!」
押し付けられていた朱天大将はガルムの車体の装甲を壁のように何とか蹴りつけるとガルムから離れる。重力に従い落下した後に半壊した氷壁の上に着地した朱天大将は急いで背後を振り返り夜空を見上げて真下からガルムを捉えると斬艦日輪刀の剣先を下に下げた下段の構えにして再び攻撃を仕掛ける。構えを上段から下段に変えると氷壁の足場を純粋な膂力だけで蹴り上げてブースタージャンプするガルム目掛けて跳躍する。
「っ!?」
狙いは無限軌道の要である戦車の履帯部分。幾つもの悪路を走破する戦車の履帯に向けて朱天大将は斬艦日輪刀で下から上へ斬り上げる。
朱天大将が履帯部分を狙うのと同時に予めガルムの左右の4連装120mm機関砲に狙いを定めていた九荷と白怒火が履帯上部を覆うフェンダー部分に音も無く左右別々に着地し左右から向き合うように己の得物を持ち助走をつけて斜めに高く跳躍。
互いに機関砲の上下に分かれた砲身の一本目を側面から白怒火は左右の血忍刀の先端を砲身に捉えると外側からなぞるように全身を回転させて切断し九荷は先端に刃を形成させた九つ尾ですれ違い様に斬り裂き反対側のフェンダー部分に着地する両者。
残った砲身の二本目に向かって両者斜めに再び跳躍し両者は空中で交差する。空中交差した後に残った連装機関砲の砲身部分を両者は己の得物を振るい同時に斬り裂く。
《履帯と連装機関砲がやられたか!?》
コクピット内では次々と来る衝撃と共に履帯右側部分が斬り裂かれて更に火器管制システムが連装機関砲の破壊を確認する戦車兵。
ブースタージャンプを辞めて地上に着地した物のガルムは片方の履帯部分を朱天大将によって破壊されて通常走行が困難の状態となった。ブースタージャンプを使えば移動は可能だがエネルギーを使い過ぎた為にエネルギーが充填するまで立ち往生するはめになる。
「朱天の奴が戦車の足を止めた⋯⋯逃がさないでおじゃる。」
そして立ち往生したガルムに分裂体達は攻撃を仕掛ける。
機を見て正面から姿を見せた狼牙丸は両籠手で主砲である粒子砲の砲身に迫るも
《っ!?》
突然至近距離に姿を見せた狼牙丸に警戒しつつ主砲の粒子砲を放つのではなく車体上部の砲塔を鈍器ように横薙ぎに旋回させる。
「ちっ!!」
巨大な棍棒のように振るわれた砲塔の一撃を左籠手で防ぎつつも空高く吹き飛ばされる狼牙丸。空中で体勢を整えて朱天大将の前に猫のようにしなやかに着地しガルムを見据えて
「一気に接近するぞ!?」
朱天大将は無言で応じて二匹はガルム破壊の為に地を蹴り駆け出す。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ガルムとの激闘を繰り広げる分裂体達と同じく宇宙でも異変は起きていた。
「なんだ⋯⋯!?」
『なんかヤバい!』
機体の全身から黄金の光を溢れさせながら、突然、再起動したヴァルヴレイヴ。そのただならぬ雰囲気に危険を感じ、イデアールが後退してゆく。
「動いた!?」
「⋯⋯。」
(落ち着け⋯⋯冷静に⋯⋯呼吸を⋯⋯呼吸を整えろ⋯⋯)
ヴァルヴレイヴのコクピット内でも再起動の様子を目撃するサキ達。再び動いた事に分かり易い反応をするサキに対してエルエルフは冷静に分析し闘牙は無意識に呼吸をする。すると何故か闘牙の身体も光始める。
「おっ、機体が黄金に光始めたぞ。仕様が古き良きロボアニメにたまにある奴だな。てか宇宙だとこれでもかって目立つな⋯⋯隠密行動に向かない仕様だ⋯⋯」
「いやロボット以上に先輩めっちゃ綺麗に光ってますよ!!」
「何でだよ!?」純粋に驚くサキと闘牙。
「しかもゲーミングカラーで!!」虹色のグラデーションに綺麗に輝く闘牙の姿にツッコミを入れるサキ。
「どういう仕様だよ!!」
更にヴァルヴレイヴの左右に知らない人が顕現する。片方は時代劇に出てくる肩衣を纏い丸い眼鏡を掛けた細身の年老いた侍、もう片方はマイクを片手にガムテープみたいな物を全身に巻いたやたら露出度が高い服装を着た男だ。
「いや、誰!!何か左右に知らない人出てきた!?」
「丹羽長秀と西川貴教だよ⋯⋯」
「何で熱量が最大になると巨大な西川貴教と丹羽長秀が出現するのよ!?何繋がりよ!!」
次々と起きるカオスな現象に混乱するサキ。
そして西川貴教と丹羽長秀がデュエット曲を歌い始める。
「そして仲良く歌い始めた!?しかもめっちゃ上手い!!」
「当たり前だろ!?丹羽長秀と西川貴教だぞ!?」
「いや先輩の丹羽長秀と西川貴教に対しての無類の信頼は何なの!?」
「あれ?」
再起動したなら機体を動かす為に操縦幹を動かそうと考えていた闘牙はある事に気付く。
「どうしたの?」
「機体の腹部のカバーが開いた。」
「えっ?」
黄金色に輝いたヴァルヴレイヴは、腰に帯刀したカタナを抜いて高く頭上に掲げる。次の瞬間、闘牙の中の全身の細胞から機体に関する必要情報が幾つも浮かび上がる。
(何だ?この情報⋯⋯これは無惨様の細胞の記憶じゃない⋯⋯なら⋯⋯俺の記憶?だがこんな情報は見た記憶がない⋯⋯なら俺の細胞?この機体の情報がどうして身体の内側の細胞から⋯⋯)
抜刀に続くように腹部と背面のカバーが開き、剥き出しとなったヴァルヴレイヴの動力源『レイヴ』から、吸収しきれなくなった熱量が膨大な光のエネルギーとなって迸る。
(コイツがお前の奥の手なら⋯⋯)
闘牙は絶対絶命の状況を逆転する為に起死回生の手段を利用する。ヴァルヴレイヴは掲げたカタナを逆手に持ち替え、その切っ先を自らの腹部に向ける。そして、一息に、突き刺した。
「ハラキリ⋯⋯!?」
腹部に差し込まれ背中から突き抜けた刃は、最高密度のレイヴ・エネルギーを纏ってゆく。
(⋯⋯グフのヒートソードみたいに刀身に動力源のエネルギーを付与させているのか?)
再びカタナを引き抜いた時、その刀身は、巨大なゲーミングカラーの光の柱と化していた。ヴァルヴレイヴは持ったカタナを近付かせ巨大な光刃と化したジー・エッジ刀身部分の様子を間近に見上げて
「⋯⋯随分とまぁ〜デッカくなったな⋯⋯」
「いやデッカくなった以前にスッゴクロボットの武器も先輩と同じ綺麗に光ってますよ!!?」
「細かい事は分からないが、有り難く使わせて貰うぜ!!」呆れとも感嘆とも呼べる感想を述べた後、両手で構え直し
「しゃあ!行くぞ!?どっせーーい!」
「何その掛け声!?」
『降伏してくれ、エルエルフ!私は、君を⋯⋯』
この時、闘牙の脳裏に過ぎるのは、先程のアードライの苦悶と葛藤の言葉。
「っ!?⋯⋯喰らえ!?愛と、怒りと、悲しみのぉぉぉ!?めえええええん!!!」
この時、闘牙は自分達の生存の為に銀髪ウォーズマンの仲間が乗っているであろう黄色いイデアールを破壊しようと考えて素早くカタナを振り下ろしていた。しかし、仲間に撃たれても尚、その仲間を助けたいと考えるアードライの葛藤する気持ちを図らずも知ってしまいほんの僅かに闘牙に迷いが生まれてしまいイデアールのコクピットを避けるように巨大なエネルギーの光刃を勢いに任せて振り下ろす。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《このガルムに白兵戦を仕掛けるつもりか!?》
相手から距離を取ろうにも右側履帯部分が破壊されて後ろに下がる事が困難な為に再びブースタージャンプするガルム。
「血鬼術。氷骨の腕」
だがガルムの背後の破壊された氷壁から冷気と共に氷で出来た巨大な二本の腕の骨がガルムを後ろから押さえつけて
《っ!?》
更にガルムの周囲から無数に出現した氷の腕の骨がガルムを移動させないように雁字搦めに取り押さえる。
《本当に何だよ!?この氷は!!くっ!人間相手に撃つ物じゃないんだがな!!》
加速する二匹の鬼に対して謎の悪寒と罪悪感を感じつつ主兵装の三連粒子砲を放つ。
瞬時に二匹の鬼は迫る粒子砲の一撃に対して
「今度は当てる!?鬼闘術 闘氣破動弾!?/⋯⋯鬼の呼吸⋯⋯肆の型⋯⋯鬼氣烈砲斬!!」
闘気を溜める動作をしながら先を走る狼牙丸を速度を上げて追い越すと朱天大将は全身の力を一撃に込めて放つ斬撃波を唐竹割りの要領で放ち目前まで迫る粒子砲と斬撃波が激突。威力が勝っていた斬撃波によって粒子砲の一撃は左右に斬り裂かれて斬撃を振り下ろした朱天大将の背後から両掌から長距離の氣弾を狼牙丸は放つ。移動出来ないガルムは真正面から放たれた氣弾を避けられず叩き込まれる。
《ガルムの粒子砲を斬っただと!!幾ら何でもあり得ないだろ!?ぐああああっ!!》
ガルムが一瞬で爆炎と衝撃に飲み込まれて強固な装甲を持つ車体全体が激しく揺れて車体各所には激しい火花が散り耐久性のある強固な装甲とは別に装甲の弱い部分は氣弾の一撃で悲鳴を上げて大小関係なく破損しガルムは甚大なダメージを受ける。着弾の衝撃で後方へ大きく押し出されそうになるも無数の氷の腕の骨に無理やり取り押さえられている為に身動きが取れない。
《おい!デニス艦長⋯⋯応答しろ!?》
ガルムを包んだ爆炎が晴れて袋叩きに遭いながら敵戦力の情報を必死に伝えようと搭乗していた揚陸艦の艦長に連絡する戦車兵。しかし聞こえてくるのは耳障りな通信エラーを伝えるノイズ音ばかりに
《クッソ〜通信機がイカれたか⋯⋯支援砲撃や援護射撃は無理そうだな⋯⋯》
ガルムの損傷具合を見て援護要請と考えるも狼牙丸の攻撃で通信機の故障した為に考えを生還の為に敵戦力を殲滅する事に切り替える。
《ミサイル発射!?》
手始めに身動きを押さえる巨大な氷の腕の骨を破壊する為に2連装ミサイルポッドからミサイルが発射。後ろから押さえている氷の腕の骨はミサイルによって粉砕される。
「一撃で仕留めるつもりが⋯⋯闘気の溜めが足りなかったか⋯⋯」
「なら仕留めるまで叩き込めば良いだけ!!」
走る狼牙丸の真上を身軽な白怒火が飛び越えて粒子砲の砲身の上に着地。狼牙丸も白怒火に続く。朱天大将は左側の履帯部分を斬艦日輪刀を両手に持って駆け出す。
《へっ!履帯部分を破壊した程度でガルムに勝てると思うなよ!!》
「っ!?」
ガルムは砲塔部分を動かして狼牙丸と朱天大将に向けて砲撃する。飛来する巨大な砲撃に二匹の鬼は鬼の身体能力をフルに使い次々と掻い潜りながらガルムに迫る。両者は相手の狙いを分散させる為に左右に分かれる。
「鬼闘術 金剛炸裂掌!!」
右側に向かった狼牙丸は跳躍からガルムの右側面に向かって大きく腕を大きく振り上げて拳を抜き放つ。
右側複合金属装甲に渾身の鬼闘術の打撃技を叩き込まれてガルムの車体は大きく傾く。仁王掌と比べられない強力な一撃がガルムを襲う。
《うおっ!スモーク散布!!》
「ちっ!」
自分の戦車の砲撃と勘違いする軽くない攻撃を至近距離から貰いながらガルムは車体各部からスモークを散布させて相手が此方の位置を見失っている間に小回りの効かない状態で戦車を一度後退させる戦車兵。右側履帯部分が朱天大将に斬り裂かれている為に通常走行が困難な状態でもガルムを巧みに操縦して後退させる。
《さっきの攻撃のお返しだ!?粒子砲発射!?》
後退させながらスモークが散布させている位置に向けて主砲の粒子砲を発射。
「っ!!」
相手の狙いに気付いた狼牙丸は高速移動し近くのコンテナに逃げ込む。着弾による爆発音と衝撃をコンテナの向こう側で感じながら
「⋯⋯占領地だからって好き勝手に撃ちやがって⋯⋯」
悪態の言葉を吐きながら次の砲撃が放たれる前に雷のように身体を光らせてジグザグ状に移動する狼牙丸。
「っ!?」
無数のコンテナの上を足場にして後ろに爆走するガルムの左側に回り込んだ朱天大将は斬艦日輪刀を両手で高く持ち上げて頭の上でぐるぐると振り回して高く跳躍しサイドスカートの奥の転輪に狙い澄まして
「⋯⋯鬼の呼吸⋯⋯漆の型⋯⋯鬼断斬刃⋯」
左側履帯部分を左一文字斬りの動きで大きく横に引くように斬り裂く。朱天大将の一閃がサイドスカートの奥の履帯から転輪を文字通りに全て断ち切る。
「⋯⋯。」
更に九荷は稼働する起動輪に向けて長双槍の刃と九つの尾の刃を起動輪を突き刺し無理やり動きを止める。
相手の動きが止まった隙にガルムの車体下部に滑るように潜り込んだ全身に黄色い稲光に包まれて狼牙丸は頭上を見上げて両籠手から鬼爪を生やして拳を一度引いて足元のアスファルトを踏み砕く程に一気に跳躍しガルムの真下の装甲に向けて
「血鬼術 炎竜尾雷槍!!」
槍の如き雷速の拳を刺し貫くように抜き放つ。雷が激突したかのような雷光と共にガルムの硬い装甲は狼牙丸の雷槍の威力に耐えられずに拳程の大きさの小さな穴が穿たれており雷槍を放った狼牙丸は一度ガルムの真下に着地する。
「血鬼術 十字竜刃!!」
分裂体の中で一番高く空中へ跳躍した白怒火が斬れ味のある十字手裏剣を体内から形成し空中からガルムへ投擲する。高速回転する二つの十字手裏剣はガルムの後部左右に換装された2連装ミサイルポッド。
(血鬼術。氷骨の腕)
捨麿は白怒火の狙いに気付きガルムの後方から再び巨大な氷の骨の腕を作り出す。さっきと違い片方のミサイルポッドを複数の氷骨の手で掴み掛かり押さえつけるのではなく無理やり引っ張り始める。
《おい!まさか!?》
敵が何をしようと気付き引っ張ろうされている氷骨の腕を破壊する為に2連装ミサイルポッドからミサイルを発射。発射されたミサイルは氷骨の前腕部分に直撃し再び粉砕される。
《よし⋯⋯えぇ〜〜!!》
兵装を破壊されずにすんで一安心するも粉砕された箇所から再び氷の骨の腕が再生するのを外部カメラで目撃して戦車兵は驚愕する。
再びミサイルポッドを掴み掛かられて無理やり引き千切ろうと引っ張られる。しかもさっきよりも氷骨の手の怪力が上がっていた。
尋常ではない氷骨の腕の怪力によってミサイルポッド周辺から激しい火花を散らしミシミシと不快な軋む音が聞こえ始める。そして⋯⋯氷骨の手のパワーに耐えられなかったミサイルポッドがガルムから無理やり音と共に引き千切られる。
残ったミサイルポッドも吸い込まれるように飛来した十字竜刃に縦横無尽によって斬り裂かれて爆発する。
《まだだ!!》
陸の番犬とも呼ばれるパンツァーガルムが次々と普通ではあり得ない現象で追い詰められている中で尚もドルシア陸軍が開発したガルムを信じ正体不明の敵戦力の襲撃に抗おうと主砲を敵戦力に向けようと砲塔を動かすも三連滑腔砲の砲身は朱天大将の得物の一振りと九荷の九つの尾から放つ熱線によってあっさりと斬り裂かれて
《えっ?》
一方、狼牙丸も動きを止めたガルムの車体真下の自分の雷槍で穿った穴目掛けて激しく帯電させた雷を一点に集めて巨大な雷球を作り出して瞬時に真上に向けて投擲するように放つ。
「血鬼術 雷王咆!!」
「鬼の呼吸 壱の型 鬼神斬牙」
真下から真上に貫くような大きな衝撃を皮切りに次々とコクピットを激しく揺らす中で鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした戦車兵が最後に見た光景はガルムを正面から黄金の炎を纏い普通の人では持ち上げられない大きさのジオールのカタナと呼ばれる物で斬りかかる真っ赤な鬼面の存在であった。
「こりゃあ⋯⋯完敗だな。」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた戦車兵は謎多い状況の中で正体不明の強敵と全力で対峙し満足そうな笑みを浮かべた。
「⋯⋯。」
ボゥーボゥーと激しい紅蓮の炎を燃え上がる。巨大な斬撃によって垂直に斬り裂かれた陸の番犬の残骸を感慨深く見ている分裂体達。本来の残存戦力の掃討に戻る為に分裂体達は残骸を後にして5隻の軍艦が停泊する港の方へ向かう。
そんな中、朱天大将は一度足を止めて背後に燃え上がるガルムの残骸を振り返る。
「⋯⋯⋯⋯。」
三分も満たない短い時間だがその光景を目に焼き付けた朱天大将は何も言わずにガルムの残骸を後にして分裂体達に合流する。
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闇を照らす圧倒的な黄金の光が、イデアールのコクピット内のアードライの視界を灼き尽くした。迫る身の危険に関わらずアードライは叫ぶ。
「エェェェルエルフゥゥゥゥゥアアアアア!!」
モニターに表示される無数のアラートと、大きな衝撃。直撃は免れ被害はイデアールの左側で済んだが、そうでなければ機体ごと消し炭と化していたであろう威力。
「何故だ!何故だ!何故だあああああああ!!」
エルエルフは、やはりドルシアを裏切ったのだ。そして仲間である自分を二度も殺そうとした。怒りのままに声の限り吠えるアードライ。
「⋯⋯何故だ⋯⋯⋯何故なんだ⋯⋯何故⋯⋯」
激しい怒りと共に叫びながら無事の方の目から一筋の涙が溢れ落ちる。
コントロールを失ったアードライのイデアールをクーフィアのイデアールが救出しよう接近する。
ドルシア戦艦のブリッジでは、その様子を見ながら、誰もが愕然としていた。
「なんだ、今のは⋯⋯」
イクスアインの困惑の声に答えられる者はブリッジの中には誰もいなかった。
我に返った艦長が、それでも体勢を立て直そうと指令を飛ばす。
「残存兵力を集めろ!集中してあのジオールの兵器を⋯⋯うわあああっ!」
そこへブリッジの直ぐ真横にピンク色のビーム砲が通り過ぎさらに別方向からビーム砲が降り注いだ。
「何だ!?」
叫ぶイクスアイン。彼方から現れた新たな船影。その所属を確認し、オペレーターが叫ぶ。
「ARUS艦隊です!」
「何っ!?」
環大西洋合衆国(Atlantic Rim United States)、通称ARUS。軍事力によって世界の半分を支配するドルシアに対し、経済力によって世界の半分を支配する、ドルシアの宿敵である。
ジオールはドルシアにもARUSにも属さない中立国だが、なればこそARUSは、ドルシアの一方的な蹂躙を黙って見ている訳にはいかなかったのだ⋯⋯色々な意味で。
「想像以上に早いな、もう現れるなんて⋯⋯」
「くっ!後退だ!ここは退くんだ!」
「ARUS艦隊から複数の機影を確認!?」
「各バッフェ隊、艦隊離脱までの足止めを頼む!?」
「了解!?ARUSめ!?スプライサーでバッフェに勝てない事を教えてやる!?」
その任務を了承したバッフェ部隊の軍人達は楽観的であった。情報が殆どないジオールの人型兵器よりも遥かに倒し易い相手が現れたからだ。
所詮はスプライサー。国力は劣る物の質と技術力に優れたドルシアに対してARUSは経済力と国内総生産力でその差を補っていた。
スプライサーよりも小回りに優れた有人式バッフェに搭乗したドルシア軍人達は矢尻型に並んで迫るARUSの機影達に向かって吠える。照準を合わせた機影に対してビーム・ガトリングを向けて
『もらっのわあああっ!!』
意気揚々と射撃ボタンを押す直前、早撃ちの要領で機影の主兵装の左右のビームライフルから放たれたビームによってバッフェ有人式の頭部コクピットの中にいる軍人の身体ごとビームが貫きコクピットは炎に包まれる。
「なっ!」
一瞬で頭部コクピットごと撃ち抜かれたことで一機落ちて続いて別の有人式バッフェが撃ち落とされながらバッフェ部隊と交戦を開始するARUSの五機のスプライサー。ドッグファイトが展開されて追い詰められるのは、スプライサー部隊ではなく小回りが優れたバッフェ部隊であった。その中にはアイゼン・ガイストを正面に展開した防御状態で攻撃を放つバッフェもいたが、ビーム・ガトリング攻撃が全く当たらずに背後を取られそうになり急いで離そうと回避軌道をするもその回避先にビームライフルが放たれて左肩のアイゼン・ガイストの付け根の部分を破壊され丸見えになった瞬間に別のスプライサーに頭部コクピットを撃ち抜かれる。激しく飛び交うビーム・ガトリングやデュケノワ・キャノンを巧みに躱しては放ったバッフェ達を次々と撃破する五機のスプライサー隊。そのパイロット達の恐るべき技量の差にバッフェよりも格下相手とナメて嬲り殺そうと考えていたバッフェ部隊から勢いは消えて恐怖に怯えては必死に逃げ回る。
『何だ!?このスピード!野郎!?只のスプライサーZじゃないぞ!?』
『スピードだけじゃねぇ!?クソッ!コイツら強え!?』
「バッフェ隊被害甚大!?」
レーダーに映った複数の機影の速度が自分達が知るスプライサーに比べて速過ぎる事に気付いたオペレーターの声にハーノインが反応する。
「スプライサーZより速いスプライサー⋯⋯まさかドンナーフォーゲル!!」
「ARUSの独立遊撃部隊フリーハンター隊の連中か!?」
ドルシア宇宙軍の戦力を次々と落としたとされるARUSの精鋭部隊の一つの名を呟く。
『さて野郎共、楽しい狩りの時間だ!』
陽気な声とともに、高機動仕様のスプライサーZを更に改良した五機のカスタムスプライサー通称スプライサーH型が、ドルシア宇宙軍に襲い掛かる。
「クーフィア!必要以外は交戦せずアードライと帰投しろ!?」
イクスアインは急ぎクーフィアに声をかける。
『はぁ~い』
ヴァルヴレイヴが放った謎の斬撃波の威力と光景に新手の増援の到着に目を輝かせ、アードライ機を放り出して暴れてやろうか、と思っていたクーフィアだったが、イクスアインに名指しで窘められてしぶしぶ諦める。大破したアードライ機をイデアールの片腕で抱え、大人しく帰投しようとしていた。その時、クーフィアが搭乗するイデアールの胸部の戦闘で傷付いた一文字部分から小さな爆発が起きる。
『えっ?嘘っ!?』
「クーフィア。どうした!?」
『動かない!?後部ブースターがやられた!?』
「何だと!?」
ヴァルヴレイヴの戦闘で十文字槍の横薙ぎの一閃で付けられた箇所から煙が上がりクーフィアのイデアールはアードライ機を抱えたまま動きを止まってしまう。
『動かないイデアールがいるぞ!?』
そしてそのイデアールに気付いたARUSのスプライサー達がクーフィア機達に迫る。
徐々に収まっていく光の中に、ぽつんと黒い点がある。
「⋯⋯⋯。」
「助かったの⋯⋯」
「そうだな⋯⋯助かっ」
恐る恐る言うサキを危機を離脱した事を教える為に肯定の返事を言おうした瞬間、
ヴァルヴレイヴのセンサーが、急速接近する敵影に反応する。危険を報せるアラートがコクピットのスクリーンモニタに映し出され
「おい嘘だろっ!?」
見えた敵影の姿に顔色を真っ青になる闘牙。
全身をクリムゾンカラーに塗装され機体の胸部や各部に通常に比べて機動力を上げる為に装着されたやや鋭角に尖った追加装甲に、後部ブースターユニットの周囲を囲むように八本の追加スラスター、一本角状の装飾を施された馬を模した兜状の追加装甲を頭部に覆ったエビやカブトガニといった甲殻類を思わせる外見をした機動兵器が圧倒的な加速力で此方に迫る。
『悪いが、勝負は此処からだよ。学生君。』
ARUS艦隊の奇襲攻撃に対してドルシア艦隊の逃げる時間を稼ぐ為にスレイプニル隊並びに高機動型イデアール・スレイプニルに搭乗したフォルケンが戦場に姿を見せる。
「ヤベェ!!ヴァ◯・ヴァロが来やがった!!」
動かない機体の中で闘牙は悲鳴の叫びを上げる。ヴァルヴレイヴ絶対絶命のピンチ!!
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同時刻
炎竜鬼の分裂体に市街地にいるドルシア軍達を任せた愈史郎は地下のジオール軍の基地内を1人移動していた。
作戦司令室やヴァルヴレイヴサイズの機体を整備するピットと順番に各通路や部屋の構造を移動し己の血鬼術で作った紙目を地下通路内にあちこちと貼り付けながら⋯⋯先に進んでいると目の前の自動ドアが開閉し中の様子を見て独り呟く。
「⋯⋯此処は独房か?」
捕虜や犯罪者達を収容する場所に愈史郎は足を踏み入れる
「誰じゃ?」
「っ!?」
(誰かいる!?誰だ!!)
聞こえてきた年老いた声に⋯⋯自分以外の声に愈史郎は驚きの表情で突撃銃を独房の方に向けて一歩一歩声が聞こえてきた方向へ足を進ませる。
愈史郎は突撃銃の銃口を一つずつ独房の格子戸の中に向けて調べていると
「⋯⋯お前さん。何か食べ物は持っておらんかのぅ。」
「っ!?貴様は誰だ!?」
一番奥の方の独房から聞こえてきた声に愈史郎は再び反応する。
奥にいた人物は顔立ちがとても優しそうな白髪頭の老人で愈史郎を見詰めていた。
(何だ?この感覚⋯⋯俺はこの年寄りに始めて会った筈だ⋯⋯だがこの感覚は⋯⋯この息遣いを俺は知っている!!)
向き合う両者は相手がどういう人間か探り合う中で愈史郎は妙な感覚を覚える。その為に次の行動に移すのが老人よりも遅れる。
「判断が遅い!!」
「なっ!?」
瞬きと共に奥にいた老人の姿は消えて気が付いた時には、愈史郎が持っていた突撃銃の銃身を片手で掴まれて残った片手で愈史郎の首を掴まれる。
「ぐっ!!」
(間違いない!?この距離の詰め方⋯⋯それにこの握力⋯⋯とても普通の年寄りの物じゃない⋯⋯これは⋯⋯)
優しそうな顔立ちに似合わない握力で首を掴まれながら愈史郎の脳裏に忘れられない少年の姿が思い浮かぶ。鬼になった妹を連れた変わり物過ぎる鬼殺隊の少年⋯⋯何処からどう見ても田舎育ちの癖にオシャレのつもりなのか両耳に花札の耳飾りが印象的で⋯⋯真剣な表情で日輪刀を持ち自分達の前で鬼舞辻 の鬼と命懸けで戦い⋯⋯目の前の老人と同じ少年がする呼吸法の名は⋯⋯
「⋯水の⋯呼吸⋯⋯」
「っ!!お主、何故知っている!?」
呟きを聞いた老人は目を小さく見開き驚きの表情を愈史郎に見せる。
「っ!?」
驚きの表情を見せた隙を逃さず掴まれた片手を愈史郎は振り解き言う。
「それは俺が聞きたい事だ!?何故貴様が鬼狩りの呼吸法を知っている!?」
「⋯⋯この呼吸法はわしの家に代々受け継がれた呼吸法だ。」
「何!」
「今度は此方が聞こう。お主は何故この呼吸法の名を知っておる。」
「⋯⋯ずっと昔に使っていた奴を知っているからだ。」
(温和な表情と言葉が合ってない老人だ。)
老人の質問に律儀に答えながらも動揺を隠し切れない愈史郎。
「ほぅ⋯⋯」
その返答に納得したのか老人は銃身を掴んだ手を自ら離す。
「⋯⋯⋯お主、名は?」
「先にそっちから名を名乗れ。」
「わしの名は⋯⋯」
名前を名乗ろうとした際にお腹が鳴る音を出す老人。それを聞いた愈史郎は⋯⋯
「⋯⋯⋯カロリーメイトは食べられるか?」
空腹状態の教師や生徒に手渡す予定の保存食を荷物から取り出し老人に手渡す。
「⋯⋯ジオール軍の携帯野戦糧食か?」
老人は渡された保存食を確認すると封を開けて中身のカロリーメイトを食べ始める。
「⋯⋯それジオール軍も採用しているのか。」
「必要なエネルギーを火を使わず素早く補給出来る優れ物じゃ。」
「水はいるか?爺さん。」
「⋯⋯欲しいのぅ。若いの。」
愈史郎は格子戸の内側で保存食を食べてる老人へペットボトルの水を手渡し老人はゆっくりと保存食と水を交互に味わう。
「ふぅ⋯⋯助かったぞ。少年。」
「それはどうも⋯⋯爺さん。アンタは何者でどうしてこんな独房の中に入っているんだ?」
目の前の食事を終えて礼の言葉を言う老人に対して愈史郎は気になる疑問を口にする。
「おっと。空腹だったわしの命を救ってくれた命の恩人に名前を名乗らないのは、申し訳ないな⋯⋯」
老人は優しそうな微笑みを見せつつ愈史郎に佇まいを正して向き合う。
「わしの名前は⋯⋯鱗滝右近次。ジオール軍の軍人だ。最も⋯⋯元と言うべきか⋯⋯」
この老人との出会いが何をもたらすのか愈史郎はまだ知らない。