薩摩ホグワーツのネタツイートを見た結果…「紅魔族に薩摩ソウルをインストールするのは女々か?」「名案にごつ」そんなノリで生まれたネタ。
頭サツマハンな紅魔族をぶち込むだけのお話。

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 リハビリがてら頭の中に降りて来たネタを小説化。ただ、自分は薩摩初心者勢なので薩摩弁に関して未熟なところがあります。ご了承の程よろしくお願いします。なので即チェストは勘弁してくださいお願いします。




1話 アークウィザード(近接特化)

 

 コレは他愛もない、ありきたりでありながらの話。紅魔の里より生まれた少年は、とある冒険者と出会い師事する事となった。

 

──先生!僕はアークウィザードになりたいんです

──そうか、そこまでなろごたっか

──すみません何を言ってるか分からないです

 

 少年は生まれながらにして紅魔族としては劣った魔力を宿していた。他の紅魔族と比べ見劣りする魔力量だったが彼はアークウィザードに憧憬を抱いていたのである。

 

──先生は故郷に帰らないんですか?

──既にけしんだ身。帰っに帰れん

──すみません何を言ってるか分からないです

 

 少年は己が師の事情を聞いた。チキューと言う国のキューシューと言うギルドの出身である事、女神の使命を受けてこの地に舞い降りた事、そして魔王軍との闘いが運命づけられている事を。

 

──先生、剣を振るうだけで本当にアークウィザードになれるんですか?

──知らん。だが、なろごたっとならけしみ物狂いでなれ

──すみません何を言ってるか分からないです

 

 少年は教わった。鍛錬、修練により己が力を高める方法を。杖を手にただ我武者羅に振るう事を。

 

──…もう行っとですか先生

──ああ、行かんにゃならん。自分が骨を埋むっ場所は戦場と決めちょい

 

 別れの時が来た。師は魔王軍戦闘区域の最前線へ行く事となったのだ。少年は様々な事を学び、真似し、鍛えてあげてもらった。だがこれで終わりなのだ。

 

──…最後に1つ聞いていいですか?

──おう、言てみぃ。答えてやろう

 

 泡沫のようなひと時が遂に終わる…心残りが無い訳ではない。だが少年は悲しみをぐっと堪え…最後の我儘を口にする。

 

──チェストってなんです?

──チェストはチェストじゃ。チェストん意味聞くような者はチェスト出来ん

──すみません何を言ってるか分からないです

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 そんな思い出に浸りながら、男はアクセルの街に存在する冒険者ギルドの門を叩く。日課の訓練と趣味の畑いじりを終わらせてから来た為かいつも来る時間帯から少し遅れ気味に来た。

ふと、冒険者達が何か噂話をしているのに気付く。しかもどれも似た内容だ。

 

(今日はやけに騒がしいなぁ…、何かあったんか?)

 

 そう考えていると、何やら困った様子のギルドの女性職員を目にする。見知った仲であるので何か力になれないか話を聞こうと近寄る。

 

「あれ、ルナさんどげんしました?」

「あっ、それがですね…」

 

 そう言いながら職員のルナがギルド内の一点に視線を向ける。ぼちぇっとも同様の場所に目を向けるとそこにはアクセルの街では見かけた覚えのない男女二人組がクエストボードの前で言い争っていた。

 

「ねぇこんなのとかどう?『一撃熊の討伐』なんか私達にピッタリじゃない?」

「馬鹿!初手からこんなヤバそうなクエスト受けようとしてんな!こう言うのはゴブリン退治とか簡単なモノから受けるべきだろ!」

「分かってないわねぇ…この水の女神である私が一緒にいるのよ?そんな簡単なのをチマチマ受けるよりも高難易度クエストを受けて一気に注目を浴びる方が良いに決まってるじゃない!」

「む、確かに…異世界転生お決まりのパターンってヤツか…」

 

 ブツブツと呟く男と自信満々の女性。微笑ましく見えるが会話の内容が所々危うい。

 

「見らん顔ですね。新しゅう入って来た方ですか?」

「はい、期待の新人冒険者達なのですが1人が職業冒険者*1で、もう1人の青い髪をした女性がアークプリーストなのですが…知力が低くて」

「平均より下ちゅう事ですか」

「いえ、純粋に低いんです。致命的なまでに低いんです

「そこまで言うと?」

 

 何回も念押しする程にアークプリーストの女性は知力が低かったのだろう。それを指し示すようにクーロンヒュドラの依頼書を手に取っている。

しかしアークプリーストは大変稀な職業故、ルナはその命を散らして欲しくないのだろう。

 

「どうしましょう…(チラッ)…どこかの親切な冒険者が…(チラッ)…2人の助けになってくださると…(チラッ)…こちらとしては…(チラッチラッ)…嬉しいのですが(チラッ)」

「素直に新人の力になって欲しかと伝ゆっ事はできないのですか?」

 

 

 

  

 

 

 

「少し良いでしょうか新人さん方」

「……同郷(異世界転生者)の方ですか?」

「ん?いや、うちん里ではそげん様相の人は見かけた事は無いと思いますが…」

「あっ成る程。すみませんお気になさらずに」

 

 現れたローブを纏う冒険者に佐藤和真(サトウカズマ)は言葉を漏らす。黒髪と何処か聞き覚えのある方言に日本在住の人と思ったが彼の発言と紅く輝く瞳を見て、異世界人なのだと判断する。

 

「あら、何か私達に用かしら…あっ、そう言う事ね!この女神たる私の威光に惹かれて冒険者パーティーに入りたいんでしょう!」

「いえ純粋にクエストボードの前で陣取られると邪魔なので退いて欲しいだけです」

「あっ、はい」

(異世界生活初日、チュートリアルのようなのが来たと思いきや普通に注意されるとは…)

 

 理想と現実との乖離にカズマは落胆と申し訳なさを感じる。憧れの異世界生活だが簡単に行く筈も無い。その証拠に一文無し+最弱職スタートを果たしている。

世知辛い。世知辛いったらありゃしない。

 

 カズマがショックを受けている中、転生特典として連れて来た(道連れにした)水の女神であるアクアがふと冒険者の男に向けて呟く。

 

「その目はもしかして貴方、紅魔族?」

「よう分かりましたね。その通りです…あー、では紅魔族流の挨拶をば失礼します」

 

 そう一言告げると、彼は両手を壮大に広げたかと思うと無駄にキレッキレな動作で名乗りを上げた。

 

「我が名は『ぼちぇっと』!アークウィザードにして畑弄りを趣味とする者!一子相伝、紅摩ジーゲン・リューの継承者!」

「……ふざけてんの?」

「あっ、お気になさらず。紅魔族特有の挨拶なので」

「あとジーゲン・リューってなに?」

「僕ん師匠が教えてくれた戦闘流派です」

 

 なんか…こう…なんだ?なんだこれは?異世界と言えばこう、エルフとかダークエルフとか獣人(美少女)とか色々あるだろう。それなのに初めての異種族コミュニケーションを果たしたと言うのが紅魔族と言うネタの香りしかしない種族。

この事実に額を抑えながらもカズマは言葉を捻り出す。

 

「成る程。紅魔族が中々愉快な種族っていうのが分かった」

「気に入ってくれたよで何よりです」

(この人は皮肉が通じないタイプなのだろうか)

 

「まぁ、話を聞くにここに来たばかりで何も分からんようでしたので。助言しけ来ました。ある程度の装備が無いと厳しかと思いますので買うんをオススメします」

「買う…買う?……あっ」

「ん?」

「無いです」

「え?」

「お金が…無いんです…」

 

 カズマとアクアは気付く。クエストを受ける以前に装備すら整えてない…そもそも整える為の軍資金すら満足に無かった事に。

その事を伝えるとぼちぇっとは「そっかぁ…無いかぁ…」と空を仰ぐ。恐らく、十中八九呆れられているだろう。カズマ達は申し訳なさの気持ちで一杯になる。

 

「…よかばってん、新人でそん装備じゃ不安です。もし良かれば僕付き添いましょうか?」

「お願いします!(即答)」

「ねぇカズマ、私ってば上級職なのよ?アークプリーストなのよ?別にそこまで必死にならなくてm」

「是非!今後とも!よろしくお願いします!(必死)」

「カズマさん!?」

 

 右も左も分からない自分達を導いてくれる上級職冒険者。名前と言葉遣いが変な所に目を瞑れば優良物件な彼を見逃すほど彼は愚かではない。

ここに『出会って数分の冒険者>女神』の信頼図が完成した。

 

 

 

  

 

 

 

「……あれがジャイアントトードか。本当にでけぇ…」

「ええ、名前ん通り大きいカエルです。繁殖期になっと家畜だけでなく人にも被害が出るんです」

「被害と言うと?」

「丸呑みんされます」

「マジかよ…」

「マジです。体力つけるために餌の多い人里求めやって来るんです」

 

 怖いな異世界…とカズマは心中で呟く。クエスト初の相手はジャイアントトードが選ばれた。

ファンタジーでの最初の相手はゴブリンやスライム辺りが思い浮かぶが、新人冒険者がそれらを相手にした場合ミンチにされる、もしくは溶かされる末路となるだろう。

 

「それじゃ僕はピンチにならん限り手を出さんので、2人とも頑張ってください」

「参加しないのかよ!」

「アレくれならば2人だけでも倒せると思うんで安心してください」

「な、なるほど」

 

 要は教官みたいな役割なのだろうとカズマは察する。彼からジャイアントトードについて教わったが、生態としては地球産のカエルをそのまま大きくしたようなモンスターだ。然程の脅威は無いと判断したカズマは武器*2を手にする。

するとこちらに気付いたジャイアントトードがその巨体を強靭な脚力で動かし、ショートソードを獲物とする冒険者の元へ駆け出す。距離を詰めて来るモンスター、新天地で初めて対峙する敵に佐藤和真(サトウカズマ)は……

 

……カエルを背に逃げ出した。

 

「待って、待って待って!予想以上にデカい!すげぇデカい!」

「カズマ君?」

「俺の武器で勝てそうにないんだけど!怖い!無理!こんな所に居られるか!俺は逃げる!」

「カズマ君!?」

 

 脱兎の如く一目散に情けなく逃げるカズマ想定外の事態に困惑するぼちぇっと。横で腹を抱えて笑うアクア。三者三様の反応を見せる中カズマが叫ぶ。

 

「あああああぁぁああああッ!待って!思った以上に追い付いて来るんだけどコイツ!ちょっと!待って!助けてぇぇぇええええ!」

 

冒険者の姿か…これが?

 

「プークスクス!やばい、超ウケるんですけど!カズマったら、カエルに追われて涙目なんですけど!」

 

冒険者の姿か…これが?(2回目)

方や敵前逃亡。方やその敵前逃亡中の仲間を嘲笑う光景にぼちぇっと唖然とする。更に絶体絶命の相手に要求を呑ませようとするアクアの姿にドン引きの姿勢を見せる。

 

…そんな最中、彼女の声に反応したジャイアントトードがアクアの方を見る。

 

「…アクアさん悪か事は言いません、今のうちに逃げた方が良かです」

「街に帰ったらアクシズ教に入信して1日3回祈りを捧げる事、ご飯の時には私が頂戴って言ったら抵抗せずオカズを渡す事、他には───」

「あ、ダメだ聞いてない(諦め)」

「アクアー!後ろ後ろーー!」

 

 カズマとぼちぇっとが警告するも虚しく、ジャイアントトードはアクアを頬張る結果となった。

 

「アクアーーーーーッ!」

「ぎゃあぁぁぁぁあああ!!カズマさん助けてカズマさぁぁぁぁぁあああああああん!」

「お前食われてんじゃねぇーーッ!と言うか大丈夫なのか!それ溶かされて無いよな!足先からドロドロになってないよな!」

「安心してください、まだ大丈夫です!現状口ん中でヌルヌルになっちょっ以外は害が無かなので、まだ大丈夫です!なんでアクアさん落ち着いてください!」

 

 口内粘液により全身がてかてかしくなるアクア。未だに飲み込まれてはいないが、このままでは胃の中に収まってしまう恐怖のためか顔をぐしゃぐしゃにして喚きを上げる。

 

「大丈夫じゃないんですけどォ!私汚されちゃう!私女神なのに!美しくも聡明な水の女神なのにぃぃぃ!」

「…あの人、思うたより余裕やったりしません?」

「みたいですね。おーい、今助けてやるからなー!」

「早くして早くしてェーーーッ!カズマさーーん!ぼちぇっとさーーーん!」

「と言うわけで先生お願いします」

「人任せ!?…なら仕方なか」

 

 そう呟くとぼちぇっとはおおよそ2尺5寸(75.75cm)程の木製の杖を取り出す。先端が鋭利に削られ、まるで刃物のような独特な形状となっているがアークウィザード用の木杖である。

 

「……あのそれ木刀ですよn「杖です」いやどう見ても木t「杖です」あっはい」

「そいでは…行かせていただきます」

 

 その直後、杖をまるで剣のように持つぼちぇっと。その姿勢は四足歩行の獣のように低く、命を刈り取らんばかりの眼光でジャイアントトードの頸部を見据える。

 

「スゥゥ────」

「あ、あの〜…ぼちぇっとさん?なんで前傾姿勢になってるの?なんで脚を踏み締めてるの?なんで今にも飛び出しそうな勢いで構えているの?なんで杖を間違った持ち方してるn」

 

 

ファ゛イア゛ボォォ゛ォ゛ォ゛ーーーーーッ!

 

「ぎゃぁぁぁぁああああッ!?」

「アクアァァァーーーーッ!?」

 

 

 

  

 

 

「う゛ぇ゛ぇ゛ええええん!死ぬかと思ったぁ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 結果的にアクアは助かった。カエルの首から上をチョンパ(マイルドな表現)する事により、女神は心の傷と引き換えにヌルヌル地獄から解放されたのである。

 

「いやぁ無事で良かったです」

「おいアクアー、泣くのは良いけど助けて貰ったんだからお礼言っておけよ」

「カズマざぁ゛ぁ゛ぁん!この人怖いんですけど!食べられていたとは言え、人に向かって魔法放って来るのおかしいわよ!馬鹿なの!?馬鹿なの!?」

「分かったから落ちt…臭ッッ!?生臭ぇなお前!」

 

 生首カエルの口内から這い出て来た女神を必死になって引き剥がそうとするカズマ。生臭い上に生温かい粘液に顔を顰める。

 

「しかしさっきのが魔法かぁ…いかにも異世界ファンタジーって感じだ!」

 

 ぼちぇっとの剣幕に目を背けつつ、カズマは初めて見る"魔法"に心を高鳴らせていた。あの巨体を持つカエルを容易く倒した上に炎の斬撃と言う一目でカッコいいと分かる魔法。なんと勇者が使うに相応しい技であろうか!ただしぼちぇっとの剣幕に目を背けつつ(2回目)

 

「確か、カズマ君ん職業が"冒険者"でしたよね。レベルが上がれば貯まっていくポイントがあれば他人のスキルを習得すっ事ができますよ」

「それじゃ俺もぼちぇっとさんが使ってた魔法を使えるって事か!」

「そいじゃがです。同じように火ん玉出せるようになります」

 

 ますます目を輝かせるカズマ。ここに来るまでどれだけの苦労があったか…こんな女神(笑)と共に異世界転生を果たした先ではファンタジーなのに現実的な壁に何回もぶち当たって来た。しかしここからだ、ここから真の異世界冒険者生活がスタートするのだ!とカズマは拳を握りしめる。

 

……ところでこの人、火ん玉(火の玉)って言わなかったか?斬撃じゃなくて?

 

「ねぇカズマさん私は反対なんだけど。あんな物騒なのものより、この水の女神たる私に相応しいような魔法を選ぶべきだと思うの」

「うるさい、ようやく異世界ファンタジーらしくなって来た所を邪魔すんな。それに為す術なくカエルに食われてた駄女神はすっこんでろ」

「はぁぁぁ!?この私が役立たずって言いたいの!?」

「まぁアレは不意打ちに近か形ですし、ないも出来んでん仕方なかどですよ」

 

 険悪な空気になりそうな所に、ぼちぇっとが横からフォローを入れる。このままでは殴り合いに発展してしまうと危惧しどうにか良好な関係へ修正させようと庇うような言葉を入れたのである。

 

だが、それが逆に水の女神の逆鱗に触れた!

 

近くで佇んでいたジャイアントトードに向かって駆け出すアクア。2人は制止の言葉を掛けるが彼女に届く事は無い。この屈辱は晴らさねばならない、そしてこの屈辱はジャイアントトードをこの手で倒す事で雪がれるのだ!

 

「神の力思い知れッ!私の前に立ち塞がった事、そして神である私に牙を剥いた事を地獄で後悔しながら懺悔なさい!ゴッドブロォォオッ!*3

 

ぶよん(カエルの腹に拳が沈む音)

 

「…カエルってよく見るとカワイイと思うの」

 

ばくん(頭から食われる音)

 

「アクアーーーッ!ぼちぇっと先生、救助お願いします!」

「いやそれなんですが、もう1匹きちょります」

「なっ!?」

 

 反対側を見るとドスン!と音を立てながらこちらに向かって来るジャイアントトードの姿。同時に2体現れた光景を目の当たりにしてカズマが投げ出そうとした時、ぼちぇっとが声を上げる。

 

「カズマ君、向こうんカエルは任せました!」

「げぇぇえーーーッ!?」

「うおっ、変わった気合いん雄叫びですか?」

 

 アレを倒せと?1人で!?無茶な事を言ってくれる…と内心で舌打ちをするカズマ。アクアを食われた現状で自分にできる事なんて有るわけが……いや、そもそも女神が居ても居なくても問題無いな。

何もしていない彼女に憐みの視線を送りつつ、カズマは剣を握り直す。もう逃げる真似なんてしない。ここからが本当の戦いなんだ。それにぼちぇっとさんは自分に任せたと言ったのだ。そう聞かれたのならば……!

 

「任されたのはいいが、別に…アレを倒してもしまっても構わんのだろう?」

「おお!──良か返事ですカズマ君ッ!」

 

 決まった…ッ!とカズマは誇らしげな表情を浮かべた。日本出身の自分が異世界に行ったら絶対に口にしたい言葉トップ3に入る(独断と偏見)名台詞を言えた事に心の中で歓喜する。

加えてあの様子から察するに相手側には好感触。今俺は異世界生活を謳歌してる!そんな実感を胸一杯にしながらカズマはジャイアントトードに向かって駆け出し、剣を振るう。

 

「うおおおおおおッ!」

 

ぺちん(刃がカエルに当たる音)

 

 軽い音がジャイアントトードの腹に響く。へっぴり腰から繰り出された攻撃はカエルの表皮に軽い傷を付けただけに終わった。

 

「…カエルってよく見るとカワイイと思うの」

 

ばくん(頭から食われる音)

 

「ぎゃぁぁああああああッ!俺までぇぇぇぇぇ!!」

「カズマ君!?」

「助けて!助けてぼちぇっとさん!アクアさんより俺の方優先してぇぇぇえええええ!」

「えぇ…」

 

 不快な口内粘液が全身に纏わりつく感触にカズマはパニックとなる。ヌルヌルするし生臭さいしヌルヌルする。あと生温かい。

そんな状況に対してアークウィザードは木刀…のような形をした杖を振り上げカズマの方向へ向き直る。

 

「それなら今助けますんで、あんまり動かないでください。下手すっと当たりますので」

「早く助け───え、当たるって何が?」

 

キィェエェエ゛ーーーーッッ!

「お゛っ゛(気絶寸前)」

 

 カエルごと当てられる猿叫に意識を失いかけるも、ふと日本での記憶が蘇る。それはアニメやゲームに出て来た侍が扱う剣術。初撃から全身全霊で斬りつける先手必勝が特徴の…

 

(あれ?ジーゲン・リューってか、これ…示現りゅ──)

 

チェ゛スト゛ォオ゛ーーーーーッ゛!

「いやぁぁぁぁあああああああああああッ!」

 

 

 

カズマたちは ジャイアントトード3匹 を討伐した

 

 

「とりあえず今回ん報酬はお二人に多く分くっちゆ事にしましょう…えーと、なので2人とも元気出しませんか?」

「「あ、はい…」」

 

 ドロドロの粘液塗れで1日を終えた2人。思っていたのと違う異世界生活に振り回され疲れ果てたのだろう、ぼちぇっとの気遣いを素直に受け入れる事にした。

 

「私…女神なのに……カエルに……」

「ううむ、とにかく誤チェストにならんで良かったです」

「…誤チェストってなに?」

「誤チェストは誤チェストですよカズマ君」

「いや結局分かんねーよ!」

 

 誤チェストとは即ち誤射に似たアレなのだろうか、カエルではなく自分がチェストされる側になる意味合いなのだろうか?そう考えているといつの間にか立ち直っていたアクアが声を上げる。

 

「とにかく明日の事は明日から頑張れば良いわ!すみませーん、キンキンに冷えたシュワシュワお願いしますー!」

「お前な、ぼちぇっとさんの奢りだからって少しは自重しろよな!」

「えっ」

 

 何故か奢られる前提の話に困惑するぼちぇっと。それを尻目にカズマは言葉を続ける。

 

「とにかく、今回ので分かったが俺達のパーティはハッキリ言って駄目だ!こんな寄生プレイ戦法しかできないなんて俺は嫌だぞ!仲間だ…!俺達には強い仲間が必要だ…ッ!」

「でもカズマ、私アークプリーストよ?加えてぼちぇっとさんだってアークウィザードで上級職2人。これ以上仲間は必要は無いと思うのよ?…カズマが最弱職だからって気に病む必要は無いと思うわよ」

「俺1人だけに落ち度があるような言い方やめろ。お前もお前で上級職の癖してカエルに食われてただけで何の役にも立ってないだろ、なぁーにが水の女神だよ!お前の無駄に高いステータス表記は飾りなのか!自己申告によるなんちゃってプリーストなのか!?」

「うわぁぁぁああッ!カズマが!カズマがいけないこと言ったァァァァ!」

 

 アクアにより両肩を掴まれ揺さぶられるが、どうにか引き剥がす。

 

「とにかく後2人!囮兼盾役と火力による後方支援役が必要!そのメンバーが加れば十分に戦える筈だ!」

「な、成る程…!流石カズマね。ニート生活で無駄に培ってきた無駄な経験がここぞとばかりに発揮されてるわ!」

「ははは!……それ褒めてんの?」

 

「良か意気込みです…それじゃ2人ともきばってくださいね」

「「えっ」」

「ん?」

 

 互いに齟齬があるのか疑問の声を漏らす。そこにアクアが言葉を投げかけた。

 

「あ、あれ?えっと…ぼちぇっとさんは私達のパーティメンバーでいいのよね?」

「はい。正確には臨時んメンバーですね」

「正式じゃなくて?」

「"非"正式ですね」

「おっとぉ?」

 

 あれ?このまま入る流れなのでは?メイン火力だったこの人が自分達の指導者兼仲間になってくれる流れだったのでは?そんな疑問を答えるように魔法職の彼が口を開く。

 

「正直申しますと…その、2人とも弱かなんで組むのは難しかです」

「「ッァ!(絶望)」」

「純粋にこう、実力と装備が貧弱です。悪うゆとお荷物です」

「「悪く言わないで欲しかったッ!」」

 

 直球な評価を受けて打ちひしがれる2人。片や転生者、片や水の女神と肩書きだけなら強そうに見えるが現実ではそれと対極に存在するような立ち位置であった。

他にもパーティ入りを断る理由があるのか、ぼちぇっとが更に言葉を紡ぐ。

 

「加えて僕ん戦法は相手の懐へ突っ込んで攻撃するんでお二人方のフォローが難しいんです」

「魔法職ですよね?」

「どげんしても敵を前にすっと昂ってしもて相手ん頭蓋目掛けて杖振るってしまうんです」

「魔法職なんですよね!?」

「せめて2人があっ程度強くなってくだされば、僕も遠慮なく敵を首獲りにいけるんですが」

「なんで前衛職やってないんだよ!」

「それじゃ相手をチェストできんじゃなかと!」

もう薩摩アークウィザードにでも改名してろ!

 

 

 後にこれが冒険者カズマ達と頭のヤバい紅魔族(頭が薩摩藩なアークウィザード)と揶揄されしぼちぇっととの運命の出逢いと後世に言い伝えられし伝説の幕開けとなる……かもしれない。多分、きっと、メイビー。

 

 

 

*1
【冒険者】初期/基本職とされており、最弱職と揶揄されている。しかし全ての他職業スキルを習得可能とされる

*2
ぼちぇっとから借りたショートソード。名前は無銘ぬるぬる

*3
【ゴッドブロー】とは女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳。相手は死ぬ※本人談




人物紹介

『ぼちぇっと』
頭が薩摩思考の紅魔族。異世界転生者と言う訳ではなくれっきとした現地民。九州出身の異世界転生者の元で剣を教わった影響で貧弱な紅魔族から薩摩的紅魔族へアップグレードを果たし、紅摩式ジーゲン・リュー(示現流)で敵を首チョンパor頭蓋粉砕マシーンと化す。
外見と言動、未熟な薩摩弁から温厚に見られがちだが中身はゴリゴリの薩摩隼人。敵の頭蓋目掛けて杖を振るうし、ヒャッハーして首置いてけするのは珍しくない。ちなみに使う魔法はほぼ全てが飛ぶ斬撃と化す。
年齢としては成人済み(20歳代)。趣味は畑いじり。

『ぼちぇっとの師匠』
薩摩紅魔族を生み出した元凶


Q.ぼちぇっとの言うチェストってどう言う事?カズマが言った通りに前衛職でも良いのでは?
A.ぼちぇっとの言うチェストは魔法を前提としたチェスト。剣士、ソードマスターと言った前衛職のチェストはチェストにあらず。彼の言うチェストは魔法がなければそれは未チェストなのである(本人談)

Q.ぼちぇっとは頭おかしいんですか?
A.それはそう


続く…のか?

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