映画のネタバレあります。気にする人は映画見た後に見てね。
──これは「記録」だ。一人の「男」の。あの吐き気を催す『邪悪』さを持った男のものだ。
いや、これを記録と呼んではいけないのかもしれない。記録とは「誰か」に見せるためのものだ。少なくともぼくはそう思っている。
ぼくはこれを誰かに見せるつもりはない。
誰にも覚えられず、ひっそりと人々の記憶から消えていく。
それが「ヤツ」の「最も嫌いなこと」だろうから。
殺された「彼ら」への、ぼくが送れる唯一のものだろうから。
──二〇二X年。
露伴は東京のとある美術館を訪れていた。
「そろそろ時間だな……」
露伴は自身の腕時計に目をやる。約束した人物との、待ち合わせ時刻が近づいていた。
*
前日。
露伴は、東京の
「いやあ……まさか、あの「岸辺露伴」先生に取材していただけるなんて。今日はよろしくお願いします」
そう言って金髪の男──カミキヒカルが手を差し出す。
「ああ。次の「短編」に出てくるキャラが「代表取締役」でね……こちらこそ今日はよろしく頼む。早速で悪いんだが、時間が押していてね。この後「荷物」が届くんだ」
露伴はカミキの手を握ると、手早く取材に取り掛かろうとする。
「それは大変ですね。ですが、露伴先生のお住まいは東京ではなかった気が……こちらで受け取るのですか?」
「ああ。そっちの方が都合がいいらしい……いやそうじゃない。時間がないんだ。そろそろ始めさせてくれ」
「おっとすいません、そうでしたね。では……何から答えましょうか?」
「そうだな……まずは────」
「────まあこんなもんかな。本当は、もう少し聞きたいこともあったが……ところで君、明日の予定はどうだ?」
取材が終わり、露伴はそう尋ねる。
「明日ですか? そうですね……午前中なら空いていますが。何か御用ですか?」
「ああ。近くに良い「美術館」があるんだ。せっかくなら話でもしながら、と思ってね。それに……美術館の「保管庫」。気にならないかい?」
「保管庫ですか?」
「そうだ。ちょっと伝手があってね。見たくないかい?」
「確かに少し気になりますね……わかりました。それならぜひ」
「決まりだ」
そう言って露伴は席を立つ。そこに「ああ!」と何かを思い出したように、カミキが尋ねる。
「露伴先生、最近女優が「行方不明」になったのを覚えていますか?」
「行方不明ィ? ……ああ、あったな。そんな事件」
「何か感じたことはありませんでしたか?」
「いや。特には何も感じなかったな。よくあるやつだろう」
それを聞いたカミキは、何かを探るように露伴を見つめる。その目には漆黒の星が宿っているようだった。
数秒そうした後。
「……そうですね。よくあるやつです」
「なんだ急に。君ちょっと変だぞ……まあいい。明日もよろしく頼む」
「ええ。
*
「すみません。遅れましたか?」
そんな声に露伴は顔をあげる。
「いや時間通りだ。早速、中に入ろう」
そう言って二人は美術館に入っていくのだった────。
「ここが保管庫ですか……」
ある程度館内を見た二人は、保管庫に来ていた。露伴が先導するように前を歩く。
「そうだな。ここが「目的地」だ」
「目的地? まあ確かに、「ここ」が一番メインですからね。今日の」
「そしてここが「終わり」でもある」
「終わり?」
露伴はしばらく沈黙した後、言う。
「君、
そう言いながら振り向いた時だった。
「グッ!」
露伴の首筋に何かが打ち込まれる。
「驚きましたね……たった一日で気づいたんですか?」
カミキの手には注射器があった。
「いや。一日で気づいたわけじゃあないさ……」
「? まあいいでしょう。……ああ、安心してください。「筋弛緩剤」の一種です。
「星野アイのか?」
「そうです。一時期から、全然情報が掴めなくなりまして……大変だったんですよ。あなたですよね?」
「なんのことだかなァ……」
「しらばっくれないでください。あなたと会ってから、彼女は少し用心深くなった。それまでは簡単に騙せたのに……まあいい。教えてください。彼女のこと」
「そ、それを教えれば、ぼくのことは
震えた声で露伴が尋ねる。
「そうですね。あなたの「命」もずいぶんと重そうですが……今は彼女です。僕は彼女の「命」が欲しい」
「そうか……」
露伴は、そこで一度言葉を区切ってから
「
「なっ!!」
「この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ……」
「あなた自分が、今どういう「状況」にいるのかわかってるんですか?」
それを聞いた露伴は、震える膝を押してゆっくりと立ち上がる。
「ああわかってるよ。それに言っただろう、ここが「終わり」だと」
「強がりを……肩でも貸しましょうか?」
「いいや……必要ないな。勝つ時っていうのは……こんな風に、相手を見下しながら勝つもんだからな」
「勝つ? ここからどうやって勝つって言うんです? ろくに準備もできていないでしょうに」
露伴はニヤリと笑う。
「準備ならできたさ……たくさんな」
「たくさん? まるで何日も時間をかけてきたような言い方ですね……」
「ああそうさ。何日もかけてきた」
「そんなはずはないッ! あなたは昨日、僕を疑っていない様子だった! 確かにあなたの人を見る目はすごい。だが人を欺く才能は大してないはずだ! ましてや僕を!」
「そうだな……確かにぼくに演技の才能はない。だから
カミキは焦ったように叫ぶ。
「それは知っていた! 催眠術なのか、はたまた超能力なんていう未知のよくわからない「力」なのか、それはわからないが! あなたが「何か」を持っているということはわかっていた……だから対策しておいたんだ! どんな能力にしろ、使うのなら僕の意識がなくなる瞬間があるはずだ! だからチェックした! 自分の「脈拍」、「時計の秒針」……どれも異常はなかった!」
「ああ気付いていたよ。君がぼくの「能力」に気付いてるってのはなァ……だから書いたのさ。『今日一日、カミキヒカルを疑わない。コイツの情報も一日忘れる。』とね」
「まさか……」
「見抜けるわけないよなあ! だって本当に
「クソ……だがここから何ができる? そんなふらふらの状態で……一体何ができるっていうんですか? 露伴先生」
露伴は、なんとか息を整えながら答える。薬が回っているようだっった。
「ハァ……ハァ……。ところで君、『この世で最も黒い絵』って知ってるか?」
「突然なんの話です? ……知りませんよ、そんなもの」
「苦労したよ。あれから随分と手間がかかった。だがようやく見つけてね……届けてもらった。昨日ね」
「…………………………」
「君……「後ろ」気をつけた方が、いいんじゃあないか?」
そう言われたカミキは後ろを振り返る。
「なっ、なんだこれはァァァーーーッ!! くそッ! やめろ離せッ!!」
カミキの周りには、彼が今まで関わってきた死者がいた。
「だんだん視界がぼやけてきたな……今の君の顔が見れないのが唯一、残念な点だよ。……じゃあな」
そう言って、露伴は気を失ったように倒れたのだった。
──これがヤツとの全てだ。これ以上のものは何もない。
いいか? これっきりだ。「アイツ」のために動くのはこれで最後にする。そもそもぼくは、こんな事をするタイプじゃあないからな……。
あの男はとんでもないヤツだ。吐き気を催す邪悪ってヤツだ。だが。だからと言って、ぼくが動くことはない。ぼくは「刑事」でもなければ「探偵」でもない……「漫画家」だからな。
確かに、ぼくだって善良な一般市民だ。何も知らない状態で、ヤツのおぞましい所業を知ったとしても、不快感を覚えるだろう。被害者のことも偲ぶだろう。だが、自分から動くってことはないと思う。
今回は……そうだな……。こういう時は、なんていうのが正解か……。
そうだ! きっと「彼」ならこういうだろう。
『
それがヤツの敗因だよ。
ここで『ココロジョジョル(岸辺露伴は動かないver)』が流れる。
ということで映画記念です。
いやね? 本当はカミキヒカルについては、書かないつもりだったんですよ。情報少ないし、「リアリティ」がないかなって。でもまあネタが思いつかなかったので書きました。なんか全然違う感じだったら、「全然違うやないか!」と馬鹿にしてください。
みんなも映画見よう!
ちなみに原作知ってる?
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どっちも知ってる
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推しの子だけ
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岸辺露伴だけ
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どっちも知らない