岸辺露伴は動かない  ──曹柱石の女──   作:初心者なの

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映画のネタバレあります。気にする人は映画見た後に見てね。


岸辺露伴 ルーヴルへ行く 今週金曜公開!【めでたい】

 

 ──これは「記録」だ。一人の「男」の。あの吐き気を催す『邪悪』さを持った男のものだ。

 

 いや、これを記録と呼んではいけないのかもしれない。記録とは「誰か」に見せるためのものだ。少なくともぼくはそう思っている。

 

 ぼくはこれを誰かに見せるつもりはない。

 

 誰にも覚えられず、ひっそりと人々の記憶から消えていく。

 

 それが「ヤツ」「最も嫌いなこと」だろうから。

 

 殺された「彼ら」への、ぼくが送れる唯一のものだろうから。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──二〇二X年。

 露伴は東京のとある美術館を訪れていた。

 

「そろそろ時間だな……」

 

 露伴は自身の腕時計に目をやる。約束した人物との、待ち合わせ時刻が近づいていた。

 

 

 

 

 前日。

 露伴は、東京の()()()()()()()に足を運んでいた。

 

「いやあ……まさか、あの「岸辺露伴」先生に取材していただけるなんて。今日はよろしくお願いします」

 

 そう言って金髪の男──カミキヒカルが手を差し出す。

 

「ああ。次の「短編」に出てくるキャラが「代表取締役」でね……こちらこそ今日はよろしく頼む。早速で悪いんだが、時間が押していてね。この後「荷物」が届くんだ」

 

 露伴はカミキの手を握ると、手早く取材に取り掛かろうとする。

 

「それは大変ですね。ですが、露伴先生のお住まいは東京ではなかった気が……こちらで受け取るのですか?」

 

「ああ。そっちの方が都合がいいらしい……いやそうじゃない。時間がないんだ。そろそろ始めさせてくれ」

 

「おっとすいません、そうでしたね。では……何から答えましょうか?」

 

「そうだな……まずは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────まあこんなもんかな。本当は、もう少し聞きたいこともあったが……ところで君、明日の予定はどうだ?」

 

 取材が終わり、露伴はそう尋ねる。

 

「明日ですか? そうですね……午前中なら空いていますが。何か御用ですか?」

 

「ああ。近くに良い「美術館」があるんだ。せっかくなら話でもしながら、と思ってね。それに……美術館の「保管庫」。気にならないかい?」

 

「保管庫ですか?」

 

「そうだ。ちょっと伝手があってね。見たくないかい?」

 

「確かに少し気になりますね……わかりました。それならぜひ」

 

「決まりだ」

 

 そう言って露伴は席を立つ。そこに「ああ!」と何かを思い出したように、カミキが尋ねる。

 

「露伴先生、最近女優が「行方不明」になったのを覚えていますか?」

 

「行方不明ィ? ……ああ、あったな。そんな事件」

 

「何か感じたことはありませんでしたか?」

 

「いや。特には何も感じなかったな。よくあるやつだろう」

 

 それを聞いたカミキは、何かを探るように露伴を見つめる。その目には漆黒の星が宿っているようだった。

 数秒そうした後。

 

「……そうですね。よくあるやつです」

 

「なんだ急に。君ちょっと変だぞ……まあいい。明日もよろしく頼む」

 

「ええ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「すみません。遅れましたか?」

 

 そんな声に露伴は顔をあげる。

 

「いや時間通りだ。早速、中に入ろう」

 

 そう言って二人は美術館に入っていくのだった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが保管庫ですか……」

 

 ある程度館内を見た二人は、保管庫に来ていた。露伴が先導するように前を歩く。

 

「そうだな。ここが「目的地」だ」

 

「目的地? まあ確かに、「ここ」が一番メインですからね。今日の」

 

「そしてここが「終わり」でもある」

 

「終わり?」

 

 露伴はしばらく沈黙した後、言う。

 

「君、()()()()()()()()()()()?」

 

 そう言いながら振り向いた時だった。

 

「グッ!」

 

 露伴の首筋に何かが打ち込まれる。

 

「驚きましたね……たった一日で気づいたんですか?」

 

 カミキの手には注射器があった。

 

「いや。一日で気づいたわけじゃあないさ……」

 

「? まあいいでしょう。……ああ、安心してください。「筋弛緩剤」の一種です。()()()死んだりはしませんよ。あなたには、頼みたいことがありましてね……アイさんの情報を教えて欲しいんですよ。どこに住んでるのか、とかね」

 

「星野アイのか?」

 

「そうです。一時期から、全然情報が掴めなくなりまして……大変だったんですよ。あなたですよね?」

 

「なんのことだかなァ……」

 

「しらばっくれないでください。あなたと会ってから、彼女は少し用心深くなった。それまでは簡単に騙せたのに……まあいい。教えてください。彼女のこと」

 

「そ、それを教えれば、ぼくのことは()()()()()()()()()?」

 

 震えた声で露伴が尋ねる。

 

「そうですね。あなたの「命」もずいぶんと重そうですが……今は彼女です。僕は彼女の「命」が欲しい」

 

「そうか……」

 

 露伴は、そこで一度言葉を区切ってから()()

 

()()()()

 

「なっ!!」

 

「この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ……」

 

「あなた自分が、今どういう「状況」にいるのかわかってるんですか?」

 

 それを聞いた露伴は、震える膝を押してゆっくりと立ち上がる。

 

「ああわかってるよ。それに言っただろう、ここが「終わり」だと」

 

「強がりを……肩でも貸しましょうか?」

 

「いいや……必要ないな。勝つ時っていうのは……こんな風に、相手を見下しながら勝つもんだからな」

 

「勝つ? ここからどうやって勝つって言うんです? ろくに準備もできていないでしょうに」

 

 露伴はニヤリと笑う。

 

「準備ならできたさ……たくさんな」

 

「たくさん? まるで何日も時間をかけてきたような言い方ですね……」

 

「ああそうさ。何日もかけてきた」

 

「そんなはずはないッ! あなたは昨日、僕を疑っていない様子だった! 確かにあなたの人を見る目はすごい。だが人を欺く才能は大してないはずだ! ましてや僕を!」

 

「そうだな……確かにぼくに演技の才能はない。だから使()()()()()()()()

 

 カミキは焦ったように叫ぶ。

 

「それは知っていた! 催眠術なのか、はたまた超能力なんていう未知のよくわからない「力」なのか、それはわからないが! あなたが「何か」を持っているということはわかっていた……だから対策しておいたんだ! どんな能力にしろ、使うのなら僕の意識がなくなる瞬間があるはずだ! だからチェックした! 自分の「脈拍」「時計の秒針」……どれも異常はなかった!」

 

「ああ気付いていたよ。君がぼくの「能力」に気付いてるってのはなァ……だから書いたのさ。『今日一日、カミキヒカルを疑わない。コイツの情報も一日忘れる。』とね」

 

「まさか……」

 

「見抜けるわけないよなあ! だって本当に()()()()んだから!」

 

「クソ……だがここから何ができる? そんなふらふらの状態で……一体何ができるっていうんですか? 露伴先生」

 

 露伴は、なんとか息を整えながら答える。薬が回っているようだっった。

 

「ハァ……ハァ……。ところで君、『この世で最も黒い絵』って知ってるか?」

 

「突然なんの話です? ……知りませんよ、そんなもの」

 

「苦労したよ。あれから随分と手間がかかった。だがようやく見つけてね……届けてもらった。昨日ね」

 

「…………………………」

 

「君……「後ろ」気をつけた方が、いいんじゃあないか?」

 

 そう言われたカミキは後ろを振り返る。

 

「なっ、なんだこれはァァァーーーッ!! くそッ! やめろ離せッ!!」

 

 カミキの周りには、彼が今まで関わってきた死者がいた。

 

「だんだん視界がぼやけてきたな……今の君の顔が見れないのが唯一、残念な点だよ。……じゃあな」

 

 そう言って、露伴は気を失ったように倒れたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──これがヤツとの全てだ。これ以上のものは何もない。

 

 いいか? これっきりだ。「アイツ」のために動くのはこれで最後にする。そもそもぼくは、こんな事をするタイプじゃあないからな……。

 

 あの男はとんでもないヤツだ。吐き気を催す邪悪ってヤツだ。だが。だからと言って、ぼくが動くことはない。ぼくは「刑事」でもなければ「探偵」でもない……「漫画家」だからな。

 

 確かに、ぼくだって善良な一般市民だ。何も知らない状態で、ヤツのおぞましい所業を知ったとしても、不快感を覚えるだろう。被害者のことも偲ぶだろう。だが、自分から動くってことはないと思う。

 

 今回は……そうだな……。こういう時は、なんていうのが正解か……。

 

 そうだ! きっと「彼」ならこういうだろう。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 それがヤツの敗因だよ。




ここで『ココロジョジョル(岸辺露伴は動かないver)』が流れる。





ということで映画記念です。

いやね? 本当はカミキヒカルについては、書かないつもりだったんですよ。情報少ないし、「リアリティ」がないかなって。でもまあネタが思いつかなかったので書きました。なんか全然違う感じだったら、「全然違うやないか!」と馬鹿にしてください。



みんなも映画見よう!

ちなみに原作知ってる?

  • どっちも知ってる
  • 推しの子だけ
  • 岸辺露伴だけ
  • どっちも知らない
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