3つの願い事を叶える魔法のランプ
俺は「無敵の人」を願った。
しかしまぁオチなどというのはどこかで使われてそうである。
ひょんなことから魔法のランプを手に入れた。
こすってみると、中からどこかで見たような青い肌の魔神が現れた。アラビア風なのはもはや様式美なのだろう。
「よくぞ目覚めさせてくれた。3つの願いごとを叶えよう。最初の願いごとを言え」
ふむ、余計な御託とやりとりがないのは助かる。こちとらコミュ症だし魔神相手とはいえ会話はできるだけ避けたい。
だいたいこういう3つの願い事には罠があるものだ、詳細を考えすぎてもつまらない。質問したら質問に答える事が1つ目の願いになるなんてオチはできるだけ避けたい。
「無敵にしてくれ」
「よろしい。1つ目の願いは叶えられた」
すると俺の体が虹色に輝きだした。まさに無敵の人である。いや、そうなのか?どこからともなくハイテンションのやかましい曲が鳴り響いている。どうやら脳に直接聴こえているようだ。
俺は街に出た。周り中が俺を注目している。まぁそうだろう。だって虹色に輝いているのだから。
試しに壁に触れたが何も起きなかった。強く体当たりしたら簡単に粉砕できた。俺に怪我はもちろんない。
とりあえず、走ってみる。俺を妨げるものは何もなかった。車をはねとばし、建物を突き破った。まさに無敵の人である。楽しい。
しかし、脳内に響く音楽だけがやかましい。
とにかく今は無敵を楽しみたい。ぜんぜん疲れることがないので、俺は道路の車を跳ね飛ばしつつ、賑やかな繁華街に出た。連休中ということもあってリア充であふれかえっている。
俺は両手を広げてできるだけ人を接触するように商店街を走り抜けた。
人がゴミのように空中に舞っては倒れていく。
俺が強すぎるせいか接触した感触などはほとんどなく、空気の中を走っている時とあまり変わらなかった。
大騒ぎになっているだろうが、ぜんぜん俺には聴こえなかった。
何しろ頭の中には無駄にハイテンションな音楽が鳴り響いているのだから。
せっかくの力なので、革命でも起こそうかと都心の行政施設まで走っていった。この頃には政府は俺のことも気が付いたらしい。空にはヘリコプターが何台も飛んでいるし、パトカーなども集まってきていた。
なかなか楽しい。
人類vs無敵の俺。
結果は俺の圧勝だった。パトカーを跳ね飛ばしてあらかた片付けると、俺の周りに近づくものはいなくなった。
遠くから砲撃があったが、もちろん無傷のままだった。
行政施設を破壊して回る。高層ビル群が崩れ落ちていく。あたりは瓦礫の山になった。とんだ八つ当たりで災難だと思うが、これも何かの運命だろう。諦めてもらうしかない。
俺としてはストレスがだいぶ発散されてきてすっきりした。
もうそんなに暴れまわりたい気分ではない。家に帰ってお茶でもゆっくり飲みたかった。
テクテクと歩いて帰る。何しろ乗り物に乗ることすらできないのだからしょうがない。
空を飛んでいるヘリが気になった。試しに落ちている石を投げつけたが、遠投力は人並しかなかった。
頭の中に鳴り響く音がうるさくて気になってきた。
俺の二つ目の願いは、このうるさい音を消してもらうことに決めた。とんだ余計なサービスである。ついでにチカチカと輝くこの虹色の表現もやめてもらおうか。
もうちょい静かな感じの大人びた無敵の人になりたいと思う。
家にたどり着く。 魔法のランプは元の位置にあった。
俺は魔法のランプを手に取った。
すると魔法のランプが砕け散ってしまった。
頭の中のやかましい音楽は今も鳴り響いている。
(完)
【あとがき】
頭にひらめいた時は、①マリオスター②ゴルゴみたいな感じにして
3つ目で、いわゆる「無敵の人」社会的にもたざる人=元の自分
みたいなオチにしようと思ったのだけど、サクッと終わらせたかった。