艦娘生活1日目   作:山頭

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視点と回想だから、まだあと二人。
頑張ります。



研究員視点

 

「未確認の艦娘?」

 

研究室にて、起床して早々、唯一の私より年上の研究員から、伝言が伝えられた。

まぁ、起床早々と言っても夕方なのだが…。

 

「そうだ。大本営からのお達しで、ここに行って欲しい…まぁ、行けって事だ。」

 

「はい。わかりました。」

 

「これ、持ってって。」

 

「はい。」

 

「軍から車、貸してもらえたから。」

 

「了解です。」

 

未確認の…ねぇ。

艦娘だって元は未確認生物だっていうのに、おかしな話だ。

 

そんで車…ねぇ………どれだけの用事なのか、皆目見当もつかない。

 

車といえば………。

この数年で、どれだけの常識が作られたのだろうか…そして、どれだけ壊されたのだろうか。

 

一番分かりやすいのは、結婚相手に求める条件に強さを最も重視するようになったこと…かな?

もし、深海棲艦が来ても…ってことだろう。

そんなこと、無意味だって分かってるだろうに。

たが、「こうしたから…。」と、いう安心感が欲しくてそんな事をする。

本当は、何があっても自分を守ってくれることが一番大切なのに。

瓦礫をどけるだけの力があっても、逃げられたらなんの意味も無い。

自分がどれだけ危険な目に遭っても、それがどんなことであっても助けたいと考えてくれる人…そんな人を選んだ方がいいのに。

…まぁ、私がゴリゴリのマッチョだったらこんな事思わないだろう。

………私には関係ない事だが。

 

普段は一台も停まっていない、無駄に大きい駐車場に着いた。

分かりやすく…なんて考えられてはないだろうが、出口の近くに、いかにも燃費のよさそうな車に

軍に貸与された車に乗り込む。

車なんてもの、海が人類のものではなくなってからは、軍が所持しているもの以外、動いている様子を見てことが無い。

道路は荒れ気味。でも、前にも後ろにも車は無い。そして、対向車がいない。

運転しているのに、考えることが少なくなる。

無駄に思考がよくまわる。

 

 

ヤツらは…。

艦娘は…。

調べれば調べるだけで特異な存在だと分かる。

ちょっとした儀式で、人間の何百倍の強度、筋力。

いや…あれは馬力とすら言える。それほどの力になる。

そして、あの小ささ。

人類の兵器が対応しきれなかった大きさ。

あれがもし、人類に反旗を翻せばどうなるか、一瞬で人類はこの世から消えてしまう。

一人残らず、そう言っても良い。なぜなら艦娘にとって、人間の食料は生きる為に必須ではないのだから。もし、艦娘が生物らしい生物なら、自然というものが生きていく上で必須だろう。

だがそうではない。

洋上へ出て、敵を撃つ。これには、『補給』という行為が必要だ。しかしこれは、最悪一週間以上しなくとも行動が出来る。

つまり、艦娘には人類を確実に絶滅させる"手段"がある。

我々人類は、艦娘がその気にならない事を祈るしかない。そのはずだった。そのはずだったのだ。

そうはならない。ならなかった。

それは何故か。私には分からない。

だが、神という存在が居ると仮定するならば話は変わってくる。

神が、人類を存続させようとした。それならば艦娘という存在がありながら人間が存続できている事にそれらしい理由ができる。

それほどなのだ。それほど艦娘という存在は、それほどまでに人類にとって都合の良い存在になっているのだ。

人類が絶滅しない。そのためには艦娘が人類を攻撃できない理由がいる。

だからこそ、艦娘とは、元人間かつ、人外でないといけない。

そうでなくては人類が今を生きている理由がない。

やはり神は完璧なのだとそう思わせられる。

こうでなくては、しんかいせいかんに滅ぼされたか、艦娘に滅ぼされているからだ。

元人間であるということは、艦娘は生まれながらにして人質が居るという事になる。

人間の為に戦う理由がある。

だがなんとも言えない。

ここまで考えて、余計に深海棲艦を生み出した理由が分からない。

………やはり神は居ないのか?

ま、ここまでだな。

他には………。

名称…か………。

 

ヤツはレディの様に扱え。だからこそ艦娘という名前なのだと。

初めてヤツに艦娘という名前を付けた人は素晴らしい感性をしている。

化け物がすぎると、それがどんな形をしていても化け物は化け物だ。

とても、女性になんて思えない。

恐れて平服するか、その力を恐れるが余りに、支配しようとする…。

この二つに一つだろう。

人類の理解を超える、化け物の対応なんて、そんなものだ。

それを艦娘とい名前をつける事で女性の様に扱うように、対等に見るように、させる。つまりは、元人間の存在にとって、正しい扱いをさせる。

完璧な名前だ。名付け親の感性の優秀さが分かる。

圧倒的な力に恐怖せず。また、これから艦娘と関わる人間に対して支配も恐怖も感じない様にする。素晴らしい名前だ。

 

 

 

さて、指定された鎮守府に近づいてきたが…。

最近作られた鎮守府らしく、駐車場が無い。

いや、無いと勘違いするほどに小さいのか?

だとすると何処かに入り口が………。

 

あった。

 

入って…良いのかな?

………。

まぁ、ダメでも持たされた紙見せればどうにかなるか。

 

というわけでハンドルを切り、鎮守府の駐車場へと入る。

車止めは四台分…まぁ、妥当じゃないか?

車が軍だけの物になってから立った建物なんて、これ以外知らないが…まぁ、こんなもんだろう。

軍でも、動かせる車は少ないだろうし。

それか………いやこれか、人集まるんだったらもっといい場所がそれなりに近くにあるわ。うん。これだな。

あんまりに行動範囲が狭まったせいで、車なら30分もかからない場所に、デカい駐車場があるデカい鎮守府があるのを忘れてた。

あったなぁ…ここにデカい駐車場作らない理由。

うーん…。やっぱり常識が壊れてる。

なんだっけ?マインドファック?そんな感じ。

 

…おっと、久しぶりの運転だからなぁ。

集中して停めよう。

………ケツから入れとこ。

 

ふぅ…。

よし。なんとか停めれたぞ。

久々すぎてなんかびっくりするぐらい難しかった…。

思いつきでケツいれるんじゃなかった………。

 

車の鍵を閉めてと…。

………。

さて…どうしたものか………。

入り口を探して入るか?いやでもなぁ…。

艦娘と顔合わせるのはなぁ…。

妻が死んだの、艦娘の攻撃に巻き込まれたからだしなぁ…。

なんとか会わずに済ませられれば───

 

「なにか用事でもありましたか?」

 

「あぁ、いや。その、ここの提督さんとお話しに来たんだけど…。」

 

「お仕事でですか?でしたら。アポイントメントや、なにかここに来る事が仕事の証明ができる書類などはありますか?」

 

「あっ、この…紙を渡されました。」

 

「これ…はい。しれーかんのお部屋までお連れしますね。」

 

「よろしく頼むよ。」

 

「はい。」

 

と、笑顔で返事をし、先導する少女。

まるでフラグを回収したかのような登場の仕方だったが、びっくりするぐらいしっかりした子で、変なバイアスが消えかけた。というか一瞬、ちゃんと消えた。

 

「なにか大変な事でもありましたか?」

 

「え?…あぁ、新しい…仲間、が増えるかもしれないんだ。」

 

「そうなんですね!楽しみです!」

 

「あぁ、そうだね。」

 

「はい!」

 

う…仲間かどうかを見極めに来たんだ…。

むしろ大本営的には敵かどうかを見極めさせたいんだ。うちの研究所に話が来たってことは…。

うーん…。あまり期待をしないように言おうか…。

いや、やめておこう。

 

「着きました。」

 

「ありがとう。」

 

「あっ!ちょっとお待ちください。…しれーかん。失礼します。」

 

提督さんの居る部屋まで来たらしい。

部屋の扉をコンコンとノックをして、部屋の中へと入っていく、しっかりとした少女。

少しの間待っていると。

 

「すみません。お待たせしました。入って頂けますか?」

 

「はい。失礼します。」

 

扉が開き、空いた隙間から顔が見える。

若い男。

白い軍服を身につけている。

…なかなか様になっている。が、やはり若すぎる。少し浮ついた空気感を感じる。

扉を全開にして、それを押さえている。

このまま入れば良いのだろう。

 

入ってみれば、シンプルすぎる内装。

辛うじて机はあるが、それ以外がない。

…いや、積まれている段ボールは家具としてカウント…いやしないしない。しないだろう普通は。

え?これが提督さんのお部屋?

ま、マジか…。

 

「すみません…まだ、ちょっとバタバタしてて…。」

 

「いえ…大丈夫です。」

 

何が大丈夫なのだろうか?

…自分で何を言っているのか分からない。

というか早めに終わらせたい。

だって椅子とかソファとか無いし。

隅で、しっかりとした少女が立ってるし、提督さんの姿勢的に胡座かく体勢になってるし…っていうかしたし。

え?私もするの?

座布団………ある。

 

「すみません。えっと…その座布団に………。」

 

「あ、はい。…えっと、じゃあ、これを…。」

 

「はい。ありがとうございます。…はい。…はい。えっと、じゃあ…お話、しましょうか。」

 

「あぁ、えと、初めまして。私、“富加”と、言います。よろしくお願いします。」

 

「ご丁寧にありがとうございます。私は、戸巻です。まぁ、見ての通りここの提督をしています。」

 

お、堅っ苦しい挨拶をしないだけで好印象だなぁ。

戸巻さんね。覚えた覚えた。

 

「して、お話というのは?」

 

「分かりきっていることでしょう?」

 

「………先日、この鎮守府で確認された。未確認の艤装を身につけることのできる存在…。で、あっていますか?」

 

「えぇ、そう聞いてます。それで、私に、それが艦娘かどうかの判断をして欲しい。と…。」

 

「そう、ですか…。」

 

「したがって彼女について、知っている事を教えて頂きたい。」

 

「一番重要な点から。彼女には、艦の意識がありませんでした。」

 

「は?」

 

「霞として護送されてきた彼女は、学校にも行っておらず、艦娘がどのような存在であるかも知りませんでした。」

 

「共感によって作られる自我…これが無い状態で艦娘になる儀式をした。過去の事例では失敗し、何も変化がなかった。」

 

「それが今回の儀式では成功し、霞の艤装をつけることが出来た。」

 

「………。」

 

ついに共感すら無しでいいのか?

おかしいなぁ…。

また新しい名称が必要か?

今までは、共感により艦としての自我を作る。そして、儀式…いや、あって無いようなものだが…をする事で艦娘になる。

それが、艦としての自我がなくても艦娘の艤装を付けられるなにかに…。

共感が必要ないなら、もしかしたら男でも艦娘に………男じゃ娘ではないな。

艦………息子?

いや、今はそうじゃ無い。

もし…もしだが…これで、未確認の艦娘(仮)が深海棲艦なら、深海棲艦が身につけている物も、艦娘の艤装と同じ何か…。

海から艤装が出てくる理由が分かるかもしれない………じゃなくて…。

今はそうじゃ無い。

そうじゃ無い。

 

「その情報では足りませんね。艦娘と同じでは無い。しかし、艦娘の儀式は成功していた。………出来れば研究室に連れて行きたいのですが。」

 

「それは出来かねます。未確認だろうが、うちの艦娘です。」

 

「艦娘かどうかを確かめるたまに必要なんです。ご理解頂きたい。」

 

「では、そのためにあんな幼い子供を───」

 

「幼かろうと“それ”が少しでも人類を害そうと考えれば───」

 

「そんな事をするような───」

 

「それに確証が無いから私が送られて来たのですが。」

 

「もしそうでも制圧するだけの───」

 

「その制圧をするまでに何人の人が死ぬのか。」

 

「そんなこと!!」

 

「───やめてください!!」

 

「…すまない。頭に血が…。」

 

「こ、こちらとしては、それが人間に害を及ばさない確証を得てこいと…だからこそ、それが艦娘である事を確認することが必要なのです。」

 

「…明日。」

 

「今なんて?」

 

「明日…明日まで、待っていただけますか?」

 

「………はぁ。明日。出来るだけ早くお願いします。確認に時間がかかっている…と、伝えておきます。」

 

「すみません。彼女、山奥で暮らしてたみたいで…移動の疲労もある上に、いきなり分からない事だらけで、最後には魚雷で吹っ飛ばされるという…。」

 

いや、何があった。魚雷?

配属初日で練度が高いとこと演習でもしたのか?

 

「それで、せめて休ませてあげたい…と?」

 

「はい。」

 

「やっぱり…本当の事を言って、待ってもらいます。」

 

「そ、そうですか…。」

 

「えぇ、では、失礼します。…また明日、よろしくお願いします。」

 

「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

 

「えっと、駐車場まで…」

 

「大丈夫。一人でも帰れるよ。ありがとう。」

 

「い、いえ…。」

 

「それでは。」

 

と、言って扉を開け、頭を下げてから部屋を出る。

途中からは、少しヒートアップしてしまい、しっかりとした少女に叱られてしまった。反省だ。反省。

 

 

鎮守府のやけに綺麗な廊下を見る。

長らく新築の建物なんて見ていなかったため、ついついじっくりと見てしまう。

 

何か走り去っていく人影…人では無いか?どうだろうな。

 

辛うじて、確認できたのは、朝潮型の制服と黒髪、それと、スカートからのびるよく日焼けした脚。しかし、その日焼けの具合から、その制服を着慣れていないことがわかる。スカートの方が白くなっていて、太ももの半分くらいから黒くなっていたしな。…見間違いでなければだが。

 

…もしかして彼女か?

朝潮型にはだが、あんな子はいなかったはずだ。

やはり彼女が未確認の…いや、アンノウンだな。

未確認の艦娘は少し長い。

 

あれがアンノウンだとすると…随分とお転婆なようだ。

まるでただの田舎の少女…なんて、我ながら性格が悪いな。

 

だが、あの様子を見るに充分に休めたようだ。

明日は朝一に迎えに来よう。

…せめて一日で終わらせてあげたい。

…あんなとこ、長くいるような場所ではないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ち、日が昇始めたころ、私は車でかの鎮守府へと向かっていた。

 

朝一に行けば艦娘と会うことも減るだろう。

…アンノウンが起きていなかったら悲惨だが…。

ま、田舎の娘なら早起きでしょ。…偏見だけど。

電気がなくて、車もなくなって。

そんな状態の山奥ってことは、自給自足だよね。

なら畑とかで早起きするのが習慣に…なんてね。

 

そういえば…。

山奥からあのくらいの子供ってことは、生まれたちょっと後か、生まれるちょっと前かのどっちかだよなぁ。

それなら両親とか、近所の人たちからすればいい気分ではないだろうし、恨みを買っててもおかしくはないが…。

別に見捨てたわけでもないし、徴兵のためだけに電車を動かしてる訳でもないんだけどね………。

得られる情報なんてほぼないだろうし。勘違いして………。

………。

これは私の想像でしかないけど。

 

人々の生活を守れなかったのは、たしかにそうだった…。

今までのような、贅沢な暮らしは誰も彼もが出来なくなった。

それでも充分に生かしてもらってるじゃないか。

生きているじゃないか。

たしかにその変わった生活のせいで死んだ人もいるかもしれない。

でも、直接殺された人だって、建物の崩れたものに巻き込まれた人だっている。

守ってもらったからって、なんにも無かった訳じゃない。

そんな訳がない。

………。

 

 

さて、昨日と同じ、鎮守府に近づいてきたが…。

切り替えようか。

 

そういえば昨日はえらい目にあったな………。

まぁ、何となくだが、同じ場所に停めておこう。…もちろん頭から。

 

 

車を停め、降りる。

そして目が合った。…アンノウンと。

 

 

なぜアンノウンはあんなところでポツンと一人立っているんだ?

まぁ、挨拶だな。

 

「おはよう。」

 

「お、おはようございます。」

 

「初めまして、私は富加。この白衣の通り、研究をしていてね。君を知らべてくれって、えらい人たちが言ったから、調べなきゃいけないんだけど、そのためにこの鎮守府に来たのだけどね。ちょっと、うちの研究所じゃないと分からないっぽくてね?だから、来てもらいたいんだけど…いいかな?」

 

「ぁ…えと…その………。」

 

「ごめんね。分かりやすくすると、提督さんも良いって言ってるから、あとは君が良いって言えば、私が仕事を出来る…って感じなんだ。どうかな?」

 

「え?えぇ………?」

 

ん?…提督…話してない?もしかして?

これは説明が面倒だ………。

 

 

 

 

説明した。了承も得た。

 

さぁ、研究所にいこうか。

 

「さぁ、この車に乗って。」

 

「くるま?」

 

「そう、車。初めてかな?」

 

「うん。」

 

「そっか、じゃあ乗り方も分かんないね。…さぁ、中にある席に座って。」

 

「これ…ですか?」

 

「そうそう。そしたらね。左肩の近くにあるやつを引っ張って。」

 

「これ…ですよね。…こう?」

 

「そうそう。それでね、座ってるところになんか、引っ張ったやつの先端とピッタリはまりそうな穴がある、あかいやつがあるよね?それに差し込む。」

 

「…そ、れに…差し込む………。できた…!」

 

「よくできました。それはシートベルト、といって、命を守ってくれるものだよ。」

 

「この…布で………。すごいです!」

 

「ふふ…じゃあ行くね。」

 

「は、はい!」

 

シートベルトよし!

それじゃ出発。

 

 

 

 

 

ご、ごめんね………。

頭から入れたせいで、駐車場から出るのに手間取った…。

なんかすっごい見てた、アンノウンが。

そりゃぁね、初めて乗った車があんだけもたもたしてたらね。

 

「車ってこんなものなんですか?」って思われるわな。うん。すみませんでした。

 

ただね、少しは表情に出さない努力をしていただきたい。

もう、つらかったの。あの「車って、話によるとすごく便利なものらしいのに、動き始めるのにすごく時間がかかるんだぁ。ってことはあんまりすごく…無い?」みたいな。っていうかまんまそんな顔をされただから余計に失敗するんだって…。

………今日、なんかいハンドルをきったか…いや数えられる程度だよ?覚えてないけど…なんというかその、多いと思わせる用途での数え切れないほどっていう表現というかなんというか………。

 

とにかく、鎮守府から出るのに時間がたくさんかかりましたとさ。おしまい。

 

 

………というわけにもいかない。

いまのうちに聞けることを聞いておかないと一日で終わらない。

一日で終わらなかったら、アンノウンをこっちに泊らせることになってしまう。

そうなれば、あのぐちゃぐちゃすぎる、今や名前だけの宿直室に泊るか、もしくは誰か職員の家…は事案だな。うん。さすがにできない。

つまり、二日以上必要になりそうでも、一度鎮守府に帰すことになる。

ここは、何回も来るような場所じゃない。

 

事情もある。それも深刻な。

こんな、なさけない大人だろうと、仕事はしなければならない。

 

「いろいろ質問したいことがあるんだけど。いいかな?」

 

「はい!じゃ、なくて…えと、ど、どど、どうぞ…。」

 

初めての車に大興奮のアンノウン。

いきなりの質問に、少し心配になるほど動揺するアンノウン。

 

「落ち着こうか、深呼吸とかできるかな?」

 

「や、やってみます。…スゥ……ハァ…スゥ……ハァ………。」

 

「どうかな?落ち着いたかな?」

 

「はい。なんとか。少し変なにおいがしましたけど。」

 

「おじさんでも、まだ加齢臭出な………出てるかもしれないんだけど、だとしてもそれを本人に向かってそういうことは───」

 

「そ!そうじゃなくて…なんというかその…これは車のにおいなのかな…その嗅いだことないにおいだなぁ…と。」

 

「そうだったんだね。勘違いしてごめんね?」

 

「いえ、こちらこそ…?あの、紛らわしい言い方、しちゃったので…。」

 

「いやいや、こっちが勝手に間違えただけだから。おじさんが悪いから。」

 

「そ、そうですか?」

 

「そうそう。」

 

ごめんなさい。全体的に私が悪いです。すみませんでした。

…ふぅ、落ち着くんだ私。

そして、早めにこの子をあの鎮守府に帰してあげるためにも、聞けることは今のうちに聞いておくんだ。

 

「じゃ、じゃあ質問なんだけどね。」

 

「は、はい。」

 

「艦娘が、どんなものかって、分かるかな?」

 

「どんな?」

 

「そう。自分の言葉じゃなくても良い。なにか説明できるかな?」

 

「………えっと………その………う、海を守る…人?」

 

「うん。ありがとね。答えてくれて。」

 

ふむ。確実に艦娘ではないね。共感をもって自我を…って、今はそうじゃないな。

この答えならあと一つでいい。

 

「もう一ついいかな?」

 

「だっ………大丈夫…です。」

 

「ごめんね。今、聞かなきゃいけないのはこれでおしまいだから。」

 

「今………はい。大丈夫です。」

 

「それじゃあ。こっちに来る前は、艦娘のこと、何か知ってた?」

 

「…えと、お母さんとか、近所のお兄ちゃんが、私たちを見捨てた酷い人って…。でも、私にはよくわかんなくて…たまにテレビが見えて、その時に映ってた大和さんとか長門さんとか赤城さんとか加賀さんとか…の、見た目とかしか知らない…です。それで、なんか毎回、人々の生活を守ってるって言ってたけど、分かんなくて…だって、私、いつもお母さんとかおじさんとかお兄ちゃんに守ってもらったり、自分でどうにかしてたし、守ってもらったことなんてなかったし…。だから、よくわかんない人達って思ってた…の。」

 

「うん。話してくれてありがとう。ずっと思ってたことだったんだね。そっか…話してくれてありがとね。」

 

「い、いえ!大丈夫です!」

 

うーん…テレビをたまにでも見れるなんて凄いな。発電機か?燃料はどこから…。いや、今はそうじゃないな。

艦娘がどんなものかも分からない。まぁ…そうだよな。艦娘の学校で習うことだもんな。いつの間にか艦娘としての自我が芽生えていた…とかなわけないもんなぁ…。

新しいナニかだなぁ…。こりゃ。

………さてと、着いたな。

 

駐車場に入ると、白い四角が並んでいる。車止めは無い。

こんな駐車場なら、頭から入れて、頭から出ていけるように停めることができるから、ありがたい。

てなわけで、そう停めた。

エンジンを止め、車を降り、後ろの扉を開ける。

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

「いえいえ。」

 

扉を閉めて、鍵を閉めて。

 

「じゃあ、ついてきてね。」

 

「は、はい。」

 

そう声をかけ、駐車場を歩き始める。

アンノウンの視線があっちこっちしている。

白い四角を見ていたと思ったら、近所の畑を見ている。かと思いきや、畑を見たのは一瞬で、すぐにまた長方形を見たり、周りを見渡してみたり、進行方向の古くなってきた建物を見たてみたりと、とにかく落ち着きが無い。

 

「ここはね。昔からあった研究所を、いろいろ研究ができるように改装した建物なんだ。」

 

「そ、そうなんですね…。なんか………凄いです。」

 

「そうだねぇ…凄い、のかな?まぁ、凄いとは思うよ。うん。」

 

「?」

 

「いや、なんでも無いよ。出来るだけ早く終わらせるから。」

 

「お、お願いします。」

 

「うん。頑張るよ。」

 

建物まで来た。

しかし…ここで悲しいお知らせなのだ。実のところこの研究所には、セキュリティとしてカードキーがなければ、建物の中には入れない仕様になっていたのだが、艦娘が配属されたことにより…と言うのが表向きの理由で、本当は電気がもったいないから、新しいカードキーが作れないから。などの理由から、この無駄にハイテクなドアは、力ずくで開けなければいけない。

この無駄にハイテクなドアのせいで…いや、これだけが理由じゃ無いんだけど…私は、この研究所が、凄い。と言われた時、素直に同意できなかったのである。

 

「ちょっとだけ、待ってね。」

 

「?」

 

ドアに手をかけた私を、きょとんとした顔で見ているアンノウン。

…説明………しようかな…。

 

「力ずくで開けなきゃだから。」

 

「…建て付けが悪いんですね。」

 

「まぁ、そうだね。…うん。」

 

「?」

 

「いやなんでもないよ。…ほら、開いた。じゃあ行こうか。」

 

上手いことを言われたと思ったら、意図していなかったようだ。

まぁ、それはそれとして、やけに広く、白い廊下を歩いていく一人と人ではない何か。

 

「なんか…すごく、白い。」

 

「そうだね。真っ白だね。」

 

「はい。すごく、白い。」

 

「おじさんにもね、なんで白いかは分かんないんだ。」

 

「そうなんですね…。」

 

「そう。不思議だねぇ…。」

 

「はい…。」

 

まるで二人の人間が話しているようだが、そのじつ片方の人型は人間をやめている。

海の上を、魔法でも使ったかのように進んでいくことができ、身に纏うおもちゃのような大砲は、何十キロと砲弾を飛ばし、その砲弾は、人類には歯が立たなかった深海棲艦という人類の敵を打ち倒す。

………今は、その人間を辞めた奴が深海棲艦か、艦娘か、はたまた別の何か、か…それを明らかにするためにこの研究所に来てもらった。

そして、それを判断することの出来る部屋へと連れて行っているところだ。

…なんて説明しているとその部屋の扉が見えてくる。

扉といっても、普通のそれに比べたらごっつい感じはするが。

 

「ここです。ちょっと、ここに入って待機していてください。」

 

「え?は、はい…。」

 

ごつい扉を開け、入ったことを確認する。

………はぁ、申し訳ないと考えてばかりだ。

 

とりあえず私も、あっちに行こうか。

 

 

 

比較的普通な扉を開け中に入る。

…まぁ、がっつり実験室、とは書いてあるんだけどね…。

 

突如鳴った音に、こちらを見やり会釈する同僚。会釈を返す。

目の前のガラスの向こうには、アンノウンが椅子に座っているのが見える。

…さぁ、やるか。

ひとまず状況を…。

 

「どうですか?暴れたりとか。」

 

「いやぁ、落ち着いてるよ。こっちの質問にも必死に答えようとしてくれるし。あ、でもぉ、なんか冷静すぎる…は、なんかちがなぁ…。えっと…なんだろ。話してる感じが少ないというか、喋ってるではないというか…こう、読み上げてる感じ?…おぉ。しっくり来た。そうそう、なんか読み上げてるみたいな感じあって、いまいち」

 

「…っすか。」

 

「うんそう。あとはね。入ってすぐ気づいたの。」

 

「なににですか?」

 

「天龍ちゃんに。」

 

「え?」

 

「ちゃんと隠してたし、音もなにも立ててないのにね。」

 

「…電探の装備は…いえ、装備は何もないので、野生の勘かなにかです。気にせずに行きましょう。」

 

「あ~…うん。分かった。」

 

「引き続きお願いします。」

 

「はいは~い。」

 

自分でどうにか…ってこれの事か?

自分を害す可能性のあるなにか察知する………。は、飛躍しすぎか。

第六感のある…いや、これは先天的なものか?もしかすると………。

 

「すみません。いいですか?」

 

「え?…あ~うん…良いよ。」

 

「ありがとうございます。………ごめんね。ちょっと質問したいんだけど良いかな?」

 

『………。』

 

「ん?」

 

「質問すれば答えてくれるよ。」

 

「いや、いまの質問───」

 

「いいから。」

 

「は、はぁ…。………君は、昔もさっきみたいに、見えていないものでも感じ取ることができたのかい?」

 

「ちょっ!…まだ言ってなかったんだけど?」

 

「あ、それはすみま───」

 

『よく、昔からありました。お母さんもなんか動物みたいって。あ、蛇が来る。と、なったら、本当に目の前に出てきたり。いろいろ。』

 

「ありがとう。答えてくれて。…索敵とかは、関係ないようです。」

 

「あ、うん。…どっかに書いといて。」

 

私以外の研究員に指示を飛ばしたのを見て、次はここだけ艦娘の現れる前みたいな機器を見る。

 

「どちらかと言うと艦娘…です。深海棲艦のとは違っています。…一応。」

 

「一応?」

 

「えぇ。定期的に同じになったりするんです。深海棲艦のものと。」

 

「そうか………。じゃあ…あ?そういえばカメラは?」

 

「そりゃあこの前の…なんでしたっけ?あの…たしか…リ級!そうリ級!あれの時に壊されてたじゃないですか。」

 

「そうだったか…。すまない。ありがとう。」

 

「なにか詳細に見たいところでも?」

 

「いや…その深海棲艦のものになっている時だけ、なにか変化があったりとか。」

 

「観察してる限りないですよ?」

 

「もっと詳細に見たら変わっているかもしれないだろう?だから、カメラを見ようとしたが、カメラが付いていなくて、カメラをどうしたのか聞いたんだ。」

 

「そ、そうですか…。あ、じゃあ、天龍さんに頼めばいいんじゃないですか?」

 

「は、いや…それは………。」

 

「だめですか…いいアイデアだと思ったんですけどねぇ。」

 

「唯一の対抗手段を使ってどうする…。」

 

「あ、たしかにそうです。」

 

「はぁ…すまんな。」

 

天龍に見てきてもらう。まぁ、それもありかな。龍田も配属できたらだが。

さて次は…っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、一日では分からなかったよ。

 

申し訳ないな…。

 

また、いつでも処理ができる空間で…。

深海棲艦を調べるために、配備されている艦娘が、一方的に攻撃できるように設計された部屋で。

あんな普通の幼い子を調べるなんて………。

 

やっぱり…あんなとこ、長くいるような場所ではないんだ。

 

終わらせてあげたかったんだが…。次は来週かな。

なにはともあれ、未だ呼称はアンノウンのまま。

そのくせ明日は仕事が…って、なに味方か定かでない奴、使おうしているんだか…。

 

まぁ、とりあえず、発信機だけでも着けるように言っといたけど…。

それ言ったとき顔をなぁ…しかめてたんだよなぁ…。

 

 

やっぱだめか?あの提督。

 

 





順番を間違えました。
申し訳ないです。

お疲れ様でした。
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