さて、4日目の朝五時とちょっと、私はある人を待っています。
その方とは、私ほど焼けては無いけど、健康的に日焼けした、鉢巻きが目立つ美少女。その名は長良さん。
昨日、暇で暇で…なんとなくぐるぐる走っていた私を走り込みに誘ってくれたのだ。走りながら色々なことを聞いていたのだが、途中から質問も出来なくなるくらい息が上がったのを覚えている。
そんな体験初めてだったので、少しびっくりしたけど、苦しいんだけど、なんだか気持ちが良かったのを覚えてる。
長良さんは良い人だ。
質問ができないと分かると、少しペースを抑えてくれたし、こちらを気遣いながら走ってくれているのがわかった。
………運動が得意でないと殺されてしまいそうなペースかつ距離じゃなければ、もっと一緒に走り込みしてくれる人増えると思うんだけど………。
あのペースかつ距離でも息一つ切らしていないし………あのくらいじゃないと走り込みじゃないのかな?………恐ろしいとこにきてしまったのでは?
お風呂でも日焼け跡が目立ってたなぁ………。私ほどじゃないけど。
鉢巻きの跡かな?おでこに入ってた一本の白い線は、もはや鉢巻きだった。
………私も鉢巻き…もうおでこも焼けてるからなぁ。
うーん………。
「なにしてるの?」
「あ!長良さん!おはようございます!」
「うん。おはよ。どしたの?おでこ出して?」
「それはですね。私も長良さんみたいに鉢巻きしようかなって。」
「うん。いいんじゃないかな?」
「でもですね、それじゃあ鉢巻きができないんですよ!」
「?」
「うふふ。やっぱり、あの鉢巻きは長良さんだけだなぁ………。と、思っていました!」
「そう?」
「はい!走り込み、行きましょう!」
「んー…そうね。行きましょー!」
「おー!」
「へー…それじゃあずっと一人だったの?」
「いえいえ!近所の気のいいおっちゃんとかと遊んでましたよ?」
あれ?私、いつの間に長良さんにいろいろ話してるんだろう?………っは!これは今度はあなたのターンよ。と、言う事か?
恐ろしい手腕…いつの間にか気持ちよく実家のお話をしてしまっていた………。
これ、長良さんが聞き上手なだけだな?
「へー…。すごいね!いろんな友達がいたんだね!」
「えへへー…。そんなぁ…。すごいだなんて………。」
「ううん、すごいことだよ!」
「えへへー…そうですかー…。」
「そうだよ!」
「へへへー………。」
昨日も思ったけど、長良さんの走るペースは、なかなか速い。昨日は息が上がって、落ち着くまで、ちょっと時間がかかったくらいだ。
体力自慢の私をハアハアさせた長良さんは凄いと思う。
お父さんも私と走ると、いつのまにか遥か後ろでへばってたんだけど……。
誰かと一緒走るのって楽しい。
また明日も一緒に走る!
ふぅ………やはりお風呂は疲れてからに限る。と、考えた私だった。
「わかるー………。」
あぁ~…また声に出しちゃったなぁ………。
「へへー…そーだねー………。」
もしかしてー………。
「んー?なーに………?」
長良さんも返事するつもりなかったりー………?
「んー?かもねー………。」
やっぱりー………。
「やっぱりー………。」
「「ふぅ………。」」
この朝風呂、かなり気に入っちゃったなぁ………。
髪を長良さんと乾かしっこして、一緒に美味しいご飯を食べてながら気が付いた。
そろそろ通信が?
『こちら朝潮。司令官からの編成をお伝えします。第一艦隊は───』
今日は朝潮ちゃんかぁ…すごいなぁ………。
「よし!私は今日も遠征!じゃ、行ってくる!」
「はい!いってらっしゃい!」
「また明日!」
「はい!また明日!」
行ってしまわれた………。今日も元気いっぱいだなぁ………。
………。
あれ、今日は私も…あれ、いうか今聞いた名前、全部昨日も聞いたような……。
もしかして全員で……忙しい時期なのかな?
あら?お呼ばれされた………。シツムシツ………???
あれ?………キンカイケイビ……。キンカイ?
ケイビは警備で……。キンカイ…金塊?
いや、近海?
うーん………。海に出るのかな?
海に出るなら、あのー………艤装?だっけ?がいるってことになるよね…。
んー…明石さんの所へ行こうかな?
「ごちそうさまでした!すごくおいしかったです!」
「あ、はい!ありがとうございます。」
「それじゃ!」
「それじゃ?」
それじゃあ、工廠に行くぞー!
到着工廠。
さて…?………明石さんにつけてもらうかな?
………あれは………艤装?
たしかこれじゃなくて…こんな盛り盛りな感じじゃなくて………。
………あった。確かこれ…のはず。
これを…どうするのかな?
あれ、艤装が動いてく?………海のほう?
ついていこ。
ついてきた。
え…なんか、ちっちゃい生き物が………?
何この子達………かわいい…。
わ!バタバタしてる…。
えと、身振りからすると………もっと艤装に近づけって?
………一歩前進。
わわっ!なんかくっついた………。
背中になんか………。
えと、これを手に持てばいいの?
えと、よいしょ…。っと。
こっちが大砲で………これ、何?これ…なんなんだろ………。
…今までの記憶にあるものと、何も共通点がない………。
まぁ、いっかぁ…。大砲あるし。何とかなるよぉ!
足元を見てみたらもう海に出てた。
………いつの間に?
えっと、この子たちについていけばいいのかな…。
わわ、ちょっと速くない?まって、まって!
………まってくれない………急ぎます!!
わ、っとぉ………ここら辺なの?うんうん…。顔がおっきいと、うなずくだけで迫力あるね。
えと…手で大きな丸を描いて………中心に手を…その手でさっきまで居たとこを指さして………。うん、わかったかも。
なるほど…このくらい離れたところをぐるぐると………ね。
よし!がんばるぞ!
進む時は少し前傾に、曲がる時は曲がる方に身体を少し、傾けて………。うん。この前とおんなじ感じで大丈夫そう。
しばらくぐるぐるしてるけど………何もないね…。
風と、波と、空と…そればっかりだ。
青色ばっか………。
空は透き通って、波も変わらず…風も………ん?なにか違和感………。
………余計に生臭い…。
「あと…生ぬるい…これ?…血?」
あれ、私、いま…。
この子達は………。何もないみたい。
ッ!!
─────ドンッ!!!
「クゥッ!!!」
音に驚くのも一瞬だけ!
動く!!
少しでも動く、動き続ける!考えるのは後。
「………」
耳を澄ましてみたけど波の音しか聞こえない。
この子達にも聞いてみよ。
「ここならどう?少しはいい?」
………よし。いいみたい。この子達が騒ぐ前から動いといてよかった。
さて…今、何が?
背後で大きな音。前方には水飛沫。
これは…大砲?
つまり敵…ってこと?
でも何も見当たらないよ…。
なんで?
じゃあ…潜った………ってこと?
てことはどこにいるかわからないってこと…。
…うん動き続けてて正解だった。とっさに動いたのも正解だった。
ふぅ、速度は落とさない。
このまま、さっき攻撃された近くを………。
進路を変える瞬間。
「これ…ッ!」
嫌な予感がして首を少し傾ける。
「ぁくっ!」
意味は無かったみたい。肩を掠めていっただけだから。
くぅ…ちょっと掠っただけなのに、肩が丸出しだよ…。
視線を飛んできた方に向ける。
赤い?
なに?なんで空気が赤く?
怖い。分からない事が増えた…。怖い。
「でも!」
でも、どこか分かった。大丈夫。
「そこなら!」
感覚で分かる。今大砲を撃つと、どこまで砲弾は行って、どこに撃てば赤いのにピッタリ当たるのか…!
手に伝わる振動で、砲身が上に向いて行くのが分かる。
ちょうど良い所までいくと、ピタリと止まる。
波…手のブレ…タイミングを測って………。
…今ッ!!
─────ドンッ!!!
大きな音と共に飛んでいく砲弾。
砲身の先からは煙が上がり、その臭いが鼻に付く。
この前も思ったけど嗅いだことない臭い。
放物線を描き飛んでいく砲弾。
ツルツルとした表面に突き刺さり、赤にオレンジの炎と黒い煙がまとわりつく。
その、瞬間。赤いのが叫び声を上げる。
言葉では表現できそうに無い、けれど的確に不快感を与えてきているのが分かる。
「グッ…うるっさい!!」
さっきと変わらない。
このまま撃てば!!
……─────ドンッ!!!
…─────ドンッ!!!
放たれた位置は違う。でも、撃った砲弾は、その全てが赤い奴の中心にぶち当たり、その表面で爆発する。
煙に包まれ、オレンジの炎も、赤いのも、ツルツルとした表面も見えない。
それでも撃ち続ける。
撃ちつくして気付くのは、自分の腕がプルプルと震えており、悲鳴をあげている事。この前はこんな事無かったのに………。
煙が晴れる…が、赤い奴の見た目は何一つ変わらない。
相変わらずツルツルとした表面の周りに、赤いもやのようなものが渦巻いている。表面をよく見るが、何も変わりがないのが恐ろしい。大砲ではどうにも出来ない…と、私の勘が…いや、勘が言うまでもなく分かる。
「なんで!?何発も当ててるのに!?」
つい叫ぶが、すぐに口を閉じる。
考えなきゃ………。
これじゃだめ………。これ、以外………。
でもそんなもの………ハッ!
よく、分からないやつ…。
これ、なに?なんて呼べば………。
…よく分からないやつ!!
これなら?いや、わからない。これが効くのか、どう飛ぶのか………。
どんな物なのか…。でも………。
「…それでも!」
大砲同じように狙いをつける…が、動くところはないようだ………。
────ブプシュ!
私の持っているよくわからない物の内の、一つの丸い頭が飛び出していく。
私の足元から伸びて行く泡の道。どこかで見たような影、速さ。あとは私の勘が言っている。
あの時と同じ物…!!!
え?これ………。
「これなら!!!」
しかし、確かに赤いツルツルの方向に放ったはずの物は、とっくにいない場所を通過して行く。
「く、遅い!」
………でも、私、がっつりあれに当たったんだよなぁ…。
「………大砲に比べたら遅い。」
どれくらいで進んでいくかは分かった。
大丈夫。もう、当たる。当たるように撃てる。
………アイツが避けなければ…だけど…。
当てる方法を考えなきゃ…。
大量に撃つか?
でも、この子達が次を準備してるけど、それなりに時間が掛かるようだ。
飛び出している丸い頭は三本。
四本同時に撃てるらしい…。
でも、今は三本。三本あれば…いけるか?
でも………。
いや…でも…放射状に撃てば…!
────ブプシュ!
────ブプシュ!
────ブプシュ!
熊手の様に伸びて行く三本の白い線。
一本は赤いツルツルに向かっていき、もう一本は赤いツルツルの進行方向に、最後の一本は赤いツルツルが全力で進んでも、そこまでは行けないであろう前方に。
で、あとは大砲と、足で当たる!!
足はここで攻撃すれば私を殺せると思わせて、意識をこっちに持ってくる。
大砲は意識しない内に速度を落としてしまう様に撃つ。
少し、少しだけ速度を落とす………こっちに釘付けになれ!!
少しずらして大砲を…!
─────ドンッ!!!
今まで当たっていた、ど真ん中から少しズレた位置に砲弾が当たる。
移動を少しでもためらわせて………。
さぁ、今なら攻撃が当たるかもなぁ?
ほら…攻撃しないのか?
狙いをつけたな?
─────ドンッ!!!
─────ドンッ!!!
どうした少し動けば当たらないぞ!!
ほら、もっと速度を落とせば当たらない。どうする?
そのまま………。
これでッ!!!
───────ズガァァァン!!
辺りに響く爆音。
赤いツルツルが完全に見えなくなるほどの水飛沫。
聞こえる不快な声も断末魔のように感じる。
その様子から倒す事が出来たと思うけど…。
水飛沫が消えて、赤いツルツルがいたであろう場所を見見るが何もいない。急いで周りを警戒しようとするが、よくみてみるとツルツルな頭が沈んでいくのが見えた。
「来たッ!!!!」
沈んでいく…。
これで………。たおれた?
見えない。赤いのも、ツルツルとした体も…。
………。
…首が急に痒くなった。
猛烈ないやな感じ………。
これ…同じ!?
探すまでも無く足元に居る巨大な存在感………。
この速さ、影、感覚…くそぉ!あの時と…おんなじの!
いつこれを?最後のあがき!?
そんなのいつ?ってかそれどこじゃ───
「避けっ」
ズガァン!!
痛いッ!!!!
耳を刺す爆音。耳鳴りが痛みを加速する。
顔に打ち付ける水と浮遊感。
ぐぁっ…また、飛んでるの?
ダメ…もう…分からな……………………
ふぅ……私、いつのまにお風呂に?
え?もう出る時間?
どういうことなの???
すみません。
日焼けの境界が、ベルトとベルトの間になるのは、改二になるとです。
完全に間違えてました。
本当に申し訳ございません。
お疲れ様でした。