ある日、魔法少女に憧れる黒峰小雪とその幼馴染の白銀夜空の前に、精霊を名乗る存在が現れた。
その精霊は、世界の理とそれを守る魔法少女の存在を語った後に、少女たちに問いかけた。


「――――ボクと契約して魔法少女になって、世界を守ってくれないか――――?」


これは、世界の秩序を守るために戦う、二人の魔法少女の物語である。




※小説家になろう様にも投稿させていただいています。

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二人は────ホロウ・フェアリーズ!!

 

 

 

 アタシは魔法少女に憧れていた。

 

 

 

 可愛いマスコットから力を託され、可愛い衣装を身に纏い、仲間と絆を育み、悪者を颯爽と倒して、みんなを守る正義の味方! 

 

 当時からガサツだったアタシでも柄じゃないと思いながらも憧れを抱き、いつか魔法少女になりたいなんて幼馴染と夢想したものだ。

 

 でもあくまで魔法少女はテレビの話。現実じゃない。そんなことは幼いアタシたちも理解していた。

 それでもアタシの中の憧れは消えることなく燻り続けていた。

 

 

 そんなある日のことだった。

 特に前触れもなく、とある小動物がアタシたちの目の前に現れたのだ。

 

「────見つけた。キミの力が必要なんだ」

 

 驚くべきことにその小動物は妖精のような羽を持ち宙に浮かびさらに言葉を話した。まるでテレビで見る魔法少女のマスコットのようだった。

 

 そしてソイツは自身が精霊であると名乗り、魔法少女として世界を守ってくれる協力者を探していると言った。

 

 その話を聞いてアタシは不謹慎ながらもわくわくしていた。

 空想でしかないと思っていた魔法少女が実在して、魔法少女になるための方法が目の前にある。アタシは憧れの魔法少女になれるんだって。

 

 そして彼は、締めくくるようにこう言ったのだ。

 

 

「────ボクと契約して魔法少女になって、世界を守ってくれないか────」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 魔法少女という存在について言及しよう。

 

 魔法少女といってもアニメなどに出てくる創作の話ではなく、現実に存在している存在の話である。

 

 世界には『マナ』と呼ばれるエネルギーが存在している。マナは生命によって生み出され、また消費される、世界を構築する上で欠かすことのできないエネルギーだ。

 

 そのマナはプラスとマイナスにも傾き、そのバランスによって世界は保たれているのだとか。

 

 それでも知的生命体、特に人の負の感情に影響されてマナがマイナスに傾いていき、それが集まった結果マナの澱みと化して何らかの形を取って実体化し、世界に害を齎す存在、『カーズ』となる。

 

 発生したカーズは影響された負の感情に応じた破壊活動を行なうようになり、また存在するだけでマナをさらに汚染し、世界の理を歪めてしまい災害が起きてしまうという。

 

 そこでマナを滞りなく循環させる管理者が空飛ぶ小動物のような見た目の精霊であり、その精霊と契約することによってカーズを浄化する事ができる能力を与えられたのが魔法少女である。

 

 だが、カーズを浄化するということは、そのカーズと戦うということ……そこには当然命の落とす危険性が存在する。

 

 命の危険がある以上、安全策には気を遣うのが当然であり、チームを組んでカーズ浄化に当たる魔法少女がほとんどである。何だったら互助組織が存在するくらいだ。

 

 そうした互助組織の支援を受けながら、チームを組んで実戦を潜り抜けてきた事で、私は少なからず魔法少女として実力を高めてきた。何だったらチームとしての実力なら魔法少女の中でも上位に位置する自信がある程だ。

 

 そう……その自信が確かにあったのだ。

 

 

 

「くっ……この、化け物め……!!」

 

 

 

 これでも私たちは魔法少女でも実力派だと言われているチームだ。その四人で連携を取り、最善の行動を以って、ある一体のカーズを相手取った。

 そのカーズの姿は少し大きめの人型だが、発生時点で相当な力を持っている事が予測されていた。

 だからこそ実力派である私たちが対応する事になったし、私たちも油断なんてしていなかった。

 

 

 だが、結果は残酷だった。

 

 

 こちらの攻撃はその悉くが相手にダメージを与えることができず、相手が適当に放っただろう魔力弾によってこちらのマナ障壁がまるで熱したスプーンでアイスを掬うかのように容易に削られていった。

 

 こちらの最大火力である合体攻撃魔法ですら相手をひるませる事くらいしかできなかった。それ程までにこのカーズと私たちの実力差は明確であった。

 

 それでも、だからこそコイツを放置してただ逃げ出すわけにはいかなかった。仲間の半分がヤツの攻撃によって戦闘不能に陥ったとしてもだ。

 無事なもう一人に倒れた二人を任せ、私は殿としてヤツを引き付ける役目を引き受けた。

 増援を連れて戻ってくるとこの場を去る仲間を背に、私はヤツをこの場にとどめておくために遅滞戦闘を心掛けて何とか時間を稼ぎ……今に至る。

 

 

『ドコヘイコウトイウノダネ』

 

 

 このカーズが何を言っているのかわからないが、そこに然したる意味はない。

 カーズの姿形、そして言動はその負に傾いた原因の思念が反映されるらしいが、そこに意思はない。

 染み着いた思念による反射反応のような物らしく、会話ができているように見えても意思疎通はできるはずもない。時間稼ぎにもなりはしない。

 実際この言葉を口にしている間も攻撃の手は一切留まる事はない。

 

 飛んでくる魔力弾に対しては基本回避するしかなく、どうしても避けられない物に関しては全力で魔法を撃ち込むことで何とか軌道をずらし、直撃を避ける。周囲への被害を考えられないほどに追い詰められている。

 

 増援の到着にはまだ時間がかかるだろう。果たして増援が来るまで私はヤツを留める事ができるだろうか……いや、そもそも……

 

 

 増援が来たとして、このカーズを倒せる魔法少女などいるだろうか……? 

 

 

『ムダムダムダムダァ!!』

 

 

 そんな弱気なことを考えてしまったからか、気付いた時にはカーズの放った黒く澱んだ魔力弾が目前まで迫っていた。

 

「しまっ────!?」

 

 これは、もう避けられない。マナ障壁はあるがそれもさほど意味はないだろう。こちらの魔法で何とかしようにも、防ぐにも撃ち落とすにも威力が違いすぎて不可能だ。逸らした所で直撃は避けられない。

 

 

 ダメだ、死んだ────! 

 

 

 そう覚悟した瞬間、眼前に迫っていた魔力弾に、突如飛来した黒い光弾が命中し、弾けるように相殺した。

 相殺された際の爆発に煽られて思わず倒れてしまったが、私の頭は疑問に支配されていた。

 

 今の光は一体なんだ? 私たちがどうやっても逸らすのが精一杯だったあのカーズの魔力弾を、相殺した……!? 一体誰が……!? 

 

『ナニモノダァ……!?』

 

 それはカーズも同様だったようで、目の前で倒れている私に見向きもせず今の光弾の出所がどこなのか周囲を見渡していた。

 

 その言葉に答えるかのようなタイミングで、倒れた私を護るかのように二つの人影が目の前に降り立った。

 

 

「纏いし光は白き幻想────ホロウ・ヴァイス!」

 

 

 胸元に蒼の宝石を付け、腰にひらひらとしたレースのついた純白のドレスを纏った、蒼のリボンで纏められた黒いポニーテールを揺らす魔法少女が名乗りを上げた。

 

 

「纏いし光は黒き幻影────ホロウ・シュバルツ!」

 

 

 続いて胸元に真紅の宝石を付け、腰に金属板のような物をつけた漆黒の装甲を纏った、頭部を仮面で覆った魔法少女が名乗りを…………うん? 魔法、少女……? どっちかと言えばこれは魔法少女じゃないような……? 

 

 

「「二人は────ホロウ・フェアリーズ!!」」

 

 

 そして二人はまるで魔法少女のコンビであるかのようにポーズを決めた。

 

 

「…………???」

 

 

 

 脳が、バグる。

 片方番組枠間違えてないか? 思わずそんな場違いな思考が浮かんだ。

 だが形だけの会話しかできないカーズには関係なかったらしく、場違いな姿の乱入者をただ単に脅威になりうる存在と認識したらしい。

 

 

『ヤロウ! ブッコロシテヤル!!』

 

 

 二人の名乗りが終わるとともに、今までの比じゃないほどに強大なマナの奔流がカーズから放たれた。

 

 

 

「形成────ホロウシールド」

 

 

 

 あまりにもすさまじいマナの奔流に再び死を覚悟したが、その未来が訪れる事はなかった。

 気付けば黒い装甲スーツ────シュバルツの腰にスカートのように付いていた金属板が一部分離してマナ障壁を展開して盾のように受け止めていた。

 私たちじゃどうやっても防げないだろう砲撃を受け止めた事に驚愕するが、カーズの砲撃は未だ衰える事なく放出され続けていた。

 

「ちっ、エナジーの消費がヤバい……! 思ってたより強いカーズみたいだ……!」

「長引くと不利になるわ……! こっちも撃ち返して!」

「わかった! チャージ頼む!」

 

 白い魔法少女────ヴァイスがシュバルツに後ろから手を添えると、その手から白い光が溢れて漆黒の装甲へと吸い込まれていく。

 あれは……マナを渡しているのか? 

 

 

「マナエナジー補充、ホロウハート稼働率上昇、形成────ホロウバレル」

 

 

 ヤツの砲撃でマナ障壁の盾にひび割れていく中、残っていた金属板とマナの光がシュバルツの前で筒のような形、砲身の形を取った。その砲身から圧縮されたマナの光が漏れ出し、そして────

 

 

 

「エナジー充填完了、発射────ヴァイスシュバルツ・オーバーレイ!!」

 

 

 

 ────盾が砕けるのと同時に、砲身から黒白の光線が放たれた。

 

 

 

『ヌワ──ッ!!』

 

 

 

 黒白の光線はヤツのマナの奔流とぶつかり、わずかに拮抗の後にそれすらも食い破り、その大本であるカーズすらも吞み込んだ。

 

 

「や、やった……!?」

 

 

 砲撃の光が治まった頃、そこには身体の大部分を失ったカーズの姿があった。

 まだ実体を維持しているようだが、いつ霧散してもおかしくないほどのダメージであった。お、終わった……! 

 

 

『チ、チクショォォ……チクショォォォォッ……!! …………ヌァンチャッテェ』

 

 

 そう思っていたら、突如としてカーズの欠損していた身体がまるで巻き戻される映像のように元通りに戻っていく。

 

「コイツ、再生能力まで……!?」

 

 これだけのダメージを与えても再生するとなると、このカーズを倒すにはその再生能力をどうにかして封じるか、コイツが再生できないほどの今の砲撃以上の攻撃を叩き込むしかない。

 だが、そんな攻撃が可能なのか? 思わず縋るように二人に目を向けるが、そこであることに気付いた。

 

 

 先程二人が立っていた場所には、いつの間にかヴァイス一人しかいなかった。

 

 

 それにカーズも気付いたのか、シュバルツの姿を探すが見つかった様子はない。

 

 確かに周囲を見渡しても見当たらない。かといってヴァイスが何かをする様子はない。自身が何かする必要がないと確信しているような、そんな安心感を抱いているように見える。

 

 もしかして……そう思い至って上空へと目を向ければ、探し人の姿はそこにあった。

 

 

「マナカートリッジ装填、ホロウハート稼働率上昇、形成────ホロウブースター」

 

 

 金属板とマナによって象られた羽のように見えるソレは、シュバルツの右足首辺りに装備されたかと思えば、そこを中心としてぐるぐるとマナの放出をしながら回転し、急降下を始めた。

 

 

『────! ウエカラクルゾ! キヲツケロ!』

「もう遅い。スパイラル・ホロウ……キ──ーック!!」

 

 

 カーズもようやく上空のシュバルツに気付いたが、時すでに遅し。

 凄まじい程のマナの奔流を纏い、さらにそれを推力して彗星のように振り下ろされたその一撃は、完全に再生しかけていたカーズへと着弾し、断末魔さえ残すことなくこの世から消し去った。

 

 いややっぱりお前違う枠だろ!? 

 

「カーズの気配は……もうしないな。そこのお前、大丈夫だったか?」

「あ、ああ……ありがとう。助かった……」

 

 シュバルツが声をかけてきたので返事をするが、私としてはそれどころではなかった。

 

 この二人が何者なのか、私は知らない。魔法少女なのは間違いなさそうだが、少なくとも私たちが所属している互助組織内の人間ではないはずだ。もし同じ組織にいるのならこんな特徴的すぎる格好、絶対に噂の一つや二つになっていないとおかしい。それが先程のカーズを倒せるほどの実力者であるのならなおさらだ。

 

 そして何より、そんな理屈がなくとも、私はこの命の恩人たちの事をもっと知りたいと思うようになっていた。

 

「あ、あの……」

「シュバルツ! 他の子が近づいてるって!」

「まじか。ならとっととずらかろう。装甲展開、形成────ホロウモービル」

 

 意を決して私が声をかけようとしたタイミングでヴァイスの呼びかけにシュバルツは私との会話を打ち切って再び何かを組み上げ始めた。

 

 今回は腰の金属板だけでなくその身に纏う黒い装甲も分離され、それらが組み上がっていき、バイクへと形を成していく。

 そしてもともと装甲を纏っていただろう白髪の少女は、仮面はつけたままそのバイクに跨っていた。

 

「安全運転でね」

「二ケツしてて言うことか? じゃ、お前も気を付けて帰れよー」

 

 ヴァイスもそのバイク跨ると、私を置いてそのまま走り去っていった。

 一人残された私だが、そんな事よりも別のことに気を取られていた。

 

 

「どういうことだ……黒いのの中にいたヤツ、マナを感じなかったぞ……!?」

 

 

 魔法少女であるのなら少なからず自然に発生する以上のマナをその身に纏っているはずだ。それがあのカーズを倒すほどの実力者であるのならなおさらだ。実際先程まではシュバルツからも感じとれていたし、ヴァイスからは今も感じている。

 だが装甲から解放されていた今、彼女から感じられるマナは一般人と変わらない程しかなかった。

 

「一体、どういう事なんだ……?」

 

 私の疑問は、必要のなくなった増援が到着する頃になっても消える事はなかった。

 

 

 

 ◆

 

 

「────別に逃げるように去る事もないだろうに。そんなに互助組織と関わりたくないのかい?」

 

 

 カーズの討伐を終えたアタシたちがバイクに乗って帰路についていると、一体の空飛ぶ小動物が話しかけてきた。

 

「げ。ホロロ、いきなり出てくんなよな」

「そう邪見にしないの。他の子たちが近づいてきてるってホロロが教えてくれたんだから」

 

 その宙に浮かびアタシたちに話しかけてきた小動物の正体はマナの管理者である精霊の一体、ホロロであった。

 

「あまり理解できないな。ヴァイス────夜空は魔法少女としての素質だけなら群を抜いている。ボクが知る中でも圧倒的だ。それこそ小雪、キミにあれほどの力を付与できるくらいにはね」

「嫌味か」

「ならその力を他の魔法少女たちの強化に使った方が効率的じゃないかい? 手札も増えるわけだし、生存率も高まる」

 

 ホロロの言うことは間違っていない。それはアタシたちも理解している。理解しているのだが……うーん。

 

「いろいろと面倒そうだから、ちょっとね」

「それにアタシは入れないしな」

「はぁ……まあボクとしてはカーズ浄化に協力してくれるのなら文句はないさ」

 

 それでもアタシたちの事を魔法少女の互助組織や精霊仲間に対して黙っていてくれている辺り、こちらの意思をきちんと尊重してくれているのは理解できた。

 

 それにしてもマナの情勢や魔法少女、カーズ浄化以外の事はどうでもいいみたいな感じだったコイツも少しは変わっているのかね、と思いながらホロロと初めて出会った時の事が脳裏に過ぎる。

 

 

 

 

 ……ホロロと初めて会ったあの日……世界に魔法少女が実在すると知ったあの日……

 

 世界の理や魔法少女について説明したコイツは、締めくくるようにこう言った。

 

 

 

「ボクと契約して魔法少女になって、世界を守ってくれないか────白銀夜空?」

 

 

 

「え? 私だけ?」

 

 

 …………アタシの隣にいた幼馴染、ソラだけに。

 

 

「え、あの……アタシは……?」

「え? キミ? えっと……誰?」

「小雪! 黒峰小雪! てか存在すら気付かれてなかったのかよ!?」

 

 魔法少女に勧誘されて戸惑う幼馴染を相手にセールストークを繰り広げていた精霊ホロロは、そこで初めてアタシに気が付いたみたいな反応をして、何かを探るような視線を向けられた末に、あっけらかんとこう言った。

 

「────キミには魔法少女の才能がないね」

「は?」

 

 あまりに何でもないように言われたからか、言葉がそれ以上出なかった。思考もうまく働かない。

 それを気にすることなくソイツは言葉を続けていった。

 

「うん、キミには魔法少女としての才能がない。皆無と言ってもいい。これほどまでに才能がない子は初めてみたよ。むしろここまで才能がないのも珍しい。魔法少女になれる才能を持つよりも珍しいんじゃないかな」

「────フッザけんなこのクソマスコットォ!!」

「ぶぎゅ」

 

 ここまで扱き下ろされて、思わず手が出てしまったのは仕方ないことだろう。

 

「好き勝手いいやがって! 本当は力与えるくらいできるんだろ!」

「ボクらが魔法少女の力を与えているわけじゃない。ボクらがしているのは契約によってもともと彼女たちに眠っていた魔法少女としての才能を引き出しているに過ぎない。あとは彼女たちの素質と努力次第だよ」

「お前らが力不足だからアタシの凄すぎる才能を引き出せないんだろ!!」

「ボクらが引き出せるのは魔法少女の才能だけだから間違ってはないね」

「ブッ飛ばすぞこの犬だか猫だか!」

「犬でも猫でもないが?」

「ムキーッ!!」

「お、落ち着いてユキ!」

 

「アタシは諦めないぞ! 絶対に、魔法少女になってやる!!」

 

 ……そんな決意もあったが、紆余曲折あった結果、アタシは魔法少女にはなれなかった。

 

 アタシがカーズと戦えているのは魔法少女となったソラの魔法で作られた装甲を纏って強化されているからだ。悲しいかな、ホロロの力が及ばなかったというところだ。

 

 ……本当なら、ソラは戦う事に向いていない人間だ。

 

 運動音痴というのもあるが、それ以上に優しすぎる。誰かに対して力を向ける事を嫌う気質がある。

 実際、ソラはたまたまカーズと遭遇してどうしようもない状況に陥った結果魔法少女となったのだが、ソラの使える魔法に攻撃のためのものは存在しなかった。

 そんな心優しい彼女が魔法少女という鉄火場に立たざるを得ない立場にしてしまったのはアタシのせいだった。

 アタシはバカだから考えるよりも先に体が動いてしまう。ソラの十分の一でも頭の良さがアタシに備わっていたらあの時ももっとうまく立ち回れていたはずだ。

 

 過ぎてしまったことをいつまでも後悔しててもどうしようもない。

 

 だからこそ大事な親友を、そしてその親友とともに過ごす日常を守るために今アタシにできる事をしていく、それだけの事なのだ。それに……

 

「────どうしたのユキ? ボーっとしてるように見えたけど」

「いや、アタシは魔法少女やりたいからやってるんだよなーって」

「正確には小雪は魔法少女じゃないけどね。強いて分類するなら……使い魔?」

「水差すんじゃねーよ!」

 

 まあ、たとえ魔法少女じゃなくて使い魔だとしても、アタシのやる事は変わらない。

 

 

 だってそう……アタシたちは、二人で────────

 

 

 

 ◆

 

 

 

 バイクが風を切って走っていく。その風を感じながらバイクを駆る彼女の事に思いを馳せる。

 

 黒峰小雪……ユキはいつも私を助けてくれた。

 

 幼い頃に意地悪な男子たちにいじめられていた時も。

 初めてカーズに遭遇してなお魔法少女になる踏ん切りがつかなかった時も。

 そして魔法少女になりカーズ浄化に赴くようになった今でも。

 

 魔法少女になりたいからという理由も嘘ではないのだろう。けれどそれ以上に彼女は私の事を心配してくれている。

 

 そのことが嬉しくて、だけど少し悲しい。

 

 私は、彼女が私のために戦ってくれていると思うと、嬉しくなる。

 私は、彼女の後ろで守られるだけの存在でしかないのかと思うと、悲しくなる。

 私は、彼女に力を与える事ができるのだと思うと、嬉しくなる。

 私は、彼女が私のせいで危険な目に合っていると思うと、悲しくなる。

 

 私は…………私が本当はどうしたいのか、どうなるのが一番いいのか、それすらもわからない。

 

 このままユキが戦い続けるとなると、私のために彼女が危険な目に合うのは嫌だ。そんなの対等な関係だなんて言えない。

 

 もし私がユキの手を借りずともカーズと戦えるようになったら、ユキは危険な戦いに巻き込まれる事はなくなる。けど、ユキは私から離れて行ってしまうだろう……それも嫌だ。

 

 様々な想定が浮かぶけど、どれもこれも私が嫌だという理由で許容したくない……利己的な考えしか思い浮かばない私の性根が嫌になる。頭がいいと持て囃されても、この程度の事すら答えが出せない自分に嫌になる。

 互助組織と距離を取っているのだって、ユキと離されるのが嫌だからというのが一番大きい。

 

「────急に黙ってどうしたー? 何か考え事かー?」

「ううん、大丈夫。何でもないよ」

「そっか、ならいいや」

 

 ……ユキはきっと、そんなに難しく考えなくてもいいのに、とか言いそう。

 

 それでも、私はきちんとユキの隣に並び立てるようになりたいと、強く思う。

 

 

 だって、そう……私たちは、二人で────────

 

 

 




簡単な人物紹介

黒峰小雪:ホロウ・シュバルツ
魔法少女にあこがれる魔法少女適正0の少女。
勉強は苦手だが運動神経抜群で身体を動かす事に関しては大抵できる。
魔法少女に憧れを持っているが、可愛い格好に興味があるが自分には似合わないと思っている。
でもシュバルツのデザインはもっと可愛くてもいいんじゃないかと思っている。



白銀夜空:ホロウ・ヴァイス
魔法少女適正が高すぎるが性格面で適正の低い少女。
運動は苦手だが頭脳明晰で頭を使う事に関しても天才である。
魔法少女ならバトル物よりも日常物の方が好みで、バトル物ならロボット系の方が好み。
なおシュバルツのデザインは夜空の趣味で変える気はない。


ホロロ:精霊
夜空に魔法少女の力を与えた精霊。
カーズの浄化とマナの管理という使命を第一としてそれ以外にはあまり興味を持たない。
汚染の原因なのにマナの浄化を魔法少女に押し付けている人類に関しても嫌っている。
ホロウフェアリーズに関しても、夜空のモチベーションが保てるならと静観してくれている。
魔法少女適正0の小雪は当初路傍の石くらいの認識だったが、今ではケンカ友達のようになっている。

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