真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

18 / 98
今回は少し、しつこいかもしれません
何で自分は、こんなにもセリフを考えるのが苦手なんでしょうか?
他の皆様なら、もっとうまく書けるだろうな。

たぶん、意味が分からないと思いますが、漢の会話として納得してくれたら嬉しいです


悠介と二つの誓い

「そうか。負けちまったか」

 

鍋島から事の詳細を聞いた悠介は、小さく呟く。悠介の声音は聞いた鍋島は、悠介が何処か悔いてる様にも感じた。

まるで戦友(とも)と共に戦えなかった事を悔いてる様だと。

 

「でもよ、その義経ってのは結局誰だ?」

 

「まあ、ずっと山に籠ってらぁそうなるわな」

 

 

悠介のふとした疑問を聞いた鍋島は、本当に悠介がずっと山に籠って修行していた事を再確認する。

そうでもなければ、現在テレビを騒がしてる武士道プランを知らない訳がない。

 

「九鬼家が打ち上げた『武士道プラン』って奴だ。過去の英雄に学び切磋琢磨するってのが、目的だな」

 

「過去の?」

 

「クローン技術で現代に蘇らせたんだよ」

 

「なるほど」

 

鍋島の説明を聞いた悠介は、納得したように頷く。何の躊躇いもなく事実を受け入れた悠介の姿を見た鍋島は、悠介の強みを再確認する形となる。

普通の人ならば、クローン人間と聞けばある程度の反応があるだろう。拒絶だったり興味だったりと様々だが、悠介は一度何の躊躇いもなく受け止める。

どんな考え方でも、一概に否定せず長所などを考え理解していこうとするのだ。

何故悠介がそうするのかは、鍋島にはわからないが、それは間違いなく悠介の強さだと考えている。

 

「石田を倒すか…強いんだな」

 

「そらあ、過去に英雄と呼ばれた奴らだ。血を受け継ぐ奴ら並には強いだろ」

 

「会えるのが楽しみだ」

 

笑みを浮かべる悠介の顔を見た鍋島は、悠介と武士道プランの面々が出会う未来(さき)を想像し、笑みを浮かべる。果たしてそれが、悠介に何を齎すのか一人の武人としても、師としても気になるモノだ。

 

「さて、不良生徒の面も見れたし帰るとするか」

 

鍋島が腰を上げると同時に悠介も腰を上げる。そして自分がまだ伝えていない事に気が付く。

 

「なあ、実は…」

 

悠介が全てを言う前に鍋島の帽子が、悠介の頭にかぶせられる。

 

「ああ知ってるよ。お嬢ちゃんに全部聞いた。戻るんだろ?川神に」

 

「…ああ」

 

鍋島はあえて悠介の表情を見えなくしてから、悠介と話始める。鍋島の言葉に、間を置きながらも悠介は答える。

 

「全く、師想いじゃねえ弟子を持ったもんだぜ。まさか、師の元を去るってのを伝え忘れて、他人に告げられるなんてよ」

 

「うるせえよ」

 

鍋島が笑いながら発した言葉に悠介は、不貞腐れた声で答えた。

 

「それよか、頭から手をどかせよ」

 

「別に良いだろうが」

 

「ちぃ」

 

不貞腐れ手を払いのけようとした悠介に、不意を衝いた様に今までの声音とは全く違う声が届く。

 

「行って来い」

 

「っ――――!!」

 

その言葉は鍋島には似合わない程に、優しく躊躇う者を後押しする声音である。言葉を聞いた悠介の気配がブレた。しかし、帽子のせいか表情は、窺えない。

 

「お前は西(ここ)で強くなった。力もそうだが、何よりもお前の精神(たましい)が強くなった」

 

「強くなってねよ。俺は弱え」

 

鍋島の言葉を否定した悠介の声は、驚くほどに小さく弱弱しい声だ。思い出すは鍋島が来る前、才能と言う逃げ道に簡単に逃げてしまった自分の姿。

自分が諦めるのに、都合のいい逃げ道に逃げる自分の精神が強くなった訳がない。

そんな悠介の葛藤に気が付いているのか鍋島は、不器用に真っ直ぐ進む弟子を導こうとする。それが、師の仕事だと知っているから。

 

「師である俺が言ってんだぞ。師の言葉を信じねえ弟子はいねえんじゃなかったか?」

 

「……」

 

鍋島の言葉に悠介は答えない。いや、答えられない。鍋島自身これから悠介に待ち受ける重圧を知っていた。

しかし理解してやる事は出来ない。自分には才があったが、悠介にはない。

持つ者が持たない者の気持ちを理解する事は出来ないだろう。

それでも…

 

「お前は強い。俺は胸を張ってそう言える。だから、師の言葉を信じて進んでみろや」

 

武神に挑むと言う愚直を行う弟子の迷いに手を差し伸べずして、師とは名乗れない。

悠介は誰よりも知っている、才能の壁を。そして自分と武神の間の壁を、知っているからこその迷い。

どれだけ決意を固めようと圧し掛かって来る重圧。どれだけ大人ぶっても、未だ高校生の悠介一人に背負えるモノではないのは明白だ。

 

「何度倒れても立ち上がる。それがお前の誇りだろ」

 

「ああ」

 

未だに弱弱しい声で答える悠介に鍋島は、ある事を告げる。それを告げるのは今しかないと感じるから。

 

「お前が武神を倒したのち、お前と初めて交わした約束(・・)を俺は果たすつもりだ」

 

鍋島のセリフに下を向いていた悠介が上を向こうとするが、鍋島の手がそれを邪魔する。今はただ聞け。師から無言の合図。

 

「お前なら…いや、お前だからこそ武神を倒せると信じてるぜ、俺はな」

 

鍋島が発する言葉の全てが悠介の迷いを打ち砕いて行く。迷いを断ち切らせる言葉など発する必要はない。

その強さを悠介は既に持っている。自分はそれを引き出してやればいいだけなのだ。

 

「お前が武神を倒したら、俺はお前の前に()として、立ちはだかる。もう、お前にはそれだけの強さがあるんだぜ?だから、行って来い――――」

 

ふと見れば、悠介は強く拳を握り何かに耐えている様だ。そして鍋島の最後の言葉が発せられた。

 

バカ弟子(・・・・)

 

悠介は鍋島が言い終わると同時に、静かに鍋島の横を通り過ぎる。鍋島もそれが分かっていたのか、自分の横を通り過ぎる瞬間まで、帽子を悠介にかぶせ続ける。

悠介の足取りに迷いは感じられなかった。

 

◆◇◆◇

 

自分は大馬鹿野郎だ。歩む中で悠介は、行き場のない感情に支配されている。師匠にあそこまで言ってもらわないと、迷いを断てない自分は本当にバカだ。

 

「でも、もう迷わねえ」

 

迷わないだけのモノを師匠から貰ったのだ、これで再び迷うものなら、自分はもう二度と拳を握る資格はないだろう。本当なら柄ではないが、礼の一つも述べるのが正しいのだろう。

だが、今ではない。本当に感謝し礼を尽くす気があるなら、武神に、百代に勝ってからだ。

それまでは自分には、礼を述べる資格はない。

 

「ふぅ」

 

小さく息を吐きながら思い出すのは、さっきの言葉の全て。憧れた男が自分との約束を護ると言った。その言葉だけで、迷いのほとんどは知らない間に消えていく。

 

「やるぜ。そして、あんたら(・・・・)に絶対に追いついてやる!!」

 

拳を大きく天に掲げ告げた悠介の表情は、正しく武人の顔であり、何時もの悠介である。

そうやって山を下りていく悠介の視界に十人の人影が映る。それが誰なのかは、考えるまでもない。石田達だ。

彼らは悠介の通り道に、横に並んでいる。悠介はあえて何も言わず、石田の横を通り過ぎた。

 

「いいか!!これから話すのは独り言だ!!断じて、お前に向けた言葉ではない!!」

 

悠介が石田達を横切って直ぐに、石田が大きく声を張り上げる。石田の言葉が発せられたと同時に悠介の歩みが止まる。

 

「おれたちは敗けた!!故に、悠介には挑まん。だが、此処で誓え十勇士!!」

 

石田達は交流戦の後、悠介と戦うと言った。勝ったらとは言っていなかった。

違う、勝つつもりでいたのだ。だからこそ、その言葉を言わなかったし、悠介自身も理解していた。

悠介ならば、別段気にせずに戦いに応じるだろう。しかし敗北した者が、そのままライバルに挑む。

それは侮辱だ。自分自身への侮辱、何より自分達がライバルと認めた者への侮辱。そんな侮辱を犯してまで勝負するぐらいなら、彼らは全く別の手段を選ぶ。

それが今の状況なのだ。

 

「おれたちは、もう二度と悠介に挑むその時まで、敗けんと誓え!!」

 

石田は言い終わると同時に刀を天に掲げた。それに続くように、島は槍を、大村は拳を、長宗我部はオイルの入った瓶を、毛利は弓を、大友は大筒を、宇喜多はハンマーを、竜造寺はバラを、鉢屋はクナイを、尼子は二つの鉤爪を、天に掲げた。

誓い。ライバルの前で、挑むその時まで不敗を誓う。その重さは武人である悠介も理解出来る。

しかし、次の言葉は予期できなかった。

 

「だから貴様もおれたちに敗けるまで、誰にも敗けるな!!たとえそれが、武神であってもだ!!」

 

石田の言葉は、誓いでも何でもない。ただの声援だ。石田だけではない、他のメンバーも言葉には出さないが、石田と同じ言葉を告げている。

石田達は鍋島から全て聞かされていた。

だからこそ、自分達が認めたライバルに送る、最大限の言葉。

石田達の言葉を聞いて一瞬呆けた悠介だが、すぐさま自分の拳を天に掲げる。それこそが彼らの声援に対する答えだと知っているから。

同時に悠介の中に沸き立った感情は、喜びだ。師だけではない。こんなにも近くにいたのだ。自分の不安や迷いを失くしてくれる戦友(とも)が。自分と同じく頂点に駆け上がろうとするバカが、こんなにも近くいたのだ。

本当にさっきまで、怯え迷っていた自分が恥ずかしい。そんなモノでよくぞライバルと名乗れたものだ。

自分が迷っている間に、石田達はこんなにも覚悟を決めたと言うのに。

だから自分も誓おう。

今後ろにいる戦友達に、ライバル達に誓おう。もう二度と自分が進む道を迷わぬと、そしてお前らのライバルで居続けると、誓おう。

誰でもない、自分が認めたお前たちに。

時間にして僅か数分。

しかし、彼らにしてみれば永久に近い時間が終わり、悠介は再び歩き出した。

その足取りは、今までよりもしっかりと迷いのないモノと化していた

 

◆◇◆◇

 

悠介と石田達のやり取りを見ていた鍋島は、嬉し様な笑みを浮かべていた。

 

――――ああ、それでいい。今は我武者羅に前に進んでいけ。若人よ

 

自分達の次の代の芽が確実に育っているのを、この目で見れる。一人の教育者として、これほど嬉しい事はない。

 

――――わかったろ、悠介?お前は一人じゃねえ。そいつらと共に進んでいけ

 

静かに一人で進む悠介だが鍋島の目には、その後ろに続くように石田達の姿が見えた。

それは、決して幻想ではないだろう。石田達の想いも背負って、悠介は自分の夢を叶えに行くのだ。

彼の始まりの地に。

 

――――全く、可愛げのねえ弟子だったぜ

 

思い起こすは、悠介との出会いから今日に至るまでの全て。その全てが大切なモノだと、鍋島は胸を張れる。

故に直感している。悠介の夢はあの地で、一歩前進すると確信している。

思い越した鍋島は空を見上げながら、これからあの地を中心に巻き起こるであろう出来事を予期し、笑みを浮かべる。武士道プランが施行されたのはもしかしたら、偶然ではないのかもしれない。

ある種の必然を帯びて、あの地で行われるのかもしれない。

運命などと言う言葉をあまり信じない鍋島だが、今回ばかりはそう思わずにはいられなかった。

まるで世界があの非才の少年を試しているの様だ。

人は神に勝てるか?あの二人がぶつかる時その答えが分かる。

その時の光景を想像した鍋島は

 

「楽しみだ」

 

一人の武人としてと師としても意味を持たせそう呟いた。

 

悠介は西の地にて新たな誓いと想いを馳せ旅立つ。

そして彼は再び武人たちの聖地『川神』に足を踏み入れる。




いよいよ次回から、舞台は川神に戻ります
楽しみにしてくれたら嬉しいです

さて、どうやって再開させようか

良かったら、感想をお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。