時は竹取物語、奈良時代の話
「・・・ん。人の足音?こんな夜中に誰だ・・・?」
場所は都から離れた森の中、1人で旅をしていた私は山の中の木の上で眠りについていた。しかし、遠くに聞こえる足音に目を覚ましたのだった。
足音は2人分、走っているようで音が近付いてくる速度が結構早い。
何かから逃げているのか、もしくはこの山を越えた先に急用があるのか。
木から下りた私はその木の裏で息を潜め、近付いてくる2人の影を一目見ようかと木から顔を出した瞬間・・・
「んっ!?」
眼前に何かが迫るのを勘づき咄嗟に顔を引いて避ける。後ろを見ると目の前を通り過ぎ後ろにある木に突き刺さったのは矢だった。
問答無用の攻撃に冷や汗が垂れる、それとともに狩人であれば私が獲物ではないことを示さないとまた撃たれるだろう。
「待て、獲物ではないぞ!」
そう言って飛び出すのだった。
「姫様、大丈夫ですか?」
「・・・はぁ・・・はぁ・・・箱入り娘には来るものがあるわ・・・でもまだ大丈夫よ。」
山中を顔を見えないように布を被った姫様の手を引いて走る。姫様が月に帰ることを望まない、それだけで周りの使者を殺し2人で逃げる選択肢を取るのに十分だった。
姫様が追放される要因になった蓬莱の薬を作り、あげく追放された姫様に対しそれを作った私は無罪放免という罪悪感がそうさせた。この選択に後悔はない、姫様と共に生きる。
都からの追っ手を弓で対処しながら走り大半を倒し、山の中を走っていると前方に人間の気を感じ取る。
(先回りされた・・・?とにかく今は邪魔をする者は皆殺すだけ。)
弓を構え、木の裏にいる人間が顔を出した瞬間弓を放つ。が、避けられる。
(避けられた、次は確実に「待て、獲物ではないぞ!」・・・追っ手ではない?)
目の前に出てきた男は追っ手の兵士とは明らかに違う格好をしている。が、関係ない。姫様を背中に隠し最後弓を構え射抜こうとする。
「女性2人・・・?待て、狩人でもなさそうだしのっぴきならない事態そうなのは分かった。・・・山を抜けるならこっちだ、付いてくるといい。」
そう言ってこちらに背を向ける男を見て考える。まず考えられるのはこの男が追っ手側の人間であるかどうかだ、油断させて誘い込み複数人で捕らえにかかる算段の可能性がある。
しかし目の前の男からは人を騙すという意識は感じ取れない、先手で弓を一発撃たれ今も私の殺気を受けてなお何もボロが出ないという時点でとりあえず向こうからの敵意はないのだろう。
(後々敵対するなら最終的に黙らせればいいか。)
背中に隠れているのが姫様であることを知った際に、豹変する可能性は十分にある。
だが地形を知っている人間に道を案内してもらうのが一番良い。
「良いですか姫様、あの男について行きます。顔を見られないように注意してください。大丈夫です、必ずお守りします。」
「ええ、お願い。信頼しているわ××。」
「よし、こっちだ。」
「見えにくい獣道だが、一応ある程度進めば広くなって歩きやすくなって近道になる。付いてきてくれ。」
そう言って藪をかき分け進んでいく男の後ろについていく形で進んでいく。
「何か事情があって走っていたんだろう?そこまで急いで山を越さないといけないようなことがあったのか?」
「・・・」
「まあ話してくれなくてもいいさ。そろそろ獣道は抜けるぞ、今度は崖際を歩くことになるから注意してくれ。」
道を抜けた先にあったのは急斜面が削れた形で出来たような道だった。予想外な道を歩むことになったが、こんな山を普通に越えようとしたらどれだけの時間がかかったのだろうか。
「そういえば自己紹介してなかったな、詠知、各地を旅している人間。ここの土地にある程度詳しいのはそういう理由だ。」
「・・・」
あまりこちらの素性を話すわけにはいかないため沈黙を貫く。途中生えている花や草の効能に関する話をしていたりと、ここまで来ると純粋な善意であることはもう分かるため心苦しくはある。
「・・・かぐやという名前を知っていますか?」
(姫様!?)
姫様が口を開いてしまう、もしこの男が姫様の声を知っている人物であれば今ので勘づかれてしまうかもしれない。
「うーん・・・知らないな。その人を探しているのか?」
「・・・そうです、かぐやという人を探しているのです。」
「そうか、見つかるといいな。・・・あそこに見えるのが向こう側、もう一息だ。」
なんとか誤魔化せたようだ、そしてもうすぐこの道が終わる。・・・その2つが油断を招く。
「きゃっ!?」
「姫様!!」
私の後ろを付いてきていた姫様が体勢を崩し悲鳴をあげる。顔が見えないように布を被る形、そして使者の迎えを受ける際の服装のままであるため決して動きやすい服でもない。そしてかなりの時間歩いた事による疲労に歩き慣れない山道に、歩いているうちに朝日が昇り始めていたもののまだ薄暗かった点。
姫様にとっては酷な条件であることは理解していたし、体勢を崩す可能性も考慮して手を繋いでもいた。だが時機が悪い、私がした一瞬の油断の瞬間にそれが来てしまったことで手をつないでいた私も体勢を崩してしまった。
この高さから転げ落ちればただではすまない、せめて姫様だけでも守り抜かなければ。そう思い姫様を庇うため抱きつきにいった瞬間・・・
「・・・・・・大丈夫か?」
私と姫様のつなぐ手を上から掴む形で落ちることを防ぎ・・・姫様の顔に被せていた布は落ちてしまったものの2人揃って男、詠知に引き寄せ抱き上げられる。
「危なかったな。すまない、女性には酷な道だった。」
その状態で運ばれ少し広くなったところで降ろされる。
「ありがとう、助かったわ。」
「ありが(パサッ)・・・えっ?」
礼を言おうとする姫様に脱いだ上着を被せる。
「すまん、顔を見られないようにしたいのだと思うんだが・・・被せられるものがこれくらいしかない。男の着ていた上着は嫌だと思うが、少し我慢してくれ。」
「・・・構いません。ありがとうございます。」
「さ、もうすぐだから頑張ってくれ。」
「よし、着いたぞ。」
朝日が完全に姿を現したと同時に、山越えを終え麓にたどり着く。眼下には小さな集落が見える。
「向こうにある集落の商店の店主は寡黙で勤勉な人だ、決して口外することはないだろうからそこで食事を買えば良い。はいこれ金。じゃあ達者で。しばらく追っ手も来ないだろうからゆっくり歩くと良い。」
「「ちょっと待ちなさい。」」
集落の方を指指しながら、じゃらじゃらと音を立て小銭袋?を差し出してくる詠知。反射で受け取ると、手を振りながら遠ざかろうとするため引き止める。・・・姫様と声が被ってしまった、ちょっと恥ずかしい。
「何すぐに去ろうとしているの。あと追われていることを知っていたのね。」
「・・・いやあんまり深入りすべき事情じゃなさそうだなと。」
「今更何を言ってるのかしら。ここまで来て、はい終わりで帰すわけないじゃない。」
姫様の顔を見たし、触れた男をそう易々と去らせるわけにはいけない。それに一方的に恩を売られるだけ売られて去られるのは月人関係なく生物として情けない。
周辺の土地柄に詳しいのもあるし今はもう旅の道連れにする気満々である。
「そうです。まだ付き合ってもらいますからね。」
姫様も同調する、
「・・・それなら話せることは話してくれないか?口外はしないと約束するから。」
姫様と顔を合わせ、お互いに頷く。この男にだったら話しても良いだろう、と。
「想像の比にならない規模が大きい話だった・・・」
月での騒動から姫様の追放に都での出来事に逃亡に至った理由。姫様と交互に語り大方の話を語り終えると、困ったように笑いながら頭をかく詠知。
「あんまり驚かないのね。」
「ほら落ちそうになったとき"姫様"って言っていたのを聞いて高貴な方なんだなとは思ってたし、そんな人が夜中に山に顔を隠して走っていたということは何かから逃げていることくらいは察しは付いてた。まさか姫は姫でも月から来た姫とはな、しかも不死人。面白い話もあるものだ。」
「・・・なるほどね。物わかりが早くて助かるわ、それじゃあ案内よろしく。色々と詳しそうだから地上の話をしてくれると助かるわ。」
「ちなみにそちらの姫君はかぐやと呼べばいいのは分かったが・・・君はなんて呼べばいいんだ?」
私の本名は地上の人間では決して発音することのできない名前なのだ、そのため別の呼び名を考える必要があった。
「追々考えることにするわ。とりあえず今は八意と呼んでもらって結構よ。」
「そうか。・・・ちなみに今更だと思うが、拒否は?」
「この話を広げられるといけないし・・・ここで眠ってもらおうかしら、永遠にね。」
「・・・はるか東になるのだが、地元の住人ですら迷って出てこられないといい忌避されている竹林がある。歩いても半月はかかるがそこなら隠れ家を用意するのに丁度良いはず、そこに向かおうと思うがいいか?」
「私は良いわ。良いですか姫様?」
「私もそれで良いわ。ふふ、楽しい旅になりそうね。」
「・・・ほぼ部外者の私が言うのもなんだが一応逃亡中だからな?」
詠知くんが関わらなくても時間は掛かるが山を越えていずれ竹林(後の迷いの竹林)にはたどり着けたはした。でも土地勘のある詠知くんによって近道で竹林に一直線に向かうのでかなりの時短になります、RTAでもしてんのかな。
ちなみにこのタイミングだと輝夜は蓬莱人ですがまだ永琳は蓬莱人になってないはず、詠知くんが落ちるのを阻止しないと多分大怪我を負うことになります。