貞操逆転世界で地味根暗系目隠れ天才美少女幼馴染にツバをつける話 作:鵺丸
◇
「ね、ねえ、ちゃんと手握っててよ?」
「だ、大丈夫だよターくん、ずっと一緒にいるよ」
「うん、なら安心⋯⋯」
現在、俺は大会が行われる市内の陸上競技場に父の運転する車で向かっているところ。普段は所属しているクラブのバスなのだが、今日は違った。てか寝坊した。
恥ずかしい話、何故だか俺は車が大の苦手で、気の許せる人と触れ合って居ないと涙腺コルクが外れて泣き出してしまうのである。その為応援に来てくれるというミヤと一緒に車に乗り込んだワケ。精神年齢が大人も大人な俺が少女と言ってもいい年齢の子に手を握ってもらいながら、恐怖に耐えてるとか恥ずかしくないの?恥ずかしくないです。役得です。ドモ。
「ほーんと、なんでだろうねー?こーんな小さな時から車に乗ると泣き出しちゃうんだよねタイヨウは」
信号待ちの間、ルームミラーでこちらに目線を向けながら指先を数センチ開けてジェスチャーをしてくる父ちゃん。
「いつもありがとうね、美夜子ちゃんわざわざ一緒に来てもらっちゃって、おやすみだったのに良かったの?」
「は、はい‼︎寧ろ、お義父さまのお車に一緒にのせていただきありがとうございます、両親は今日は仕事で、バスで応援に行こうと思ってたくらいですので、こちらとしても嬉しいお申し出でした」
薄らと汗ばむミヤの手をにぎにぎしながら、できるだけ視界にミヤの姿を入れておく。いつもの大人の天才ターくんは今はないのだ。若干うわずりながら答える姿もかわいいね。すべすべのお手手最高、ずっと触ってられるよ。
「おやおや、今時の女の子は成長が早いね、美夜子ちゃんのご両親とは昔から仲が良くてね、君もこーんな小さな頃から知っているが、女子、三日会わざれば、刮目してみよ、だねぇ⋯⋯。
ふふっ、そっか、これからもタイヨウをよろしくね」
「も、勿論デス!私にお任せください!ターく、いやタイヨウは私が守ります‼︎」
シートの隙間から身を乗り出してアピールしているミヤ
決意表明してるとこ悪いんだけど、そのターくん貴方が手を離したので気絶しそうですよ〜。
アッ!ウーン()
「うわぁあああッ‼︎ターくん⁉︎ターくーーーーんッ!」
めいっぱいに広がる焦って大きく揺れるミヤの目も素敵――
◇
小学6年男子100m決勝の舞台である。
その8名の中に一際存在感のある影があった。
――俺だ。
◇
父ちゃん、ミヤと別れコーチの寝坊のお説教を受けながし、更衣室でさっさとユニホームに着替える。
うーん、このユニホーム、窮屈というかぴちぴちしててなんかエヴァのプラグスーツだな、前世の男子ユニホームはこんなもんだっけもっと余裕があった気がするけど。
まあいいか。
そんなことを思ってると更衣室の扉が開く
「おそいぞ、太陽」
お、お前は‼︎ま、まさかッ‼︎
「 プラネタリウム山田⁉︎」
「いや誰だよ」
「なんだ俺の親友の山田か」
「山田でもねえよ」
「それで山田(仮)どうしたのだ‼︎」
「もういいよ山田で」
頭をぽりぽり掻きながらそう言って少年は薄く笑った
顔の良い男の名前は覚えないと決めてるんだ、すまない。山田。
「お前小学生最後の試合でも寝坊するとか、心臓に毛でも生えてんの?」
「い、いきなり破廉恥なことを言うなよ、びっくりするじゃん」
「いやいやいや、お前の脳内ピンクすぎるだろ、てか、太陽お前今日車で来たってこと?大丈夫かよ?」
心配性だなぁ、山田は、まあそう言うところが好きなんだけど、ちょっと怖い系の顔してるのに優しいとかギャップじゃんね。
「ミヤと一緒に来た」
腰に手を当てて、もう片方で指でブイの字を作ってえっへんしてやる
「あ、マジか、相変わらずだなお前ら、夫婦だ夫婦」
「ふ、夫婦⋯⋯い、いや、ミヤは幼馴染だしそう言うんじゃないというか⋯⋯」
ミヤと結婚⋯⋯。
あかん、想像しただけで幸せすぎる。仕事で疲れて帰ってきたミヤにご飯にする?お風呂にする?それともお・れ・?・♡ってやりてえ‼︎
「いや、学校でもあんだけいちゃついてマジかよこいつ、てか美夜子のやつ告白すらしてねえのかよ⋯⋯取られちまうぞ⋯⋯」
妄想の世界から帰ってくると山田もなにやら考え込んでるみたいだった。悩み事か?俺っちに相談してみろよ友達だろ?
そう思いながらも、準備を終える。うーん慣れたとはいえ、この服、恥ずいな⋯⋯。
「⋯⋯おっと、着替え終わったか、んじゃ行こうぜ、うちのエース様」
そう言って手をぐーにしてこちらに向ける山田
「おう!相棒」
それに合わせるように拳を突き出す俺。
【二人は最強】みたいな映画撮れそうなシーンだなぁ〜。男同士の友情に勝るものなし。
◇
予選は無事通過、今日の調子はいつもより良い。
お前らは俺の陰すら踏ませない。
この舞台に立つときだけは、血が沸き立ち、闘争心が溢れてくるのをヒシヒシ感じる、そんな気分の高まりが俺は好きだ。
周りが手足をぶらぶらさせたり、ほぐしたりしている中俺はただ立って観客席にいるであろうミヤを探していた。
「あ――」
見つけた。父ちゃんの隣で、日光から頭を守るようにタオルを被せてこちらを見ているミヤ。暑いの苦手なの知ってるから無理してこなくて良いよって最初は俺も遠慮して言っていたけど、それでも試合は毎回来てくれる⋯⋯そんなミヤが好き。君が一緒にいてくれるからこの舞台がもっと好きになる。負けたくない。
俺は君を見つけたよ。君も俺を――。
軽く手を振ると、父ちゃんと一緒に手を振りかえしてくれる。内気な彼女も今日だけは普段より大きめのジェスチャーなのがかわいい。
と言うか今日はいつもより観客が多いな。カメラも多い気がする。まあ俺が気にすることじゃないか、俺は気持ちよく走るだけ、練習したことを出すだけだ。
「では、各選手用意してください」
係の人の声が聞こえて、俺はスターティングブロックの後ろに移動する。
―― 一瞬で、周囲から色が消える
――今日は本当に調子がいい
「君、キタくんやろ?ボク、ウラってもんなんやけど―――」
隣から声が聞こえた気がした。が、今の俺は無敵だ。つかこの瞬間は喋れねえんだわ。わりいな。 話しかけんな。ころすぞ。
目線だけ向けると、相手は糸目を曲げて口はさらに口角を上げるこれまた顔の良い少年なんだこいつ、うざい。
『セット』
音声が響いて全員がブロックの前に移動し発走姿勢を取る。
頭の中は真っ白で、この瞬間はただ一人の事を除いて全てを忘れ去る。
――ピッ
腰を上げ――
――パン
乾いた音が響いた瞬間
世界から色が戻る―― よりも疾く、脚を大地に刺す。
この時、世界と繋がるのを実感する。俺がここにいることを世界に証明する、風より疾く誰より速く。
駆けて――翔ける――
ハッ――ハッ――ハッ―― 一定のリズム呼吸
ヒュッヒュッと風の中を俺の身体が切り裂いていく音だけが聞こえる。
そして視界に誰の姿を映すことなくフィッシュラインを超えた
タイムは
"11秒36"
会場のどよめきが聞こえるが、俺の目はミヤだけを映す。
父ちゃんとミヤは手を合わして嬉しそう飛び跳ねていた。
その笑顔を見たくて俺は走ってるんだ。と実感してからようやくガッツポーズ。
「ふぅ――」
女子の記録さえ追い抜いて、小学生男子100m記録、1秒更新のインパクトは1日も経たずして日本を包んだ。
◇
陸上エアプです。でも見るのは好き。あんなに速いと気持ちよさそう。
■ 山田(仮)
多分、男 多分、山田 小学校からの仲
■謎の関西弁 ウラ
男、糸目系 アニメだと多分裏切ってくるヤツ