貞操逆転世界で地味根暗系目隠れ天才美少女幼馴染にツバをつける話 作:鵺丸
いらない、青色。
◇
お寝坊さんのたーくんの寝顔を見に家に向かうと御義父様に帝王附属の体験入学に行っていると伝えられた。
確かに昨日のマッサージ中、そんなことを言っていた気がするが、マッサージに夢中で……。
はぁ……。仕方なく自分の作業と並行してたーくんの情報収集をしていると。
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北くんがアタラちゃんに抱き着かれてる!
付き合ってんの!?
【画像】
| こ | り | い | き |
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ぽろっ
見つけた画像に思わず、携帯を落とす。
この赤髪コロス……ッ‼たーくんに不安そうな顔をさせるこの女をどう料理してやろうか、ギリギリと歯ぎしりをしながら。上着をつかんで急いで行動を開始しようとして――
足が止まる。
少し前
『お前は、太陽のなんなんだ?友達なのか?幼馴染なのか?彼女なのか?』
『はっきりしてやれよ、太陽がかわいそうだぞ』
『もし、幼馴染だっていうなら、恋人じゃないっていうなら――
あんまり太陽を縛り付けるなよ?』
私は、太陽のなんなんだろう。
この女を成敗する、大義名分が……なかった。
◇
「ごめんなさい、好きな人がいるので。」
そういいながら、抱き着いてきた女の子を引きはがして――ちからつよッ
ふぅ、改めて目の前の女の子を見やる。
これが本当に小学生か?身長はもちろんだが、中学生、いや高校生と言われても違和感がないほどに均等についた筋肉と、その……大胸筋。
そして、一際目を引く、癖のある長い赤髪を後ろにまとめて、のぞかせる赤い瞳。美人なのは間違いない。母国ではさぞモテるだろうことは、その堂々たる立ち振る舞いから想像できる
転生したばかりであれば飛びついたその告白も、この世界で馴染んだ俺の価値観や、――想い。それが俺をとどまらせる。
「関係ない、むしろ興奮する」
そういって又、近づいてくる赤目ちゃん
略奪愛とか、小学生で宿していいものじゃないだろ。思わず嘆息する。
「そこまでにしとき」
そういって赤目ちゃんの後ろから現れた糸目イケメンには見覚えがある、気がする。
「あぁーっと……前あったよね」
記憶に靄がかかってうっとおしい。
「……覚えとってくれたんか?なんや嬉しいわぁ、改めて
そう言って頬を染めて腰を深く折る男の子、礼儀正しいなぁ俺とは大違いだ。
「俺は北太陽、よろしく!」
そういって手を差し出す。
「…………」
俺の手のひらをその糸目を開眼せて見つめる糸目、いや、開眼くん。
きたなくないよ?……多分。ちょっと緊張で汗ばんでるかも。やばいかも。
少しの間があってようやく握手。ひんやりとした手にびっくりするが、糸目くんも緊張しているのかちょっと汗をかいていて共感。
にぎにぎ。にぎにぎ。
満足して、お互い手を放す。
名前メモしないと。
「よし、自己紹介はすんだみたいんだね」
そういってうんうん頷いてるコーチ。
いや、あんたにはちょっと言いたいことあるけどね。
男女逆転したら海外マッチョイケメン男にいきなり後ろから抱き着かれて、においかがれてる陸上女子みたいな光景なんだけど。セクハラなんですけど。
つい、最近勢いのある
なに"青春だなぁ"みたいな顔してるんだ。まあ、俺は胸が当たってちょっとうれしかったけど。ほんのちょっとね。うん。俺は一途なんです。
そんなことを考えていると
「実はこの場で君たちを集めたのは訳があるの」
そう、この人は切り出した。
◇
「交流試合?」
その場にいる全員を代弁するように俺はそう呟く。
「そう、世界で見ても上澄みの小学陸上3人が一堂に会してるんだよ?やるしかないでしょ?それに」
――世代最強……決めたくない?
最強。
その言葉に熱くならない男はいない。
「やろう」
思わず喉を震わせる。
――試合前の高揚感が俺を包む。既に調子がいい。ベストなコンディションだ。
だがその俺の声にかぶせるように、言うのがこの女だった。
「そんなかわいそうなことできない。あたしは女でこの子たちは男の子、勝負にならないよ」
心底哀れ、そう顔に出して言うのが癪に障った。
「男に負けるのが怖いんだ?」
「負けるわけない、あたしは世界最速の女、ハンデを付けたとしてもそこらの日本人、それも男が相手になるわけない。」
「君いう世界ってずいぶんちっちゃいんだね、今から負けた時の言い訳作りかな?かわいいよ」
どこか俺を、日本を、男を、小馬鹿にしたその目に態度に腹が立つ。売り言葉に買い言葉、お互いがヒートアップしていくのを感じる。
自分が最強という自負があるんだろう。だけどそれが井の中の蛙であることを分からせてやる。そう息巻く。
「ええんちゃう?世界一決めるの。今日こそは勝って魅せるで?
――キタくん?」
最後の一人は俺だけを見てそういう。
――ゾクッ
その目をみて、思わず鳥肌がたった、それほどの気迫を感じたのだ。知らなかった、見てこなかった。同世代では俺が無敵で、誰も勝てない。事実俺は負けなかった。
だけど、それも今日までの話かもしれない。という予感すら感じさせる真っ黒の瞳だった。
◇
俺は手ぶらだったので、それをコーチに言うと
当然のように俺のスパイクとセパレートを手渡された。
用意がいいな、まあそりゃそうか。
更衣室では糸目くんと一緒に着替える
かちゃりかちゃり――するする。器具の音と衣擦れの音。
一緒に着替えている彼をついついチラチラみてしまうのは男子トイレでついうっかり隣の人のモノを見てしまう習性と一緒だろう。見たくないのに。
さっきの宣戦布告を聞いての再開でちょっと決まずいけど。
デモ見ちゃう。
そうやって見た彼の身体は無駄な肉をそぎ落として走るために鍛えて、鍛えて鍛え上げた努力の跡が見て取れる。正直負けた、とすら思ってしまった。
少しの敗北感に打ち震えていると視線が合って口が開くのがみえる。
「僕は、北くんに憧れて陸上始めたんや、実は何度かあってるんやで?」
そう……なんだ。
「憧れた君とおんなじ舞台で、僕と目を合わせて、話してくれるだけで感動もんやわ。ありがとう。今日は勝つで?」
いうだけ言って、さっさと着替えて彼はスタスタと行ってしまった。
絶対勝つ。さっきの敗北感を忘れて、そう思った。
◇
各々入念な準備運動をして、身体もあったまり、いよいよ、走るというときになる。スターティングブロックの後ろに移動。本番形式でやるようだ。
あの大きなスポーツタイマーも用意してあって本格的である。
あとずいぶんギャラリーが増えてる。観客席には小学生やその親、帝王の生徒であろう姿や教員も、野球部、サッカーのユニフォームをきた人たちもいる。
――ここにきて俺は、めちゃめちゃ緊張していた。がっちがちである。
「きたくーん‼こっち見てーッ‼」「アタラー‼女の意地見せろーっ‼」「負けんなよー!」「宇良くーん‼寝てるー?!」「寝てへんわッ‼」
大会でも、ここまで緊張しなかった。
あの時は、ミヤだけを見ていたからだろうか……実はミヤがいないところで走るのは初めての経験で、身体が落ち着かない。
ジャンプしたり、手をぶらぶらさせたりしても一向に浮ついた心は収まらない。あぁ、途端にさっきの赤目ちゃんとのやりとりが恥ずかしくなっていた。人の事言えないよ……。
これで負けたら――
「フゥ――ッ‼」「ハァ――ッ‼」
深呼吸すると余計に感じる身体の違和感。さっきまでの調子のよさはどこへやら。
俺って……ほんと、ミヤが居ないとダメなんだなぁ。
奇麗な蒼色、海の色。ずっと昔から知っている色。
透明な板ごしのあの瞳がいつまでも記憶の中で色褪せない。
ミヤの笑顔を思い出すと、少し元気が出た。
今何してるのかな?最近小説も書いてるらしいけど……ほんとうちの幼馴染は天才だ。あの子に見合う男になって――そう思っていると、周囲から色が消える。
ふふ……俺ってホント、単純なやつ。
『セット』
■アタラ
3回走って全敗、呆然自失。
日本語も口説き文句もアニメで覚えた。
TwitterのDM交換した。
■宇良桐
名前判明。初戦勝って吠えた。主人公の事を――。
ライソ交換した。イソスタも。
■主人公
本作一度も幼馴染以外の名前を口に出さない子
1回負けて、びっくり。2、3回目は勝ったけど……。
■コーチ
死ぬほど頷いてた。
■幼馴染
2戦目についた。小説書いてる。最近アニメ化された。