貞操逆転世界で地味根暗系目隠れ天才美少女幼馴染にツバをつける話 作:鵺丸
「うー、さみぃー」
そう言って我が教室に入ってきたのは山田、スクールセーターを萌え袖のようにして手を隠している。山田は違うクラスだが今はお昼休み、クラスの人も俺以外はほぼ出払っていて、隔てる壁はなかった。
「今日もいい食いっぷり、見てて気持ちがいいよ。そんだけ食って太らないお前が羨ましいわ」
言いながら俺の目の前の椅子を逆に座って背もたれに手を組みその上に顎を載せて座った山田は給食を速攻食い終わって、さらに父ちゃんお手製爆弾弁当を夢中で貪る俺に話しかけてきた。
「もぐんごぶも、おあん」
「食い終わってから喋れ、お父さんが泣くぞ」
それもそうかと思って最後の唐揚げを口に頬張る。なんで父ちゃんの作る唐揚げは時間をおいてもこんなにジューシーなのか。花婿修行じゃないが、教えてもらいたいところです、ミヤに食わせてやるんだ‼
朝から揚げ物を作ってくれることに感謝感謝‼
うんめーーーーッ‼︎
最高ーーッ‼︎父ちゃんの息子でよかったーーッ‼︎
もちゃりもちゃり、と幸せを噛みしめて咀嚼する。
そして食後の一杯。2Lの水筒を傾ける。んぐんぐ
「ぷはああああッ!たまんねぇ‼︎んで、どうした山田」
「男が仕事終わりの一杯みたいな声出すな、あと山田じゃねえ
つか、もういいわ‼︎何回目だ、このやりとり‼︎⋯⋯まあお前だから良いけどよ」
そういって首をさする。ロン毛茶髪イケメン。
先生!校則違反ですッ‼︎え?地毛?
⋯⋯。
ちぇっ、ツッコミもうまくて、イケメンで性格もいいときたもんだ。神は一体彼に幾つの才能を与えたもうたのか⋯⋯つか、俺の周り顔面偏差値高くね??俺の立場がねえよ。
そう思いながら続きを促す。
「最後の陸上大会も終わって進学の時期じゃん?お前らはどうすんのかなって。」
進学……帝王……ウッ、アタマガッ‼
結局、あの体験入学が終わって赤眼ちゃんと、糸目くんとは連絡先を交換して今でもちょくちょく連絡をとってる、赤眼ちゃんはあの後だいぶん大人しく(?)なったのかまじめに練習に取り組んでるというのをコーチから聞いてる。練習してなくてもあの早さかよ。
俺には勝てなかったようだがなぁ‼ガハハ‼
まあ俺も糸目くんには負けたんだけど……というか糸目くんライソの既読がどんな時でも10秒以内につくから面白くてくだらないことでも連絡してたらめっちゃ仲良くなった。ちなみにミヤは1秒、なに?俺の事好きなの?
「てか、あれ美夜子はどうした?いつもくっついてんじゃん?」
言いながら辺りを見渡しミヤが教室のどこにも見当たらないのを不思議そうにする山田。
「わかんね、なんか給食終わって、違うクラスのモブイ?っていう男子に呼ばれて出ていった〜」
「それ同じ陸上部の奴だし……顔だけでも覚えてやれよ。
……お前、止めなかったの?」
怪訝な顔をしてこっちを見る山田
「なんでよ」
見つめ返す俺
「はぁっ⋯⋯。美夜子も美夜子だけどお前もお前だよ⋯⋯。
あんな、最近美夜子うちのクラブの男子に結構人気だぞ?」
ほ、ほー……。
俺はランドセルから【君恋】の最新巻を取り出してページを開く。
「そりゃ最初は女子のマネージャーとか⋯⋯って言われてたけどな?たまに来ても怪我したときの対処も一流だし、何気に力持ちだし、頭もいいし、顔もよく見たら整ってるしで好意的なやつは多いぞ?」
なるほどねーこういう展開か〜。
「その呼び出しも絶対告白だぞ?いいのかよ?」
「へ、へーそうなんだ、べつに?俺、ぜんぜん気にしてないし」
貧乏ゆすりが止まらない。
「ちなみに漫画、上下逆さまだぞ」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
◇
とりあえず告白の件は忘れて【君恋】を読み進める。
【君恋】はアニメ化もされている今一番面白い小説原作の少年漫画である。ジャンルは学園恋愛SFサスペンスホラースポーツ系。
ちなみに国民的海賊漫画は少女漫画だからね。航海士の男の子がマイクロビキニ着てた。頭がおかしくなりますよ。
「うわ、まじかよ、この子振られるとかマジ⁉︎いやーーッ‼それはないよ作者、センスないわ。俺の推しなのに⋯⋯」
普通にショック。
「はッ!?太陽てめぇ!ネタバレすんなよ、アニメ勢をネタバレで殺す気か?」
「ネタバレされるほうが悪いねぇ!死なば諸共じゃい!傷心も分け合えば半分こ‼︎」
「お前が半分になってもオレは100のままなんだよ‼」
ぎゃいぎゃい二人でバカ騒ぎしていると、ぬるりと眼鏡が俺と山田の顔の間に入り込んできた。
「うぉッ⁉」
思わず山田と抱きあっちまった。
「山田氏、北氏、主人公は結局この子と付き合うんですぞデュフフ」
小説を持ちながら登場したのは眼鏡である。
「はぁ!?」「ハ?!」
なんだこいつゥ?!やってること悪魔じゃねえか!?
「ネタバレは"されるほうが悪い"でしたかな。ヒュコォー、MM氏を馬鹿にした罰でござるよ」
眼鏡をくいっとしながらいう片方の口端を釣り上げて言う眼鏡。小説派かよこいつ‼俺をブちぎれさせたお前は今から祭の主賓だよ、血祭という名の祭のなァ!?
「オレ被害者じゃねえか‼ふざけんな‼」
山田もブちぎれてる。気持ちはわかるぜ兄弟、一緒にあの害悪を倒そう‼半分こだな‼
言いながらも、俺の頭の片隅にはミヤの告白の件が頭から離れてなかった。なんで俺の頭は都合よくできていないのか。こういうのは忘れてくれねえ。
だ、大丈夫だよね?あんなことやこんなことをした仲だし……。
何年俺ら一緒だと思って……いや、逆に長く一緒に居すぎた?もう男として見られてないパターン?家族として見てて恋人として見られないとかいう話はよく聞く話だ、嫌な想像が膨らむ。
でも、俺から告白はできなかった、だって――。
「そ、それでも最後は、幼馴染と結婚するよ?」
「ウワァァアーーーッ!?」
いつの間に戻ってきたのか教室の入り口に立ってるミヤはそういいながら俺の隣の自分の席に着く。そしてなぜかじっと俺の目を見てくる。いや、なに?俺を君のその奇麗な瞳の中で閉じ込めたいのかな?なにそれロマンチック。
意味不明な言葉の羅列が止まらん、ミヤの事を考えていた時に現れるもんだからびっくりして心臓がバクバクと血を巡らせる。
告白はどうなった?そう聞きたい俺だが、口が開かない。
「お、美夜子、呼び出しされたんだろ?なんだったんだ?」
ナイスゥゥゥゥウウウ山田ァ‼あとでキスしたる。バチコリとウィンクを山田に向ける。おい。うげって顔してんじゃねえ。
ちらりと、ミヤの顔の覗く。
「え?あ、あぁ……。別に陸上の事聞かれただけだよ?」
山田の方を向いて小首を傾けながら答えるミヤ、かわいい。
とりあえずほっと一息をつく。そらみたことか!ミヤの可愛さを知ってるのは俺だけだって‼告白なんてありえんのだッ‼
納得のいってないような顔をする山田。
「まあ、いいわ。美夜子も戻ってきたし最初の話の続きだけど、お前らどこの中学いくの?」
あぁーそんな話もしてたな。
「俺は帝王附属に誘われてるんだけど……
――断ろうと思ってる。」
いい学校だとは思うけどね勉強が二の次っていう校風なのと、飲食無料なの最高よ。でもまあ。
「何ででござるか!?帝王といったら誰もが憧れる名門中の名門、入ることができれば未来は安泰ともいわれてる学校でござるよ!?」
机にぐでっとしながら頬杖をついて言った俺に大げさに驚いて見せる眼鏡。
なんでっていってもなぁ……。
「そんなすごい超名門の中で仲間同士、切磋琢磨もいいんだろうけどさ、俺はそいつらと大会で違うゼッケンを背負って戦いたくなった、なんかかっこよくね?そーいうの」
――走った俺の視界に初めて映ったあの背中、黒い瞳に。
そういった俺に3人は呆れたような、それでいて少し温かいような目を向けてくる、なんだよ。なんか恥ずかしいんだが。
「はー北氏はやっぱり凄いですなぁ」
眼鏡が続けて言葉を続ける。
「南どのはどうするので?」
「わ、私はたーくんと一緒ならどこでもいい」
帰ってきてからいやに静かだなミヤ。
……ミヤは頭いいから、違う道もあるとおもうけどね
言い負かされるから言わないけど。一緒に居られるのは嬉しい。でも、ミヤの人生を狭めてるみたいで、心が苦しい。
「まあ、でしょうな」
言うと思ったといわんばかりに頷く眼鏡
「ちなみにお前ら二人は?」
想いに蓋をして聞く。
「オレ?オレは別に太陽みたいに特別足が速いわけでもないし、美夜子みたいに頭もよくねーからなー、まあ近いし中央じゃんね?周りもほぼ中央だし」
山田が口を開くと続くように眼鏡も告げる。
「同じく」
眼鏡も中央か。
中央中学、うちの小学校からもほど近くまさに地元の学校という感じ、陸上も弱くない、強くもないが。頭もそこそこレベル。
「んじゃ俺も中央かなぁ……またお前らと一緒だな」
普通に嬉しい。俺友達少ないし。嬉しくなってつい笑みがこぼれる。
「また、おめーとかよぉー‼」
そういいながらも山田の顔はどこか柔らかい。素直じゃねえな‼
「歓迎するでござるよ、北氏」
眼鏡、お前は素直でかわいいなぁ‼そのぼさぼさ頭を撫でつけてさらにぼさぼさにしてやる。
そんな俺に目を向けて口を開くミヤ。
「あ、たーくん、再来週の土曜日って空いてるかな?」
再来週の土曜?教室のカレンダーを見る。11月21日?
「空いてるけど……?」
――映画でも、見に行かない?
え?
◇
「好きです‼付き合ってください‼」
顔を真っ赤にして目をつむるモブイ君を前に、どうしようか途方にくれる私。
こういった場合相手が傷付かない断り文句とかないのだろうか。陸上でそこそこ関わりのある相手である。今後の関係を悪くはしたくないのだが。
仕方ない、素直に言うしかないか。
誠意は伝わると思って。
「ご、ごめんなさい。す、好きな人がいるので付き合えません」
「……それって北の事?みんな、あんな奴のなにがいいの?身体がデカくて足が速いだけで何も考えてない能天気バカじゃん、テレビに出てて調子に乗ってるし」
ナニ、コイツ
エ、え?あれ。仮にたーくんが私が好きだとして、好きなんだけど。好きな人がいるっていう人間の前で好きな人を侮辱するその行為の意味を知りたい。それを君から聞いて、ああそうなんだ!じゃあ君に乗り換えるね‼とでも言うと思うのかな。
落ち着け、所詮小学生の知能。それはわかってる。落ち着け。たーくんが一人、たーくんが二人。たーくんが三人。あれ?天国?
ふぅ……。ありがとう、たーくん。
たーくんの良さをこの子に教育してあげないとだめだよね。これも義務教育の一環だよね。正しいのは私。
手を合わせて目を瞑って彼を想う。
「ター君はすごいんだよ?足が速いのは知ってるよね?君みたいなおバカさんでもそれくらいは、足が速いだけじゃないよ、誰よりも優しいんだよ?人の痛みを知ってるの」
それは昔の話。今よりもっと子供のころの。
「私は他の人と目の色が違うよね?だからいじめられてたの、気持ち悪い、変だって、言葉も知らないような幼稚園児にね、私は別にどうでもよかったんだ、そんなの、でも現れたんだ、私の太陽は。私の目を合わせて奇麗だよって、素敵だよって、お星さまを閉じ込めたみたいだって。私が傷ついているとおもったのか泣きながらそう言ったの」
そう、今考えても幼稚園児の言葉とは思えない舌足らずだけど、はっきりとした言葉。そのとき思ったんだ。
「彼は
私は一人じゃないんだって。
「太陽はいつも明るいね、いつもみんなを照らしてる。でも一人になると弱気になるし、影もできる。それを見せないくらい明るいから誰も目を向けないの。目を細めて分かった気になってるの、能天気なわけない、何も考えてないわけないじゃん。」
そんな明るさに目を奪われたのは私も一緒。
「だから責める気はないの、本当に。それが普通なんだってわかってる。だからね?太陽の前でそういうことは言わないでほしいの、どうしていいかわかんなくなっちゃうから。」
目を開くとモブイ君はいなかった。あれ?いつからいなかったんだろう。
しかたなく教室に向かって歩く。
廊下にも響くたーくんの楽し気な声。
あぁ。今さら気づいた。
私は太陽の夜になりたい。
彼を守る――
■眼鏡
眼鏡。オタク。ギャルに弱いオタク系女子。気を許した人には割と調子にのっちゃう。初期タイトルにあった幼馴染の眼鏡要素を吸い取った子。
■幼馴染
取られた子。視力よわよわ。
……おや!?幼馴染のようすが……!