貞操逆転世界で地味根暗系目隠れ天才美少女幼馴染にツバをつける話   作:鵺丸

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https://syosetu.org/novel/273050/1.html
SunGenuin(佐藤)さんの特殊タグ等参考にさせていただきました。
ありがとうございます。


買い物

糸くん

 

18:24既読 
今週の日曜ひま?

 

どうしたん?
18:24 

 

18:25既読 
買い物付き合ってほしくて

 

ええよ
20:25 

 

7:12既読 
ごめん!寝てた!

7:13既読 
感謝感謝!!

 

どこ集合しよか
7:13 

 

7:14既読 
●●駅前の犬の像前

7:14既読 
10時ではどうでしょー?!

7:14既読 
ちょっと早いかな?

 

 

10時りょうかい
7:14 

 

 

 

 

 

 雲ひとつなくカラリと晴れた日曜日、11月初旬。

 

 秋が終わっていよいよ冬に入ろうとする季節だが気候は安定せず、日差しもあって今日は少し汗が出るくらいの暑さ。上着はちょっと早かったかなぁと思いながら首元をパタパタさせる。

 

 立ち止まって、携帯に目を落としてやりとりを確認。よし。時間は大丈夫。犬像前に着くのは集合の10分前くらいになりそうだ。

 

 そうして携帯をしまい、また歩き出す。

 

 あの後ミヤの唐突なお誘いに数秒固まって、勿論OKした。まさかここにきて数年間の努力が実ったかと感慨深い気持ち。やはり陸上は神。

 それはつまり俺の長年の目標であった幼馴染"から"の告白――そしてその先、への道筋がようやく見えた、といったところ。

 長かった⋯⋯実に長かった。

 

 

 今日は来週に迫ったミヤとので、ででで、ででデートの前に服を買う予定。そのために糸くんと山田を召喚した。年の近い気心の知れた男友達はこの二人に絞られてしまう。とほほ。

 この世界に来てから自分で買った服はないし、親に買ってもらった服しかない俺は、この世界の女の子受けする服なんてもちろん知らない。 でも精一杯、ミヤとのデートを楽しむための努力はするべきだろう。恥もかかせるわけには行けない。だから二人に選んでもらおうと思っての今日である。

 

 考えてたらテンション上がってきたぁ!!!!

 

 そうアゲアゲのまま歩いていると犬の像が見えてくる、それと

――ん? 言い合ってる二人の男の子の姿が見える

 

「かえってくれへん? ボクと北くんの初めてのデートやねん……邪魔せんとってや」

 

「いやいや、何を勘違いしてんの? あいつまじ、なにしてんの」

 

やべ。俺主催者なのに一番遅れてるじゃん……ッ‼ あと少しの距離を駆ける。

 

「ごめーん! 待った?」

 

 気持ち声を張りながら小走りで近づくと、やはり山田と糸くんだった。

 

 振り返ってこっちを向く二人、だが俺は糸くんの方に思わず目を吸い寄せられた。

 

 糸くんは肩をだした少し生地の厚い白いワンピースにつばの大きい麦わらバケットハットを頭に被っているという恰好。おいおい、なんかめっちゃ可愛いんだけど。小麦色に焼けた肌に白ワンピは似合いすぎてる、男×ワンピでここまで似合うのは才能だろ。小学生だからっていうのもあるんだろうが、それでもすごい。

 でも少し暑いとはいえ11月よ今、寒くないの?

 

 しかし似合ってるので、思わず声が出る。

 

「糸くんめっちゃ可愛いね、びっくりした。」

 

 俺の声に少し頬を赤くする糸くん⋯⋯ずるいな。俺が女ならすぐ告白して振られてるわ。振られちゃうのか⋯⋯。

 

「北くん‼ あ、ありがと――じゃないねん! 

 なんかこん男がボクらのデートに混ざりたい云うてんねやけどッ!」

 

そういって山田に指を向ける糸くん、デート?何の話?

 

「混ざりたいなんかいってねーよっ‼ そもそもデートじゃねえっつの。

 話聞けよ‼ おい、太陽! おまえこの子にどんな誘い方したんだよ‼」

 

 えーっと、ほんとにどういう状況?デート……ミヤとの?

 

「普通に買い物行こうって言っただけだよ?」

 

 ライソを差し出して見せる。他の人にライソ見せるってなんか恥ずかしいね、興奮してきた。

 差し出した携帯をまじまじと見てから山田は糸くんに言った

 

「ほら、お前の勘違いじゃん」

 

「勘違いじゃないいうてるやろ? ね? 北くん? デートやっていうたって?」

 

 え、えーっと。とりあえず俺はお願いする立場である。

 

「ミヤとのデートに来ていく服、一緒に探してくださいっ!」

 

 二人に頭を下げる。こっちの世界の服の流行とかわかんないっ!走ってればいいとおもってた!

 そういうと糸くんがサラサラと砂になった。

 

 糸ぉおおオオッ!!!死ぬなぁッ!!!

 

「なんか……かわいそうになってきた、大丈夫か糸くん?」

 

「お前が糸いうな」

 

 あ、なんか戻った。俺が悪いのかな、これ。

地面に三角座りをする涙目の糸くんを山田が慰めてるのを見てそう思う俺。

 

うーん、でもやっぱ寒そう。暑いしちょうどいいか。

そう思って自分が着ていた上着を差し出す。

 

「糸くんなんか、ごめんね?あとこれ着てよ、寒そうだし」

 

差し出した上着を少し見て、受け取る糸くん

 

「あんがと、アタラが言うてたみたいにいい匂いや……太陽のにおいや……」

 

あ、上着着て立ち上がった。やっぱ寒かったんだ。

 

「っしゃぁッ!んじゃ買い物いこかーッ!地獄までつきおうたるでぇーっ!」

 

 青空の下、腕をぶんぶん振り回して大きな声を出す糸くん。よかったー!わざわざ遠くから来てもらったのに気分悪くなったらどうしようとおもってたんだよね。

 

 いくかぁー!と俺も続いて腕を上げる

 

 

「なんか、疲れた……帰っていい?」

 

 

山田は引きずっていく。

 

 

 

 

 

 

 

「ほーん、そんで美夜子ちゃんって子がデートに誘ってきたんや?で、北くんはそれに着てく服を探してると。その子って青目の子?」

 

「そーそー」

 

「やっぱりあの子かぁ⋯⋯帝王であった気がするわ⋯⋯くそぉ⋯⋯」

 

 大型ショッピングモールついてすぐ、中のフードコートでとりあえず先に昼ご飯をたべようと、席に着いてお腹を満たしていた。

 二人はもう食べ終わって、まだ俺が食べてる間二人が雑談してる。ごめん、俺が付き合わせてるのに。

 

「北くんは美夜子ちゃんのこと好きなん?」

 

 ごほッ!やべ咽た。

 

「まあ、じゃなかったら服なんか買いに来んわな、ごめんごめん」

 

「オレからしたらようやくかよって感じだけどな、こいつら学校でイチャイチャしてんだぜ、なのに恋人じゃねえんだもん一緒に居るオレの身になってくれよ」

 

「うわぁ……それきっついなぁ」

 

 いやなんか、意気投合してんだけど。共通の敵がいると仲良くなる現象かこれが、誰が敵だよ。のんびり食ってるわけにもいかないのでちゃっちゃと食いおわる。

 

 ごちそうさまでした。おいしかったです。

 手を合わせて、生産者の皆様に感謝する。

 

「ごめん、待たせた。んじゃ早速いくか、服‼ よろしくお願いします師匠達」

 

 椅子から立ち上がって、二人にも手を合わせて拝む。まじで頼むわ‼ ミヤが喜ぶようないい感じの服おなしゃす!お金はお年玉をこつこつためてきたので余裕がある。

 

「まかせとき、めっちゃかっこよくさせたるわ」

 

 胸を叩いて笑顔を見せる糸っち

 

「ま、ともかく太陽もオシャレに目覚めたのは喜ばしいよ、お前素材良いのに着飾ることに興味ないのはもったいないと思ってたんだ」

 

 片手で髪をかき上げてウィンクする山田。

 

 

 おまえらぁ……っ! 今日はいつもより大きく見えるよ! 俺の方がデカいんだけども。

 

 

 今日はよろしくお願いします! そう言ってもう一度大きく頭を下げた。しゃっす!

 

 

 

 

 くたくたになった俺は家具屋さんの展示品の椅子にゆっくりと腰を下ろす。うわ、なにこの椅子座り心地すごい。

 

 ふぅ⋯とりあえず服はおっけー……ぶへぇ……。

 

 ずっと二人の着せ替え人形になってたわ。ポケットから携帯を出して時間を確認する。

 

 まだ3時!?6時間くらい選んでた気がするんだけど……。

 

 やっとこさ決めた服は、俺の身長がそこそこ高いせいで、割合シンプルな服になったが、俺から見てもいいじゃん? って感じの白を基調とした奇麗系の服を二人に見繕ってもらって最終的に俺がオッケーを出した。大人のお兄さんって感じ。

 あとスカートだけはマジで拒否した。ごめん。でも自分で履くのはダメ‼この世界では男でもスカートはいてる人いるし割と似合ってるからいいけど、俺は無理……‼ 二人は絶対に合うって押し付けてきたけど‼  ミヤのスカートは見たいけどね。ちなみにうちの小学校と中央の制服は男女ともにズボン、帝王附属は男はスカート。けっこうデザインはいい感じだった。

 

 スカートを履くムキムキ俺くん⋯⋯。

 かってに嫌な想像を膨らませる俺の隣から声。

 

「おい、太陽何逃げてんだ」

 

 声の方向に顔を向けたら山田の悪魔がいた。震えて反対側に逃げるともう一人の天使の笑顔をした糸の悪魔が立ちふさがった。

 

「北くん、どこいくん」

 

「え、でも服は終わりって……」

 

 まだ、あるの……?

 

「下着があるやんか」

 

 当たり前のような顔していう糸。

 下着!? 必要ないだろ! 口から洩れる。

 

「いやぁ……何があるかわからんぞー?、気合入れたやつも必要になる可能性もあるだろ? 来週はなくても将来な」

 

 山田、お前もしたり顔で言ってるけど耳年増だろ。

 小学生よ俺ら、まじでこいつら何考えてんだ! ばかなの?

 

 いやいや、まじでいかないよ!?

 

 腕をがっしりと両側から掴まれる、俺よりかは背の低い二人が俺を捕まえてる姿は、はた目から見たら逆捕まった宇宙人みたいな滑稽な恰好にみえるだろうが、俺は必死に家具屋さんの椅子にしがみつく。

 

 はなせぇ!! 行きたくないよぉ!!

 

 

 

 

 きちゃった。

 

 店内はずいぶん明るくて、壁にはキラキラしたランジェリーショップの文字、その下に店名が大きく書いてあるお店の中に、俺はいた。

 うわぁ……すっけすけのブーメランパンツとか、やたらとテカテカキラキラした胸用サポーターがある。

 いやぁ、目のやり場にこまるね。なんだろうこの尻の置き場に困る雰囲気。

 

 日曜日だからか、俺ら以外にも人がそこそこいて、なんかもう……ってかんじ。子供3人が一緒に入ってきてるもんだから、店員さんの目もお客さんの目も生暖かい気がする。

 

 そんな視線に耐え切れず、なんでもいいから早く出たい!とおもって適当にひっつかんで出ようと

 

「ちょ、ちょいちょいそんな適当に選んじゃあかんわ」

 

 糸くんにとめられる。はなせ!俺の腕をつかみながら店内をぐるりと見渡して、よさそうな店員を探しあてたのかもう片方の手を挙げる糸くん

 

「ちょっと、おにーさん!説明とかしてもらえんやろか?」

 

 やめろーっ!

 

 

 

 

 聞きたくもない知識がいっぱい増えました、今から必要になる知識だから~とかいって懇切丁寧に教えられた、サイズとかポジションとか包容力とか……必要ねえでしょ!? 勘弁してくれ……。

 今日ほど俺の記憶力のなさに感謝したことはないね。

 そう思いながら一応しっかりと店内を見回る、店員さんに時間をとらせて何も買わないっていうのは、大人としてダメでしょ。

 

 なんかいいのあるかねぇ……

 

 

 あ――。

 

 

 見つけたそれを思わず手に取る。ボクサーよりも細くてブーメランよりも太い、触り心地も……いい。 

 

 ――黒パンツ。

 あと一応同じとこにある同色の胸サポーター。このセットでいいかぁ……。

 

 一緒についてきた糸くんと山田は俺が手に取ったそれを、なぜか顔を真っ赤にして見てる。

 いや、どんな基準で顔真っ赤にしてんの!? そんなやばいもん手にしてるの俺!?

 

 とりあえずお会計して逃げるように外に出る。

 店員さんもなんか「えぇ!?この子が!?」とか言いたげな顔してたんだけど!?

 ブーメランの方がやべーだろ、意味が分からん!

 

 もういい、疲れた!とりあえず、下着は服の袋の中に突っ込んであとはもう考えないことにする。

 

 

 

 さてと、服も選び終わったし三人で遊びたいなぁ……

 

 そう思って二人に提案する

 

「とりあえず、買い物はここらへんにしてゲーセンでもいかね?写真とろうよ!」

 

 そう言うと、二人は顔を見合わせて照れたようにはにかんで頷いた。

 青春っぽい!

 

 

 ゲームセンターはここから歩いて少しのところ。

三人でしゃべりながら移動する。

 

「そういえばさ、北くんって何で陸上始めたん? 昔のインタビューでは友達に勇気を与えるためとか載ってたけど」

 

 うわ、懐かしい。陸上初めてすぐのころのインタビューだ、よく覚えてるなぁ。ちょっと恥ずかしいけど……まあ糸くんにはいいか。

 

「友達っていったけど、ホントは自分に勇気を与えるため……なんだ」

 

友達の話なんだけど~っていいながら本当は自分の事を相談するあれ。

 

「実は、今まで隠してたんだけど俺ってバカでさ、周りの人に迷惑かけたり心配かけたりしてきたんだ。取柄なんかなんもない奴だって自信がなかった」

 

 あの子をずっと見ていたから。

 勝手に比較して、勝手に夢想した。彼女に近づくにはどうすればいいんだろう、どうすれば君の近くにいれるのかって。

 

「でもたった一つだけの長所をコーチが見つけてくれた。

 だから俺は誰よりも早くなって自信を……勇気をつけたかった……、のかもしれないバカだからわかんないけど」

 

 なんだか照れくさくて視線は下がり自分つま先を見て、鼻の元を擦る、いままでこういったことを他人に話したことはなかった。でも、最近は何かが変わり始めている気がする、糸くんとの出会いも変化の一つ。 

 

 嬉しい変化もさみしい変化も。

 

「太陽がバカなのはみんな知ってるぜ」

 

 山田が俺の肩にぽんと手を置く、うるせえよ。そういってその手を押し返す。何気ないやり取り、でも他の人が驚くくらい俺は楽しんでいた。

 

 糸くんが足を止めた。

 

 それにつられて俺や山田も足を止めて、糸くんを見やる。

 俯いた糸くんは手をにぎにぎとさせて言葉を漏らした。

 日曜のショッピングモール。人の波がある中で声が、足音が方々から聞こえる中では聞き取れないはずの声音だった。

 

 でも、耳を澄まさなくても俺の、山田の耳にはなぜか届く。

 

「何度も言うけどボクは……キミに憧れて、勇気づけられてきたんや。

 画面越しにみる偶像のキミに憧れて、トラックで見るキミの背に見惚れた。

 ――でも君は走っていなくたって、十分魅力的やと思うで?」

 

 

 ほんの短い間かもしれんけど誰にも負けんくらいしっかり見た。ボクが保証したるわ、ミヤコちゃんやっけ?虜にしてもうたれや

 

 

 そううつむいていた顔を上げて、真っ黒の瞳を魅せこちらを真剣に見つめる糸くん――■■(いと)に向かって山田と俺は同時に口を開く。

 

 

 

「もしかして、(たいよう)の事。好き?」

 

 

 

なぜか通路の人の波は開けて俺ら三人の舞台ができてるようだった。

 

「好きやで」

 

 変わらずまっすぐなその瞳に俺は応える必要があると思った。

 普段のおふざけも冗談も、嘘も虚勢も、気を遣うのも彼を傷つけるとわかった気がしたから。必要ないとおもったから、心から。

 

「俺も■■(いと)は好き

 ――友達として、大好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクは生まれた時から周りの男の子に比べても身体がほそて、軟弱やった。ひ弱で色白で、幸薄そうで座ってれば王子様みたいだねって、そう周りに言われたもんで……。

 

 歩くことすらままならんくて、息が荒くなっては立ち止まってた。そんなボクは子供のころはよく病院に連れてかれたもんや。女の子は色々かまってくれたけど、ボクはそれが嫌やった。体育でもボクはいつも見てるだけやった。嫌で嫌で嫌でしかたなかった。

 

 でも子供の自分は無理だって決めつけた、限界を決めてもうた。男の子だから仕方ないよ、君は悪くないんだよって言われて流されてしもうた。

 

 ほんで子供の癇癪、感情のままに周囲に苛立ちをぶつけて、親や友達には本当に迷惑をかけたと今でも思う。かんにんな。

 

 

 

 そんで、見つけたんや。

 

 

 

――誰よりも楽しそうに笑って走るお日様(たいよう)

 

 男だからダメ、女だからいい。そんな世界で、君はそんな意見を無視して、視界にもいれずに自由に駆けて飛んでいたから。

 

 ボクも走れるんやないかって、一歩踏み出せた。

 

 今までの怠惰はボクに重くのしかかったけど、それでも一歩歩いて、二歩歩いて、駆けて、走って、風に触れた時の興奮は――

 

 どんどん楽しくなった、身体を動かすのが。それまでに一日、一週間、一か月、時間はかかったけどそれすらも痛快で世界はどんどん広がって。

 

 気づけば日輪(たいよう)の近くにボクは立っていた。

 

 

 最初は声すらかけれんかった、君の迫力はテレビで見るよりももっと凄くて、大きくて。あったかくて

 

 

 ――さみしそうだったから。

 

 

 ボクの目の前には君以外の背中も多かったから。

 

 ボクの目の前に君以外が映るまで走って、走って走った。

 

  数回それを繰り返して、手ごたえを感じたから、勇気を出して声をかけてみた。でも、ダメだった。まだ君の瞳にボクは映らなかったから。足りないことを痛感した。

 

 勝ちたい、君の視界にボクの背中を見せてあげたい。

 

 教えてあげたい君は一人じゃないんやって。

 

 だから磨いた。努力も実力も経験もコーチに教わった、知識すべてを。

 

 長かった。でも小学校最後の試合。もう一度声をかけてみたら、君が振り向いてくれたから、君の目にボクが映ったから、思わず笑ってしまったんや。

 

 結局その試合は負けてもうたけど……でも達成感はあった。初めて走れた頃を思い出すようなそんな感覚やった。

 

 

 

 

 次は中学かなって、少し残念に思ってたら帝王での再会と、

――勝利は……ボクが死んでも忘れられるわけないよね。

 

 

 

 

 最強で、無敵の君にボクは勝ったんや! 分からせてやったんや!

 

 

 どこか一人さみしそうにしてた太陽(きみ)にボクを刻み付けてやったんやった!

 

 

 

 そっからは、とんとん拍子で。連絡先も交換してどんどん仲良くなって、デートも行って、写真もとってさ。

 

 あぁ……

 

 これはボクがないてしもて顔がぐちゃぐちゃの写真。

 

 これは抱きしめられて涙が引っ込んだ写真。

 

 山田と太陽とボク、みんなが笑顔の写真。あと調子に乗ってほっぺたにキスしてやったときの写真。

 

 

 

 

 思い出して泣いてしまうわ。

 

 

 あの後、北くんと山田と駅で別れた、最期の言葉は

 

 "絶対成功させーや"やっけ。今思い返すとほんましょーもない別れ方やったなぁ、照れてほっぺを赤くした北くんに手を振って、それがボクの見た太陽の最後の笑顔やった。

 

 

 

 目の前に誰の背中も映さない景色を見たかったはずや、後ろの人にボクの背中をみせてやるのが目標やったはずや、勝ちたかったはずや。

 

 

 でも、今はそれがどうにも辛い。

――君がいないトラックで勝つのは苦痛や。

 

 

 アタラもどんどん早くなって、かつては勝ったボクですら並走するのがやっとで。女の子ってすごいなぁって彼女を見てると思う。

 

「もうアタシは立ち止まらない」

 

 あの子は笑って、そう言うけどやせ我慢なのはボクがよくわかってる。

 

 

 ならボクも立ち止まらん、どんだけ辛くても、君にずっと負けてきた僕らが勝ち続けて、ボクらに勝った勝ち続けた君の光を日本に、いや世界に忘れさせてやらないんや。

 

 

 

 




■黒パンツ
勝負下着。
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