薩摩の子 作:キチガイの人
感想お待ちしております。
あと重要なお知らせをあとがきに記載しています。
目を通して頂ければ幸いです。
「なんというか……鹿児島って、もうちょっと田舎だと思ってたわ」
「有馬先輩の感想はもっともだと思います。ここが鹿児島市内って事、九州新幹線の終点である事、そんで鹿児島国体が近いゆえに改修等が各地で行われている事。以上の理由から、数十年前と違って近代化してるんですよ」
バスから降りた俺は、アイとアクアとロリパイセンを引率して、天文館ぶらり旅を楽しんでいた。長期間滞在することを考えると、パイセンが予約したホテル付近の地理を伝えた方がいいのでは?という話になり、白羽の矢が立ったのが俺である。
お手元のスマートフォンをお使いいただければ、ある程度の情報が手に入るであろう昨今。それでも、穴場スポットの情報は地元民の間でしか語られないときもある。天文館周辺は鹿児島でも五本の指に入るくらい近代化されているので、そう穴場スポットがあるわけでもないが。
だって、アイと会うまで天文館とか中元歳暮買う時ぐらいしか来ないし。
俺同行する意味あったんだろうか?
「あ、そうだ。有馬先輩、LINE交換しません?」
「……あら、何が目的?」
まだアクアの付属品的な認識なのか、ジト目で俺を睨むロリパイセン。
芸能人として、そうホイホイ個人的な連絡先を渡すような馬鹿な真似はしないか。特にマルチタレントとして大活躍しているパイセンなら猶更だろう。
どう説明しようか悩んでいたところ、助け舟を出したのはアクアだった。
「有馬、コイツはお前の連絡先を悪用するような人間じゃない。お前も芸能人とあまり関わらないスタンスだろ? どういう風の吹き回しだ?」
「この後説明するよ。先輩、自慢じゃないですが、俺地元ではそこそこ顔が利くので。俺のLINEは使えると思いますよ? 何なら鹿児島離れるときにLINEブロックしても構いません」
「まぁ、そういうことなら……」
アクアの指摘する通り、あんまり個人LINEを教えない俺だが、相手は仕事相手予定の人物兼、アクアの知己でもある。ロリパイセンの連絡先を知っておくに越したことはないだろう。アクアがボソっと「顔が利くとかいうレベルじゃねぇけど」と言った気がするが気にしない。
俺と有馬先輩間で交換し、ついでにアイもちゃっかり交換している。
「……ところで、アイ……さん。
「親戚だよっ」
「アイドルの『アイ』って人に似てますよね」
「似すぎてビックリするよねぇ」
「……つまり無関係、と?」
「私はその『アイ』って人と会ったことないよ?」
「……いやぁ、え、洒落にならないくらい似てるわ。『アイ』の隠し子って言われても違和感ないわ」
「人類の神秘だねっ」
アイはとりあえずロリパイセンには「全くの無関係」のスタンスを貫くようだ。有馬先輩はこちら側の人間じゃないので、そこを元人気アイドルの少女は配慮しているのだろう。どこかしこにアイの転生体を言いふらそうもんなら、それこそ大変なことになるもんな。島津でも知っているのは一握りだし、本当に必要最低限で留めている秘密だ。五反田監督は……どうして巻き込まれたんだろう?
有馬先輩の所属が神プロだからってのも理由の一つかもしれない。
「さて、質問タイムはそれくらいにしてっと。有馬先輩、こちらのタブレット端末をご確認ください」
軽くタブを操作して、映し出すのはホテル周辺の地図。
これから長期間限りだが、有馬先輩が見ることになるであろうマップっすね。
「最寄りのコンビニだとセブンがココ。ローソンが一番近いココ。ファミマは……ちょっと遠くなるかな? ココにあります。好きなタイプを選んで使って下さると幸いです。百均がこの道から入って……こうして……ココ。薬局はこの通りに馬鹿みたいに点在してます。あとは……案内した方がいいところってある?」
「まとめて複数の買い物をしたいなら、『山形屋』か『マルヤガーデンズ』か『センテラス』がいいかも。ある程度の物は揃うんじゃないかなぁ」
「有馬、アイが挙げた店舗はこの3カ所だ」
俺が提示した地図に、薩摩に住む他二人が書き込みをしていく。こうして一目で主要施設が分かる鹿児島県民によるオススメマップが完成するのだった。
ちなみに、タブを覗き込んでいるロリパイセンに、マップに書き込みするためにアクアが顔を寄せた際、意識しているのか赤面してあたふたしている若手女優さんの構図に、何か心にグッとくるものを俺は感じた。ルビーに見せられんなコレ。
そして、アクアがここまで気にかける人間も珍しい。
しゃーない、有馬先輩の健やかなる鹿児島ライフのためにも、俺も一肌脱ぐとしよう。
俺は一枚のカードを彼女に渡しながら、天文館周辺マップの一部を黒く塗りつぶす。
「このエリアは年齢的に近づかないで下さいね。年齢的にもアウトですし、特に夜なんかはココ一帯はマジで危ないです。先輩は特に美人ですから、この治安の悪い区画には近づかない方が賢明かと」
「美人って言われてここまで嬉しくないのは初めてだわ……」
「──で、もし変な奴らに目ぇつけられた場合、この5カ所のクラブに昼夜問わず駆け込んでください。最初は怪訝な顔されるかもしれませんが、その渡したカードを見せてくれれば、先輩を物理的に守ってくれます」
どうしてもクラブやバー、他諸々の未成年お断りな店舗群が立ち並ぶ区画だと、半グレや暴力団員等が闊歩しているときがある。
人が集まる場所がある以上、こういった危険区画ってのはどうしても出来てしまう。どれだけ規制しようとも、な。なので俺たちも先ほど示した場所を隠れ蓑として、抑止力として点在させているのだ。主に咸が。
このカードも咸が俺に手渡したものである。カードにはICチップ等の色々な小細工がしてあるらしい。小難しい説明をされたのでよく覚えてないが、アイツの経営するクラブにコレ持って入ると、彼女が特別なお客さんってのがすぐ分かる仕組みらしい。凄いね。
「……アクア、コイツってもしかしてヤクザとかのヤバい人だったりする? カタギじゃない感じ? こういう情報知ってるのとか、普通にクラブ案内してるの怖いんだけど」
「コイツはヤクザじゃないよ」
ヤクザよりヤバい薩摩武士ですから。
不審人物を見るような目を向けてくる彼女に、喉まで出かかった言葉を飲み込んで微笑む。
完成した地図を有馬先輩のLINEへと送る。
これで当面の間は生活できるはず。もし分からないことがあったら俺、又はアクアに連絡するよう伝えた。雑談も交えながら案内していたせいか、いつの間にかホテルの前へとたどり着いた。
「以上で説明終了……だっけ? 他に有馬先輩に忠告した方がいいことある?」
「うーん……あ、一つだけ」
アクアは思い当たらなかったらしいが、元アイドル少女は少し悩んだ仕草を見せ、思いついたように真剣な眼差しでロリパイセンへと念を押す。
「──桜島上空の風向きに気を付けて!」
「「それだっ!」」
「え、山の風向き?」
有馬先輩は「そんなの気にするの?」みたいな顔をしたが、洗濯物を干さずとも脅威であることに変わりはない。
「有馬は知らないかもしれないが、あの活火山は頻繁に爆発する。そして灰が高頻度で降ってくる。……この前、妹がやらかして俺の服全般が大変なことになったぞ」
「コンタクトレンズとかつけてません? まぁ、つけてなくても降った後の火山灰は大変ですからね。目に入ろうもんなら大惨事です。風が強い日は、あまり外に出ないことをお勧めします」
「髪もゴワゴワするからケアが大変なんだよねぇ。ルビーも火山灰で泣いてたし」
「まず頻繫に爆発する事実に泣きそうなんだけど……」
有馬先輩はボソっと「ヤバいところ来ちゃった?」と呟くのだった。
概ね正解。
【重要なお知らせ】
今章、次章のプロット製作で、数か月ほどエタります。まぁ、最近の進み具合を見て頂ければ一目瞭然ですが、再構成の物語な関係上、ちょっと考える時間を頂くために休載させていただきます。
暇つぶしで読んで頂いている読者の皆様方にも、ご協力・ご理解いただけますと幸いです。
その暇つぶしが消えるのもアレですし、生存報告の意味も込めまして、前々から考えていた「原作知識を持って転生して幼少期のアイと接触する『アイ生存ルート』の物語」を新作として不定期に投稿しますので、目を通して頂ければ幸いです。一応は原作準拠(予定)なので、お手すきの際に目を通して頂ければと思います。
タイトルは『流星群に願いを』の予定です。
それでは、新作か数か月後でお会いしましょう。