ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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番外編:ウサギ娘と逆バニー

「か、買っちゃった……このハダカよりも恥ずかしい衣装……ッ!!」

 

 

  

 ──デジーは己の可愛さにはそれはそれはもう自信があった。 

 しかし、それと色気はまた別問題。愛しの転校生ことイクサを篭絡させる、メロメロにさせるという目標の下、日々精進せんでいいものを精進しているのだった。

 その結果がコレである。

 燦然と輝く──前が開け放された逆バニー服。

 デジーは自分のバニーキャラには、人一倍自信があるつもりであった。

 うさ耳を模した白いリボンを頭に巻いている辺りも筋金入りである。

 そんな彼女ですら踏み入る事が出来なかった領域、それが逆バニー服であった。

 

(フ、フフフッ!! 転校生が悪いんだよッ!! 本当はボクが転校生を篭絡したいのに、君はいっつもボクを逆に分からせてくるものッ!!)

 

 目をグルグルと回しながらデジーは問題の服を広げた。

 こんなものを着たが最期、体の前全部が丸見えである。

 しかしそんな事はデジーも分かっていた。これがどのような服なのかは、以前バジルに着せられそうになったので知っている。

 

(そ、そして……て、転校生を誘惑してやるもんねー……ッ!! ね、捻じ伏せられちゃうかな……て、転校生、野獣さんになっちゃうかな、えへへへへ……)

 

 尚、この娘。

 結局立場逆転されてイクサに押し倒されるのを期待してしまっている。

 イクサに完堕してからというものの、少しマゾっ気が生えてしまったのであった。

 しかし──いざ着用し、鏡の前に立ち、デジーは激しく後悔した。肝心な部分はニプレスで隠れて見えないとはいえ、何処からどう見ても罰ゲームなのだった。

 

(やっぱり無理ーッ!! これで転校生の前に出るなんてッ!!)

 

 前を隠す。

 スースーするどころの話ではない。

 胸も腹も丸見えである。幾らデジーと言えど、超えてはいけない一線はよく知っていた。

 これはもう乙女ではない。只の痴女である。

 

(や、やめとこ……幾ら何でもこんな格好で出ていったら一生の恥──)

 

 

 

 カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

 

「おお、そのポーズのまま立っておれ、ウサギの小娘」

「~~~~~~~~~ッッッッッッ!?」

 

 

 

 声にならない悲鳴が部屋中に響き渡った。

 そこに立っていたのはオオヒメミコ──通称ミコ。

 クエスパトラ型のオーデータポケモンであり、このサイゴク留学中のイクサ達のお供でもある。

 そしてエスパータイプであるミコにとって不法侵入は朝飯前。カメラアイで目の前の痴態を撮影するのもお手の物であった。

 尚、このカメラアイで撮影した写真はスマホロトムと連動してデータを送り込む事が出来るのである。

 

「消せッ!!」

「おほほほほほーッ!! 誰が消すものかッ!! 消せるものなら消してみせよッ!! もう既に妾のメモリーにバッチリ記憶したがなーッ!!」

「じゃあお前の存在も消してやるッ!!」

「おお怖い怖いッ!! このままイクサと全部小さい小娘にも──何ならオシアスに居る探偵の小娘にもコイツを見せてやろうか!!」

「全部小さい小娘ってレモン先輩の事!? いっぺん怒られろッ!!」

 

 すぐさま逆バニー服の上にいつものシャツとスカートを着込み、デジーはダッシュでミコを猛追する。

 失策だった、と彼女は激しく後悔する。

 宿泊施設を飛び出し、外で激しく二人の追いかけっこが始まるのであった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──さぁて、今日も優雅にティータイムといこうかしら」

 

 

 

 ──本日の紅茶の銘柄は「エルスター」。

 ガラル地方名産の茶葉であり、「その渋みとコクは光線銃よりも速く喉に届く」という意味不明な売り文句で有名であった。

 そこにレモン・シトラスは──あろうことか、エナジードリンクをカンから開けて注いでいく。この世の終わりのような光景である。

 

「……今日もサイゴクは平和ね……こんな日には紅茶にエナドリ注いで飲むに限るわ」

「──待ァてコラァァァーッ!!」

「うん?」

 

 冒涜の極みのような紅茶を啜りながらレモンは怒声の聞こえてきた方向を見やった。

 全身鋼鉄製のダチョウと、デジーが追いかけっこをしているではないか。

 オマケに、デジーはミミロップを繰り出しており、オオヒメミコに向かって容赦なく攻撃指示を出すのだった。

 

「──ミミロップッ!! とびひざげりッ!!」

「ほほほッ!! 効くわけなかろうがッ!!」

 

 ティーテーブルにすっ飛んでくるミミロップとオオヒメミコ。

 しかし、そこは流石オシアスきっての武闘派風紀委員長・レモン。

 あっさりと胴を反らして二匹の攻撃を躱し、更に一滴もエナドリ紅茶をこぼす事なく再び席につく。

 走ってきたデジーを見送り、ずず、と冒涜の極みの液体を再び啜るのだった。

 

「争いは同レベルのもの同士でしか発生しない。関わるだけ無駄だわね」

 

 ロトロトロト……

 

「あ、イクサ君だわっ! ……もしもし?」

 

 ぱぁっ、と顔を輝かせてレモンは電話を取る。

 そして──通話に出る直前に咳払いして、再びいつもの調子に声を戻すのだった。

 

「……イクサ君? 大丈夫? 一人で腕試しの為に洞窟に行くって言って、あれから全く音沙汰無かったじゃない」

「レ、レモンさん……何とかやりましたよこっちは……開幕からガチグマ数匹に囲まれ、地面から巨大なペンドラーが出てきて襲われ、最後には特大サイズのペンドラーが出てくるっていうとんでもない洞窟でしたけど……何とかなりました」

「よく帰って来れたわねそれで……」

「大丈夫です、手土産は沢山あるんで……すぐに帰ります」

 

 ぷつり。そこで通話は切れた。

 流石は修羅の国・サイゴク。イクサですら完全にグロッキーだ。

 連戦続きでアドレナリンがドバドバと出まくっていたからか、今のイクサは露骨に疲れを隠していない。

 

「あー……これは猛獣の時のイクサ君ね……」

 

 今のイクサは戦いの時のテンションがそのまま続いてしまっているのである。

 帰ったらたっぷり休ませよう、とレモンは考えるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、やっと取り押さえたよ……ッ!!」

「フッ、もう遅いわ」

「なにぃ!?」

「妾のメモリーの中に写真データは全て記録されておるッ!! そしてすでに──イクサには写真を送った後だッ!!」

「──そっか」

 

 にこり、とデジーは笑った。そして──オージュエルにカードを翳そうとする。

 

「ギガオーライズ……ミミロップ……ッ!!」

「待て待て待て妾が悪かった!! ほんの悪ふざけだったのだッ!! それに、オマエも見てほしかったのだろう、あの格好をッ!!」

「人はーッ!! ある一線を超えられたら、その後は命のやり取りしか残らないんだッ!!」

「うーん不味い!! 目がマジだッ!!」

「ミコっちを殺してボクも死ぬーッ!!」

 

 

 

「──見つけた、デジー」

 

 

 

 声が聴こえ──震えながらデジーは振り返った。

 そこには、洞窟帰りで全然ボロボロ。そして野獣の如き眼光を迸らせたイクサの姿があった。

 

「て、てんこーせぇ……!? ち、違う!! あ、あれは興味本位で着ただけでッ!! ミコっちが勝手に撮影しただけでッ!!」

「着替えて」

「え?」

 

 ドスの利いた声が聴こえてきた。

 にじり寄り、イクサは──デジーの手首を掴む。

 

「……あの写真の格好に着替えてよデジー。僕は今、冷静さを失おうとしているよ」

「ひゃ、ひゃい……ッ」

「……あー妾は用済みかコレ」

 

 あの獰猛な目で睨まれ、いつもは朗らかな声からドスの利いた声で凄まれれば、もうデジーは抵抗など出来なかった。

 きゅんきゅんと胸が高鳴り、頭の中は期待でいっぱいだった。

 ああ、自分は今から捕食されるのだ、と否が応でも思い知らされる。

 イクサに連れられ去っていくデジーを見送りながら──オオヒメミコは「今日も善い事をしたな」と笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「で、何で妾も着せられるのだッ!?」

「うるさいッ!! ボクが恥ずかしい思いをした分、ミコっちも恥ずかしい思いをしろッ!!」

「ねえイクサ君、私思うのよ。あれ、罰ゲームよりもひどい恰好じゃない?」

「……そーですね」

「イクサ君? 私の知らないところでナニかあったの? 何で遠い目をしてるのかしら?」

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