とある朝の風景。
いつも通り朝までゲームをしていた少年は物音で目が覚める。

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とある朝の風景

朝目が覚めると包丁の心地よいリズムが聞こえてきた。

どうやらダイニングで寝てしまったらしい。

顔を上げて眠い目を擦るとなぜか受話器を握っている。恐る恐る耳に当てると

 

「ちゅぱっ、ちゅぱっ、」

 

一瞬意識が飛びそうになった。

一体なぜこんな音が聞こえてくるのだろう?と疑問に頭を抱えていると、

 

「どうかなさいましたか?」

 

包丁の音が止まると共にキッチンから声がかかる。朝食を作っているメイドがこちらに気づいたようだ。

見れば携帯を首に挟んで左手を舐めている。

 

「ってお前かい!?」

 

「お目覚めは快調のようですね?」

 

100%無視だよ!シカトだよ!なろう、そっちがその気なら・・・。

 

「その携帯は何だ?!」

 

「離れた相手と話をするための道具です」

 

そんなこと聞いてねぇ!当たり前すぎて突っ込む気にもなれないぞ!

 

「そうじゃなくて!」

 

「朝から元気だと推測します。モーニングハイテンション!略して、」

 

「りっ、略して?」

 

「モー、テンション!」

 

メイドがグーにした両手を顔の下に揃えて無駄にぶりっこポーズを決める。右足を後ろに上げているのが余計に腹が立つ。

 

「其処で区切るな怒られてんのかよ!後つまらねーよ笑えねーよゴミ箱行きだよ!」

 

「朝から元気だと推測・・・」

 

「もう良いよ!それさっきやったからもう良いよ!」

 

朝から疲れる会話だ。話を戻さねば絶対このペースで行ってしまう。此処は無理矢理にでも、

 

「その首の携帯と左手の行為は何だ?」

 

「朝のモーニングコールです」

 

いらんわい

 

「なぜこんなイタズラをしてるんだ?」

 

「お好みのようでしたので、趣味が。」

 

「何の趣旨だ!」

 

「・・・聞かれますか?」

 

「顔を赤らめるな下を向くな横目になるな。」

 

何考えてんだこいつは! 朝からしょうもない・・・。 場所がばれたのはしょうがない。が、それをよしとする僕じゃない、とりあえず釘だけは刺しておこう 。

 

「しかし坊ちゃまがあんなものを・・・」

 

「勝手にベッドの下をあさるなよ」

 

顔に手を当てて呆れたように言う。

 

「ほほう、ベッドの下なのですね?」

 

墓穴を掘った。

 

「机の引き出しの二段目の隠し床の下のビデオかと思いました」

 

「何でそっちが先だ! 普通楽なほう探すだろう!」

 

そもそも探してほしくはないのだけれどそんなことを言って通用する相手でもない事は十分承知である。

 

「そんな楽だなんて・・・。」

 

「どこに反応してんだ!」

 

こちらの予想を遥かに上回る斜め上の反応に付いていけないかった。

 

「坊ちゃまの秘密に、 です」

 

まずい、このままでは。一瞬で思考回路が高速作動する。目まぐるしく飛び交うのは言い訳の言葉と新しい隠し場所の提案会議書(妄想) だった。

 

「坊ちゃまがお出かけになられた後ゆっくり探しますので・・」

 

「そこから動かすなってか? また無茶なことを・・・。」

 

言葉をさえぎって先手を打つ。 それに朝飯前に場所を変えるに決まってるじゃないか。

 

「いえ、坊ちゃまが動かないでください。」

 

先手を撃たれた。

 

「どうする気!俺を縛ってどうする気?!」

 

「ご心配なく。確認後、 元の場所に戻しておきますから。」

 

「いらん気遣いだよ! いっそ捨ててくれよ 後その紐と包丁あいすぎるからどっちか捨てろ

 

「ではロープを」

 

「わかったソーリー両方捨てろ。」

 

「それではナニもできません」

 

「イントネーションおかしーよ! 「何も!」だよね!?」

 

「朝からいやらしい・・・」

 

「なーぜーだー! ってこら!慣れた手つきで手足を縛るな!」

 

「大丈夫です。 朝食は私が、 」

 

「食わせてくれなくて結構だから!」

 

「では食べておきます」

 

「何も解決してねぇ!」

 

「そんなに暴れなくても、学校には遅れませんから。」

 

「心配する場所違う!今悩むべきはそこじゃない!」

 

「そうですか、残念です。」

 

そういってほんとに残念そうに言う。まったくこいつは、いったい何考えてるんだ。

 

「では、家捜しを先に」

 

「するなぁ!」

 

叫ぶ俺をよそにしたり顔で部屋に入っていった。いや、朝飯は? 着替えは?って言うか離せ解け外せ!

 

「そんなに不安にならなくても大丈夫ですから」

 

こちらの様子を音で感じたのか部屋の中から話しかけてくる。この状況で不安にならない要素がひとつとして見当たらない・・・

 

「学校行ってる間にちょっと私も私が学ぶべき物を学ぼうんでおきますから。」

 

「俺のトップシークレットがぁ!」

 

ああ、暴かれていく・・・。

 

「あ、帰ってきたら軽いサプライズをご用意してありますので、早めのご帰宅お待ちしております。」

 

「期待しないで聞くけど、一体なんだ?」

 

「ヒント、ベッドの下」

 

がったんごっとんいわせながら椅子に縛られたまま器用に玄関に進む俺。ある意味死活問題だ。

 

「そんなに急がなくても」

 

ガシッと椅子の背もたれをつかまれる。 ゆっくり振り向くとわずかに頬が高揚したアイツが立ってい

 

「アワテナイアワテナイ」

 

目が怖い目が怖い目が怖い。 心なしか変なオーラが見えてるよ。

 

「ほら、そんなに急ぐから汗がこんなに」

 

「それは冷や汗です! あと制服を脱がしにかかるな!」

 

「イイカラヌゲッテ」

 

「近い近い近い近い!」

 

「汝、健やかな時も、又病める時も」

 

「誓い違い!」

 

ピンポーン

 

「おーい、」

 

天の助け! これ見よがしに手足の縄が解ける。

 

「行ってきます! 朝飯イラン! 付いてくるな!」

 

「はっ! ぼっ、 坊ちゃま! お待ちください!」

 

もう遅い。 かばんを片手に外に飛び出す。 何事かとびっくりする学友に挨拶だけして颯爽と階段を駆け降りる。

 

ふっ、今日は逃げ切ったぜ。

 

俺は無駄に勝ち誇ったまま学校への道を急いだ。

 

          ー玄関にてー

 

「まったく、 坊ちゃまときたら・・・」

 

「あ、メイドさん。おはよう」

 

「はい、おはようございます。 あ、すいませんがこれを届けていただけますか?私、付いてくるなと言わ れてしまって」

 

「あ~、そ、そっすね・・・。」

 

手渡された物を片手に手を振りながら階段に向かう同級生の女の子を見送った後、玄関を閉めお茶の用意をする。

風通しをよくするために窓を開けると外の喧騒が聞こえてくる。

 

「警察の方々にお世話になる前にズボン、はいていただけると良いのですが...。」

 

遠くそよ風に乗ったよく通るいくつかの悲鳴を後ろに、メイドは朝食の準備を始めた。




昔書いたコメディ小説が出てきたので改訂して載せてみました。
ほんとに昔。
まだ黒世界を名乗る前です。
懐かしいなぁ。

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