最終編後のどこか、本編のネタバレになるかもしれません。
*流血描写があります

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処女作です。駄文、キャラ崩壊等ありますがお目こぼしをば......


砂狼シロコにマフラーを

「——せい」

「——先生」

視界が曖昧だ。

頭が痛い。

此処はどこなのだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「——先生、先生!」

[目を覚ます]

「んん......」

「もう朝ですよ!」

ややぎこちない抑揚で話す少女、今は少女達だが、の声が頭に響く。

「起きてるよ......?」

「今日はアビドスに行く日なんですか——」

「ヤバッ!」

布団を放り出す

     生徒

しまった、彼女たちに呼ばれていたのをすっかり忘れていた

「だから言ったじゃないですかぁ」

「えぇっとスーツとカバンに携帯......」

   私

「シッテムの箱も忘れちゃダメですよ!」

タブレット端末をカバンに仕舞う

「こんなものでいいかな!」

防弾チョッキや銃、結局撃ったこともないが、は必要ないだろう。そういえば、夜の砂漠は冷える、とモモトークで言われていたのを思い出してクローゼットの肥やしとなっていた防寒具一式をカバンの底にねじ込む。

「二人が守ってくれるもんね?」

カバンの中が少し光った。

 

 

 

学生や私のようにスーツを着たビジネスマン——とはいってもロボットのような見た目をしている!——がまばらに乗っている鉄道になんとか滑り込む。

「危なかった......」

運動不足が祟ったのだろうか、息があがって仕方がない、それどころか頭痛までする。

怪訝な目でこちらを見るロボットの横に座る

「(通知を確認しておかないと)」

パンツスーツのポケットからスマホを取り出す

電子音と振動が生徒からの伝言を伝える、大半は他愛もない——例えば食事の誘いや遊びの誘いくらいの——ものだが、ときたま相談事や急を要する事件が飛び込んでくるから気が抜けない。幸いにして今日はスタ爆だけだ。

『今向かっているよ』と

安心して外に目をやると、D.U.シラトリ区を抜けたようで高層ビルもまばらになってきた、とはいってもアビドス自治区——今日の目的地で彼女たちの家——はキヴォトスの外れにあるためまだまだ先なのだが。

そんなことを考えているうちに眠ってしまったのだろう、気が付くとまばらに乗っていた人もおらず、車窓の外も河川敷と並木だけだ。

ぐう、と腹が鳴り、慌ててシャーレを出たため朝ごはんを食べそびれたことを思い出させる。

「次の乗り換え駅でご飯買わないとな......」

ここ最近三食カップラーメンばかりで叱られていたのだから、こういう時くらいは奮発しても会計に小言を言われる心配もないはずだ。

「折角だしあの子たちの分も......っと」

少し高い弁当をレジに通す

「喜んでくれるといいけど」

少し財布は痛むが、そんなもの生徒たちの笑顔と比べたらなんのことはない。

 

 

 

そうやって次の鉄道に乗り、ガタガタと——仕方がないのだが揺れが激しい——に揺られるうちに景色が黄色がかってくる。

砂の色、照り付ける光の色、アビドス砂漠の色。

今日はいつにも増して色が濃い。

そんな砂漠を見るとアビドスに着いたことを実感する、とはいってもここからが長いのだが。

真上の太陽が砂混じりのアスファルトを容赦なく焦がす。

「あっつい......」

ぼうっと歩いていると道に迷ってしまったのだろうか、本来ならついている筈だが校舎が見えてこない。

こんなところを歩いているのは地域住民か先生のような道に迷ったものくらいであろう、現にときたま他人の足音が響く程度である。

「こっちじゃなかったかなあ.....」

そういえばあの時も道に迷っていた気がする。

そしてそこに現れたのが——

「ん、やっぱりここにいた。」

銀髪と犬耳、なによりもオッドアイが目立つ少女。

「シロコ!」

駆け寄る

「そろそろ道を覚えて、先生」

と軽く受け止め、小さくシロコは嘆息する。

「そうはいってもね、景色が同じに見えちゃって」

「そうかも知れないけど......」そういってロードバイク——彼女が愛用している——を降りる。

「まあ、急ぎの用でもないし歩いて行こう。」

「いいの?」

「ん、先生と二人で話したいから......」言い切る前に青いマフラーを口元まで上げる、彼女が照れ隠しをするときの癖だ。

「ごめんね、中々忙しくて......」

「ううん、仕方のないことだから。」

「そういえば今日はどうしたの、またカイザー?それともヘルメット団?」

「ん、それは着いてから説明する。」

「ところで先生、一人で来たの。」

「そうだけど......なんで?」

「ううん、気になっただけ。」

そうやって代わり映えのしない住宅街——一体どれほどの家に人が住んでいるのかも分からないが——を進むと、白塗りの建物が見えてくる。

「先生~!」門の前で少女、小柄な彼女と上品そうなのがもう一人、がこちらに手を振っているのが目に留まる。

「遅いよ~」小柄な少女、小鳥遊ホシノは目を擦りながらのんびりと言う。

「また迷ってしまったのですか?」砂漠特有の砂塵を伴う風からブロンドの髪を押さえながら彼女、十六夜ノノミは慈愛に満ちた表情を投げかけてきた。

「ごめんね、本当に方向感覚がなくて......」

「ん、いつものこと。」

「それもそうだね~」大きく欠伸をする。

「二人も待ってますよ~?」

                                                         

弾痕が残る塀を越え、校内に入る。昇降口にまで砂が積もっているが、ここは未だマシな方であるのだとここにいる誰もが知っている。それは何よりここに彼女《生徒》たちがいるからであろう。

廊下を談笑しながら歩いていると、半開きのドアから校舎中に響き渡るような声が四人の耳をつんざく。

「遅い——ちょっと見に行ってくる!」

そのドアが開き、飛び出してきたのは猫耳に黒髪の少女、黒見セリカ。

「って、先生に先輩たち!?」

「ごめんごめん、また迷っちゃって......」

「でも廊下を走ったらダメ、だよ?」

「そうですよ~、セリカちゃん?」

「うう、先輩まで......とにかく、待ちくたびれたんだけど!」

「若い子はせっかちだね~」

「大して歳かわらないでしょ」

「セリカちゃんどうかしましたか——って、先生?おはようございます」セリカに続き出てきた黒髪——セリカのツインテールに対し彼女のそれはボブだが——に眼鏡をかけた彼女、奥空アヤネ、のお辞儀に手を振り返す。

「ん、お待たせ。」

「またシロコちゃんに拾ってもらっちゃった」

「お忙しいはずなのに......」と困り笑いをする、気が利くいい子だがこのメンバーでは否応がなく苦労人になる。

「大丈夫大丈夫、そんなことより」

もっていたビニール袋を置く。

「ご飯、まだでしょ?」

シロコ

オオカミの耳が揺れた。

 

 

 

「ん、ごちそうさま。」

「ごちそうさまでした~」

途中で「おじさんはお腹一杯だよ~」と漏らしていたホシノも数分で平らげてしまった。

セリカに至っては「せ、先生、その、食べないならもらってもいい......?」と私が残した分まで。借金を完済したとはいえ彼女の節約癖は抜けていないようで、それをアヤネに相談されたばかりであるにも拘らずやはり一食抜いているのだろうか。

「そういえば——」

「呼んだ理由、ですか?」察したのかアヤネが答える。

「うん、なにか悪いことじゃないといいのだけれど」

「ええと、悪いことではないと思うのですが......」

「遠慮しないで言って?」

「砂漠地帯、丁度このあたりに問題がありまして」そういってアビドス自治区の地図を広げる。まだ学校が地図を製作できるほどの力があった時代のものだが。

「ん、カイザーが掘り返していた所の直ぐ傍。」

「具体的には?」

「うへ~十数キロを傍は無理があるよ~」

「ん.......そんなことないと思うけど......」そういって耳と目を伏せる。

「問題っていうと」

「砂嵐が酷いの!」セリカが待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す。

「お越しになるときにご覧になりませんでしたか?」そういえばそんな気もしたが、如何せん広さが尋常ではないし、何より目が悪いのだ。

「うーん、そういわれるとそうかも」

「それの調査にご同行してもらいたいのですが」

「なんだか連邦生徒会のお仕事みたいだね」

「確かに本来は連邦生徒会の仕事かもしれませんね......」

「リンたちも忙しいから勘弁してあげて」

「それに、そのために私がいるわけだし」

「先生もこう言ってますし、お言葉に甘えましょう~?」

「実は自分たちだけで行こうって中々聞かなくてさ~」

「だからおじさんが勝手に呼んじゃった」

「もう.......」アヤネが溜息をつく、顔は裏腹に満更でもない様子なのでよいのだが。

「それじゃあ、準備しようか。」

「備えあれば憂いなし——でしょ?」

「ん、流石先生。」

五人があちこちと走り回るのを横目にタブレット端末を起動する。

「アロナ——?」

「はい!」起動した途端に飛び上がって応える、相変わらずの元気だ。

「もしかしたら戦闘になるかもしれないから、その時はよろしくね」

「もちろんです!そういえば、先日の決済の件についてのメールが届いていますが——」絶対に会計の彼女である。

「......あとで見るね」

「そ、そうですか?」

「先生、準備終わりました~......何を見てらっしゃるんですか?」

気が付くとノノミが真後ろに立っている。

「驚いた......少し事務連絡を、ね?」彼女との身長差故に耳元で話されるものだから心臓に悪いことこの上ない。

「では行こうか?」

ノノミと共に屋上に上がる。

「お乗りください!」パイロット席のアヤネがヘリのローター音に負けじと声を張り上げる。

「二人で何話してたのよ」

「ヒミツですよ~、ね、先生?」

「んなっ!」セリカの顔が茹蛸のように赤みを帯びたのを見て、ホシノが

「うへ~、先生もなかなかやるね~」と茶化す。

「そんなんじゃないから......」

「ん、隠し事はよくない。」

「シロコまで!」

「先輩方もあんまり先生ろセリカちゃんをからかったらいけませんよ」というアヤネも声が震えている。

そんなことを話していれば砂嵐の所為だろうか、段々機体の振動が大きくなってきた。いくら砂漠が広いと言えどもやはり空を行くのは早いものだ。

そぞろ着陸するとの合図と共に機体が降下していく。

「運転お疲れ様」

「先生こそご気分大丈夫ですか?」

「もう慣れちゃった」と笑って見せる。アビドスどころかシャーレ中を文字通り飛び回るのだから、必然的にヘリ移動も増えてくる。予算の都合上おいそれと乗るわけにはいかないのだが。

外に出ようとしてドアを開ける——開かない。

「重い......」

「ちょっと失礼しますね~」唸っている私を退かし、ハンドルに手を添えて軽々と開けてしまった。と同時に砂塵が中に吹き込んでくる。視界が黄色がかるほどの嵐だ。

「よくこの中操縦できたね」

「出てみるとすごいですね......!」

「これで調査って無理じゃない!?」セリカが半分悲鳴をあげる。

「これの真ん中、強いほうに進んでいけばきっと原因がわかるかと......!」

「ん、これくらいなんでもない。」

「うへ~......目が開けられないよ~、おじさんここで待っててもいい?」

「ダメに決まってるでしょ!」などと言いながら足早に進むホシノを先頭に、シロコ、ノノミ、騒いでいるセリカと先生の順に進んでいる。時々前を進む二人が手を貸したりしながらもゆっくりと砂嵐の中を進む。ホシノが頭一つ抜けて進んでいるのは、先が見えない中を先行して警戒しているからなのだろうか。

「みんな......大丈夫?」

「ん、平気。」

「平気ですよ~」

「確かに先生の言う通り休んだほうが......」ヘリから無線で支援しているアヤネが察して助け舟を出してくれた。

「別に平気だけどちょっと——」セリカの声をかき消すようにして十数メーター先の丘の上に立っているホシノ——砂に邪魔され輪郭程度しか見えない——が声をあげる。

「前方に建物だよ~」

隣のセリカがやっと休める、と言わんばかりに息を付いた。

「ちょっと接近するね~——マズルフラッシュ!」

その声と同時に鳴り響いた発砲音を聴いた刹那、三人が姿勢が低くし、各々の愛銃——WHITE FANG 465、シンシアリティ、リトルマシンガンV——を構える。先生も負けじとシッテムの箱を起動した。先頭のホシノが盾で弾丸を受け止めている間に稜線までシロコとセリカを前進させる。ノノミは背後から先程の発砲位置へと制圧射撃の指示を出す。

「Roger!」皆、指示したポイントに的確に前進し、発砲する。沈黙するか敵の発砲が止むと同時にまた前進し、たまに手榴弾を投げ、制圧を繰り返す。二人のアサルトライフルが砂塵を切り裂いて確実に敵を貫き、ノノミの7.62mm弾の嵐が反撃をも許さない。次に敵が頭を上げれば——ホシノの12ゲージが穿つ。

「敵反応、沈黙!」ドローンで偵察していたアヤネが戦闘の終わりを告げた。

「みんな、お疲れ様。それじゃあ一休みしよっか」

「せ、先生がそう言うなら仕方ないわね......」と未だ止まない砂嵐から逃げるように残骸になりたてのドローンやオートマタが散乱する建物に駆け込む。幸いなことに電気はまだ生きている。備品を見るとカイザーコーポレーションのマークが刻印されていた。さらによく見るとうっすらとアビドスの校章、三角形に太陽の意匠、が書かれている。なんらかのアビドス施設をカイザーが前哨基地として利用していたのだろうか、その割に兵士がいないのが気になるが。

「うへ~......体中痛むな~」吹き飛ばした軍用ドローンに腰かけているホシノがうっすらと外を見ている。

「どうしたの?」スーツの砂を払いつつ首をかしげて見せる。

「ん~?別に~」

「何かあったら言ってね」そういえばセリカは大丈夫だろうか、戦闘前でだいぶ疲れていたのはわかったし、日頃の無理もある。それは何より先生自身に言えることではあるのだが。シロコが銃の整備をしているのに労いの言葉を掛け、セリカがいるだろう倉庫と思わしき部屋に入る。

「いっ、って先輩どうしたの......先生?なんで入ってきてるの——」砂で汚れたシャツの下の腹部に痣ができているではないか。すぐさま鞄から道具を取り出し応急処置をする。彼女たちは自分達が先生に比べ頑丈だと言うが、それが生徒たちが怪我をしているのに放置する理由にはならない。

「これで大丈夫......と、まだ顔が赤いけど、どこか痛むの?」

「——!!!!!」何故か追い出されてしまった。猫耳が動いていたのだけれど、処置が少し手荒だったのだろうか。

 

 

 

一旦小休止を取った。足が棒のように感じる。彼女たちの回復の速さを見るとやはり年の差を感じてしまう。

「先生~、そろそろ行きますか~?」

仮眠を取っていた——何故かノノミの膝で——ので朦朧とした意識を入れたまま寝てしまったため冷めきった珈琲で無理やり覚まし、スーツを整える。

「んっ......そうだね」

「うへ~、みんな元気だねえ~」

「それじゃあアヤネもナビゲーションよろしくね」無線のホログラムを起動し呼びかけると、直ぐにはい、と返事が返ってきた。

「ん、それじゃあ出発しよう。」

「そうね」まだセリカは余所余所しいが、痛みはもう無いようだ。室内にいるとわかりにくいが、相も変わらず砂塵は視界を曖昧にする。ヒールで来なかったのは本当に正解であった。

「なんだか強くなってない?」

「ってことはこっちが原因ってことだね~」皆腕で目を覆って進むほどの風だ、シロコのマフラーが旗のようにたなびいている。前に進むのもやっとだ、ときたまよろけては彼女たちに助けられたり、逆に先生が抱えたりと、遅々として進まない

「いつになったら着く訳......」流石にセリカも音をあげている。まだ数km先だというアヤネの声と立体映像も風でノイズが混じっている。

「車両でもあればいいんですけど~」あることはあるのだ、ただ大半が大破していたり砂に埋もれていたりするだけで。

「動かせればね、それにこの視界じゃ危ないわよ......」

「ちょっと待って......」数時間歩いてばかりでとうとう膝が悲鳴を上げ始める。そもそもクーラーの良く効いたオフィスで書類に埋もれている先生がここまでこれたということ自体一緒にいなければ信じられないだろう。

「ん、手を貸そうか」

うん、と息も絶え絶えになりつつシロコの手の手を掴む、もはや半ば引っ張られる形となっており、事情を知らなければ駄々をこねる子供を無理やり連れていく保護者のようでもある。とはいっても立場は逆のはずではあるのだが。

そうやって歩くうちに中心部に到着したのであろうか、最早通信はノイズが酷く音声しか機能していない。大丈夫か、と口を開けば砂粒が我先にと口内に侵入してくるのだから迂闊に口を開けない、目なんてものは言わずもがなで、皆の髪は旗の様にたなびいている。こんな時には便利だな、とシロコが鼻まで上げているマフラーを真似しながら思う。

「まもなく目的地です——」

「先生、ついたよ。」

「なにか音がしない?」

「音って風の音に決まってるじゃない?」セリカが顔をしかめた。

「いやそうじゃなくて......」

「なんか地響きみたいな......?」

「ん、そういわれるとするかも。」

「うへ、言われないとわかんないなんておじさんも歳だね~」

「一応気を付けてね」先生のその言葉を遮るように突如として轟音が鳴り響く。

「何!?」

「これはよくない気がしますね~......」

「皆、下がってて」またもホシノが盾を構えた。

「気を付けてください!熱源反応が!」インカムからするアヤネの声もさらにノイズが混じっている。

「まさかこれって......!」そう、これまでに何度も戦闘を指揮したことがある。否、幾度となく退けてきた。白い機械仕掛けの砂漠の蛇。其は第三セフィラ・ビナー、或は「違いを痛感する静観の理解者」。

      DECAGRAMMATON

「やっぱりデカグラマドン.......」

「先生は私に隠れていて。」

「コイツが元凶ってワケね!」

「先生、本当に気を付けてね」ホシノがいつになく真面目な顔でこちらを見る。

「——何か、変な感じがするから」

「砂漠を荒らす悪い子には、お仕置きしなくちゃですね~!」

「私も全力でバックアップします!先生、指揮をお願いします!」

「アロナ、そういう事だから、やるよ。」

「先生......その、アビドスの生徒さんだけでは戦力が十分ではないような......」

「うん、だからいい頃合いで退却する」

「先生、”あのカード”を使うのは避けてくださいね」

「わかってるけれど、もしもの時はね......」

「いえ、プラナも推奨しません。」

「ほら、プラナちゃんもそういっていますし......」

「大丈夫、それに皆が怪我するのは私も嫌だから」

「ですが......」

「いいの、これが先生の仕事だしね」

「それならわかりました、二人でサポートします!」

指揮とは言ったものの、正直ビナー相手に、それも自分もその場に立ってするなど正気の沙汰ではない。大破した車列とビナーによって崩れた建物の残骸を飛び回る彼女たちの遥か後ろをついていくのが精いっぱいだ。

「アロナの言う通りかも......!」実際キヴォトス最高峰の工学の専門家集団をして解析が不可能だったデカグラマドンの未知の装甲を貫徹するのは5.56mmでは力不足という他ない。

そもそもこのような脅威との戦闘は念入りに準備し、傾向と対策を考えてから挑むものだ、遭遇線で戦っていい相手ではない。そうは言ってられないからこそここで今戦っているのだが。

「早く砂まき散らすのやめなさいよ!」しびれを切らしたセリカが激高してリロードしたての弾倉を一つ分叩きこんでいる。

「アヤネちゃん、ヘリまだかかりそう~?」と文節ごとにポンプアクションを響かせ、ソレの倍も鋼鉄の盾に当たる攻撃をいなしながら最前線の彼女は尋ねる。彼女自体はまだ余裕があるだろうが、先生を気遣っての発言であることは明白だろう。

現に先生のところにまでミサイルの破片やらなにやらが飛んでこないのは彼女のおかげなのは自明だ。

「すみません、あと数分で到着します......!」さっきよりは弱まっているとは言え、この砂嵐の中にヘリで突入するのは自殺行為であろう。

「アヤネも無理しないで!」

「じゃあそれまでにちょっち頑張らないとね~」

ホシノが盾を斜めに構える。彼女が前線を押し上げるときの十八番だ。すかさずその後ろに三人が隠れる、ビナーの口が発光しているが、気にするそぶりも見せない——小鳥遊ホシノであれば耐えられる、という信頼の現れであろう。もちろん先生も指をくわえて見ているわけにはいかない。と丁度集まった地点に支援を要請し彼女らの傷を癒す。

「来るよ!」刹那、視界を閃光が満たす。射線から離れていてもチリチリと肌を焦がす熱線。砂漠の太陽を幾つも集めて一度に放ったようなそれの中でも、彼女たちは砂に盾を突き立てて踏みとどまる。

「ノノミちゃん、今だよ~。」熱線を打ち終わり大口を開けたビナーに至近距離から毎秒6000発で7.62mmが叩き込まれる。流石の蛇も咆哮を上げ、動きを鈍らせる。

「お待たせしました!」

「ナイスタイミングね!」まさにそのタイミングで上空に到達したアヤネのヘリから縄梯子が降ろされる。皆がそれに掴まった瞬間に——ビナーが再びのたうち回り、砂塵と熱線を乱射する。

「嘘でしょ......!?」

幸か不幸か機体への直撃は避けられたが、掴まっていた縄梯子はそうもいかない。高熱でいともたやすく切断され、掴まっていた生徒が叩きつけられる。

「——シロコちゃん!」

「私が行くね」有無を言わさず飛び降り、物陰に彼女を運ぶ。——ヘイローが点滅している。頭を強打したのだろうか。

「先生、シロコちゃん、大丈夫ですか......!?」尚もビナーは暴れ狂っている。このままではヘリが堕ちるのも時間の問題であろう。否、当たっていないのが奇跡と言うべきだ。

「すぐにもう一度降下します——」

「退却」

「先生!?」

「皆は退却して、シロコは私が守るから。」

大人のカードを取り出す

「行くよ」

 

 

 

『部隊1出撃』——defeat

「次っ......!」

『部隊2出撃』——defeat

「まだ半分」

『部隊3出撃』——defeat

「これで決める......」

『部隊4出撃』——Victory

「やった......!」流石に砂漠で数時間も水も飲まずに、縦横無尽に動き回るビナーを追って指揮していたためか、大きく咳き込む。

「先生.......!」

「私は大丈夫。それより先にシロコを手当てしないと......」額が切れているのをハンカチで拭い、カバンから取り出した救急キットでひとまずの手当てを終わらせる。キヴォトスでは生徒がこのような怪我をするのはよくあることだから慣れたとは言え、年下の子の柔肌——銃弾を弾けども、爆発で焦げずとも——愛しい学生の肌に赤い鮮やかな血が流れているのには慣れない。

「先生——」

「骨も折れてるし......」指揮の邪魔になっていたからしまっていたマフラーで腕を吊る。

「思ったより出血が多い......!?」彼女の白いシャツやブレザーに血が滲んでいる。マフラーを汚しては悲しむだろうと退けた襟口にまで付着しているではないか。焦りからか呼吸が乱れ、手も震える。何とか落ちついて手当てを続ける。

「とりあえず......これで、目に見える怪我は手当てできたけど......」砂漠の焦げるような太陽とアドレナリンのせいかはわからないが、異様に服や顔が濡れている。

「先生!」めずらしくプラナが声を上げる。

「どうしたの.......」

「その血は、先生のものです」

「なにいってるの......」顎まで垂れてきた汗を拭う。——袖が赤黒く染まっている。

「怪我したんじゃ......!」アロナが悲痛な面持ちでこちらを覗く。

「これくらいで弱音を挙げている場合じゃないよ......」

立ち上がる

「シロコを、みんなのところに、連れて行かないと......」

「無茶です!」

「同意、先生が彼女を担いで合流地点に到達できる可能性——極めて低。」

「ここは皆さんが来るのを待つべきです」

「......うん。少し休憩するね」視界が曖昧だ。彼女を持ち上げられるほど腕に力が入らない。

廃墟——これまたカイザーの兵舎——に転がり込み、シロコをオリーブドラブの寝台に置いて、先生も横のスツールに腰掛ける。

「少し仮眠をとるから......シロコが起きたら起こしてね......」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

眼を開ける、ヘリから落ちて以降の記憶がない。天井もブランケットも病院にしては薄汚れている。

ふと横に目をやると先生が寝ている。ここまで連れてきてくれたのだろうか。

「先生、起きて。」揺さぶるが返事はない。いつものことだが、先生にはヘイローがないため眠っているのか、狸寝入りなのか分かりにくくて仕様がない。

「先生.......」頭が少し痛む。手をやると包帯が巻いてあり、ここには先生一人しかいないことからも彼女が巻いてくれたものであるのだろうが、それにしても一向に起きない。

顔を起こしてみる——血だ。拭った後はあるが、血の匂いがする。それも先生の——

嘘、とへたり込む。一刻も早く運ばなければ、私たちならこれくらいよくあることだが、キヴォトスの外の人には命に関わる。——そう教えてくれたのも先生だった。

たかが砂漠の数十km、先生を担いでいくことなど造作もない。いや、行かなくてはならない。

先生の荷物をまとめ、腕を回す。こんなにも軽かったの、と思わず嘆息してしまう。

バラックのドアを蹴り破り、外に出ると夜の砂漠特有の寒風が肌を刺す。サイクリングで慣れているが、先生の方は耐えられるだろうか。

「変わらないかもしれないけど。」とブレザーを脱いで先生に羽織らせる。せっかく腕に巻いてもらった先生のマフラーも先生の首に巻きなおす。

行きの暴風が吹き荒れる音とは打って変わって、今は二人が砂を踏みしめる音しか響かない。まるでこの世界が二人きりになったように。

「ごめんね.......」寝言か譫言か、絞り出したように先生が呟く。

「ん、無理しないで。」遠くにサンクトゥムタワーが見える。あちらに進めばみんなとの合流地点に着けるだろう。大きさを見るに100kmも無い筈だが。

月光が二人を照らす。どの程度歩いただろう。気が付くと影の向きも動いている、体力には自信があったが怪我のせいか思うように体が動かない。

「せめて先生は......」きっとこれを先生が聞いていたら叱るだろうな、と思いながらもつい零してしまう。そういえば、あちらのシロコも砂漠で斃れたのだった。

「違う。」きっと今頃先輩たちが血眼になって探しているに違いない。先生がまだ持つと、皆が迎えに来てくれると、そう信じて進めば絶対に——

砂に足がとられ、床が迫る。咄嗟に下敷きになるが、衝撃で起きてしまったのか、大丈夫かと弱弱しく先生は心配する。この期に及んで、未だに生徒のことを心配している。

「ん、先生こそ......」笑顔ではあるが、誰がどう見ても無理をしている。目の下には隈もあるし、血色も悪い

「帰ったら皆に叱られちゃうな......」

「先生、無理して話さないで。」水筒の口を先生に添える。弱弱しく喉を動かしているのを見ると、去年の砂狼シロコもこうだったのかという考えが頭によぎる。いや、あれほどボロボロではなかっただろう。

身体は冷えるが、先生の温もりと、貰ったマフラーがどうにか体温を繋ぎとめていてくれる。

「学校に帰らないと。」今は帰るところがある。対策委員会の皆がいる、あたたかくて、賑やかで、安心できるところが。

足元がおぼつかない。人影、蜃気楼か幻覚——いずれにせよ幻には変わりない——が見える。近づいてくる。冷たい感触が肌を包む——

 

 

 

「先輩!シロコ先輩が目を......!」アヤネの泣き顔、セリカの顔も同様だ。

「ん......」

「シロコちゃん~!」ノノミが飛びつく。

「息ができない。」

「シロコちゃんが苦しそうだよ~」

「ん、やつれてる。」

「うへ、バレちゃった?」

「ホシノ先輩ったら見つかるまで夜通し砂漠を練り歩いて......」

「それはセリカちゃんも一緒でしょ~?」と目の下を指さす。たしかに真っ赤に晴れている。

しかし先生の姿はが見えない。

「先輩、先生は。」

「大丈夫ですよ~?」セリカが少し怪訝そうな顔をする。

「そもそも先輩が連れてきて倒れたんでしょ......」

「ん......」記憶がない。明らかに途中で倒れたところで終わっている。最後が少し引っ掛かるが、そう考えても説明がつかない。

「ま、助かったんだからいいでしょ~」うんうん唸っているシロコの思考を搔き消すようにホシノが大きき欠伸をする。

「じゃあ、先生の様子を見てくる。」

「ダメですよ~?まだ無理をしちゃ」

「ん、無理してない。」

「今はお仕事の電話をされているそうで......」アヤネが苦笑いを向ける。

セリカも呆れたように「病み上がりで仕事するなっての......」

「大人は大変だね~」そういって昼寝を始めてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「——せい」

頭が割れそうだ。

「——先生」

ここはどこだろうか。

「——先生!」

「起きてください......!」アロナの震えた声が響く。

[目を開ける]

カーテンが揺れている。

「アロナ、ここは......?」

「アビドス校舎です」

「バイタル安定、特に異常はありません。——先輩は大げさすぎです。」声は冷静なプラナも、傘を持つ手が震えている。

「じゃあシロコも無事?」

「はい、まだ隣の部屋で寝ているようです。」

「そっか......よかった」

ごとり、と物音がする。その音を先生が起きた音と思ったのか、ばたばたと足音がし、引き戸が思い切り開け放たれた。

「先生!!!」三人がなだれ込んでくる。その後ろをホシノが無事でよかったよ~、とのんびりと戸を閉める。

セリカは顔をぐしゃぐしゃにして泣いているし、アヤネも眼鏡をずらしては涙を拭っている。

「ほんとによかったです~......」ノノミも後輩の手前涙こそ流さないが、瞳が潤んでいるし、あくびをしているホシノも目の下が隈だらけだ。

「心配かけちゃってごめんね」

「バカぁ.......」

「無茶しすぎです」実際そうなのだから頭が上がらない。

「......そういえば先生、報告しなくていいの~?」とベッドのふちに顎を乗せ、流し目で外を眺めながらホシノが言う。

「んー......そうだね」

「うへ、それじゃあ先生、話し終わったら呼んでね~」

「ありがとね」

四人が部屋に戻るのを見届けてから、窓の方に声をかける。

「そんなとこからじゃなくて、正面からくればいいのに」

「ん、いつから気が付いていたの。」そうやって星空の中からシロコ——もう一人の"砂狼シロコ"——が入ってくる。

「最初から。それより、ありがとね」

「なんのこと。」

「連れてきてくれたんでしょ?」

「ん......そうだけど......」

「本当に助かった、シロコのおかげだよ」と頭をなでる。

「あんな思いをするのは、一回で、一人で十分だから......」

「......そっか」

「ん、先生の手、あたたかい。」

「好きなだけこうしていていいんだよ」

「でももう行かないと」

「もう行っちゃうの?」

「ん、元々私にこうしている資格なんてないから。」

「そんなことないよ、シロコはこうして私たちを助けたんだし」

「それに、は生徒(シロコ)の居場所だから」

「......ありがとう、先生。」ふわりと頭に乗せられていた手を退かす。

「それじゃあ。」

「ちょっと待って!」

「どうしたの......」

「これ、その服寒そうだから......」シロコの首にマフラーを回す。

「代わりにはならないと思うけど、贈り物はしたいから」

「ちょっと早めの誕生日ってことで」

「......ん、大切にする、ね」そういってマフラーを口元まで上げる。

「またね」そう言って彼女は隠れた口元に微笑を浮かべ、群青色の夜のとばりの中に消えていった。

 




気の狂いで書きあげましたが、ここまで読んでくださったなら幸いです。兎に角、今後のストーリーで彼女が救いがあらんことを......
P.S 女先生が好きです

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