先々期文明崩壊より百余年。はるか後代にカルディナと呼ばれる地で……

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イヴィルローズ

 ■約1800年前・青銅都市レシュラック

 

「さぁ、皆さん整列して!」

 夜のレシュラックには景気の良い声が響いていた。

 空は黒く、抜けるようで、まるで無限の淵だった。

「顔を上げて!そう、笑顔でね!」

 また、朗らかな声が響く。

「大変お騒がせしております、私たちは……」

 その声は、徹底してにこやかだった。 

「……砂漠の皆様にはお馴染み!<笑顔の使徒(ラブハンド)>でございます!さぁ皆さん、笑顔になりましょう!」

 

 誰も、笑わなかった。

 

 レシュラックの町は大勢の賊に占拠されていた。宮殿の正規軍は軒並み倒され、王は死に、そして傭兵は逃げ出した。城壁は崩され、砲台から弩砲が引き摺り下ろされていた。

 残った国民を残らず引っ張りだし、並ばせ、今まさに演説をぶっている賊の頭目は、奇妙な風体の男だった。意味の分からない派手な柄のマントを羽織り、笑顔の模様を描いた面布を提げ、真っ赤な手袋を嵌めている。

「……笑いなさい」

 ただし、実力は本物だった。

 男が掌を振る。十メテルは遠くで、多勢に無勢と降伏していた衛兵の一人が倒れ伏す。不思議なことにその首は、他ならぬ賊の頭目の手にあった。

「あぁ、なんということか!痛ましい事件!」

 その男は、血まみれの首を振り回しながらくねくねと動いていた。

「私は悲しい!彼が死んでしまったことが!何故このようなことになったのでしょう!笑顔であれば、彼は幸せに生きて行けたのに!私はただ、それを分かってほしい!」

 首が飛んでいく。行列の中、転がったそれと目があった一人の女が、静かに気絶した。

「さぁ!笑いなさい!」

 今度は皆が従った。凄惨な現場から目を逸らすように、無理な笑い声がポツポツと生まれ、やがてひとつの大きなうねりになる。その渦中にて、賊の頭目は空を仰いだ。

「あぁ!皆が笑っています!歓声が鳴り響いています!世界の人々が皆、笑顔に包まれますように!天にまします神よ!十三人の御使いよ!偉大なるそのお耳に、我らの喝采の届かんことを!」

「神よ!」

「神よ!」

「神よ!天罰神よ!我らの笑みをお納めくださいッ!」

「お納めください!」

「お納めください!」

 そのさまは、はっきり言って狂信者のさまであった。

 

 ◇◆

 

 ひとしきりの騒ぎが済んで、人々は都市の真ん中にある、大きなホールへと残らず集められた。少なくとも、すぐさま皆殺しにしようというのではないようだったが、そのことはむしろ彼らを不安がらせた。物取りならば金品を渡せばいい。だが、狂信者たちには何を渡せばよいだろう?

「その女性は大事ないかね?」

 市民の一人がそう言って、さっき気絶したあの女を見た。女の連れらしき小柄な少年は、やけに平然と答えた。

「問題ないよ」

 フードを被った少年は言った。

「血を見るといつもこうなんだ」

「ご婦人には無理もない」

 その男は礼儀正しく座った。

「格好を見るに、西からの異邦人か。ヴァレイラの古道を通ってきたのだろう?長旅の果てがこの有り様とは、実に申し訳ない」

「あんたの謝ることじゃない」

 少年はぶっきらぼうに言い、そしてそれを後悔したように続けた。

「……地元の人だからって。僕らはこの程度の荒事には慣れてる。むしろこんなので気絶する方が悪いんだ」

 少年は女の頬を叩き、耳をつねった。

「フランソワーズ!」

「……起きてるよ、キャスパー」

 フランソワーズと呼ばれた女は、身体を起こして頭を振った。赤みのある髪が揺れる。

「少し前から」

「なら、しゃんとしてよ、フラン」

 キャスパーは背嚢から水を取り出し、フランソワーズ……フランに手渡した。それを勢いよく飲み干して、フランは呟いた。

「失態だ」

 その瞳には力と確信があった。

「私ともあろうものがこんな醜態を晒すとは……非常事態だな。悪行を見過ごすのも後味が悪い。せめて賊を殲滅してその雪辱と替えさせてもらおう」

「やめた方がいい、お嬢さん」

 ここで初めて、フランソワーズは傍らの男を認識したようだった。目がぱちくりし、唇がひきつる。

「誰だ」

「……彼らは強い。多少腕に覚えがあっても、一筋縄ではいかないよ。それに、一般市民を巻き添えにする気か?」

「その臆病な理屈で投降したのか?」

 フランは獣のような鋭い眼光で、男を睨み付けた。

「君は」

 男は躊躇って、頷いた。

「あぁ、すまない」

 また謝罪をする。

「レシュラックは我が王国だと言うのに」

「あんたは……あぁ。エンジン・レシュラック。インゲニウム王の嫡子か」

 キャスパーは頭を振って、ため息をついた。

「なるほど。謝るわけだね」

「諸君らには謝罪してもし足りない」

 エンジンはまた頭を下げた。そばにいた市民たちは騒然とした。

「王子!」

「あなたの責任ではございませぬ!」

「お止めください、異邦人などに!」

「その言い方はイラっと来るよ」

 不満そうなキャスパーを尻目に、フランはどっかりと腰を下ろすと、エンジンの真っ直ぐな眉尻を見つめた。

「私は、レシュラックの軍は精強だと聞いていたんだ。竜を討ち、獣を逐い、砂漠を駆ける勇士の群れだと。かの“青銅都市”は、一介の賊を討ちきれぬほどなのか?」

「確かに、単なる賊党であるならその通りだ」

「ならば何故賊に降った」

 燻るフランに、エンジン王子は首を振った。

「時勢が悪かった。この時期、レシュラックの付近は砂嵐に閉ざされる。南の隊商都市群からの援軍は呼べぬ。それでも我が軍は容易く賊に遅れなど取らぬ、そのはずであった」

 エンジンの顔には、恐れがあった。

「……あの頭目を見たか?」

「変な面布を着けてた」

「そう。<笑顔の使徒(ラブハンド)>と宣わっていた……あの男もまた王だ」

 エンジンは身震いをした。

「分からぬか?【強奪王】だよ。強盗(バーグラー)の王だ」

「……超級職か」

 キャスパーは浮かぬ顔で言った。

「もっと北にいると思ってた」

「我が父【奇襲王】インゲニウムが病に伏せっていたのも、彼奴らは知っていたのだ。やつばらめは宮を攻め落とすと、街へと素早く繰り出した。そこからは諸君らも知る通りだ」

「だけど、一人だろ?」

 フランは涼やかな目蓋を撫でて、言った。

「王が一人居たところで、それほど危ぶむのか?」

「それはーー」

 その時、蝶番の擦れる音がした。

 大扉が開いたのだ。人々は口をつぐみ、そこからぞろぞろと入ってくる一行を横目で見つめた。

 他ならぬ、あの賊の頭目だった。相も変わらず珍妙な格好をし、珍妙な歩き方で辺りを見回している。その後ろにはローブを着込んだ大小の人影と、小柄で痩せぎすの男が付いていた。

「みなさん!」

 【強奪王】ダハク・ムブタシムは叫んだ。

「お待たせ致しました!おまちかね、<笑顔の使徒(ラブハンド)>で御座います!」

「誰が待つか!」

 フランは毒づいた。キャスパーはその口を押さえ、毒針のような視線で睨み付けた。

「おや、また笑顔が減ってきたようですね!良からぬことです。皆さん、笑いましょう!」

 作り笑いに囲まれて、賊の頭目【強奪王】は満足げに手をたたく。

「結構。その結構な皆様方に贈り物をご用意しました!」

 その途端、後ろに控えていたローブの一行が動き出した。懐から小さな書物を取り出し、群衆に配っていく。

 不満げなフランを制止しながら、キャスパーも賊のひとりからその本を受け取った。いかにも手作りといった風で、粗雑な装丁だった。

「それは聖典です」

 【強奪王】ダハクは朗々と言った。

「とても残念なことに、人は忘れる生き物です。弱い!その弱き心に笑顔を忘れぬよう、その聖典を教えのよすがとなさってください!」

 聖典とやらの行き渡ったのを、満足げにダハクは見渡した。

「悲しきかな、我々はここに留まるわけには行きません!聖典を残して去らねばならぬ、不自由な我らをお許しください!」

「お許しください!」

「お許しください!」

 その言葉に、群衆は少しばかり安堵した。

 彼らはこの街を滅ぼすつもりはないらしい。本一冊賜るだけで命を見逃してくれるなら、安いものだ。

 今度こそ、人々に本当の笑みが溢れ始める。それをどう解釈したものか、【強奪王】ダハクも朗らかさを増した。

「……素晴らしい!」

 足を進める。その歩みが一人の男の前で止まった。

「ときに貴方。それはなんですか?」

 世間話か?市民の男は緊張しながらも、努めて明朗に答えた。

「……計算機だ」

 そう、男が持っているのは小さな計算機だった。ボタンやスイッチのついた小さな機械だ。

「<遺跡>で拾ったんだ。商売に重宝してる」

「それはそれは!」

 ダハクはくねくねと頷き、

 

「聖典。第五章第三節」

 

その男の掌を“計算機”ごと握り潰した。

「うがぁぁぁぁあ!」

 男が絶叫する。【強奪王】もまた絶叫した。

「“天罰神は人の傲慢なる文明の発展を憂い、悪しき先々期文明の頭上より十三の鉄槌を下しましき”!機械技術は神のお怒りになるところ!それを拾い、生業に用いるとは!なんと罪深いことでしょう!」

「なっ……!」

 思わず立ち上がったそばの市民たちを、賊の手下が巨体で制止する。

「しかし!彼は知らなかったのです!嘆かわしい!その手の疵と、我らが聖典がこの先、彼の無明に光をもたらさんことを!あぁ天罰神よ、お許しください!」

「お許しください!」

「お許しください!」

 賊は唱和した。

 ダハクはその顔を動かし、不気味に市民を睥睨した。

「そこの女。それは?」

「あ、灯りでございます」

 老女が言い、腰のランプを差し出す。同じく<遺跡>からの出土だろう、機械式の照明装置だった。

「お許しください!知らな、知らなかっ……」

 放り出されたランプに、ダハクは黙って視線を送る。次の瞬間、賊の巨漢がそれを叩き壊した。

「あぁ、御安心なさい!貴女は今、心より懺悔し、忌まわしき遺物を棄てた!天罰神もお喜びになるでしょう!」

 老女が息をつく。

「しかし笑顔が足りませんね」

 そして、巨漢が老女の頭をも叩き潰した。

 凄惨な光景に民衆はどよめき、しかし恐れのために笑顔は崩さなかった。上ずった笑い声が疎らに響く。

 巨漢のローブが外れた。

 その巨漢の顔は、身体は、砂をこね上げて造られていた。恐らく他の賊も。明らかに、人間ではなかった。生き物かどうかさえ怪しい土人形(ゴーレム)。それらが群衆に混じって、存在しない視線を光らせていたのだ。

「皆さん!笑顔ですよ!そして遺物を放棄するのです!機械文明からの解放は喜びなのですから!」

 その背後にいた痩せぎすが大きく頷く。ダハクは痩せぎすの頭を撫で、言った。

「善き行いですよ。あなたの能力は実に役立つ。天罰神もお喜びになるでしょう……【怠惰魔王(ロード・アケディア)】」

「ありがとうごぜえます、【強奪王(キング・オブ・バーグラリー)】猊下」

 その言葉に、フランとキャスパーは顔をひきつらせた。

「……まさか」

「【魔王(ロード)】だと?」

「あれがレシュラックの陥落した原因だ」

 エンジン王子は悲しげに言った。

「【魔王】が……あれほど恐ろしいとは。奴らはあの砂人形の軍勢で、我が兵たちを擂り潰して見せたのだ。疲れもせず、怯まず、死を恐れない。多勢に無勢という言葉があるが……」

 エンジンは小声でそう言って、二人を見た。

「どうしたのだ?やけに気にしている」

 二人は身を強ばらせ、エンジンを振り返った。

「【魔王】に何か?」

「あぁ、ちょっとした因縁がね」

 キャスパーは呟いた。 

「切っても切れない縁さ」

「【怠惰(アケディア)】が賊党に居るとなると、多少頭を使わなければならないぞ」

 フランは黄金色の髪を揺すりながら言った。

「あの痩せっぽちがいる限り、奴の手下は倒れない。キャスパー、【怠惰魔王】の情報は?」

「よく分からないね」

 キャスパーは手元のノートを捲った。

「【魔王】で僕らが詳しいのは件の二種だけ。他の能力は基本的に不明だよ。ただ伝承に依れば、少なくとも統率者であるのは確かみたいだ」

「そんなことは分かっている」

 フランは言った。

「確実な答えなど当てにしてない。お前の推測を聞きたいんだ」

「あの賊党がほぼ全て奴の……“眷属”だとして」キャスパーは何やら書き付け始めた。「リソースが合わない。やっぱり制約があると思う。媒体を手ずから造る必要があるとか……射程距離かな?いや、町を攻め落とせるのなら、能力は広域型指向だね。なら、能力の中心にいる本体が弱くなるはずだ。行動制限系……【狂王】や【将軍】型みたいな……従魔師系統の方式から類推して……」

 エンジンは目を丸くした。キャスパーのノートにびっしりと書き込まれた文字を見、その表紙に焼き付けられた切っ先のない剣(コルタナ)の紋章を見る。

「知識があるのだな。もしやどこかの貴族か?」

「キャスパーは凄いよ。私などより余程賢い。職業(ジョブ)学や魔術(MP)理論にも造詣が深い」

 フランはしみじみ言った。

「で、結論は?」

 キャスパーが顔を上げ、眼をくるくるさせながら言う。

「【怠惰魔王】……本体には殆ど戦闘力がない、筈だ。多分、自分で発動できる力の種類に制限がかかっている。素早く倒せばいい。問題はむしろあの【強奪王】の……」

 

「謀反の相談ですか?」

 

 そして、他ならぬ【強奪王】がすぐそばに立っていた。

 キャスパーが沈黙し、フランが目を剝く。

(いつの間に……!)

「良くありませんよ。何より笑顔がない。厳めしい顔をして敵意を振り撒いている。実に、実に良くない!……おやァ?」

 その顔が揺れた。

「隣の貴方……もしかしてレシュラックの第一王子では?」

 エンジンの顔がひきつる。それに確信を得たのだろう、ダハクは喜色満面で言った。

「おやおやおやおや!市民に紛れていたのですか!死亡報告は受けていませんでしたからねぇ……なるほど、護衛や何かを付けてはここにいると教えるようなもの。簡単な理屈ですが、しかし大胆な策謀だ……!」

 感心してか、ダハクが揺れる。

「して、それは?」

 指差したその先を見て、エンジンは青ざめた。

 腰にある銃は、青銅都市に納められた発掘品のひとつ。旧文明の技術を宿した魔力式銃器だ。護身用に持たされていたものが、今になってどういう意味を持つか、彼には既に分かっていた。

「王子殿下!いけませんよ、インゲニウム王亡き今、御身はこのレシュラック王国とひとつ。ましてや機械文明に毒されるとは……」

 その手が開く。【強奪王】の唇が動く。

「《グレーターテイクーー」

「そこまでだ」

   

 そして、フランが【強奪王】の横面を殴り飛ばした。

 

「奸賊め!見たか!」

「あーあ、やっちゃった」

 フランが鼻息荒く叫び、キャスパーは嘆息した。

 あの【強奪王】は分厚い筈の石壁を突き破って吹き飛んでいた。砂人形を引き連れたあの痩せっぽちの【魔王】が、慌てて大扉から追いかけていく。

「まぁ妥当かな。ちょっと直情径行だけど、よしとするよ。フラン、引き続き頼む」

「了解、だ!」

 フランが構える。その気配が一気に膨らんだ。

「シッ!」

 刹那、フランは弾丸のように飛び出した。

「さぁ、来い!【強奪王】!」

 その彼女の振る舞いは、明らかに溜まったうさを晴らしていた。呆れたように、キャスパーがまたため息をつく。エンジン王子はそんな二人を呆然と眺めていた。

「なんてことを……」

「でもさ、あの土壇場で他に選択肢もなかったでしょ、殿下?」

 皮肉っぽくキャスパーが言う。

「大丈夫だよ。僕らはまぁ、強いから……ちょっと不本意だけどね」

 

 ◇◆◇

 

 □青銅都市レシュラック・中央

 

 夜明けが近い。

 白み始めた空を横目に、ダハク・ムブタシムは身体を起こした。面布が揺れる。

「随分と丈夫だな」

「……至宝。それゆえに」

 壊れてしまったブローチのような破片を投げ棄てると、ダハクは笑顔で、しかし忌々しげにその女を見た。

(なかなか高等な隠蔽を付けている)

 目の前の女も、さっき隣に居たあの少年にも、《看破》は効かなかった。もう少し腰を据えて調べられれば別だろうか。

(どちらにせよ、先の膂力。こうして挑んでくる自信。超級職と見込んで間違いはないでしょうね)

「アルセーヌ!」

「御呼びで、猊下!」

 向こうからえっちらおっちら走ってくる【怠惰魔王】に、ダハクは叫んだ。

「反抗的な方々がおられる。“奉仕種族(スラル)”で囲んでしまいなさい」

 痩せ男アルセーヌはゼエゼエ頷くと、手を叩いた。途端に大地が揺れ、正体を露にした砂人形たちが波濤のように駆け寄ってきた。それらが拳を振り上げる。

「多勢に無勢で磨り潰してしまえば……」

 だが、その拳が全て砕けた。

「こんなものか?」

 得意気に笑うフランは、何一つ動いていない。脱力して立ち尽くしたままだ。その身の堅さゆえに、攻撃を仕掛けた砂人形のほうが砕け散っているのだった。

「なら、今度は此方からだ!」

 フランが走り出し、【強奪王】へと迫る。間に入る砂人形たちが、全て体当たりで崩されていく。

「ふん。なかなかお強いようで」

 【強奪王】の笑みが僅かに、怒りの形相になる。

「しかし、実に笑えない……笑えない事態です。そう、笑えない。私から笑顔を奪うなど、万死に値する罪。罪人は死して己が咎を償わねばならない!おお、天罰神よ、我が心に加護を!」

 その手が開く。

「《グレーターテイクオーバー》!」

 どれ程の硬度を誇っていようとも、【強奪王】の力からは逃れられない。それは強盗系統の秘奥、王の権能、超越者の暴力だからだ。

「肉体を盗み取ってくれましょう!」

 その能力がフランの胴に狙いを付け……

 

「《喚起(コール)》」

 

しかして、湧き出した黒煙に遮られた。

「やっぱり。問答無用の“強奪”なんて強すぎる。リソースが合わない。有視界での視認が制約か……データに書き加えておかないとね」

「貴様……」

 ダハクが壁の穴から出てきたキャスパーを睨み付ける。少年は涼しい様子で、手の甲を撫でていた。

「【スモーク・エレメンタル】。目隠しにはピッタリだろう?」

「賢しらに……よくも朗々と……」

「余所見かい?」

 憤るダハクに、フランが肉薄していた。その無手が獣の爪のように唸り、ダハクを襲う。

 ダハクはそれをぎりぎりで躱した。

「焦りはしたが……焦りはしたが!なるほど、貴女は明らかにEND型!素早さに秀でる我が【強奪王(キング)】ならば躱せる!」

 再び、笑顔が戻ってくる。

「アルセーヌ、あれを出しなさい!」

「はい、猊下!」

 【怠惰魔王】が後退りながら、一体の、ひときわ黒っぽい砂人形を呼び出す。のし掛かってきたそれを砕こうと、フランは拳を突きだし……顔色を変えた。

 ダハクは高らかに笑った。

「その砂人形は特別製!砂に泥炭と粘土を混ぜた“奉仕種族(スラル)”です!単純な力押しでは腕を絡め取られるのみ!“沼を刺し殺す”とはまさにこの事ですね!」

「なんだと、この!」

 フランは激昂し、もう片方の拳をもねばつく人形へ突き入れ、そしてまた順当に、その拳は泥の中に取り込まれた。両腕を固定されてもがく彼女の後ろに、【強奪王】が迫る。

「押さえつけておきなさい、【怠惰魔王】!私が目隠しの効かぬ至近距離で、じっくりと背中の肉から心臓まで盗みとれるようにね!」

「……チッ」

 キャスパーは舌打ちし、助太刀しようとした。その周りの手勢、彼に仕えるエレメンタルたちは、しかし砂人形を吹き飛ばすので精一杯だった。

「そこで見ているといいですよ、お仲間が腹の臓物を失くして、空っぽになって行く様を!」

 【強奪王】は意気揚々と叫んだ。

「《グレーターテイクオーバー》!」

 

 その瞬間、泥人形が弾けた。

 

 土の焼ける匂いがして、固まった砂礫が飛ぶ。狙いを間違えた“強奪”が、フランの胸元から皮膚ごと首飾りを抉り取り、そしてフランの回し蹴りが【強奪王】の鼻先を掠めた。

「何……!」

「伝説級特典武具【陰陽手甲 ポロロッカ】」

 フランが自慢げに答える。

 その両手の篭手の掌には、プラスとマイナスを示す印があった。

「私の力だ!手が使えなくたって、やりようはあるのさ」

 特典武具。それは、宝物獣を討伐した戦士の証。

「どうだ!」

「特典武具、だと……?」

 ダハクは呟いた。

「いや、()()()()()、どうでもよい!そんな些事……それより、何ですか、()()は!」

「え、あー……」

 フランは自分の胸元を見、滲む鮮血を見、そして落ちている()()()()()()()()()()を見た。

「しまったな」

「あり得ない、あり得ない!こんなことが……こんな巡り合わせが!貴女は、貴女も……!」

 【強奪王】の瞳が震え、フランの力を看破する。

「神造迷宮(ダンジョン)攻略者……!」

 そう、彼女の称号を。

「世界に七つのみ存在する……最悪の器!」

 民草の恐れる、その雷名を。

 

「貴女……【暴食魔王(ロード・グラ)】!」

 

「キャスパー……!すまない、バレたようだ」

「仕方ないな……全く」

 どこか他人事のような二人とは裏腹に、ダハクは完全に狼狽えていた。

「【魔王(ロード)】!何故、こんな場所に!暴食の迷宮(ダンジョン)ははるか西方の筈でしょう!」

「偶然だよ」

 【暴食魔王】フランソワーズが呟いた。

「質の悪い偶然だ。はじめから、ね」

「そっちの餓鬼もか……!」

「失礼な呼び方だなぁ。さっきまでの慇懃さはどうした?」

 キャスパーがせせら笑い、そしてフランが構えた。

「私は憎悪する……【強奪王】、そして何より【怠惰魔王】!力を振りかざすお前たちを!」

 その瞳は、怒りに燃えていた。

「だが、超級職を削除するなら、命までは取らないぞ」

「ふざけないで頂きたいな!」

 【強奪王】もまた吠えた。

「既に勝った気でいる!その思い上がりを、世間では傲慢というのです!」

「あいにく、私は【暴食(グラ)】だ」

「死して消えろ!“笑顔”の怨敵め!」

 【強奪王】が両手を振り回す。

「みたび!《グレーターテイクオーバー》!」

 黒煙もない。透き通った夜の中、その力は過たず【暴食魔王】の首筋を直撃し、動脈を破らんとし、

「……何故」

薄皮を奪っただけで止まった。

「それなりに痛いんだがな」

「バカな、我が“強奪”の権能に奪えぬものは何一つ……」

 ダハクが呟き、そして口ごもる。

「何一つ……何、一つ……!」

 隠蔽の首飾りが落ちて、ダハクにはフランの全てが見えていた。その堅さ(END)膂力(STR)、そして何より、今、ひとつ上昇したばかりの……レベルが。

「新情報。【強奪王】の能力はENDで抵抗できるようだ。面白いね」

 のほほんとしたキャスパーの言葉も、彼の耳には入らなかった。

「《暴引暴食(イート)》」

 フランが呟く。

「私が存在し続ける限り、世界がリソースをくれる。望もうと望むまいと。全く……忌まわしい力だ。【魔王】というのは」

「それほどのレベルを……それが、貴女の!」

「お喋りは終わりだ、【強奪王】。本気で往く!」

 フランが足に力を込める。その突進は、ダハクにとって見切れぬ速さではない。

 だが、強い。その圧に、【強奪王】は気圧され、震え、すくみ、どうにか寸前で飛び退いた。

「はっ……!」

 そして、フランの突撃は止まらない。

「まさか、貴女は!」

「残念。最初から、狙いは此方だ」

 背後、【怠惰魔王】へと迫るフランが叫ぶ。その拳が固められ、不健康そうな男へと唸りを上げて叩きつけられた。

「ひ、ス、“奉仕種族(スラル)”よ!」

 【怠惰魔王】が絶叫し、背後に控えていた白砂の人形が彼に纏わりつく。砂の鎧へと変身した人形が、主を堅牢な守りに包み込んだ。砂塵装甲が拳を受け止める。

「駄目だ!逃げなさい【怠惰】!」

 【強奪王】が叫んでいる。フランはその握った左拳をほどき、掌を砂鎧に埋めた。

「我、陽印(プラス)を標し……」

 右手をも持ち上げ、ゆっくりと砂塵に手を当てる。

「……陰紋(マイナス)を示す」

 両手が触れ、そこには円環が出来上がった。両腕で【魔王】二人を繋ぐ円環が。

「《輪廻天章(ポロロッカ)》!」

 そしてその円環を、暴れ狂う電子(エレクトロン)奔流(ポロロッカ)が通り抜けた。

 砂の鎧がひび割れ、焼け砕け、砂塵へと還る。その内側では【怠惰魔王】の膨大な生命力(HP)を削り取る高電圧の大電流が轟音を上げ、火花を散らしていた。

 全身を雷撃傷に引き裂かれた【怠惰魔王】がゆっくり倒れ伏す。ポロロッカの能力を喰らってなお、消し炭ではない死体を遺しているのが、彼の……【魔王】の強さの証明だった。

「それを殺せば、町を制圧している手下どもも沈黙する。自棄を起こして道連れ戦術を選ばれても面倒だし、いい選択だったよ、フラン」

 キャスパーがへらへらと言う。その周囲では、あれだけ蠢いていた“奉仕種族”たちが砂塵へと崩れていた。

「さて、これで戦場はここだけになった」

「ぬ……」

 もはや完全に笑顔など失せたダハクが、面布の奥で歯を食い縛る。

「フラン、さ、そいつもお願い」

 キャスパーは事も無げに言った。その顔が怪訝そうなものに変わる。

「フラン?」

「……」

 【怠惰魔王】の死体の前、煙を上げる鮮血と肉の前で……

 

 フランソワーズは、屹立したまま気絶していた。

 

「あァ、なるほど、血と死体がね……」

「……ふは!はは!これはこれは!形勢逆転ですねえ!」

 途端に、【強奪王】が笑顔を取り戻した。その指先がキャスパーを針のごとく指す。

「見るに、君は前衛型ではない。ならば、我が“強奪”は致命傷になるはず!ですが安心なさい、我が偉大なる使命に立ちはだかった罪を贖い得るように、手足の先から奪い取って殺して差し上げます!さぁ、笑いなさい!自らの命にピリオドを打てる歓びを!」

「ぺらぺらと……よく喋る」

 キャスパーは露骨に気分を害したようだった。その首飾りを投げ棄て、エレメンタルたちを右手に呼び戻す。

「ほう。やはり、君もですか」

 ダハクは目を細めた。

「神造迷宮(ダンジョン)の攻略者がひとり……!」

「あぁ。僕は礼儀を知っているからね。名乗ろう」

 キャスパーが言う。その髪を、夜風が撫でた。

「【色欲魔王(ロード・ルクセリア)】キャスパー・フォルトロンだ」

「ふふ、ですがやはり……我が戦闘力には程遠い」

 【強奪王】は【色欲魔王】の、彼に比すればひ弱な肉体スペックを嗤う。

「調子に乗りすぎたようで」

「いいや?それは君の方だよ……」

 キャスパーは唇を舐め、

「……《喚起(コール)》」

虎の子を呼び出す。

 風が沸き立ち、キャスパーの頬を撫でる。薫風はすぐに荒れ狂う大気の奔流へと変わった。

 それは嵐のエレメンタル。暴風と恐慌の化身だった。緑がかった渦巻きに、精霊の絶叫が混じっていた。

「なるほど?上質なエレメンタルです」

 【強奪王】は首肯する。

「けれど、足りない。その程度の凡な存在では、私を圧倒できる筈もないでしょう!」

 【強奪王】は腰を落とし、五指を獣のように開き、キャスパー目掛けて走り出し……

「《制限昇華(ネオテニー)》」

強まる暴風に、足を止めた。

「これは……!」

「【サイクロン・エレメンタル】……“今は”違うけどね」

 暴風は膨らみ、同時に濃くなっていた。黒ずんだ翠緑がうねり、ちっぽけな【強奪王】を睨み付ける。【強奪王】ダハクは思わず呟いた。

「風の……魔人?」

「眷属器【嵐王(キング・オブ・ストーム)】……《大嵐(テンペスト)》」

 そして、その暴風が爆縮した。

「ぐおおお!?」

 吸い込まれていく【強奪王】が絶叫する。その疾さも、爆風に煽られてはもはや意味をなさない。できるのは砂を掻き、大地に掴まることだけだ。

「な、なんだこれは!こんなところで、こんなところで!私が死ぬ筈がない!死ぬ筈がないんだ!」

「いいや、死ぬよ。人は簡単に死ぬ。無慈悲なほどに」

「黙れ!」

 ダハク・ムブタシムは、荒れ狂う風の向こうにいるはずのキャスパーを指して言った。

「お前が、お前ごときが!我が崇高な使命を!私には天罰神を笑顔で奉じるという使命があるのに!悪しき機械文明の存在を挫くという天命があるのに!それを傲慢にも、その渋面で妨げるお前には!どんな大義があるというのだ!」

「大義?使命?……それならあるさ」

 キャスパーは暴風の渦中、閉ざされた視界の中で言った。

 

「全ての【魔王】は僕らが殺す。それに味方する奴らも全て、この忌まわしい力で……毒を以て毒を滅ぼす。全ての【魔王】を滅ぼし、その果てに僕らも死ぬ」

 

「何……!」

「それが、フランと僕の……【魔王(ロード)】の器を得てしまった咎人の贖罪なんだ」

 キャスパーはそう言い、

「だから、君のような、小物の道理に道を譲る気は、毛頭ないんだよ」

鋭く断じた。

 その言葉の重みに、【強奪王】はただ獰猛な笑みで答えた。キャスパーもまた、話は終わりとばかりにため息をついた。

「だめ押し、だ。《ゴールデン・グリッド》」

 その黄金色の【ジェム】が暴風の中心へ吸い込まれ、“眷属”がそれを噛み砕く。

 雷鳴と紫電を取り込んだ暴風は、まさに嵐の様相で【強奪王】へと襲いかかった。風が身体を押さえつけ、雷撃が躍り狂う。

「バカ、な、私は、神の!神の御意志を!おお、天罰神よ!今すぐ、この異端者に裁きを!十三柱の使徒を、遣わ、せ、たまァ、えァァァァァァ!」

 その肉体が捩れ、砕け、塵になる。砂塵がそれを飲み込み、新しい同胞として朗らかに出迎え、そして、嵐が終わった。

「一分……」

 消費したレベルを確かめながら、キャスパーはフランのもとへ駆け寄り、額を叩いた。辺りには、暴風に傷んだ街路樹からむせるような緑の香りが漂っていた。

 後ろで、砂を踏む音がした。

「……貴殿ら」

「あぁ、王子さま。ごめんね、出来るだけ建物を壊さないよう配慮はしたんだけれど」

 キャスパーは気絶したままのフランを抱え上げ、背後のエンジンを振り向いた。

「賊は全滅さ。言っただろ?僕らは強いって」

「貴殿らには謝辞の言いようも思い付かぬ」

 エンジンは静かに言った。

「この国は大きく傷ついたが、まさか異邦人の手で助けられるとは、今宵はなんとしても我が宮で歓待をーー」

「殿下!」

 その時、市民たちが恐る恐る歩み寄り、王子を取り囲んだ。その怯えきった眼差しは、キャスパーとフランの二人を睨んでいた。

「殿下!彼女らは……」

「【魔王】……」

「気を許されますな!災いの種でございます……」

「ですから異邦人などに……」

「お前たち!」

 憤るエンジンに、キャスパーは首を振った。

「いいよ。僕らはすぐ出ていく。どうせ夜も明ける頃だし」

「しかし……!」

「フランだってきっとそう言うさ」

 キャスパーは東の空、もう紫色の雲に染まっている空を見上げ、砂を踏んで歩きだした。エンジンは躊躇っていたが、やがてまた絞り出すように叫んだ。

「せめて、そなたたちの名を!」

 不躾な《看破》などしたくはなかった。キャスパーは振り返り、群衆に向かって言った。

 

「【色欲魔王(ロード・ルクセリア)】キャスパー・フォルトロン。【暴食魔王(ロード・グラ)】フランソワーズ・アジュール。嫌悪しろ。忌み嫌え!僕らは【魔王(ロード)】……全ての善良なるものの敵だ!」

 

 そう言って、キャスパーは二度と振り向かなかった。

 影は少しづつ小さくなり、夜明けの風に溶けていく。町外れから、崩れた城壁を越え、そしてはるか東へと……その足取りを思って、エンジン王子は呟いた。

「レシュラックは亡んだな」

 側にいた老人は首を振った。

「何を申されますか!厄災は去ったのです、これから建て直せばよい!」

「いいや亡んだのだ。青銅都市レシュラックは今日で終わりだ。父も身罷った、都市は荒れ果てた。だから、新しい国を興さねばなるまいよ」

 老人は王子の言わんとすることを図りかねて、ただ瞬きをした。エンジンは続けた。

「そうだな。新しき国の名は……コルタナ、というのはどうだろう」

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 ■???

 

 朱塗りの宮には美しい日差しが注いでいた。

 典雅な蓮池には白魚が泳ぎ、それを狙ってか背の高い鶴がじっと止まっている。

「……【怠惰(アケディア)】が死んだわぁ」

 その畔で、翼のある女が気だるげに言った。

 手元の水晶玉を覗き込み、軽く叩き、首をかしげる。やがて女は頷くと、眠そうな眼差しを上げた。

「間違いなくぅ。アルセーヌの僕ちゃんったら、ドジ踏んだのねぇ」

「ハッ!あの老け顔を僕ちゃん呼ばわり出来るのは、世界でお前だけだぜ」

 ヒトと魚を混ぜたような、鱗のある幼児が苦言を呈する。

「あァ、お前もババアだからか。だから化粧濃いんだろ?キャキャ!」

 幼児の悪辣な言葉に、女は顔を歪めた。端正な顔が途端に鳥のように、人間味の薄い不気味なものになる。

「黙れ!誰がババアよ!あたくしはまだ二十二……」

『静まれ』

 そのとき割って入ってきた男が、嗄れ声で剣呑な二人を止めた。

 その顔は、慟哭する深紅の鬼の面に隠れ、具足の隙間からは幼児のものとは違う、鋭い鱗が覗いている。その金色の瞳は、猛禽のように残酷だった。

『ワン・ダー。確かに【怠惰(アケディア)】は死んだのか?』

「確かよぉ。でも、良い知らせもあるわぁ」

 ワン・ダーは焦点の合わない目で笑った。白い羽根が穏やかな風に靡く。

「【色欲(ルクセリア)】と【暴食(グラ)】が見つかったわよ」

「へぇ?」

 幼児が短い手足を抱えてほくそ笑む。

「じゃああの老け顔も、最期に良い働きをしたわけだ。イカれた教団に入り浸るのも満更無駄じゃなかったかな?」

『死者は悼むべきだ、カザン』

「断るぜ。オレはあのグズが嫌いだったんだよ、鉱華(クァンファ)

 幼子カザンは幼げな顔に醜い表情を浮かべて切り捨てた。

「二を足して、一を引く。これで前進と言えんのかよ?」

『あぁ。【怠惰】は神造迷宮(ダンジョン)の底へ戻った。再び攻略者が現れるまでは、そこに沈めておけばよい』

 嗄れ声で、鉱華(クァンファ)は言う。鬼哭面を揺らしながら。

『新たな攻略者も引き入れねばならん』

「断られたらァ?」

『言う必要があるのかね?』

 鉱華(クァンファ)の言葉に、ワン・ダーはゆっくりと頷いた。

「そう。それにあの【強欲(アワリティア)】の男も追わねば……なんにせよ、達成は近いわぁ」

「昂ってくるぜ、実によ」

『あぁ。全ての【魔王】を我らが手中に……』

 三人は、宮の中央に刻まれた七芒星と、その七つの星を見た。四つは黒く、二つは白く、そして残りの一つは赤く塗り潰されている。

 鬼の面の男の目の前で黒星が一つ消え、そして二つの白星が漆黒に染まった。

『……その果てに、世界をもな』

 

 END


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