目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が 作:小林司
各話最初に登場するウマ娘の名前は、今回から分かりやすいように太字で表記します。
浦和ウマ娘ノダトレーニングセンター学園。通称『浦和トレセン学園』。
私たちの『中央トレセン学園』が『トゥインクルシリーズ』に出場するため学校ならば、こちらは『ローカルシリーズ』に出場するための『地方トレセン学園』だ。
私は今、所用でこの学園を訪れているのだが、所用どころではなくなってきた。
浦和トレセン学園の生徒会室にて。
浦和の生徒会長が遅れてやって来たので、改めて自己紹介。
「改めまして。生徒会副会長のフツロルンルンと申します」
「同じく、ピサノミライです」
「生徒会長、サバノミッソーニです」
浦和側の自己紹介が終わり、
「私は中央トレセン学園生徒会、副々会長のブタノカックーニです」
「ボクは生徒会役員ではないけれど、クーニさんのお伴をさせてもらったテイエムオペラオー!」
彼女の自己紹介には花弁が舞う、というオマケ付き。もちろん、ピサノミライさんが掃除をする。
「…………」
「…………」
当たり前、といわんばかりの行動に、呆れる副会長(見るのが二回目)と、驚く会長。
「彼女は?」
「ミライさんのお姉さんだそうです」
「なるほど」
サバノミッソーニさんは、背丈は私と同じぐらいで、耳は多分私と同じぐらいの大きさ。なにぶん黒色のカバーを着けているので、正確なサイズは分からない。
そのカバーの上から、金属製のアクセサリーを右耳に引っ掛けている。イクノディクタスさんの物に似ているが、彼女のは魚のような形をしている。サバか?
髪の色は私より濃い目の茶色で、腰まで届くぐらいの長さ。
銀縁のメガネを着用している。ビワハヤヒデさんの物に似ている。同じメーカーの色違いだろうか。
「どうかなさいましたか?」
「えっ? ああ、何でもありません」
見つめていたかららか、声掛けられてしまった。
「自己紹介も済んだことですし、そろそろ中央トレセン学園へ向かいましょうか」
「「はい」」
会長がそう言うと副会長二人が返事をした。
「準備は大丈夫ですか?」
「はい。既に整っています」
「では、出発しましょう」
私たち二人が先に生徒会室を出て、三人が出てきた。会長が部屋を施錠する。
廊下を昇降口へ向けて歩いて行く。
私と会長が一緒に歩いていて、少し後ろをテイエムオペラオーさんと副会長二人が歩く。何やら盛り上がっている様子。
此方は特に会話はない。黙々と歩いている。
「中央トレセン学園生徒会です。ありがとうございました」
「ありがとう!」
受付で借りている名札を返却。
「どうもね~」
私とテイエムオペラオーさんは来客用の昇降口へ、三人は生徒用の昇降口へ向かう。
靴を変え、三人を待つ。此方の方が駐車場に近いので、ここで待ち合わせ。
「お待たせ致しました」
会長たちがやって来た。
「では、駐車場へ行きましょう」
そう言ったもののすぐ側だ。
「
そう言いながら車を指すと、三人の反応は……。お察しください。
「どちらに乗りますか?」
そう三人に問い掛ける。
「ボクは勿論!
「いや、別にあなたには聞いてませんけれど?」
「じゃあ、私は姉の隣に」
「でしたら、私は隣宜しいですか?」
「構わないよ!」
「えっと。私は助手席でも宜しいですか?」
「はい」
そんなわけで、三列シートの最後列に、左からピサノミライさん、テイエムオペラオーさん、フツロルンルンさんが座り、真ん中が空席で、助手席にサバノミッソーニさんが座った。
何でこうなるのかなぁ……。まあ、予想してましたけどね?
「それでは出発しますよ」
浦和トレセン学園を出て、一路中央トレセン学園へ向かう。
「そうなんですか!」
「そうさ! 驚いただろう?」
「まあ、姉さんらしいですね」
後ろの三人は会話に花が咲いている。フツロルンルンさんともすっかり意気投合している。
「いやあ、君と話していると楽しくて仕方がない! 初めて会ったような気がしないよ!」
「私もです!」*1
楽しそうでなにより……。
「クーニさん」
「はい?」
隣のサバノミッソーニさんに声掛けられた。
「クーニさんが運転されるんですね。てっきり、学園職員の方が運転するものだと思ってましたから、驚きました」
普通そう思うよね。
「ええ。運転免許を持っているので、生徒会長に良いように使われています。ハハハ……」
会長には絶対内緒だが、学園の車を自由に使う権利さえ持っている。
一生徒に与えるとか、有り得ないよなぁ。普通。
「会長……シンボリルドルフさんですよね?」
「ええ。御存知でしたか」
そう言ってから気付いた。
「勿論! シンボリルドルフさんといえば、URA史上初
ですよね……。
「ソーニ会長、シンボリルドルフさんに会えるのが楽しみでしたからね」
後ろから、ピサノミライさんの声が聞こえてきた。楽しみにしていたのか。
「はい! お会いできるだけで感動ものです。なのに、今回の交流イベントの件を前向きに考えてくださっているなんて……。もう、今回の件がどうなろうが、お会いしたらまずは感謝の意を伝えなければ……!」
まだ何も決まっていないのに?
「緊張してトイレに籠っていたっていうのは、それが理由ですか……」
「お恥ずかしながら」
「まあ、仕方ないと思いますよ」
中央トレセン学園に到着。私たちにしてみれば、『帰ってきた』という感じだが、浦和の三人は……。
「ここが……!」
「中央……」
「流石です」
この通り。
「それではテイエムオペラオーさん。三人を生徒会室まで案内してください」
「任せてください!」
「私は別の用件がありますので、これで一旦失礼します」
駐車場に車を止めて、三人の案内をテイエムオペラオーさんにお願いし、私は別の方へ向かう。
えっ? 帰寮?
そんなわけないでしょう?
向かった先は……、
「失礼します!」
ノックして扉を開いた。
『スピカ』
そう。チームの部室棟だ。
「あ。クーニさん! どうかしましたか?」
早速、スペシャルウィークさんが駆け寄ってきた。
「お疲れ様です。えっと……」
室内を見渡す。
これからトレーニングなのか、既にジャージに着替えている娘もいれば、まだ制服姿のままの娘もいる。
全員揃っているか……否。
「ゴールドシップさん、居ませんか?」
ゴルシさんの姿だけが見当たらない。
「ゴールドシップさん? 来てませんね。スズカさん、知ってますか?」
「いえ、聞いてないわ。二人は?」
「知らねえなぁ……」
「私もよ」
誰一人知らないらしい。
「何かご用ですか? 来たら伝えましょうか?」
「あ、いえ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます。では失礼します」
居ないなら長居は無用。
ゴルシさんを探して校内を歩く。
何故、ゴルシさんを探しているかって?
彼女は私が
サバノミッソーニさんは、私の名前を聞いて今までに無い反応をした。もしかしたら、私と同じような状態なのかもしれない。
直接聞くのが一番手っ取り早いのだが、ストレートに聞くのは
彼女がもし本当に私と同じような状態であれば、その正体がバレれば彼女の立場は無くなるだろうし、それは私にとっても危ないことだ。
「おや? クーニさんじゃないかねぇ」
ん? この声。
「あら、ワンダーアキュートさん」
振り向けば、そこにはワンダーアキュートさんが立っている。
「アキュートで良いよ、長いから。しかしまあ、こんなところで会うなんて、奇遇だねぇ」
「アキュートさんこそ。どうしました?」
「あたし? あたしは日向ぼっこだよ。今日は寒いけれど、太陽の光があるところは暖かいからねぇ」
なるほど。彼女の立っているところの近くにはベンチがあり、水筒が置いてある。さしずめ
「誰か探しているのかな?」
「ああ。ゴールドシップさん探しているんですが、見てませんか?」
「うーん。見てないねぇ」
「そうですか。ありがとうございます」
そうなるとこの辺りには来てないのだろう。
「ありがとうございます。それでは」
「無理しないようにねぇ。あ、これをあげよう。それーっ」
ん? 何か投げ渡してきたぞ。
「おっと」
我ながらナイスキャッチ。これは……飴?
「その飴ちゃんでも舐めて、時にはリラックスしようね」
「分かりました。ありがとうございます」
もらった飴を手に頭を下げ、次の場所を目指して歩き出す。
「って、なんじゃこれ」
アキュートさんにもらった飴は、ビニール袋に小包装の飴が幾つか入っている物なんだけど、内容はバラバラ。恐らく彼女が詰め替えたものだろう。
その中に赤一色のパッケージの飴があり、味の表記を見て驚いた。
『豚キムチ味』って書いてあるからだ。
「飴で豚キムチって。全く想像できない……」
一部透明の部分があるので覗いて見たところ、いかにも辛そうな色をしている。
「あれぇ? あなたは先日の……えっと、クーニさん?」
また私の名を呼ぶ声が。
「あ。メイショウドトウさん」
件の『にゃんにゃん倶楽部』*2で会った彼女だった。
「こんなところでどうしたんですかぁ?」
「ゴールドシップさんを探しているんですが、見てませんよね?」
「そうですねぇ。見てないです……」
「分かりました。ありがとうございます」
こっちにも来ていないのか。
「ところで。手に持ってるそれは何ですかぁ?」
メイショウドトウさんが、私の持つ飴に目敏く気付き、尋ねてきた。
「飴です。もらったものなのですが、変な味で見た目も辛そうなので、どうしようかと思っていたところです」
「それ、もらっても良いですか?」
「えっ?」
「いらないのなら、私がもらいますよぉ?」
いや、いらないとは言ってないんだけど。
「辛そうなんですよね? 私、辛いのは大丈夫ですから」
あ、これ拒否権ない感じ?
顔に『ください』って書いてあるように見える。
……。
どうぞ、というまで引くつもりはなさそうだ。
「それじゃあ……どうぞ」
もらった時みたいに投げ渡そうと思ったけど、多分落とすだろうから止めた。
彼女の前まで行って渡す。
「ありがとうございますぅ!」
つまらぬものですが……。
いやいや。他人からもらったものを他人にあげるのに、こんなことを言ったら失礼だ。危ない危ない……。
さて。次へ行こう。
「あっ! お姉さま~!」
ん? この声、この呼び方。
「ライスシャワーさん。どうされました?」
青薔薇の付いた小さな帽子が目印のライスシャワーさんだ。
「お姉さまどうしたの? 何か探しているの?」
そう見えるのだろうか?
まあ、探しているのは事実だが。物ではなく人を。
「ゴールドシップさん。見てませんか?」
「ご、ゴールドシップさん……!」
私が名前を言うと、聞いた途端ビクッとし、少し顔色が悪くなった。
「どうしました?」
「あ、えっと、大丈夫だよ。心配させてごめんなさい。ただね……」
どうやら、彼女はゴールドシップさんが少し苦手らしい。
嫌がらせやイジメではないが、時々からかわれることがあるとのこと。
「この間もね……。ライス、朝御飯はパン派なんだけどね。ゴールドシップさんが『ライスがパンを食べてる。自分へのアンチテーゼか?』って言うんだよ」
「それは……。なんというか……」
何て言えば良いのだろう。御愁傷様? ……違うか。
えっ! おいおい、待ってくれ!
ライスシャワーさんに対し、『ライスがパン』って言ったってことは、名前をそう認識したってことだろう?
ライスシャワーといえば、
しかし、ゴルシさんはそう言ったらしい。私は直接聞いていないものの、彼女がそう言うんだから確かなのだろう。
となると、『ウマ娘の名前は固有名詞として認識される』は、間違っているのだろうか?
「お姉さま?」
あ、いかん。考え事をして目の前の彼女のことを忘れるところだった……。
「ごめんなさい。ちょっと考え事をしていました。えっと、なんの話をしていましたっけ?」
「ゴールドシップさんを見てないかって。ライスは見てないけど」
「ああ、そうでしたね。ありがとうございます。では、私はこれにて」
「あっ、はい。気を付けてね……」
次を探そう。
しかし、私のあの結論は間違っていたのだろうか?
あ。
あ~。
ダメだった。
チームの部室に居らず、校内各所を回ってみたが見付けられず。あの後数人に尋ねてみたが、誰も見ていないらしい。
だから、教室に行ってみようと思ったのだが、よくよく考えてみたら、彼女がどのクラスなのかが分からないのだ。
私は生徒会役員故、調べる手段は幾つも持ち合わせているのだが、どれを使っても分からない。
『ゴルシちゃん保護法第十三条』*3、恐るべし……。
そろそろ時間切れだ。私は帰りも浦和の三人を送り届けなければならない。生徒会室へ向かおう。
昇降口で靴を履き替え、生徒会室へと歩いて行く。
この時間ともなると、皆校舎内には残っていないので、廊下はとても静かだ。外から掛け声とかは聞こえてくるけれど。
『生徒会室』
到着。
「ブタノカックーニです」
ノックしてから声を掛ける。
「お入りください」
中から返事が聞こえてきた。この声はグルーヴ副会長だな。
「失礼します」
扉を開いて入室。
室内には、中央の三人と浦和の三人が居る。
応接用のソファーに浦和の三人がこちらへ背を向けて座っており、向かい側にルドルフ会長が座っていて、副会長二人は後ろに立っている。
「お。クーニやっと来たか」
ルドルフ会長は私を待っていたらしい。しかし、待たれる記憶は無いのだが。
「遅くなりました。えっと、話は纏まりましたか?」
私がそう声を発すると、浦和の三人が一斉にこちらを向き、どこか安堵の表情を見せた。緊張していたのが解れた感じ……?
「ああ、平穏無事に。話し合いは
「それは良かったです。私は彼女らを送り届ければ宜しいですか?」
まあ、緊張するのも仕方あるまい。
『皇帝 シンボリルドルフ』『シャドーロールの怪物 ナリタブライアン』『女帝 エアグルーヴ』。この面子相手に緊張するな、というのが無理な話だろう……。
「まだ早いんだな。せっかくだからクーニもこれを見て欲しい」
何だろう?
「大勢の生徒の協力を得て、当学園のPR動画を作成したんだ」
どれどれ……?
〈著者注〉ここで流れる映像は、アニメ三期のオープニングです。『ウマ娘プリティーダービー season3』のタイトルは、『トレセン学園』に置き換えてください。
「なんですか、これ」
動画を見終えて、思わず声が漏れた。
「さっき言った通り、当学園のPR動画だが?」
さも当然のようにいい放つ会長。
「いやいやいや。これの何処がPR動画ですか! 少なくとも学園のって意味では違うと思いますが!」
突っ込むしかないだろう……。
「まあ、それは私も思ったんだがな」
ふと、グルーヴ副会長が溜め息と共に呟く。
「彼女たちは何をしたんですか?」
「分かりません。会長に二人を怒りの形相で追い掛けろ、という指示をもらっただけですから」
エアグルーヴ副会長は、メジロパーマーさんとダイタクヘリオスさんを追い掛けるシーンに出演していた。
ブライアン副会長とルドルフ会長は、この部屋で話し合っているシーンで登場。因みに、ブライアン副会長の顔を見るも、関わりたくないのか恥ずかしいのか、露骨に私と目を合わせようとしない。
それでは私も動画の内容についての感想を言わせてもらおう。
「会長、特にサクラバクシンオーさんが廊下走っているシーンは、観た人に誤解を与えます。廊下は走るなってずっと言っているじゃないですか」
これは一番宜しくない。
因みに、サクラバクシンオーさんは 廊下走り魔 らしい。普段からあんな感じなんだって……。
同室ながら、部屋での彼女しか知らないんだよなぁ。
「あと、ゴールドシップさんのあの蹴り、あれも危険です」
ゴルシさんは、トーセンジョーダンさんに回し蹴りを食らわせていた。
見事に避けていたが、あれが本気の蹴りで、相手に命中していた場合、命は無いだろう……。
「えっと。浦和トレセンの皆さんは、どう思いましたか?」
私が感想を述べても会長は何も言わない。この際だから三人の感想も聞いておこう。
「えっと……観て面白い動画だと思いましたが、トレセン学園をPRする、という目的とは離れている感じがします」
「姉の登場シーンが無いのは何となく寂しいです……」*4
「レースシーンが多いのは良いと思いますが、皆さん言う通り、学園のPRは……」
三者三様の意見。しかし、想いは一致している。
「そこまで言うのなら、この動画は却下だな。グルーヴ、この製作費用は幾らだった?」
「まあ、大した額ではありませんが……」
これに大金つぎ込んだって言うなら大爆笑ものだ。
「さてと。では、もう一本用意した方の動画も見てもらおう」
〈著者注〉ここで流れる映像は、アニメ一期のオープニングです。タイトルはさっきと同じように……。
「こっちの方が断然良いと思いますが?」
「そうか……」
会長はなんだか納得ずくだ。
「それでは。今日は誠に有意義な時間を過ごせたよ。ありがとう」
おっと、浦和の三人との挨拶だ。もう帰る時間なのか。というか、切り上げて無理矢理帰そうとしている?
否。私をここから追い出すつもりだ。
「改めまして、こちらこそありがとうございました!」
代表してか、会長どうしが挨拶をして、握手。
あ、サバノミッソーニさん、大丈夫かなぁ?
「それでは!」
大丈夫なようだ。ただ、興奮してか顔が幾分赤い。
「ではクーニ。送り、よろしく頼むよ」
「はい。では、行って来ます」
「ありがとうございました」
「よろしくお願いします」
「失礼します」
私がルドルフ会長にそう言うと、三人がそれぞれ挨拶して生徒会室を出て行く。私が最後に出て、扉を閉めた。
「全く。あの動画にケチを付けるとは」
「だから私は言いましたよ。彼女は絶対文句を言うって……」
「当然だと思うな」
中から何か聞こえてくるが、気にしない。
あ。帰りはテイエムオペラオーさんは来ないのだろうか?
「ピサノミライさん」
「はい?」
「お姉さん。テイエムオペラオーさんについて、何か聞いていますか? 帰りも一緒に行くとか?」
こういうのは妹さんに聞くのが早いだろう。
「ああ。姉はトレーニングに行きましたので、帰りは同乗しないそうです」
「了解です」
それじゃあ、浦和からの戻りは私一人か……。戻ってくる頃には暗くなっているだろうし、ちょっと不安だな。
一人の時に限って何かトラブルが起きたりするんだよなぁ……。パンクだったりオーバーヒートだったり、事故通行止・渋滞等々……。
と、
「あ! クーニさん、大変です!」
「うへっ? な、何ですか?」
考え事をしていた中で声が掛かったので、我に返って変な声が出てしまった。
「クーニさん。あれ……」
フツロルンルンさんが右後輪を指差している。
「あれって……? あれまぁ……」
なんと、右後輪がパンクしているのかタイヤがぺちゃんこに潰れていた。
「どうしますか?」
「参りましたね」
「しかし見事にパンクしていますね……」
これまた三者三様の反応。
…………これ、
まあ、そんなわけなので、理事長室に一報を入れ、我が愛しの
高速道路に入った先での反応は、最早説明不要だろう……。
何だかんだ無事に浦和トレセン学園に到着した。
「しっかり。もう少しですから」
「ありがとう……」
フツロルンルンさんは酔ったらしく、真っ青な顔でピサノミライさんに支えられながら歩いて行く。あっちは寮がある方向だな。
「それでは。今日は色々とありがとうございました」
最後に残ったサバノミッソーニさんが、私に向かって挨拶。
「こちらこそ。お役に立てて光栄です」
「えへへ~。貰ってしまいました」
嬉しそうに何かを鞄から取り出した。
「お。良かったですね」
ルドルフ会長のサインが書かれた色紙だ。名前まで入っている。
「これは家宝にします」
そこまでか……。
ふと、周りを見渡す。
今、この場所にいるのは私とサバノミッソーニさんの二人だけ。今なら聞けるかもしれない……!
「サバノミッソーニさん。変なことを聞いても良いですか?」
「えっ? 構いませんが、何でしょう?」
許可は貰った。さて、どう聞こうか。
ストレートに『憑依・転生者ですか?』とか『人間だったとか?』って聞いたら、違った場合に私がヤバい。
『本当にウマ娘ですか?』だと、失礼に当たるだろう。
それとなく、自分語りで聞いてみるか。
「実は私、記憶喪失なんです。ある時を境に、その前の記憶が一切無いんですね」
「それは……」
驚いている。
この話を理事長にしたときの反応に似ている。尤も、彼方は大袈裟なリアクションと変幻自在の扇子付きだが(『驚愕』だった)。
「ですがね。不思議なことに、全く別の記憶はあるんですよ」
「…………」
サバノミッソーニさんは何も言わない。黙って続きを促している、というよりは驚きのあまり言葉が出ないのだろう(理事長の扇子なら『絶句』と書かれているだろう。但し、この話は彼女らにはしていない)。
「その、別の記憶によると、私は人間だったらしいんですよ。だから、この身体に入っている私は、一体何者なのでしょうね……?」
一度、空を見上げた。お、星が見えている。一番星かな?
そして、サバノミッソーニさんの顔を見る。
「…………?」
この表情。読みは外れていたらしい。
「ごめんなさい。こんな話をしても、何て返せば良いか分かりませんよね」
「は……はい。不思議な話があるものですね……。驚きました」
「今の話は忘れてください。まあ、忘れろって言っても難しいですよね……」
それほどの話をしたのだ。
「まあ……仰る通り。忘れるのは難しいでしょうね」
困り顔。
「あ。私から言った手前、勝手なお願いになってしまうのですが、この件は誰にも話していないので、口外無用でお願いします」
「そ、それは大丈夫です。これでも生徒会の会長を賜っている者。言うなと言われれば誰にも言いませんので」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
さてと。そろそろ私も帰るか。サバノミッソーニさんもあまり長い間足止めさせてしまうと、寮長が心配するだろう。まあ、門限にはまだ早いとはいえ。
「それではこれにて私は失礼します」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
互いに頭を下げると、サバノミッソーニさんはさっき二人が歩いていった方へ向かって行く。
車に乗り込みエンジンを掛け……。
帰路へとついた。
余談だが、パンクしたことが良い厄払いになったのか、帰り道は何も起こることはなく、無事に帰ってこれた。
えっ? 高速道路料金はどうしたのかって?
……これ、言わなきゃダメですか?
『通行証』はナンバーを含め申請しているので、車が変われば使えない。
しかし、世紀末覇王号にはETC車載機があり、学園からETCカードを預かっている。
これで答えは出たでしょう?
『車』に『給油カード』の次は、『ETCカード』まで。この事がルドルフ会長にバレたらって考えると、恐ろしくて恐ろしくて……。
何があっても隠し通さねばならぬ……!
第二項、ゴルシだし がすべてを解決する。
サバノミッソーニ会長が眼鏡を掛けている設定は、ネット競馬等で史実馬を検索したときに、着用しているメンコの額部分に『無限マーク(∞)』が見れたので、それを眼鏡に変えました。
眼鏡を掛けているウマ娘は、たいてい頭脳派の娘なので、ちょっとウマ娘の設定とはズレますが、ご了承ください。
この一ヶ月の間に、アニメのseason3が始まり(※第1話は放送済)、そのオープニングがあまりにも素晴らしい……というか、面白かったので本作に登場させました。
しかし、あの二人は何をしたんでしょうね? 必死に追いかけるエアグルーヴが……。可愛かった。