目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が 作:小林司
前回の続きに当たります。
史実馬と関係のある とあるウマ娘 が登場しますよ。
一度校舎内へ戻り、新しいゴミ袋と掃除用具を持ってくる。
ゴミ袋を広げ、破られた袋をそのまま中へ入れた。
しかし。カラスに狙われるってことは、相応の物が入ってるって事だよな? 一応、生ゴミをここに捨てるのは禁止されているんだけどね……。
職員寮(の各部屋)から出た生ゴミは、学園内から出る生ゴミ全てを一纏めにし、学園近くの農園へ運ばれる。『生ゴミ』と言ってしまえばそれまでだが、適切な処理さえ行えば、立派な肥料だ。
そこで育てられた野菜は結果的に学園へとやって来る。まさに、WIN WINの関係といえるのだ。
掃き集めたゴミも入れ袋を閉じ、再びカラスに狙われぬよう、奥の方へと押し込む。
「うん? 何だこれ?」
生徒寮から出るゴミの方に、変な物が置いてあるのに気付いた。
ゴミ袋に指定のものは無いので、何に入れてあっても良いのだが、それは黒い袋だ。
しっかり口が縛られているばかりか、上からガムテープで絶対に開かないように幾重にも貼り付けてある。
こういうのは、二つに一つ。
『見られてはまずい物が入っている(特定の品物・分別していない状態)』か、『危険な物品が入っている』。どちらか。
「これは……?」
「アニメ三期において、『コパノリッキー君に出番があったから、ワンダーアキュート君とホッコータルマエ君にも同様に出番があると信じて疑わなかった者達の魂の叫び』さ。封印してあるのだから、容易に触るものではないよ」
「は?」
言っていることの意味が分からない。アニメ? ここってアニメの世界なの?
確か、ウマ娘世界って、私が人間だった側を『現実世界』として、『異世界』の話だと言われていた記憶が……。だから、今の話を聞くと違和感満載。
これ、『転生・憑依』だと思っていたけれど、もしかして『アニメ・コミックの世界(二次元)に飛び込んだ』という 中二病 的な話だった?
「ってか、あなた誰ですか!」
今話し掛けられた……というか、説明してくれていたにも関わらず、隣に立つ人物に気付かなかった。我ながら恥ずかしい……。
「おやおや。ご挨拶だねぇ。キミと私との仲じゃないか」
「いやいや。あなたと私との仲って言うなら、私の現状ご存じでしょう?」
この人誰だ?
ゴルシさんからもらった資料を思い出そう……。
写真の中には無かった気がする。写真は無いが情報だけが書かれている娘もあったから、名前が分かれば……。
「はて? キミが救急搬送されたのは大分前だと思うんだけどねぇ?」
うん?
情報古くないか?
親しい人には記憶喪失の話が、ルドルフ会長経由で回っている。そうではない人物。
「キミが倒れたあと、過労らしい話を聞いたから、疲労回復に良い薬を調合して、サプリにして送らせてもらったんだが」
サプリメント…………。
あ~! あの怪しげな物体!*1
「あれですか。実は飲んでないんですよ」
「な、なんだって!」
「何も書かれてなかったから怖くて……。あれ、飲んでも問題無いものでしたか……」
「ああ、特に問題はないよ。あれはあくまで疲労回復の薬であって、ドーピングに触れるような規制薬物・禁止薬物ではないから安心したまえ。あれを飲んだ後でもレースに出られるよ」
そうだったのか。
「ただ、副作用がね……。人間はお尻が、ウマ娘は尻尾が、半日程の間薄紫色に発光するんだよ。まあ、その程度さ」
その程度て……。
「しかし残念だったねぇ。良いデータが集められると思っていたんだが。飲んでもらえなかったとはねぇ……」
は?
「データって。私は実験動物か何か?」
「似たようなものさ。私の愛しのモルモット君は人間だからねぇ。ウマ娘に治験したい場合には、私自身が服用するんだが、それにも限界がある。そんな時にキミに協力してもらっているんだよ」
え。嘘。
普通に嫌なんですけど。
「その関係、今からでも解消できますか?」
「キミに拒否権を与えたつもりはないよ」
「拒否権は与えられるものではないはずです。最初から私は保有していました」
この台詞、少し前に別の誰かにも言った気がする……。
「その拒否権を剥奪しようじゃないか」
「それに対して別の拒否権を発動します」
「むむ。中々手強いじゃないか。私が見込んだだけのことはあるよ」
「タキオンさん。何やってるんですか?」
こんなやり取りを続けていたら、
「あら。マンハッタンカフェさん」
黒髪ロングヘアー。何か、ミステリアスな雰囲気が漂っている娘だ。
特に面識はないが、同じ
「おや、カフェじゃないか。君こそどうしたんだい?」
うん? この様子だと二人は親しい仲なのか。
「『お友だち』の様子が変だったので、帰省の途中で引き返してきました」
カフェさんは、この怪しいサプリの娘を『タキオンさん』と呼んだ。つまり、あの手紙の主、アグネスタキオンだ! ようやく分かった。
「途中って、何処からだい?」
「新横浜から。タクシー使ってきました」
新横浜駅からタクシー……。それなりの金額だろう。
「お友だち……ですか」
確かに彼女の後ろに、同じような姿の娘が立っている。
「タキオンさん、なんでまだ学園に居るんですか? あなたも帰省するって言ってましたよね」
あれ、私のことは構いなし?
「まあ……そのつもりだったんだけどね。
年末の有明……。えっ? そういうこと?
「それはともかく、一体彼女に何をしていたんですか?」
「何もしていないよ。カフェも私と彼女の仲は知っているだろう? ただ話していただけさ」
「彼女、生徒会役員でしょう? あなたが最も苦手とする相手では?」
「彼女は特別だよ」
はあ~。私は茅の外。
すっかり二人で話し込んでいる。
暇だから、『お友だち』と話でもしますかね……?
?
あ。これ、あれだ。
直感というか本能というか。
これ、無闇に関わらない方が良い奴だ。分かっちゃったよ……。
二人の話を聞いていると、アグネスタキオンさんは時々問題を起こしていて、生徒会や学園から目をつけられているらしい。
だから、生徒会と何かしらの関係を結ぼうと企んでいて、私が緊急搬送されたのを良いことに接触を試みたそうだ。流石に、ルドルフ会長やブライアン副会長、グルーヴ副会長には近付けないらしいから……。
『キミと私との仲』といったが、特に関係はないらしい。ただ、『不思議と他人のような気がしない』*2とも言っていた。
「アグネスタキオンさん」
「なんだいクーニ。別に『タキオン』と呼んでくれれば良いんだよ? キミと私との仲じゃないか」
「いやいや。今私お二人の会話聞いてましたからね? 捏造は良くないですよ」
「何か用なのかい?」
スルーしやがった。まあ良い。折角のチャンスだ。
「さっき、『生徒会に恩を売ろう』って言ってましたよね? 実は、お願いしたいことがありましてね」
「そうか! 何かな?」
あ、顔色が変わった。
花が咲いたみたいに嬉しそうな顔をし、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「実は……」
「あの~。宜しいですか?」
私が言いかけたところで、第三者の声に割り込まれた。
三人揃って声の方を向く。
「あ……」
マンハッタンカフェさんがそう漏らす。
「えっと……どの様なご用件でしょう?」
そこに立っていたのは、制服姿の女性だった。乗務員のような格好。
「私、○◇タクシーの
タクシーの運転士さんか。
…………運転士さん?
「そちらの方に待つよう言われまして、正門のところで待機しているのですが、本社から戻るように連絡がありまして。まだ掛かるようでしたら、別の車を手配して頂きたいのですが……」
タクシー待たせてるのかよ!
「マンハッタンカフェさん、行ってください。彼女は私が何とかしますから大丈夫です。むしろ、あなたはもう行った方が好都合です」
捲し立てる。
「分かりました……。タキオンさん。これ以上彼女に迷惑、掛けないようにお願いしますよ」
「何、元から何もしていないじゃないか」
「…………!」
納得ずくらしい。まあ、その気持ちは分かる。私は既に彼女から迷惑被っているからね。
「お待たせしました。行きましょう」
「あ、はい」
マンハッタンカフェさんが、タクシーの運転士さんと一緒に歩いて行く。
「あ、マンハッタンカフェさん!」
私は一つ言い忘れたことを思い出し、呼び止めた。
「『カフェ』で構いませんよ。どうしました?」
「タクシーの領収書、貰ってください。生徒会宛で。今回のは支払います。私がご迷惑お掛けしたようなものですから」
「分かりました。それでは」
カフェさんが去り、私とタキオンさんが残る。
「えっと。途中になってしまいましたね。タキオンさん、これを調べてもらうこと出来ますか?」
私はそう言いながら、件のゴミ袋を漁る。
「おいおい。ゴミを漁るなんて、悪趣味だね。キミは乞食かい?」
「言っててください。じきに言葉も出なくなるでしょう」
「というと?」
えっと……この辺りに……あった!
「これです。これを調べていただきたい」
そう言いながら、あれを彼女の前に示す。
「…………!」
あ。顔があっという間に真っ赤になった。
「あ……あ……あー」
口をパクパクさせながらも、言葉が出ないらしい。そりゃあそうだろう。
仮にも彼女は高校生。人間の高校生ならいざ知らず、健全なウマ娘ならこんなものとは無縁の生活をしているはず。耐性など無いはずだ。
というよりも、彼女の態度を見れば分かるのだが。
「タキオンさんなら、DNA調べて誰のものか特定させること出来ますよね?」
「あ……あ……あー」
まだ口パクパクしてるよ……。
「タキオンさん?」
「おっと失礼。私としたことが。少々取り乱してしまったようだ」
少々どころではなかったが?
「別に調べること自体は容易いけどね。それが誰のものかを特定させるのは難しいんだよ。分かるかい?」
何故? あ。
「DNAサンプルが無い……」
「その通り! それからDNAを採取することは出来ても、誰のものか、特定させるのは、照合するサンプルが無いから不可能だね」
あちゃー。盲点だった。
「まあ、それでも良いのでお願いできますか?」
「何か見返りを貰えるのかな?」
「『あなたと私の仲』でしょう?」
「……負けたよ。やろう」
タキオンさんにあれを渡し、歩いて行く彼女を見送る。
大掃除の最中に見つけたあれだったが、一気にここまで話が進むとは思っていなかった。
まあ、学園への報告は、タキオンさんからの情報を待ってからでも遅くないだろう……。
うん?
スマホが震えた。
LANEだ。しかもルドルフ会長から。
会長:トウカイテイオーから聞いたよ
会長:生徒会室の大掃除をしてくれたんだって?
えっ? トウカイテイオーさんから?
あー。そういえば脚立の上で掃除しているときに
、誰か生徒会室の前を通りかかったのを見たなぁ。あれ、トウカイテイオーさんだったのか……。
会長:ついで、で申し訳ないんだが
会長:リギル の部室の掃除を頼まれてくれないだろうか?
会長:本来、私たちが行うべきなんだが、有馬記念にグルーヴが出場したのもあって多忙でね。まだなのだよ
私、リギルの所属ではないんだが?
クーニ:拒否権
会長:有ると思っているのか?
会長:ちゃんとお礼はするから、頼まれて欲しい
こうなるんですね~。
頑張ろう。