タイトルまんま。

ヘルタが好きすぎて書いた。
クラーラも書きたい。

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衝動書き

ヘルタかわいい。


オフィスで仕事をしていたヘルタを抱き締めた話

「あ」

 

小さな声で呟いた言葉は、案外周囲の人に聞こえていたらしい。

 

「?どうしたの、星」

 

隣でひょこっと顔を出す少女———三月なのか。

 

「いや、ちょっと宇宙ステーションに行かなきゃと思って」

 

「え、あそこ(宇宙ステーション)?何があったの?」

 

現在私達が滞在している仙舟「羅浮」から宇宙ステーション「ヘルタ」までは、文字通り途方もない距離がある。

 

所々にある界域アンカーを伝っていかなければ辿り着けず、中で歩き回る裂界造物もそんなに強いわけではない。

 

それならば何が、となのかが首を捻る間にも、星はさっさとスマホを開いていた。

 

「よし、行ってき———(転送完了)

 

「ぅえ、もう行っちゃった!?待ってよー!!」

 

そうしてさっさと行ってしまった星を追いかけ、なのかもスマホを開いた。

 

 

 

 

 

「うへぇ……星ったらどこに行っちゃったのさ」

 

なのかがテレポートした時にはもう、星の姿はどこにも無かった。

 

ベース部分のアンカーから見渡せば、多くの搭乗員がわいわいと話をしている。

 

向こうに居るアスター所長も、いつも通りのようだ。

 

じゃあ星はどこへ……ぐるりと見渡したなのかは視界の端にチラリと見えた灰色を見逃さなかった。

 

「んっ、居た!」

 

アンカーから西に向かって進む星の足取りは軽い。

 

目的地が近いのだろうか?

 

疑問が募るなのかは、探偵よろしく物陰から顔だけを出して尾行を始める。

 

———案の定、他の搭乗員からは変な目で見られていたが。

 

たんたんたんと階段を登る背中を見て、なのかは首を傾げた。

 

「……でもあの先って、ヘルタのオフィスくらいしかない気が……?」

 

模擬宇宙の攻略だろうか?

 

いやしかし、報酬は先日取り終わったばかりだと星が言っていた事を思い出す。

 

「何のために……っとと、居なくなっちゃう!」

 

気付けばオフィスの前まで来ていた星が中に入るのを見て、なのかも静かにその後ろを追いかけて。

 

「ふぅ、星が多分この先、に———」

 

そうして、オフィス内の光景になのかの身体が固まった。

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡り、星が宇宙ステーションにテレポートした直後。

 

彼女はすぐに西に向かって歩を進めていた。

 

「ただいま、ヘルタ」

 

「おかえり」

 

階段を上がった所に居るヘルタに軽く声を掛けると、相変わらず無頓着そうな顔から無機質な声が返ってくる。

 

これはヘルタの人形に搭載された自動返信機能であり、ヘルタ本人が接続されてない時は完全な無反応であるかこういう自動返信があるかの二択だ。

 

天才故に周囲への関心が酷く低い……そんな彼女らしい反応と言えばそうか。

 

そんな彼女の前を止まる事なく通り過ぎ、行き着いたのはとある部屋の前。

 

所謂「ヘルタのオフィス」。

 

この宇宙の全部が記録されている……という訳ではないが、彼女が製作した「模擬宇宙」には割とかなり助かっているとも言える。

 

完全にゲーム感覚なのは正直良いとは思えないが、それでも私の謎について知ることが出来るのは良い。

 

あと報酬が美味い*1

 

帰宅する感覚で扉を開けて、奥に立つ家主に声を掛ける。

 

「ただいま、ヘルタ」

 

「……また来たのね」

 

宇宙ステーション「ヘルタ」の主であるヘルタが、無頓着そうな顔を少し呆れさせてそう返した。

 

そんな彼女に、私は言葉を返す訳でもなく彼女の前まで歩み。

 

 

その小さな人形の身体を、ぎゅっと抱き締めた。

 

 

「はぁ……飽きないわね、貴方も」

 

「私が好きでやってる事だから」

 

何回も聞いたような感想に、これまた何回も言った返答。

 

体温が無くて冷たい彼女だけど、このなんとも言えない抱き心地が癖になってしまったのだ。

 

そんな事を先日彼女に言ったら「私は麻薬か何かかしら」とジト目を貰ったが。

 

自分の心臓の音に合わせて耳を澄ませないと聞こえない位に小さくキ、キ、と鳴る軋む音。

 

ここまで細かく造られているのかと見紛う程の、繊細な呼吸音。

 

「……そろそろいい?」

 

「ごめん、もうちょっとだけ」

 

「……そう」

 

少しくぐもった声が響いて私を離そうとするが、もう少しだけ。

 

右手をゆっくり上げて、帽子から流れる灰色の髪を優しく撫でる。

 

水を撫でるように、微睡む猫の眠りを促すように。

 

5、6回程ゆったりと撫でた所で、私はその身体を離して一歩下がる。

 

「今日はいつにも増して長かったわね」

 

「なんか、今日は撫でたい気分だった」

 

漠然とそういう気分だった。

 

「……そう」

 

心なしか雰囲気が柔らかくなったような気のする彼女にそう言えば、返ってきたのはやはり短い返事。

 

そんな彼女に何か言うでもなく、私はそれじゃ、と踵を返す。

 

「またね、ヘルタ。お仕事頑張って」

 

「はいはい」

 

短く返された彼女の方をちらりと見れば、彼女は自分の事に集中していてもうこちらを見てはいなかった。

 

それを見て、振り返るのをやめて扉に手を掛ける。

 

プシュウ、という音と共に視界が開けて、もう一度だけそちらに目線をやった。

 

———すると、私が扉を閉める直前に、彼女が小さく手を上げる。

 

ふよふよと小さく揺らいだそれは、「またね」と返してくれたような気がして、少し嬉しかった。

 

 

 

 

 

それを少し離れた所から見ていたなのかは、その場に立ち尽くして固まっていた。

 

「どうしたの?なのか」

 

「うひぇあ!?ぁ、アスター……」

 

「ほ、本当にどうしたの……?ミス・ヘルタのオフィスばかり見て」

 

「い、いや……そのぅ……」

 

「……??」

 

「…………いや、やっぱりなんでもない!ごめんね、心配掛けて」

 

「そう?なら良いんだけど……」

 

……なのかは、先程の光景について星にしっかり聞こうと決めた。

*1
これが本音だろうが by 作者




ヘルタ完凸記念でもある


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