「あら、初めまして美人さん!あなたのお名前はなんて言うの?」
サターニャはそう話しかけるとその猫はふいっとそっぽを向いてまるで指を指すように彼女に足を向ける。
「ふふっ、ごめんなさい♪人に名前を聞く時はまずは自分から、だったわね。私はサターニャっていうの。今年入ってきた新入生よ?これから7年間よろしくね?さぁ、次はあなたの番。今度こそ名前を教えてくれる?」
もういちど猫に尋ねるが、
「私の猫に何をしてる!指一本でも触れたらただじゃおかないぞ!」
という男の怒鳴り声が響く。
サターニャはその声に飛び跳ねそうになるほど驚き振り向くと、しわしわの古着を着た老人が顔を真っ赤にして走ってくる。
「貴様は新入生だな?こんなところで何してる!いーや、儂には分かるぞ!ミセス・ノリスを虐めようとしたんだろう!」
尚も怒鳴り続ける男だが、サターニャに届いたのは『ミセス・ノリス』の一言だけだった。
「ミセス・ノリス?それがあの子、いや彼女の名前なのね?教えてくださってありがとう!美人さんにぴったりないい名前ね♪」
「はぁ?何を言っとるんだお前は!…ん?どうしたんだいミセス・ノリス……ほう、珍しいこともあるものだ」
さらに怒鳴りつけようとする男だったが、件の猫、ミセスノリスが一鳴きすると途端に落ち着きをみせ、そのまま話し始める。
「何があったのかは彼女から聞かせてもらった。次からはこんな紛らわしいことをするんじゃないぞ!全く……」
そう言ってミセス・ノリスと共に去ろうとする男に声をかける。
「待って、貴方の名前はまだ聞いてないわ?私はサターニャ、サターニャ・ドラグレイブ!私は名乗ったのだから貴方も教えて下さる?」
「儂なんぞの名前を知りたがる生徒など初めて見たわ……」
一瞬呆気を取られたような表情になったあと、呆れたようにため息を着く男。
「教えてくれないの?これからお世話になることもあるかもしれないでしょう?」
きょとんとした顔で首を傾げるサターニャに苦虫を噛み潰したような表情になりながら、彼は「アーガス・フィルチ」だと名乗る。
「アーガスさんね?覚えたわ!ミセス・ノリスにも言ったけれど、これから7年間仲良くしてくれると嬉しいわ♪」
「儂はお前と関わりたくないがね…」
憎々しげにそうつぶやくアーガスだったが、目の前でミセスノリスに触らせてもらおうと交渉するサターニャを見てさらに深くため息をつき、止めさせるために彼女を叱るのだった。