此度の被害・・・腹を切るより他にあるまい(ガチ)   作:白白明け

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他に書いている文章が煮詰まってしまっているので、気分転換に書いたものです。
僕の考えた最強のヨロイムシャを書きたかっただけの文章です。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。m(_ _)m

全四話で完結です。書き終えています。
でも、感想などくれると、とても嬉しいです\(^_^)/



爺は元気な若者に弱い

 

エンデヴァーが脳無ハイエンドを退け、新№1ヒーローが率いるヒーロー新時代の狼煙を上げてから数週間後、ヨロイムシャは彼の活動する市内にある場末の居酒屋で日本酒を呑んでいた。

純米大吟醸『日輪』。現存する数少ない本物の酒蔵が作った本物の日本酒の味わいは、最近、荒れ続けているヨロイムシャの心を癒やしてくれる数少ない楽しみの一つだ。

ヨロイムシャは徳利を傾けながら、㊙と判の押された書類を眺める。

それはヒーロー公安委員会と雄英高校から合同で送られてきたインターンシップ再開の要請に関する書類だった。

 

「・・・“昨今、増加している組織化した(ヴィラン)への対応学習を目的とし・・・”。フンッ、見え透いた言い訳じゃわい」

 

インターンシップの再開を聞いて、ヨロイムシャは内心で面白くないと感じていた。元々、インターンシップの自粛は雄英高校とヒーロー事務所が様々な出来事を受けて“状況が落ち着くまでは”と決めた事だったが、其処にヒーロー公安委員会が口を出してきた事でなにがしかの思惑が透けて見えていた。

恐らくは先日、泥花(でいか)市で起きた事件と関係が有るのだろうとヨロイムシャは考える。

 

泥花市事件。

平穏な街で起きた悲劇。犯人はヒーローに恨みを持った20名の男女グループ。計画的犯行とみられ、偽の情報でヒーローを街の外へ誘導し、グループは街を襲撃。

突如の災禍に見舞われた泥花市民は結託し、グループと抗戦。その後、ヒーロー達も合流した。

結果、泥花市民に多くの犠牲者を出しながら、最終的には犯人グループ20名の全員が死亡した事件。

訓練を受けていない一般市民の個性使用が被害拡大を招いたという専門家の意見もある中、世論では住民達の行動を英雄視する声が大きい。

 

「ヒーロー資格のない者が(ヴィラン)と戦う。ヴィジランテ時代の再来。公安のお偉い連中からすれば、さぞ面白くないじゃろう」

 

公安はヒーローによる社会秩序の統治を望んでいる。

その為の“立派なヒーロー”を育てる為のインターン再開の強行と考えれば筋は通るのだが、()()()きな臭いとヨロイムシャは顔を歪める。

 

ヴィジランテからヒーローになったヨロイムシャにはヒーロー公安委員会へのコネクションがあったが、それは過去の話だ。前ヒーロー公安委員会の会長がとある事件で死亡し、その派閥が解体されて以降のコネクションをヨロイムシャは築いていない。

だから、この漠然とした違和感を抱えたままヒーロー公安委員会に真意を尋ねたところで門前払いに成るのは明らかだった。

 

「伸るか反るか、俺がすべき事とはなにか。フン、この年に成っても進路で悩まねばならぬとは、嫌な社会になったものじゃわい」

 

遠い昔の学生時代を思い出し、嫌な気分を酒で流し込みながら、ヨロイムシャは自身の事務所にインターン希望を出してきた学生達の名前を見る。

 

雄英高校ヒーロー科1年A組。

青山優雅。個性『ネビルレーザー』。

芦戸三奈。個性『酸』。

葉隠透。 個性『透明化』。

 

「・・・フン、まあ良いか。求められるなら、小童共の、進路の肥やしになってやるわい」

 

 

 

それが約一週間前の出来事。

その日の決断を、即断即決を是とする日本男児であるヨロイムシャは柄にも無く悔いていた。

 

 

 

Cauchemar(コシュマール)・・・悪夢だ。ねえ、トイレにウォシュレットが無いんだけど☆」

「和式便所にそんなハイカラな機能(モン)があるかい!」

「おじいちゃーん!この模造刀っ、格好いいねっ!触ってみてもいーい?」

「返事する前に触っておる!?止せ止せ、そりゃ真剣じゃ!」

「もー、二人とも落ち着きなよー。ちゃんと私を()()()()()()

「そうそう、其処の娘を見習っておまえ達も大人しく・・・って、見えんわ!」

 

青山(あおやま)優雅(ゆうが)。ヒーロー名ーCan‘t stop twinkling.(キラキラが止められないよ☆)

芦戸(あしど)三奈(みな)。ヒーロー名-Pinky(ピンキー)

葉隠(はがくれ)(とおる)。ヒーロー名-インビジブルガール。

 

ヨロイムシャがインターンを受け入れた三名の生徒は全員のキャラが濃かった。

ヨロイムシャが「素のお前らが見たいから、事務所では好きにせい」と言った瞬間から、表情が田舎の祖父母の内に遊びにきた子供の表情(それ)に変わった。

ヨロイムシャの事務所が昨今では珍しい純和風建築であることも彼らのテンションを上げている理由なのだろう。先ほどから、ちょくちょく「カッコイイ」「シブイ」「イキだね☆」というヨロイムシャのセンスを称える声も聞こえていた。

その所為で少しだけ彼らに対して甘くなっているヨロイムシャを見て、事務所にいたポヤポやした雰囲気の事務員の一人はこう語る。

 

「あの人、お爺ちゃんだから、元気な若い子が可愛いんですよー」

「年寄り扱いするでないわい!」

「ねー、おじいちゃーん。お菓子あるー?」

「僕、玉露☆」

「・・・フン、図々しい小童共じゃわい。待っていろ。とっておきの羊羹があるんじゃ」

「私、手伝うよ!」

「おお、悪いな。では、このお盆を・・・って、コラッ!手袋外したらどこに居るかわからんじゃろうが!」

 

そんな緩い雰囲気の中で始まったインターンだったが、事件が起これば緩い雰囲気は即座に霧散する。

 

「ヨロイムシャさーん。警察より出動要請ですー。宝石店にて立てこもり強盗が発生中―。人質がいるようですー」

 

事務員からの報告を受けて、ヨロイムシャは即座に鎧を纏う。虚空から和装の上に鎧が現れ、ヨロイムシャの肉体に装着されて行く様を見て、インターン生の三人の表情も変わる。

曾孫ほどの子供に振り回される()()()()()としての顔は鎧兜の下にしまわれた。

此所に居るのは歴戦のヒーロー-ヨロイムシャ。

 

「・・・フン、羊羹は帰ってからじゃ。()くぞ。小童共」

 

「「「はい(ウィ☆)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

事件解決後、ヨロイムシャの事務所では反省会が行われていた。

鎧を脱いで和装に戻ったヨロイムシャは卓袱台の前で胡座をかき、インターン生の三人は座布団の上で正座をしていた。芦戸三奈と葉隠透は正座に馴れている様子だったが、青山優雅は馴れない姿勢に全身を小刻みに揺らしている。

それに気がついたヨロイムシャは湯呑みを啜りながら言う。

 

「楽にせい。必要以上に気張る必要などないわい」

「め、Merci(メルシィ~)

「ありがとうございます!」

「ます!」

「・・・なんじゃい。帰ってきてから急に(かしこ)まって、来た当初の傍若無人ぶりは何処に消えたんじゃ」

「だって、ねえ。事件の時のヨロイムシャが凄すぎて!こう、カーッと成って!ワーッて感じで!ねえ!」

 

興奮した様子でそう言う芦戸三奈に同意するように葉隠透も隣で両手をブンブンと振っている。青山優雅も足を組みながらも尊敬した眼差しで目を輝かせている。

それを受けてヨロイムシャは据わりが悪そうな表情を浮かべた後、白く長い髭を撫でながら言う。

 

「まあ、なんじゃ。尊敬されて悪い気はせんが、出先でちゃんとするのなら、此所では自由にして貰って構わんわい」

「「「・・・?」」」

 

ヨロイムシャが言いたい事が察せられずに首を傾げる三人。遠回しでしか物事を伝えられないツンデレ頑固爺に変わり、ポワポワとした雰囲気の事務員が代弁する。

 

「お爺ちゃんは曾孫によそよそしくされるのは嫌なんですよー」

「「「ああっ!」」」

「ち、違うわい!」

「じゃあじゃあっ、これからも事務所ではおじいちゃんって呼ぶね!」

「はいはーい!私も!じいじって呼ぶー!」

「そう言ってくれればいいのに☆(じい)や☆」

「きゅ、急に馴れ馴れしいのう!一人に至っては使用人の呼び方ではないか!青山っ、おまえは正座しとれいっ!」

「!?」

 

青山優雅は小刻みに震える中で反省会は行われるのだった。

老兵は死なず、ただ消えゆくのみ。兵士は老いながらも生きる事はできるが、彼らが生きている事と成し遂げた物は忘れ去られていく。

それを悲しむ感性をヨロイムシャは持っていた。

 

「おじいちゃんの攻防一体の連携に追いつくには、私たちも連携を磨いた方がいいよね!」

 

(かつ)て、60年前、笑顔の素敵なヒーローがいた。

 

「いいね!じゃあさっ、芦戸が酸で足止めして、私が青山のビームを曲げて当てるのはどう!こう、グワーって!できそうだよね!青山!」

 

嘗て、40年前、元気の似合うヒーローがいた。

 

avec(アヴェック)plaisir(プレズシール)。喜んでやるさ☆僕が決め技。いいね☆」

 

嘗て、20年前、光り輝き笑うヒーローがいた。

 

自分よりも後にヒーローに成り、自分より先に舞台を降りたヒーロー達が数多いた。

彼らのことをヨロイムシャは忘れたくない。ヨロイムシャは彼らに(たすき)を託されている。

(ヴィラン)との戦いで傷を負いヒーローを辞めざる得なくなった者。

全盛期のチカラを失い舞台から降りると決めた者。

ヒーローとして守るべき誰かよりも大切な家族が出来た者。

多くのヒーローが誕生し、消えていく様を次は自分の番かも知れないと思いながらにヨロイムシャは見続けてきた。

しかし、何の因果か70余年。ヨロイムシャは未だにヒーローで居られている。

既に道を示す先達は無く。何時終わるかもわからない暗闇の道を一歩一歩、進む日々。

ヒーローを辞めてしまえれば楽だったろう。しかし、託された(たすき)が老体を縛る。

 

―――俺(私)たちの分まで、頼んだ。

 

ヒーローで居られなくなった者たちが何気なく掛けた言葉が、幾重にも重なり、誰よりも長い時間、ヒーローで居続ける男を縛り続けた。

求められる限り、ヒーローであり続けると誓った男がその襷、引きちぎれる訳もなく。

老兵は死なず、ただ消えゆくも抗い、まだ舞台に立っている。

 

「・・・いつの日か、来るのか。俺も襷を託す日が」

 

「おじいちゃん?ねえ、聞いている?」

「じいじはお昼寝の時間なんだよ!邪魔しちゃだめ!」

「良い夢を☆」

「フン、年寄り扱いするでないわい!小童共!」

 

きっと、その老兵は死に場所を探していた。

 

 

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