災いの子   作:猪のような

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続いてしまったな…よく分からん作品が…!


第二話 映画

 

 

 

 

アクアとルビーのヲタ芸事件から一年。三つ子は立ったり喋ったりしても問題無い程度には大きくなった。

 

「ママ、ママ!よしよしして!」

 

ルビーがアイに甘えている様子を見てアクアが呆れていると…

 

「は〜極楽浄土〜」

 

「…そんな難しい言葉どこで覚えたの?もしかして…」

 

「「っ!!」」

 

アイが険しい表情をしてルビーを見つめる。二人が怪しまれたと思った瞬間…

 

「やばいくらいの天才っぽいな…」

 

それは杞憂に終わったのだった…アイはこの1年で着実に仕事を増やしており今日はその集大成とも言える仕事である、ドラマ出演の仕事が入っていた。

 

「ママの初ドラマ楽しみだね」

 

「ちょい役だけどね」

 

「いいですか3人とも。どうしてもと言うから連れていきますけど…現場でアイさんのことママなんて絶対に呼ばないでくださいよ。私の子どもという設定を忘れないでください」

 

三つ子とアイを運ぶ車を運転しているミヤコからそう釘を刺される。

 

「はいママー!なでなでしてー!」

 

「私もしてママー」

 

「ママお小遣いちょうだい」

 

上からアイ、ルビー、アクアの順でそう答え、ミヤコは本当に大丈夫か若干の不安を覚える。そしてクリスタルはその状況を余所に車窓からずっと景色を眺めていたのだった…

 

 

 

 

 

 

「苺プロのアイです。本日はよろしくお願いします」

 

現場に着き、アイが挨拶をすると監督がアイに近づき、至近距離でジッと見つめる。

 

「……」

 

「どうかしました監督?」

 

「いや別に…」

 

「…何か怖いね」

 

「顔がな」

 

監督を見てアクアとルビーが背後で喋っていると、監督が三つ子達に気付く。

 

「この子供は?」

 

「あ、私の子なんです」

 

監督の問いにミヤコが直ぐにそう答えると、監督は険しい表情を浮かべ。

 

「マネージャーが子連れで現場にねぇ?」

 

その言葉にクリスタル以外の全員が息を呑むと…

 

「…はっ、働き方改革ってやつか!?」

 

と監督はハッとした表情になって言った。

 

「時代だなぁ。まぁ現場に犬連れてくる人もいるし…」

 

監督は納得したのかそう言いながら戻っていった。

 

「「「「ほっ…」」」」

 

息を呑んだ四人がホッとする。取り敢えず現場から追い出される事態は避けられたのだった。そしてクリスタルは変わらず平然としていた。

 

 

撮影が始まるまでの間、三つ子は出演者やスタッフにちやほやされていた。

 

(おおっこの子確かグラビアの… あっちはかわいすぎる演技派とか言われてる若手女優…)

 

アクアが見覚えのある人物達を観察していると、ルビーが「ばぶぅ、ばぶぅ」と言いながら嬉しそうにしているのが目に入った。

 

(かわい子ぶってんじゃねぇよ…クリスは…あれ?いない…)

 

先ほどまで一緒に居たクリスがいない事に気付いたアクアは、チヤホヤされる今の状況からとにかく一刻も解放されたかったのでクリスを探すことを免罪符にして撮影現場である教室を出る。すると、廊下でばったり監督に鉢合わせる。

 

「あっ…」

 

「マネージャーのガキじゃねぇか。いるのは構わねえが泣きだして収録止めたら締め出すからな」

 

「あっいえ!我々赤ん坊ですがそのような粗相はしないよう努めますので!現場の進行を妨げないのは最低限のルールと認識しております。弊社のアイを今後とも何とぞご贔屓に…!」

 

「めちゃくちゃしゃべるなこの赤子!どこで覚えたそんな言葉!?」

 

赤ん坊から放たれたとは思えないまるで社会人の様な礼儀正しい丁寧な言葉遣いに監督は驚愕する。

 

「えっと… YouTubeで少々…」

 

「すげーなYouTube!?時代だなー!」

 

なんでもかんでも時代で済ませる監督はアクアを興味深そうに見ながら抱き上げ、顔を覗き込む。

 

「早熟な子役は結構見るがここまでのは初めて見た。お前も演技とかするのか?」

 

「いや……演技とかそういうのは…」

 

「画面として面白えな…なんかに使いたい。これは俺の名刺だ。どっかの事務所入ったら電話しろ」

 

監督はアクアを降ろし、屈んでそう言いながら名刺を渡す。

 

「いえ…仕事を振るなら僕じゃなくてアイのほうに…」

 

「あーあのアイドルな。顔は抜群にいい。運がよけりゃ生き残るだろ」

 

監督のその言葉にアクアは頭の上に?を浮かべる。

 

「顔が抜群に良いのに運?」

 

「いいか?役者ってのは3つある」

 

監督はそう言って現場の方に目を向けながらアクアに説明し始める。

 

「一つは『看板役者』。客を連れてくることをまず求められる。広告塔の役割もあるからギャラもいい… 次に『実力派』。作品の質を担保する役割。レーベルとしてのブランドを保つことが仕事だ… 最後に『新人役者』。ここに演技力なんて期待してない。画面に新鮮さを出してくれりゃ及第点」

 

監督は立ち上がって役者達を見つめながら続ける。

 

「次のスターに経験を積ませる目的もある。まあ業界全体での投資だな。つまりあそこにいる新人たちは全員投資を受けてる段階。客に売れるか現場に好かれるか…どっちかがなきゃ次の新人に席を奪われる… この現場にいる新人全員の中で誰か1人でも生き残りゃ大成功さ。そういう世界だ。生き残るのは何かしらの一流だけ」

 

監督からその説明を聞いたアクアは…

 

「じゃあ平気だね。アイはアイドルとして一流だから」

 

と言った。

 

「いや、アイドルとして一流でも仕方ないだろ…」

 

そして撮影が始まり、アイの演技が始まると、監督はある事に気付く。

 

「…演技は並だが…いやに目を引く」

 

「でしょ。さっき言ってたんだ」

 

アクアはアイが現場に入る前に言っていた事を監督に教える。

 

「ステージの上だとどの角度からもみんなに可愛くしなきゃいけないけど… ここではたった1人カメラに可愛く思ってもらえばいい。MVと同じ要領でいいならむしろ得意分野って」

 

アイがそう言っていたのを聞いた監督は…

 

「MV感覚かよ。時代だなぁ…」

 

と、また時代で済ませていた。そこでアクアが咄嗟に監督にアイのMVを取ることを勧めようと大声を出しそうになった瞬間…

 

「いけません、兄上」

 

声を発する前に後ろから口を塞がれた。ビックリしながらアクアが後ろを見ると、そこにはクリスが居た。

 

「っ…ぷはっ、クリス、どこ行ってたんだよ…!?」

 

「すみません、学校など初めてなもので少々散策しておりました」

 

「子供かっ…!?」

 

「子供ですが」

 

「そうだったな…!」

 

二人でコントのような事をしていると、クリスと監督が目を合わせる。

 

「兄上、この方は?」

 

「いや、監督だよ、さっき会っただろ…?」

 

「すみません、学校というものを見渡すのに夢中で人を見ておりませんでした」

 

「あ、そう…」

 

アクアとクリスの会話を聞いた監督はまた驚いた顔を見せる。

 

「おいおい、そいつもスゲー早熟か?それに滅茶苦茶落ち着いてんな?ってか、兄上って…」

 

「?」

 

「あはは…クリスは三つ子の一番下です。何時も落ち着いててマイペースですけど、凄く礼儀正しいですよ」

 

「ほう…それは良い事を聞いた…おい、お前にも名刺渡すから、事務所入ったら連絡寄越せ」

 

「はぁ…?」

 

クリスは何が何やらといった様子で監督から名刺を受け取る。アクアはそんな様子を見て苦笑いしながら、クリスについて考える。

 

(この一年、クリスと接してきてなんとなくだが、クリスの前世が分かった気がする。俺やルビーとは明らかに違う価値観、現代の事を何も知らない事…)

 

アクアは名刺をジッと見つめて不思議そうな顔をするクリスを見ながら結論を出した。

 

(クリスは昔の日本から転生した人間だ…それも恐らく…()()()()()()()()())

 

それがアクアがクリスの前世に対して出した答えだった。

 

(あくまで推測だが…ミヤコさんが暴走した時のクリスの気迫…そして殺人に対して特に抵抗が無い倫理観)

 

しかし例えクリスが前世で人を殺めていたとしても、アクアがクリスの事を嫌う事は無い。

 

(同時に分かった事だが、クリスは物凄く家族想いで、基本的には誰にでも優しい…きっと、産まれた時代が悪かっただけだったんだろう)

 

アクアがクリスの頭をよしよしと撫でるとクリスはキョトンとしながらアクアを見る。こうして、ドラマ撮影は無事に完了していくのだった……

 

 

 

 

 

 

 

そして、アイの出るドラマの放送当日。家族みんなで視聴するも撮影した量に比べアイの出場シーンがあまりにも少ない。ちょい役とはいえカットされていた事に皆がガッカリしていると、アクアがスマホを片手にどこかに行き、少しすると戻って来た。

 

「クリス、ちょっといいか?」

 

「?はい、何でしょう?」

 

「スゥー…俺と一緒に映画に出てくれ…!」

 

要約すると、監督に電話してドラマのアイの出番がカットされた事について訊いたら上の事情というものでどうしようも出来なかったらしい。それで、監督がアイに映画の仕事を振ると言ったが、その条件としてアクアとクリスにも出演する様に言ったらしい。

 

「いきなりですまん、けど…!」

 

「構いませんよ」

 

「アイの為にも…って、え?い、いいのか?」

 

「はい。母上と兄上の為です、私で良ければ」

 

「く、クリス〜…!」

 

(な、なんて良い弟なんだ…!こんな弟を人殺しにした時代を俺は恨むぞ…!)

 

こうして、アクアとクリスの二人が映画に出演する事が決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか早熟ベイビーズ。日本の場合キャスティングってのは上のほうであらかた決まってるもんなんだよ」

 

撮影の日、現場に来たアクアとクリスは再び五反田監督から話をされていた。

 

「金がかかってる企画ほどコケるわけにはいかねえ。確実に客を呼べる役者を押さえるため上は上の戦いがある。キャスティング権のある監督は極々一部の超大物監督か超低予算でやってる小規模映画の監督くらいだ…さあ、俺はどっちに見える?」

 

「……超大物監督」

 

「はーいハズレ!ここは低予算の現場ですよっと」

 

アクアの答えに対して監督は直ぐさまそう返すと、ミヤコが寝ているルビーを抱えながら近寄ってくる。

 

「監督、本日はアクアとクリスがお世話になります」

 

「いやいや、例の件話は通ってるんだよな?」

 

「一応二人は今月から苺プロの所属になっています」

 

「事務所入ってない子役使うと怒られるからよ…」

 

「……クリスは普通に演技が上手いですけど、演技なら俺よりルビーの方が…」

 

「いや、お前たち二人だ。お前たちの出演と引き換えにアイを使う。こういうの業界じゃバーターって言うんだ、基本だから覚えとけ」

 

アクアがルビーを推そうとすると監督はそれを瞬時に拒否り、丸めた冊子でアクアの頭をポンッと叩きながらその場を離れていった。

 

「アイさんの息子がバーターって…あの怖そうな監督だいぶアクアさん気に入ってますね。一体何をしたらこういうことになるんです?」

 

「別に大したことしてないよ。ジジイは若者に砕けた態度取られるのをなぜか喜ぶ傾向にあるからあえて仰々しく接してないだけ」

 

「すげー嫌な赤ちゃん…」

 

クリスはアクアとミヤコのやり取りを見て「ふふ」っと笑うと、撮影現場である森一帯を見渡す。

 

(……森…)

 

あまり外に出る機会が無かったクリス。今世で訪れた初めての森林を見て、ある記憶が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

───赤。

 

「今日はこれで終いか」

 

赤い夜叉、赤い地面、赤い木々。その中に浮かぶ死体の数々。夜叉は自身を追ってきた幕府軍をある森の中で殺戮していた。

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

「ひ、怯むな!まだ半分以上兵は残っている!夜叉とて人!いずれ体が動けなく―」バシュ

 

指示を出していた幕府軍の将は次の瞬間、頭に矢が突き刺さり、背中から地面に倒れた。

 

「む、無理だこんなの!」

 

「か、勝てる訳がねぇ…!」

 

幕府軍の兵達は次々と一太刀、一矢で息絶えていく味方の姿を見て腰が引き、逃げだそうとする。夜叉はその様子を見て…

 

「逃がすと思っているのか」

 

「「「「ひっ…!?」」」」

 

「災いは人を選ばない。災いと相対したのならば───なんであろうと、誰であろうと、災いは人に猛威を振るう。(災い)と出会ったのならば、必ずや、その息の根を止めてやる」

 

夜叉はそう言って、逃げ出した兵達を追い詰める。結局、その森の中から幕府軍の兵が出て来る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ママぁママぁ!ママのどごがえりだい!なんでママいないの!」

 

前世の記憶に意識を傾けるクリスを呼び覚ましたのは、ルビーの泣き声だった。

 

「アイとは撮影日が違うんだよ」

 

「早く帰ってバブりたい!ママの胸でオギャりたいよぉー!」

 

この赤ん坊は自分がヤバい事を言っている厄介オタという自覚はないのだろうか、無いのだろうな。ルビーの発言にアクアがドン引きしていると…

 

バンッ!

 

っと机を叩く音が響き、三つ子が音のした方を向くと、そこには一人の少女が居た。

 

「ここはプロの現場なんだけど!遊びに来てるんなら帰りなさい!」

 

「えっと…」

 

「有馬かな。この映画の女優よ」

 

「あっ、この子アレじゃない?えっと、何だっけ…重曹を舐める天才子役?」

 

「兄上、重曹とはなんのことですか?」

 

「ああ、重曹って言うのは…」

 

「10秒で泣ける天才子役!!ドラマでの泣きっぷりが凄いって皆言ってるの!凄いんだから!」

 

「なるほど。で、兄上…重曹とは?」

 

「炭酸水素ナトリウムって言って…」

 

「たんさんすいそなとりうむ…?」

 

「また今度教えるから」

 

「聞いてるの!?」

 

軽くあしらわれた有馬かなが怒っていると、ルビーが冷たい目をしながら口を開く。

 

「私この子あんま好きじゃないのよねー…なんか作り物っぽくて生理的に無理」

 

「たまに子役に対して異様にキビシー奴っているよな」

 

「知ってるわよあなた達コネの子でしょ!本読みの段階じゃあなたもアイドルの子の出番もなかったのに監督のゴリ押しってママも言ってた…… そういうのいけないことなんだから!」

 

「いやそういう訳じゃ…」

 

「こないだ監督が撮ったドラマ見たけどあのアイドル全然出番なかったじゃん」

 

「「は?」」

 

「どうせカットしなきゃいけないほどヘッタクソな演技してたんでしょ。媚売るのだけは上手みたいだけど。ADさん、かばん持って!」

 

「ええっと、ちょっと待ってね…」

 

かながアイを馬鹿にしてその場を去って行った。クリスはどうでも良かったが、ふとアクアとルビーを見ると。

 

「お兄ちゃん…!」

 

「分かってる、相手はガキだ殺しはしない…!」

 

滅茶苦茶怒っていた。クリスはそんな二人を見てまたキョトンとしていた。

 

 

 

 

 

(映画のあらすじをざっくり言うと、自分の容姿にとことん自信のない女がなぜか山奥にある怪しい病院で整形を受ける…って話。僕らはその村の入り口で出会う気味の悪い子どもたち)

 

撮影が始まり、かな、アクア、クリスの三人が主役の女性を迎えるシーンが撮られる。

 

「ようこそお客さん歓迎します…どうぞゆっくりしていってください…」

 

(流石に天才子役、上手い。同じことしても実力の差で目も当てられないことになるな。ズブの素人でもそれくらい分かる…)

 

(なるほど…確かに不気味な気配を感じます…)

 

二人はかなの演技を見て実力の高さを実感する。

 

(ならどうする?普通に考えれば気味の悪い子どもの演技をすればいい… けど求められてるのそれじゃないよな。監督が欲しい画はきっと…)

 

「この村に宿は一つしかありません。一度チェックインしてから村を散策するといいでしょう」

 

アクアは演技をせずに、普段通りの様子でそう言った。

 

(このシーンは急遽追加された部分。俺のことを知ってから監督が加筆した当て書きだ。その意図を汲むならむしろ演じないでいい… 演出の意図に応えれば十分。言葉にはしなかったけど監督が言いたいのはつまり…)

 

(演じなくてもお前は十分気味が悪い)

 

「では、ご案内します」

 

(さて、ここからはクリスの番だが…)

 

「お姉さん、案内する前に一つ良いですか?」

 

「な、何?」

 

クリスも、アクアと同じように早熟を活かした演じないが気味が悪い演技をする。すると…

 

「お姉さんは…ん?」

 

クリスは自分の足元に何か居るのを察知した。そして下を見ると、そこにはニョロニョロと動き回る…蛇が居た。

 

シュバッ!!

 

「「「「─っ!?」」」

 

蛇を見つけた瞬間、クリスは即座に屈み、蛇を両手で掴んだ。

 

「ひっ…!?」

 

主役の女性が蛇を見て驚き、ビクリと震える。

 

「ああ…すみません。それで、訊きたいことなんですが―」

 

クリスは蛇を掴んだまま微笑んで台詞を喋る。

 

「お姉さんは、綺麗な赤と歪な白…どちらがお好きですか?」

 

『──────』

 

「…か、カット!!」

 

その場にいる全員が呆気に取られているなか、監督が慌てて撮影の終了を告げ、慌ててクリスの方に近寄る。

 

「お、お前大丈夫か!?」

 

「?……何がでしょう?」

 

「シュルシュル」

 

クリスは抱えた蛇を労るように優しく撫でていた。

 

「よしよし、さっきはいきなり掴んですみません。大丈夫ですか?」

 

「ええ……いや、だが…」

 

蛇と普通に接しているクリスにドン引きした監督は今撮った映像を確認して、助監督と少し話し合うと…

 

「よし、少しハプニングはあったがOKだ!」

 

どうやら蛇が出たという問題はあったが、OKになった。すると主役の女性がアクアの演技を褒める。

 

「すごいねーお姉さんゾクッてきちゃった」

 

「そうですか?良かった〜」

 

「兄上」

 

「クリス、蛇を持ったまま近付かないでくれ」

 

「お、お姉さんもちょっと蛇は苦手かな〜」

 

「?分かりました」

 

クリスはそう言って蛇を降ろすと、蛇はその場から動くこと無くジッとクリスと見つめ会う。

 

「行きなさい」

 

蛇はクリスがそう言うと、まるで聞こえているように森の奥へと消えていった…

 

「それで兄上。私…台本とは違う事をしてしまいましたが、良かったのでしょうか?」

 

「あ〜…それは…」

 

「問題大アリよ!!」

 

クリスがアクアに質問していると、大声が響き、二人はそちらを見る。すると有馬かなが監督のズボンの裾を掴んでいた。

 

「今のかな…!あの子達より全然ダメだった…!」

 

かなは泣きながらもう一回撮って欲しいと駄々を捏ねるが、勿論もう一回撮り直すという事はしなかった。

 

「早熟共。役者に一番大事な要素はなんだと思う?」

 

夕暮れ時になり、かなも少し落ち着いてきた頃、監督がアクアとクリスにそう訊く。

 

「んー…実力とかセンス?やる気と努力の量?」

 

「まぁ、それも大事だけどな…お前は?」

 

「私も兄上と同じです」

 

「そうか…けどな、結局のところコミュ力だ。他の役者やスタッフに嫌われたら仕事なんてすぐなくなる。小さいうちから天狗になって大御所気取りしてたら未来はねぇ」

 

「あの子にお灸を据えたかったの?」

 

「そんな偉そうなことは考えちゃいねえけどよ。こういうのも栄養だ。早熟一号、お前の演技、俺の想像にぴったりの演技だったぜ」

 

監督はそう言ってアクアに対して笑いかける。しかし、アクアは別に嬉しくなさそうで…

 

「あの子のほうがすごかったよ。俺はいつも通りの俺やっただけだし」

 

「でも、俺はそうしろとは言ってない。意図を読み取るのも一つのコミュ力だ… もちろん演出や意図を理解して演じるのは役者の基本だ。だけど言語化できない意図まで読み取ってくれる役者ってのは貴重。演出家の頭の中には正解の画があるんだからな」

 

監督はアクアの頭に手をポンッと乗せる。

 

「お前はすごい演技よりぴったりの演技ができる役者になれ」

 

「……いや、役者にはならないし…」

 

アクアは少し照れながらそう言うと…

 

「監督、私には何かないのでしょうか」

 

「え、あ、早熟二号…お前はな〜…」

 

監督は詰め寄って来るクリスに少々たじろぎながら言葉を出す。

 

「…蛇が出る、なんてハプニング、普通じゃ役者はビックリして演技どころじゃなくなる…だが、お前はそのハプニングすら動じず、演出の一つにしてみせた…俺の想像を超える演技だったよ。よくやった」

 

監督のその言葉を聞いたクリスは…

 

「…ありがとうございます」

 

少し微笑んで、そう言った。こうして、二人は芸能界における第一歩を踏み出したのであった…

 

 

 

 




Q.この後どうなるんですか?

A.私にも分からん。

それにしてもクリス君の心理描写を書きたくないからクリス君の描写減るし…そもそもこの子セリフ数少ない!どうしたらいいんですか先生!
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