災いの子   作:猪のような

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リアリティショー編も特に書く事無くね?割とダイジェストで進むぜ!


第八話 再会

 

 

 

 

「仮にも私は妹で姉な訳で!私が嫌いなタイプと兄と弟が付き合うのは嫌な訳!」

 

アクアとクリスが今ガチの収録から帰って来ると、ルビーが不機嫌そうにしながらそう言った。

 

「なので、二人が付き合うべき女性は私が決めます」

 

「勝手にもほどがある」

 

「では、姉上はどなたとお付き合いすべきだと思いですか?」

 

「えっとね〜、私の一押しは〜…」

 

ルビーはタブレットを操作して今ガチの女性メンバーのプロフィールを見ている。

 

「先ずはユキぽん!たぶんこの子は純粋で良い子だよ!」

 

ルビーはそう言って二人に鷲見ユキの画像を見せる。二人はその画像を見て顔を見合わせると…

 

「お前は見る目がないからしばらく恋愛すんなよ」

 

「姉上は純粋ですからね…」

 

「はぁ!?……ま、まぁいいもん。もう一人は今最推しの不知火フリル!どう?」

 

「不知火さんですか…」

 

「…そういえば、お前と不知火さん、収録中ずっと一緒にいたよな」

 

「え、本当?……クリスって学校でもよく近くに不知火さんがいるし…仲良いの?」

 

「?……そうでしょうか?」

 

「いやいや、どう考えてもアレは友人の距離感だったぞ」

 

「うんうん」

 

「……」

 

二人は知らないがクリスはフリルと連絡先を交換するほどには仲が良い。しかし、クリスからしてみればそうしているのはフリルが望んだからに過ぎず、クリスのフリルに対する感情は他の人間達と何ら変わりない。

 

(特別……)

 

フリルはクリスに対して特別になると言った。クリスはその言葉を聞いて思い返す。自身の生において、何が特別だったのか。

 

(家族以外の、特別……)

 

クリスはどうしてか、忘れられなかった。自分に強い宣言をした、あの時の不知火フリルが。その姿が、誰かに重なっているようで。

 

 

 

 

 

 

 

 

今ガチの初回が放送され数日、番組はかなりの注目を浴びていた。それもその筈、今ガチはこれまでの恋愛リアリティショーには無い二つのイレギュラー…不知火フリルと星野クリスタルが出演しており、フリルのクリスの特別になる発言によって二人を中心に話題が広がっていた。

 

『初回からフリルがクリスタル狙い発言は飛ばし過ぎじゃない?』

 

『ていうか何でクリスタルはフリルからそう言われて特に何も反応無いの?』

 

『クリスタルって、何か人に興味無さそうだよね。強く反応したのって出演者の中じゃアクアだけじゃない?』

 

『ブラコンかよ…』

 

『アクアと同じ人を取り合う展開来ないかなぁ』

 

『何だその修羅場、けど面白そう。見てみたい』

 

などなど、まぁ一部のファン(ガチ恋勢)は地獄の様相だが、世間からのおおまかな評判は今まで人生の全てを武道に捧げ、恋を知らずに生きて来たクリスタルとそんな彼に恋を教えようとする不知火フリルと言った感じだった。そして…

 

「え、クリスの好み?」

 

最近アイドル活動の第一歩としてピエヨンチャンネルで一時間踊ったりした星野ルビー。昼休みに彼女を訪ねてきた人物、そう不知火フリルからクリスの好みなどについて聞かれていた。

 

「そう、何でも良いの。何か知らない?」

 

昼休み、屋上で仲良くなった寿みなみと共に三人でお弁当を食べていたところでそのような質問をされ、ルビーとみなみは固まった。

 

「えっと…因みにそれは…何で…?」

 

「?もう知ってると思ってだけど。私、今ガチでクリス君の事を本気で狙ってるの」

 

「「ええっ!?」」

 

不知火フリルからの告白にも等しいカミングアウト。二人もフリルが本気でクリスを狙っていると知り驚愕する。

 

「し、不知火フリルが、うちの弟を…!?えっと、因みにクリスのどこが好きになったの?」

 

「うちも気になる!」

 

女三人寄れば姦しいとは良く言ったもので、話題がフリルとクリスの恋バナに移っていく。

 

「……やっぱり最初は見た目かな。美形で、背が高くて、大人っぽい。あんなの同年代なら誰でも憧れるでしょ」

 

「せやねぇ…なんていうか…大人の余裕?色気?ってのを常に感じるっていうか…」

 

「そう?クリスって普通に年相応だと思うけど」

 

「やっぱり家族は特別だから違うのかな」

 

他人から見たクリスはミステリアスな大人っぽいイケメンだが、ルビーやアクアにとってクリスは家族が大好きな犬系男子である。

 

「それで、そこから気になって剣道の試合とか、暗黒騎士シュラムの演技を見たりしたんだけど…」

 

「けど?」

 

「なんていうか…うん、クリス君の動き、演技はただただ綺麗って感じた。上手い、とかじゃなくて…自然で、美しかった」

 

「確かに、クリス君って普段から動きに品があるっていうか…この前ノート見させてもろたけど、字めっちゃキレイやったし…」

 

「クリス、書道とか茶道もやってるからね」

 

「ちょっとハイスペックすぎん?」

 

「頭はそんな良くないよ。えっと、不知火さんから見てクリスは役者としても凄いの?」

 

「……どうだろ、確かに自然だったけど…それだけだったかな。アレは演じてるって感じじゃ無かった。シュラムとクリス君が結構似てたからだと思うけど…全く違う役をやらないと役者としての技量は分からないかな」

 

「そっかー…って、話逸れちゃったね。ね、他にクリスの何処が好きになったの?」

 

クリスの演技の話から再び恋バナに軌道修正すると、フリルは少し考えて…

 

「色々あるけれど…一番は、底が見えないところ」

 

「「?」」

 

「どんな事にも動じない。けどそれは自信から来るものじゃなくて、理解から来るもの。例えるなら…どれだけ進んでも、必ず一歩先に居る」

 

「えっと…どういう事?」

 

「ルビーさんは、クリス君の剣道の試合とか見た事無い?」

 

「いや、あんまり…」

 

「クリス君は、試合で勝っても喜ばない。何時も平然としているの。まるで自分が勝つって分かってるみたいに。それだけなら凄い自信家に思えるでしょ?」

 

「う、うん…」

 

「けど彼は自分へのインタビューでこう言った。『私は自分の実力は疑うが相手の実力は疑わない。相手が繰り出すであろう最高の一手を予測して対処しているだけ』って」

 

「……」

 

「クリス君は天性の運動能力にばかり目が行くけど。本当に凄いのは、どこまでもこちらを見透かしているあの目と、常に冷静でいられる精神性。クリス君と対戦した人、試合を見た人は皆こう言う『同じ人間とは、到底思えない』って」

 

ルビーは驚いていた。確かにクリスが剣道などで恐ろしいほど高い評価を受けていたのは知ってはいたが、そこまでのものとは思っていなかった。

 

「彼が持っているものは絶対的な自信じゃなくて、他者への絶対的な信頼と理解。どんな人間にも寄り添う慈愛と寛容さ。そしてこの前の収録で、私は決意した───

 

 

 

 

あの歪で真っ直ぐで、愛に満ちた平等な眼差しを、私だけの物にしたい」

 

そのフリルの言葉を聞いた二人は思った。

 

((想像以上に重い感情持ってた…))

 

「と、言う訳で。クリス君の好みとかを知りたいの」

 

「う、う〜ん……けど、クリスって好きなタイプとか…趣味趣向とか無くて…」

 

「誕生日プレゼントとかは?」

 

「あの子、どんな物かより気持ちを凄く大事にするから…うん、ごめん。クリスのそういうの、私には分からない」

 

「……そっか」

 

「が、ガッカリした?」

 

「いや、アクアさんにも聞いたけど同じ感じだったし。これは俄然攻略に燃えてきた」

 

((強いなぁ…))

 

「教えてあげる。私はあなたの理解から外れたモノだって」

 

二人はそう言ったフリルの瞳の中に、炎の揺らめきのようなものを幻視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスについて?」

 

「そう!あの不知火フリルにあんなハッキリ狙われてるなんて、彼何者なの?」

 

時は経ち、今ガチの収録も何回か行われた頃、不知火フリル、星野クリスタル以外の出演者達が集まって二人について話していた。皆の視線の先には今日もクリスを堕とそうとあれこれ試しているフリルの姿があった。

 

「そう言われてもな…俺からしてみればしっかりした良い弟だし」

 

「それは分かるよ?クリス君礼儀正しいし、凄く良い子だし」

 

「ニュースで何回か見た事あるしな」

 

収録を何回か共にして今ガチメンバーもフリルがクリスに対して異常に執着している事が分かっていた。しかし…

 

「あの不知火フリルが何しても特に反応無しって…」

 

「優しいけど、アレだけアピールしてるのに私達と対応変わらないんだよ?アクたんだけじゃん、対応が違うの」

 

「あ〜…まぁな」

 

「SNSでもプチ炎上してるよ、ほら!」

 

『クリス、フリルに対して冷たすぎ』

 

『フリルも何でまだクリスの事狙ってんの?』

 

『何でこの番組出てんだコイツ…』

 

『アクアだけじゃん、優しくしてんの。ブラコンがよ…』

 

『マジ意味分からん…』

 

『いくらなんでも人に興味無さすぎ』

 

SNSではクリスに対する非難の声が幾らか上がっている。フリルのガチ恋勢は逆に安心した様子を見せており、アクアはそれを見て苦笑する。

 

「けど、不知火さんはどうしてクリスさんをまだ諦めて無いんでしょうか…私だったら無理って思いますけど」

 

「そうだよ!何やっても振り向いてくれないんだよ、そんなの普通諦めるって!」

 

「なんていうか、アクたん以外に興味無しっていうか…」

 

上からあかね、ユキ、MEMちょの順でそう言い、ノブユキとケンゴもうんうんと頷く。するとアクアはため息を吐き、クリスとフリルを見つめる。

 

「クリスはちゃんと不知火さんの事、意識してるよ」

 

「えー嘘だー」

 

「嘘じゃない。けどそう見えないのは…クリスが皆の事を意識してるからだ」

 

「どういう事?」

 

「クリスは不知火さんの事好きだけど、それと同じくらい今ガチメンバー全員の事が好きなんだよ」

 

アクアがそう言ったのを聞いて、今ガチメンバーは驚いた顔を見せる。

 

「クリスは誰でも特別の様に扱うから、それが普通になった。だからどれだけ優しく接しても、他の人と対応が変わらないから冷たく見えるだけなんだよ」

 

「……けどさ、不知火さんに対してはもう少し違う反応見せたって…」

 

「……アイツ、中学の頃滅茶苦茶モテてたんだよ」

 

「そりゃそうだろ」

 

「あんなのモテまくりでしょ」

 

アクアはクリスの中学生だった頃に起きたある話を今ガチメンバーにした。

 

「バレンタインなんか大量のチョコ持ってきてさ。けどアイツは嫌な顔一つしてなかった。寧ろ嬉しそうだったよ…そしてアイツ、数日掛けてチョコ全部自分で処理したら、何し始めたと思う?」

 

「ホワイトデーのお返しの準備?」

 

「そんな感じ。チョコくれた人全員に手紙書き始めたんだよ」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

「チョコくれた人の名前を全員覚えてて、手紙の内容もしっかり書き分けて、一枚一枚丁寧に書いてた。んで、全員分のお返しのお菓子も手作りして、ホワイトデーに手紙と一緒に渡したんだ」

 

「凄い…」

 

「だろ?クリスは誰に対してもそんな感じで接してるんだ。不知火さんもそれが分かってるからクリスの事を諦めない。クリスは振り向かないんじゃなくて、誰に対してもちゃんと向き合う。それを付き合いが浅い内は、別の人の方を見ててこっちを見てないって感じるんだよ」

 

「……ちょっとクリス君の事誤解してたかも」

 

「仕方ないさ、そう見える生き方をしてるアイツも悪いし、実際。不知火さんの事は他の人より意識しても良いって俺も思ってるよ。けど、それはアイツが不知火さんに恋をしない限り無理だ」

 

しかしアクアも内心は無理なのではないかと思っていた。アクアにとってクリスの平等が崩れた瞬間は、あまり思い出したく無いが、アイを刺した男に対してだけだった。それ以外でクリスが他人に特別な感情を持つ事は一切無かった。

 

「本当に諦めないのか、不知火さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家族を特別に思うなら結婚して家族になれば特別に思ってくれるの?」

 

「…それは違うのでは?結婚したから特別では無く、特別に思うから結婚するのでしょう?」

 

「うん、だよね。忘れて」

 

フリルは内心少し焦っていた。幾ら何でもこの男、ガードが硬すぎる。いや、ガードなどしておらず寧ろ常に両手を広げて受け止めてくれるが、どんなアタックをしてもピクリともしないと言った方が正しい。

 

「…クリス君って、好きなタイプとか無いの?」

 

フリルはもう直接クリスに好みを聞く事にした、が…

 

「いえ、ありませんね」

 

「本当に?」

 

「はい。強いて言うなら…」

 

「っ!」

 

「どんな人も好きですよ、私は」

 

「……」

 

(一瞬で上げて落とされた…)

 

クリスの攻略は未だに進まず、このままではエンディングに辿り着くどころかスチルすら見れない。イベントも無い。一体どうすればこの男を堕とせる?フリルはひたすらに考えるが、案は浮かばない、というかやれる事はやり尽くした。

 

 

「……私の相手は、もう疲れましたか?」

 

「!」

 

クリスがフリルに対して、困ったような顔をしながらそう言う。

 

「すみません、ご期待に沿えずに…不知火さんが私を特別に思っているのは承知しています。私も、不知火さんを大切にしたいと思っております」

 

「…けどそれは、私だけに対してじゃない。そうでしょ?」

 

「その通りです。私は、皆さんを全員、大切に思っています。兄上は勿論、鷲見さん、黒川さん、熊野さん、森本さん、MEMちょさん…皆さんの事が、とても大切です」

 

「……うん」

 

「不知火さん、私はやめた方がよろしいですよ。こうやって一緒に番組に出る内に理解しました…私は…恋が出来る人間では無かったのです」

 

クリスはそう言って立ち上がり、フリルに背を向ける。

 

「不知火さん、ちゃんと見つけるべきです。あなただけを大切にしてくれる、そういう人に」

 

クリスはそう言うと去っていった。フリルはその背中を黙って見つめる……

 

 

 

 

「私は諦めない」

 

「!……不知火さん」

 

事はしなかった。フリルの言葉にクリスは振り向く。その表情は…やっぱり、と言った感じだった。

 

「分かってるなら諦めて。私はあなたを諦めない、必ずあなたの中で大切を超えた特別になる」

 

「…あなたは思った通り、強い人だ。きっと何を言っても無駄なのでしょう」

 

「それはお互い様」

 

結局その日も、二人に進展は無かった。来る日も来る日も同じ事の繰り返し、やがて番組は同じ事をやり続ける二人では無く、ゆきを中心とした番組になっていった。

 

「私もう、今ガチやめたい…!」

 

「ええっ!?」

 

「こんな途中で?」

 

涙目になりながらユキが他の今ガチメンバーに対してそう言う。

 

「何でそんな事言うんだよ!」

 

「… 最近ね、学校の男子とかがからかってくるんだ。お前こういう男が好きなんだーとか…自分の好きって気持ちをみんなに見せるってこんなに怖いことないよ……始まるまで全然わかってなかった。大勢の人に注目されるっていいことばかりじゃない…」

 

「メムも自分のチャンネルでバカやってるからわかる…みんな私のことバカだと思って…まあ実際バカなんだけどぉ」

 

「私も、最近現場とかで良く言われる…クリス君はやめた方が良いって」

 

「それは私も思っております、不知火さん」

 

「本当に辞めちゃうの…?」

 

「俺がいつでも話聞くからさ!ユキがやめるなら俺もやめるからな!」

 

「ノブ君…」

 

涙を流すユキに対してノブユキがそう言って支えようとする。

 

「そんなこと言わないで続けようぜ!」

 

「鷲見さん。熊野さんだけではありません、私でも良ければお話しを聞かせていただいても」

 

「クリス君、私ちょっとクリス君に相談したい事があるな」

 

「あの、不知火さん。足、踏んでます」

 

「ふん」

 

「……私は…」

 

番組はそこで終了する。視聴者達は早速次回はどうなるのか、SNSや記事などで考察を広めていく。そして番組が終わった後、今ガチメンバーは…

 

「オラァ特上盛り合わせ追加じゃーい!思う存分食えよ餓鬼共!」

 

MEMちょの奢りで焼き肉を食いに来ていた。因みにフリルは予定があるらしく来れなかった。後、ユキの番組辞める発言については自分の気持ちを誇張して言っただけであり、本気で辞めるつもりは無いらしい。

 

「………」

 

クリスは皆が楽しそうに焼き肉を食べる中、一人だけある事を考え続けていた。

 

(一体どうすれば、不知火さんは私を諦めるだろう)

 

その問いに対してクリスは、自分が理解している不知火フリルは諦めない。という答えに辿り着く。

 

(いっそのこと付き合う…いえ、それこそありえません。他の人間と変わらぬ感情しか持たぬのに、関係を持つ事は不知火さんに対して失礼でしかない)

 

「ふむ…恋、か…」

 

それは前世でも分からなかった感情。災いは人を選ばない。誰に対しても良くも悪くも平等。故に特別はあり得ない。

 

(それとも…()()()の様になれば、恋に辿り着けるのでしょうか)

 

それは、クリス…そして夜叉が知る限り。ハッキリと特別だと思う記憶。人は知らない歴史にある記録。

 

(あれは…あの存在は、確かに特別だった。私の理解に収まらず、特別よりも特別だと思えた。恋とはアレと似ているのでしょうか?)

 

クリスは己に問い続ける。恋とはああいう出来事だったのだろうかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた時は経ち、暗雲立ち込めるある日の収録。クリスはある事に悩んでいた。

 

「黒川さん、最近焦っていますね」

 

「そうだね。元々リアリティショー向けの性格じゃないとは思ってだけど」

 

出演者の一人である黒川あかねが、最近目立っていない事に関して焦っているのか、無理をしているのである。

 

「あまり思い詰めないで欲しいのですが…」

 

 

クリスの悪い予感は的中した。あかねがユキの顔に勢い余って傷をつけてしまったのである。あかねとユキはその後直ぐに仲直りしたが…

 

「黒川さん、凄く燃えてるね」

 

「………」

 

ネットやSNSではあかねを集中攻撃しており、あかねさんは炎上してから番組に出演出来なくなっていた。クリスはあかねを叩くSNSの呟きをジッと見つめる。

 

「人は、人を傷つけて苦しくならないのでしょうか」

 

クリスは学校の屋上で、隣にいるフリルにそう問いかける。

 

「……それは人によるよ。けど、SNSじゃどれだけ叩いても、叩いた人間がどれだけ苦しんでいるかなんて分からない。だから皆どれだけ叩いても平気だって思ってる。ましてや、黒川さんは謝罪文も投稿しちゃったし」

 

「………黒川さん、大丈夫…では無いでしょうね」

 

「だろうね」

 

「……私は、どうすれば良いのでしょうか」

 

「………」

 

クリスは悲しい表情を浮かべ、それを見てフリルも胸が締め付けられるような感覚に陥る。

 

 

 

 

 

 

 

嵐が近付いてきていた。

 

 

 

 

ご飯

買ってくるね

 

 

 

「クリス、待てって…ああくそ…!」

 

今ガチメンバーのライングループで、あかねがそう言った瞬間、クリスは雨具も身につけずに飛び出して行った。アクアは止めようとしだが全てが遅かった。

 

「はぁっ、はぁっ、黒川さん…!」

 

クリスは激しい雨と風をもろともせずに、あかねを探し回っていた。

 

「何処に…!コンビニ…そうだ、買い物に行ったのなら、あかねさんの自宅近くのコンビニを…!」

 

クリスは走る。タクシーを使うという選択肢は財布を置いてきた時点で無い。ただ己の持つ能力全てを使ってあかねを探す。

 

「何処だ、何処に…!」

 

「───そんなに慌ててどうしたのだ、星野栗栖樽」

 

「っ!!」

 

突然クリスは呼びかけて来た声に足を止める。そして声がした方を向くと、そこには一人の男性が居た。男はクリスと同じで雨を凌ぐ物を持たず、黒いコートを身に纏っていた。

 

「それとも…こう呼んだ方が良いか。夜叉

 

「!あなた…まさか……その目…」

 

クリスは男の月のように輝く瞳をジッと見つめる。

 

「狼…!?」

 

「ふっ、流石だ。夜叉よ、随分と久しぶりだな」

 

狼、と呼ばれた人物を見てクリスは驚き、一瞬思考が停止する。しかし今はそれどころでは無い。

 

「っ、すみません。折角の再会ですが、今人探しを…」

 

「お前の探し人なら、既にお前の兄が見つけている」

 

「!」

 

「慌てすぎだ馬鹿者。夜叉ともあろう者が…さて、そろそろだな」

 

狼がそう呟くと二人の側に車がやって来る。

 

「乗れ、私が呼んだ」

 

「……ありがとうございます」

 

二人が車の後部座席に乗り込むと、車は動き始めた。

 

「………」

 

「取り敢えず頭を乾かせ、ほら、布」

 

「うわっマジで夜叉じゃん久しぶり!!」

 

「あなたは……蛙ですか」

 

「せいか〜い、お久しぶり〜」

 

蛙、と呼ばれた人物がバックミラー越しにクリスにウィンクする。

 

「……あなた達、何故人の街に?というか、まだ生きていたのですか」

 

「まぁな…お前と出会わなければ、この世に残ろうとは思わなかったのだが…我が人の街に居るのはお前に会う為だ。普段は森にいる。まぁ、人間社会に溶け込んでおる者も居るがな、蛙の様に」

 

「いや〜突然呼び出された時は何事かと思ったよ〜」

 

「……後、生きている者は?」

 

「お前の知り合いは皆生きている」

 

「………」

 

「引くな引くな。お前のせいで皆死が怖くなったのだ」

 

「私の?」

 

「ああ…本当に、とんでもない事をしてくれたな…」

 

「……」

 

「なぁ、覚えているか夜叉…群れを作れと言った事」

 

「断りましたよ、私は」

 

「……最近、不知火フリルという雌に随分と好かれたようだな」

 

「狼、何のつもりですか?」

 

「夜叉、突然なのは分かっている。しかし聞いて欲しい…もし、あの雌が、()の様にお主にとって何かを突き動かす存在になれば、お前はどうする?群れを作るか?」

 

狼からの問いかけ。蛙も運転席からクリスがどう答えるのかを非常に気にしていた。それもその筈。彼らにとってクリスとは、夜叉とは最も重要な存在。最も尊敬するただ唯一の人間なのだから。

 

「……分かりません。ですがあり得ませんよ、私が不知火さんに恋をするなど」

 

「ほう、では辰の事はどう説明する?」

 

「不知火さんと辰は違います。辰は存在そのものから理解の外にありました。不知火さんはただの人です」

 

「人だから何でも理解出来ると?それは驕りだぞ、夜叉」

 

車内に緊迫した空気が漂い、狼と夜叉が睨み合う。蛙はバックミラー越しにその様子を見て冷や汗を流していた。

 

「私もあの頃より人との関わりを多く持つようになった。だから断言出来る…人は常に変わり続ける。完全に理解する事は不可能であり、理解した事はいずれ無意味になると…夜叉、私は確信したぞ。今のお主を変えるのは、家族でも我らでも無い…不知火フリルだ」

 

嵐の夜。人は誰も知らないある車内で、クリスの恋物語がいよいよ開幕しようとしていた。

 

 

 




いや誰!?突然何か人外的な何か出て来ちゃったよ!?……けど推しの子って原作でもそんな感じの奴居るし、割と推しの子は超能力とかに寛容だから問題無いな!ヨシ!いや、良くないどうすんのこれ、やらかしたでしょもう(盛大な独り言)
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