災いの子   作:猪のような

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どうも、もうすぐアニメ終わるから原作ちゃんと読んでアニメ終わっても続き書かなきゃなと思っている作者です。皆も東京ブレイド編読みたいよなぁ!?


第九話 特別

 

 

 

 

 

 

「黒川あかね、バチボコに燃えてるわね〜…まああの内容なら当然なんだけど」

 

「こういうのって、人前に出るようになったら慣れるものじゃないの?」

 

クリスが飛び出して行き、アクアも準備をしてそれを追うように出て行った後、ルビーとかなはSNSで黒川あかねを叩く投稿の列を眺めていた。

 

「多少はね。でも個人差があるから慣れない人はずっと慣れないものよ。私だってその日のメンタル次第では本当に死んでやろうかって思う日もある… 耐性のない10代の少女が初めて罵詈雑言の集中放火に晒される心境はあんたには想像もできないでしょうね。それは、()()()()()()()()()()()()ほどよ」

 

かなは冷たい表情でそう言うと、側で聞いていたミヤコがソファから立ち上がる。

 

「恋愛リアリティショー番組は世界各国で人気だけれど今まで50人近くの自殺者を出している。国によっては法律で出演者のカウンセリングを義務付けているほどよ」

 

「50人が死んでるってことはその10倍はギリギリ死ななかったけど死ぬほどの思いをした人がいるって考えた方がいいわよ。リアリティショーは自分自身を曝け出す番組…叩かれるのは作品がどうのじゃなくて自分自身。そりゃキツイわよ…」

 

そう、リアリティショーに台本は無い。自分の考えや行動を映す番組。故に見られるのは作品では無く出演者自身。やり方を間違えば石を投げられてしまう。

 

 

「お兄ちゃん言ってた。嘘は自分を守る最大の手段だって…」

 

「言い得て妙ね。ある程度キャラ作ってたらまだマシなんだけど素の自分で臨めば臨んだだけダメージは深い。SNSは有名人への悪口を可視化。表現の自由と正義の名の下毎日のように誰かが過剰なリンチに遭ってる… みんな自分だけは例外って思いながらしっかり人を追い込んでるのよ。何の気無しな独り言が人を殺すの」

 

「…お兄ちゃんとクリスは平気かな〜」

 

「気をつけても無駄よ〜…」

 

かなはそう言うが、ルビーは不安そうな表情を浮かべる。

 

「無くて七癖有って四十八癖って言うでしょ。誰だって少なからず難はある。燃える要因は必ず持ってるものなんだし……けど…」

 

「どうしたの?」

 

「クリス、アイツはちょっと異常よ」

 

「クリスが?」

 

かなは今ガチでもクリスの様子と普段のクリスの様子を脳内で比べる。

 

「アンタ、今ガチで見るクリスの事、どう見える?」

 

「どうって、普段と変わらない……あ」

 

「そう、アイツも黒川あかねと一緒で素の自分を出している人間なのよ。それにアイツ、不知火フリルへの対応がアレだったせいでちょっと炎上したでしょ。それなのに…」

 

「クリス、全然気にしてなかった…」

 

「メンタルが異常なのよ。苺プロに所属してからアイツの事も少しは分かって来た。どんな人にも誠実で純粋、馬鹿みたい真面目なのよ…けどそういう人間は基本的に人からの悪意に弱いものよ…なのに…」

 

「矛盾している。でしょう」

 

かなの疑問にミヤコが答える。

 

「まだ高校1年だけど、達観しているのよ。物の見方が普通とは違う。どんな事にも強く意識を向けているのに、あらゆる事にあっさりしているのよ。アレは例外中の例外ね」

 

「不知火フリルも言ってたよ、クリスはどんな人にも寄り添う事が出来る慈愛と寛容さがあるって」

 

「何アイツこの世に生まれた聖人?神の祝福とか貰ってるの?」

 

「……身体能力の方も見るとあながち否定出来ないわね…ん?」

 

クリスについて話しているとミヤコのスマホから着信音が鳴り、ミヤコは電話に出る。

 

「はい…そうです……え、本当ですか!?はい、直ぐに…」

 

「どうかしました、社長?」

 

「アクアが…警察のご厄介になったみたい」

 

「「ええっ!?」」

 

 

 

 

 

 

「黒川さんっ!!」

 

「来たかクリスって…めっちゃ濡れてるじゃねーか…」

 

嵐の中あかねを探し回っていたクリスは全身がびしょ濡れだった。既にクリス以外の今ガチメンバーは集まっており、

 

「良かった……くっ、己の不甲斐無さを恥じるばかりです…」

 

「お前は…はぁ、取り敢えずあかねは無事なんだから、あまり思い詰めるなよ」

 

「心配かけてごめんね、クリス君…」

 

「いえ、無事ならばそれで……それで、これからどうするのですか?」

 

「ああ、取り敢えずあかねはまだ番組に出たいってよ。俺行くとこあるから」

 

アクアはそう言ってその場を去って行った。するとクリスにフリルが寄って来る。

 

「クリス君、大丈夫?」

 

「不知火さん。私は別になんとも…ふぅ、早く着替えないとですね………」

 

クリスはそう言うとフリルをジッと見つめる。するとフリルもその視線に気付き、クリスと視線を交わす。

 

「どうかした?」

 

「あ、いえ…」

 

(狼…本当にあなたは思っているのですか?不知火さんが、私の理解を超え、初めてを与える存在だと)

 

 

 

 

 

 

「実際さ〜、狼はガチで不知火フリルが夜叉を変えると思ってるの?」

 

クリスを送り届け、二人、いや二匹だけになった車内で蛙が運転席から狼にそう問う。狼は車窓に当たる雨の模様を見ながら答える。

 

「普通ならあり得ないだろうな。夜叉も随分と今の世に馴染んでいる。理解力、適応力に関してアレを上回るのはそういない筈だ…辰の様に常識から大きく外れた存在でなければ難しいだろう」

 

「じゃあ何で?」

 

「───村を焼き、城を落とし、あらゆる強者を斬ってきた夜叉。その強さ、心のあり方は我ら自然に生きる者からすれば拍手喝采を送るほどだ」

 

「まぁ、そうだね。挙句の果てには人ならざるモノまで斬り伏せた。神々が関わってるんじゃないかって思った時もあるよ」

 

「生まれ変わった事も含め、何かあるとは私は確信しているがな……夜叉の剣技は少しも衰えていない…いや、むしろ更に高みへ至っているようにすら感じる」

 

「辰が聞いたら喜びのあまり神社ぶっ壊しそうだね…」

 

「ああ…夜叉は間違いなく人類において最も優れた強さを持つ人間だ…しかし、蛙よ、こう思った事は無いか?」

 

「何?」

 

「夜叉が斬ろうと思っても斬れない()()がいたら?」

 

「あり得ないでしょ。昔はともかく、今の人の世でアレが斬れない人間がいる筈がない」

 

「ああ、だがもしかしたら…不知火フリルこそが、その人間なのかもしれん」

 

「随分と買ってるね〜…ま、そこまで言うなら期待させてもらおうかな。不知火フリル、ね…因みに適当に走らせてるけど何処で降ろせばいい?」

 

「今日は泊めろ」

 

「何だコイツ」

 

そう言いながらも自宅に向かって運転し始めた蛙を見た狼はフッと笑い、再び車窓の雨模様に目を向ける。

 

(愛を知らぬ夜叉よ、近い内に分かるだろう。不知火フリルは…お前にとっての夜叉だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あかねの自殺騒動から数日。アクアによって騒動が世に知れ渡り、世間からは様々な意見が飛び交っていた。

 

「兄上、何をするつもりなのですか?」

 

「あかねが叩かれているのは番組サイドがあかねを悪役に見えるような編集、演出をしたからだ。これを覆すには()()()()()()()()をやる必要がある」

 

あかねの自殺騒動のせいでSNSは騒いでいるのはごく僅かな割合であり、大きな割合を占めているのは叩くべきか擁護すべきか悩み、答えを求めている沈黙の人々(サイレントマジョリティ)。そこに普段から仲の良い今ガチメンバーの様子を映した動画を見せれば…

 

「観衆は一斉にあかねを擁護する方に付く。良いね、面白そう」

 

「はい。あかねさんの為にも是非やりましょう!では兄上、私達に出来る事はありますか?」

 

「出来る事…?動画編集は俺とMEMちょでやるし、楽曲はケンゴが用意するし、後は俺がDに直談判して映像データを使わせてもらうだけだしな…」

 

「そうですか…」

 

動画を作る為に何かしたかったクリスだが、アクアからそう言われてしまい少し落ち込むと、フリルが隣で少し考えて言う。

 

「待って、それなら次いでにもう一つしよう」

 

「もう一つ?」

 

「クリス君も炎上してるでしょ」

 

「「……あ〜…」」

 

アクアとクリスがそう言えばそうだったなぁと言った様子で思い出す。そう、クリスもプチ炎上しているのだ。今はあかねの炎上でその話題はもう殆ど上がっていないが、依然としてクリスの視聴者からの評判は悪いままである。

 

「前々から思ってたけど、クリス君も番組サイドの編集で冷たい人間に見えるように演出されてる。このままじゃ良くない」

 

「いえ、私は別にそのままでも…」

 

「よ く な い」

 

「あ、はい」

 

フリルからの圧にこれは何を言っても無駄だと悟ったクリスとアクア。

 

「分かった…確かに弟が悪者にされてんのは気分悪いし、次いでにそれもやるか」

 

「よし、決まりだね。これ、私が撮ったクリス君のオフショット」

 

「お、サンキュ……いやめちゃくちゃあるじゃねーか!?

 

こうして、あかねとクリスの印象を良くするための本当のリアリティーショーを映した動画作りが始まったのであった。

 

「うわ、この前警察署にびしょ濡れで来た時のクリスの写真もあるぞ…」

 

「いつの間に…!?」

 

「水も滴る良い男だったから…」

 

余談だが、後にアクアが手に入れた映像データの中にあったクリスのオフショットより、フリルが撮ったオフショットの方が多かったという。

 

 

 

 

 

 

 

「あー違う違う!そこ長尺の方が素人が頑張って作った感出るって!」

 

「ここで俺の曲っしょ!」

 

「バーンって感じでいこうぜ!」

 

「うるせーな…!」

 

動画制作が始まり、あかねと多忙なフリル以外の今ガチメンバーはMEMちょの自宅で動画制作に勤しんでいた。

 

「皆様、お菓子など買ってきましたよ。はい兄上、頼まれていた飲み物です」

 

「おう、助かる…」

 

「あまり無理しないでくださいね…」

 

「わぁ〜お菓子だ〜!」

 

「お、これ貰い!」

 

「じゃあ俺これ」

 

「皆さん慌てないでくださいね、沢山買って来たので」

 

「「「「は〜い」」」」

 

「ホント仲良いなお前ら…」

 

そんなこんなで皆で(主にアクア)が頑張りながら動画を作り続け、数日後…

 

「うぅぅぅぅ…」

 

アクアは額に冷えピタを貼りながら死にかけていた。するとピンポーンという音が鳴る。

 

「お、フリルちゃん来たかな?クリス君、ごめんけどちょっと見てきて!」

 

「分かりました」

 

「ほら監督エンコード終わったよ。投稿しちゃうから」

 

「クソ…いいスペックのマシン使ってるな…もう少し寝かせろ…」

 

アクアがフラフラと立ち上がり、パソコンの前まで移動する。

 

「どんくらい伸びるかな、最低でも5000は行って欲しいよねぇ」

 

「それも普通なら結構難しいけど…フリルとクリス君がいるから行けるとは思うけどなぁ…最初の1分で100リツイートくらいいけば最終的には結構なバズになると思う」

 

「よし、100な!」

 

「まぁやるだけやったんだ!さぁショーダウンといこうぜ!」

 

「お前が一番何もやってねーだろ」

 

「リーダー面が酷いね」

 

「皆さん、不知火さんがいらっしゃいましたよ」

 

「遅くなってごめん。もう投稿した?」

 

ノブユキに突っ込んでいるとクリスがフリルを連れて戻って来た。

 

「フリル!今から投稿するとこだよ!」

 

皆でパソコンの前に集まり、そして遂にMEMちょが投稿ボタンを押す。全員が緊張した様子で画面を見つめる。そして…

 

 

 

 

「いける!これ行ける、キタァァァァァァァ!!」

 

動画は、狙い通りにバズり始めたのであった。

 

「「「「やったぁぁぁぁ!!」」」」

 

『大丈夫、焦っちゃったんだよね』

 

『ごめん、雑誌撮影もあるのに…!』

 

『大丈夫…あかねは私の事嫌い?』

 

『嫌いじゃない!強くて、優しくて、好き…』

 

『私も、努力家で一生懸命なあかねが好き。だから怒らないよ』

 

少し動画が進むと、次はあかねとクリスが映った場面になる。それはあかねが細剣を使った演技の練習にクリスが協力していた時の映像だった。

 

『どう、かな?』

 

『はい。先程よりも早くなっています最も重要な速さについてはこれで申し分ありません。しっかり呼吸とタイミング、足の動きを合わせれば問題はありません』

 

『そっか、良かった…』

 

『…しっかり積み重ねてきたのが分かります。決して付け焼き刃では無いと確信しました。ですので胸を張ってください……さて、次は実際に人に向かって振って距離感を確かめましょう」

 

『え、く、クリス君に振るの?』

 

『当然です。その為に私も竹刀を持って来たのですから。安心してください、全て防ぎますから。もし当たったとしたら逆に周りに自慢した方が良いですよ。私に一太刀入れた人は誰もいませんからね』

 

『け、けど…もう充分見てもらったし…』

 

『そのような事はお気になさらず。今日だけではありません。次もその次も、私に出来る事なら協力させてください』

 

『クリス君…分かった、じゃあ、いくね』

 

「……良いなぁ…私もこういうの使う役何か来ないかな」

 

「その時は必要であれば私はいくらでも付き合いますよ」

 

その後も動画は続き、今ガチメンバー全員が仲が良いと分かる映像が流されて行った。こうして、狙い通りにあかねとクリスの評判が良い方向に向き始めたのであった。

 

『今ガチメンバー仲良い…』

 

『多分このあかねバッシングはゆきも望んでないんだろうな』

 

『あかね応援したくなってきたわ、頑張れ!』

 

『クリスって誰にでも滅茶苦茶優しいんだな』

 

『フリルに対して他と対応が変わらないのは誰に対しても最大限の親愛を持って接してたからなんだ…』

 

『冷たい人間じゃなくて温かい人間だった…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして動画が投稿されて暫く。あかねは番組に復帰を果たすのだった。そして……あかねが復帰した収録日、今ガチの流れを大きく変える事態が発生するのだった。

 

「本日よりあかねちゃん復帰になります」

 

「皆さんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。頑張りでお返ししたいと思っています。よろしくお願いします!」

 

パチパチパチパチ…

 

「それではスタンバイお願いしまーす!」

 

女性スタッフの声で他のスタッフ達も撮影準備を始める。

 

「行くぞ」

 

「うん……」

 

あかねの前に出て教室に入るアクアの背中をあかねは少し見つめると、目を閉じて…

 

「そうだね()()()

 

「「っ!?」」

 

あかねがそうアクアに言った。ただ一言、しかしその言葉に強く反応した存在が二人いる。アクアは振り返ってあかねを見る。

 

「ふぁっ…眠いんだよね収録早すぎてさー…あ、もうカメラ回ってる?」

 

そう言ったあかねの両目は、まるでアイのような星の輝きを思わせるモノへと変貌していた。アクアはそのあかねを見て絶句し…

 

「……」

 

「……クリス君?」

 

背後からその様子を見ていたクリスも、目を見開いてあかねを見ていた。フリルはそのクリスの様子を見て…

 

(…不味い、明らかに今までと反応が違う。どうして?)

 

普段とは違うクリスの様子に戸惑いつつ、どうしたものかと悩んでいた。明らかにキャラが変わったあかねは、アクアに今日は一緒に居ようと誘い、アクアもそれを受けた。

 

「聞いたよ。あの動画何日も徹夜してアクアが作ってくれたって。嬉しかったな。ありがとアクア」

 

「うん…」

 

教室の窓側の方で話す二人。そんな二人を廊下側から観察する何人かの人物達がいた。

 

「あかねがなんか変なのはもう分かったけど、アクたんもなんか変じゃない…?」

 

「ん」

 

MEMちょがそう言うと、ユキも確かにあかねにばかり目が行っていたが、アクアも良く見るといつもと違う感じがした。

 

「それだけじゃない」

 

するとフリルが二人の側に来てそう言う。

 

「あ、フリル」

 

「それだけじゃないって?」

 

「見て」

 

フリルが視線を動かし、二人もそれを追っていくと、クリスがアクアとあかねをジッと見つめて立っている姿があった。

 

「クリス君、さっきからずっとあかねの事気にしてる」

 

「「ええっ!?」」

 

あの今まで絶対的な平等でやってきたクリスが、今あかねに何時もとは違う眼差しを向けていることにMEMちょとユキは驚く。

 

「や、やっぱり兄弟だから好みが同じとか…!?」

 

「いや、けどクリス君って好きなタイプとか無いって話だったじゃん…!」

 

「そういえばあかねのキャラが変わった理由、知ってる?」

 

「ああ、それは…」

 

あかねのキャラが変わった理由は、これから番組に出る上で何かしらキャラを作った方が良いと話し合った結果、その場にいた唯一の男性であるアクアの理想の女性象を聞き出し、それがB小町のアイに近い感じで、あかねがやってみると言ったらしい。

 

「なるほど、そういう訳でしたか」

 

「うわっ、クリス君!?」

 

二人がフリルに説明していると、いつの間にかクリスも来て説明を聞いていた。

 

「大分驚きましたが、理由さえ分かればもう大丈夫です…いえ、しかしあそこまでアイさんを真似出来るとは…」

 

「クリス君は、アイと面識があるの?」

 

「はい、私達は社長夫妻の子供で、小さい時に何度か会っています…兄上も同じですから、それは驚かれますよ…」

 

「ふーん…ちょっと確かめてみようよ……アクたん、そこのポーチ取ってー!」

 

「今考え事してる。自分で取って」

 

「それくらい良いじゃん。取ってあげなよ」

 

「…うん……はい」

 

「ほら!あかねにだけ何か素直!!」

 

MEMちょから頼まれた時は速攻で断ったが、あかねから頼まれた時は素直に聞いたアクアを見てMEMちょが指を差しながらそう言う。

 

「マジでアクたんああいう感じが好きなんだ」

 

「あかねきっちり仕上げてきたなぁ…」

 

「流石は劇団ララライの若手天才役者」

 

「ええ、流石に私も驚かされました」

 

「別にそんなんじゃねぇ」

 

四人がそれぞれの反応を見せているとアクアは今のあかねに惹かれている事を否定する。するとMEMちょとユキがあかねの背後に回り…

 

「ほらほら好きなんか〜?」

 

「こういうあかねが好きなんか〜?」

 

そう言ってあかねを押してアクアに近づける。

 

「やめろ…」

 

「「ん〜?」」

 

「だから、マジでやめろ…!」

 

アクアは顔を赤くして、手で顔を隠しながらそう言った。

 

「いや反応、ガチじゃん…」

 

「珍しい兄上が見れましたね…」

 

(写真撮っとこ)

 

アクアはその後逃げるように教室から出て行った。

 

「あかねどうする!?」

 

「これガチでガチのやつあるよ!?」

 

「「どうするどうする!?」」

 

「ど、どうしたらいいのかなぁ…」

 

「「あ、いつものあかねに戻っちゃった!」」

 

「本当に凄いですね…」

 

クリスがアクアを堕とすことに盛り上がっている三人を眺めていると、フリルはその横顔をジッと見る。

 

(…良かった、さっきみたいな目はしてない…けど、これはもう悠長にはしてられないかな…)

 

先程まであかねがクリスの特別になるかもしれないと思い内心焦っていたフリルだが、取り敢えずそれは無くなったと安堵する。しかし同時に早くしなければクリスの初めての特別が誰かに取られてしまうかもしれないと危機感を覚えた。そして…

 

「クリス君、ちょっと良い?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「私と……少し立ち会ってほしい」

 

「!!」

 

クリスにとって、あまり想像していなかった言葉が、フリルから飛び出して来た。そしてそれが、二人の関係を大きく変える引き金となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって現場である学校の体育館。二人は剣道着に着替え、防具を身に付けて竹刀を手にしていた。

 

「今日は本当に意外な事が続きます。まさか、不知火さんがいつの間にか初段をお持ちになっていたとは」

 

「最近だけどね」

 

「ですが日々多忙な事を考えれば、今ガチが始まってからの短期間であろうと初段を得た事は間違いなく凄い事でしょう。因みに一つ伺いたいのですが…」

 

「何?」

 

「何故貸していただいた道着や防具が私に丁度合う大きさなのでしょう…?」

 

「……聞きたい?」

 

「いえ、やはりやめておきます…勝敗に関わりなく、一本分だけ、でしたね」

 

「うん。じゃあ、始めようか」

 

二人は少し離れた場所から向き合い、礼をすると近付きながら竹刀を互いに向け、近づいたところで止まり、腰を下ろす。

 

「えっと…これもう言っていいのか?」

 

「多分そうなんじゃね?」

 

「じゃあ、始め!」

 

試合開始の合図役で呼ばれたノブユキのその言葉と同時に二人が動き始めた。

 

「ひえ〜、すっご〜…」

 

二人が竹刀を振り、大声を上げる様子を他の今ガチメンバーが眺めていた。因みにあかねは現在素の状態なのでアクアも落ち着いている。

 

「アクたん、フリルは初段って言ってだけど、クリス君って何段なの?」

 

「クリスは二段だ」

 

「へ〜…天才って言われてるからもっと上かと思ってた」

 

「確かに、クリスはもっと上の段位でもおかしくない実力を持ってるけど…剣道は次の段を取るのに時間が必要だから、アイツは今二段に居るんだよ」

 

「へ〜…何か冒険の最初のステージに滅茶苦茶強い敵が居るみたいだな」

 

「あながち間違いじゃないだろ」

 

「けど、不知火さん結構良い試合してね?」

 

ケンゴがそう言ってメンバーが再び二人の試合に注目すると、確かにフリルが若干押されてる印象を受けるが、一本を取られてはいなかった。

 

「…いや、嘘だろ…?俺も剣道に詳しい訳じゃないからあんま分かんないけど…俺の知る限り、クリスの試合って何時も10秒も掛からないぞ?」

 

「え、けど、もう始まってから2分くらい経つよ?」

 

「何、フリルもしかしてクリス君と同じで天才説?」

 

「歌って踊れて剣道も出来る系マルチタレントなの?」

 

「だとしたらマジで化け物だろ…一体どうなってんだ…?」

 

 

 

 

(おかしい)

 

アクア達が感じていた異常は、勿論クリスも感じていた…いや、寧ろアクア達よりも鮮明に目の前の不知火フリルという少女に異常を感じていた。

 

(筋は感じられます。ですがそれまで、初段の腕前にしか感じられない…剣速、鋭さ、技術、全てにおいて私が上。不知火さんより強い者達と幾度もなく立ち合い、その全てに勝利した、だというのに…!)

 

クリスが竹刀を振るうとフリルはそれに対応して受け止める。

 

(───()()()()()()!有効打を与えられない。何故!?)

 

クリスはあらゆる攻め方を試した。しかしフリルはその全てを凌いでいる。

 

(攻めてこないのは防御に手一杯だからでしょうか、いやだとしても、おかしい。いま、不知火さんは、私の理解を超えて来ている!?)

 

試合が始まる直前までクリスはフリルとの立ち合いは10秒以内で方が付くと思っていた。しかし、フリルから一本を取ると頭の中でイメージされていた一太刀を防がれた時からクリスの中での不知火フリルという存在が理解出来なくなり始めていた。

 

(時間が経てば経つほど、不知火さんへの理解が薄れていく。あり得ない、私が、夜叉が、人を理解出来ない?)

 

初めての経験だった。クリスにとっても、夜叉にとっても、今までこうして立ち会い、竹刀を交えるほどクリスは立ち会った人間の事を理解していった。しかし今は逆、竹刀を交えれば交えるほど、不知火フリルという存在の事が分からなくなる。

 

(何故?先ほどから私の動きが全て分かっているようで…まるで、不知火さんの事を知ろうと進むほど不知火さんも先に待ち構えているようで…不知火さんが()()()()()()()()…!)

 

─── 今のお主を変えるのは、家族でも我らでも無い…不知火フリルだ。

 

ピッピッピー!!

 

クリスの中で狼に言われた言葉が響いた瞬間、ノブユキが試合開始と同時に開始していたタイマーのアラームが体育館に鳴り響く。二人は試合終了の礼をする、すると…

 

「はぁっ、はぁっ…!!」

 

フリルが兜を素早く外すと、肩で息をする声が聞こえ始める。

 

「フリル、大丈夫!?」

 

「ほら、水!」

 

「はぁっ、ありがとう……ゴクッゴクッ…ぷはっ…」

 

たった五分間、しかしまるで長距離マラソンを走りきったかのようにフリルは疲れ果てていた。対してクリスは余裕そうな様子で兜を取ると…

 

「!……ふふっ」

 

「フリルが笑った!?」

 

「キツすぎておかしくなっちゃった!?」

 

今まで一切笑ってこなかったフリルが初めて、このタイミングで笑ったのを見て今ガチメンバー達が更に心配する。

 

「いや、大丈夫……ちょっと嬉しくなっただけ…」

 

「嬉しくなった?」

 

「うん……やっと、フラグ立ったなって」

 

「!……嘘だろ…」

 

フリルのその言葉にアクアは何か勘付き、バッとフリルの視線の先…クリスの方を見てそう呟き、他の今ガチメンバーもそれを追うようにクリスを見ると、全員が驚愕した。

 

「そういう顔、ずっと見たかった」

 

フリルにそう言われたクリスの表情は今までの大人のような雰囲気ではなく、年相応の笑みを浮かべていて、目を見開いて少し興奮したようにも感じられた。そして…

 

 

 

 

 

 

 

その瞳には、不知火フリル()()映っていなかった。

 

 

 

 

 




こんな展開しか書けない作者を罵るが良いさ。けどマジでこれしか道筋無いと思ったんですごめんなさい!あ、感想と高評価お願いします。
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