ウマ娘、タキオンとカフェの妄想です。
二次創作初心者なので、色々拙いところもありますが、許容出来る方のみお読みいただければと思います。
今後の二次創作のためのキャラ解像度やエミュを高めるための練習がてら書いたものですので、その点ご了承下さい。
ジトジトとした湿気が充満した部屋に、ふくよかな芳香が漂っている。
マンハッタンカフェは、淹れたばかりのコーヒーを啜り、チラリと窓の外へと目をやった。
外は、室内の湿気によく似合う、どんより曇った空からジメジメと雨が降り注いでいる。
今日はコースでトレーニングの予定だったのですが、残念ですね。
ぼんやりとそんなことを考えつつも、急遽休みとなった事はしっかりと利用し、手に入れたばかりの豆から淹れたコーヒーを、アンティーク調のインテリアに囲まれた、彼女専用のスペースでゆったりと楽しんでいた。
暫く、静かな室内で一人リラックスしていたカフェだったが、彼女のいるスペースとは反対側にある扉が開かれる音と共に、その静寂は破られることとなった。
「やあやあ、カフェ。君も休養かい?」
トレセン学園の制服の上に、白衣を着こんだ彼女は、アグネスタキオン、カフェとこの部屋を共有しているウマ娘の研究者、もとい問題児である。
「ええ...貴方の方は..今日は、屋内でトレーニングと...言っていましたよね」
「今日は気分が乗らなくてね。予定を変更したのさ」
「そうですか」
そう言いながらカフェは、騒がしくなりますね。と残念に思っていたのだが、どうやらそれが表情にも出ていたらしい。
「そう露骨に嫌そうな顔をしないでくれたまえよ」
タキオンに笑いながらそう指摘される。
「日頃の行いのせいです...」
コーヒーカップに口を付けながら、カフェはそうやり返した。
「はて。何のことだろうねえ」
言いながらタキオンは、部屋のもう半分、ビーカーやフラスコ、書類の束が雑多に置かれ、何に使うのかという機械が幾つも鎮座する。そんな、彼女専用スペースに、前に立ち上がった時のまま放置していたのだろう、机から少し離れた位置で主を待っていた椅子に腰掛け、その近くに設置されているPCへと向かい合った。
コンピュータを起動させた彼女は、画面とにらめっこしながら、キーボードを打ち込み始める。
カタカタカタと、彼女の指が動くのに合わせて、キーボードの音が奏でられ、静かな部屋に響く。
どうやら、今日は絡んで来なさそうですね。
タキオンの様子を見ていたカフェは、そう判断し、空になったカップを持って立ち上がった。
そうして、二杯目のコーヒーをカップへと注ぎ入れ、再びソファに腰を降ろす。
その後、また暫くの間、部屋に存在する音は、外から聞こえ続ける雨音と、タキオンの奏でるキーボード音、そして時折カフェがコーヒーを啜る音だけとなった。
「........」
カップを口へと運びながら、カフェは、ディスプレイを睨み付けるようにし、キーボードを操り続けるタキオンの様子を伺う。
いつも、平気で徹夜をしたり、何時間も実験し通すことだってよくあること。
今日みたいに、トレーニングを気分が乗らないとサボって研究することも、よくあること。
でも、今日はなんだか違和感を感じる。何かを焦っている様な、切羽詰まった表情をしている、気がする。
カフェがそんなことを考えていると、どうやらタキオンは、彼女の視線に気が付いたようで、はたと目を合わせた。
「おや?どうしたんだい?そんなに私を見つめて。ひょっとして私に見惚れてしまったのかな?」
ディスプレイを睨み付けていた顔とは打って変わったニヤニヤとした不敵な笑みを浮かべながら、タキオンが言う。
「違います...」
カフェは咄嗟に目を逸らしたが、時既に遅しであった。
「誤魔化さなくてもいいんだよカフェ~。あんなにも情熱的な視線を向けてくれていたじゃあないか」
椅子を立ち上がりカフェの方へと寄っていきながら、タキオンは嬉々として笑った。
それに対して、カフェは、眉を潜めながら「違います」とか、「そんなわけないでしょう」といったセリフを適当な合いの手にしながら、タキオンをあしらう。
そんなやり取りを続けていると、ピコンと机に置いてあったカフェのスマホが音を立てた。
ディスプレイに光が点り、そこにメッセージの通知が現れる。
『トレーナーさん:ちょっと相談したいことがあるのだけれど、今からトレーナー室に来れますか?』
その通知を目にしたカフェは、丁度良かったとばかりに、スマホを手に取り、『直ぐに行きます』と返信をする。
そうして、二杯目もすっかり空になっていたカップを再び手に取り、彼女はスクッと立ち上がった。
「トレーナーさんに呼ばれたので..私はこれで..」
言いながら彼女は、カップなど、コーヒーブレイクに使った物々を片付けていく。
「おやおや釣れないねぇ。私の顔をあれだけまじまじと見つめていたのはなんだったんだい?あまつさえ私を放って浮気だなんて」
まだ続けるタキオンのことを殆ど無視するカフェだったが、「本当に心配した私がバカだった」と脳内で思ったつもりであった言葉を小さく口にしてしまう。
そして、タキオンは耳聡く、それを聞き逃すことはなかった。
「心配?ああ、昨夜ここで徹夜していたことかな?それなら問題ないさ。今日はちゃんと寝るつもりだし、こうして問題なく活動出来ている」
「それは..初耳なのですが...あと..今のは、聞かなかったことにしてください..」
カフェは、しまった。と、思いつつもこれ以上絡まれないように早めに終わらそうと片付けは続けていく。
「では、一体何のことなんだい?最近他に何かあったかな?」
タキオンは全く心当たりが無さそうに首を傾ける。
別に話さなくても良いとは思ったが、片付けも終わり、もういつでも部屋を去れる体勢となっていたこともあり、カフェは口を開いた。
「いつもと...顔色..表情が、違った気がしたので」
何かに追われているような、と付け加えようとしたカフェだったが、タキオンの顔から一瞬、笑みが消えたことに気が付き、何故だかその言葉を呑み込んでしまった。
しかし、それも一瞬のことで、気付く人の方が少ないであろうくらいの瞬間に、再びいつもの不敵な笑みを顔に浮かべ直し、タキオンは笑った。
「くっくっく。私の顔色をつぶさに観察していた、というわけかい?やはり、情熱的じゃないか。素直じゃないねえカフェも」
はあ。と小さくため息を付き、カフェは部屋の出口へと歩み出した。
「それでは、私はこれで失礼しますね」
そう挨拶し、彼女は扉の外へと消えていく。
一人、綺麗に半分で世界が分けられた二人の部屋の真ん中に残されたタキオンは、ポツリと呟いた。
「表情..ね。そんなに顔に出ていたかな...」
タキオンの呟きは、雨音に囲まれた静かな部屋へと溶けていき、直ぐに外を降り注ぐ雨音だけが部屋を支配する。
そして再び、タキオンは自身のPCに向き合い、キーボードを操り始めるのだった。
読んで頂いた方々、ありがとうございました。