コードギアスのキャラクターであるモニカの弟に転生したミレイ会長推しのお話です。

ロスストのモニモニに触発されて勢いで書きました。後悔はない。

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モニカの弟に転生した俺はどうすればいいんですかね

 コードギアス、というアニメを知っている人はいるだろうか。沢山いることだろう。

 では、次にそのコードギアスのキャラで好きなキャラを思い浮かべて欲しい。うん、そうだね、きっとルルーシュとかカレンとかC.Cとか、名前を聞けばすぐに顔を思い浮かべられるようなキャラを想像したことだろう。ちなみに僕はミレイ会長が好きです。

 

 では、モニカ・クルシェフスキーというキャラを、あなたはご存知だろうか。

 もしかしたら知ってる人もいるかもしれない。前世だとキャラデザの良さでそこそこ騒がれてたし。

 

 ナイツオブラウンズの一人であり、皇帝直属の騎士。

 R2放送前に先んじてキャラデザとプロフィールが公開されるという大々的な扱い。

 

────そんな彼女の本編での登場時間は約40秒。台詞も数える程しか、ない。

 

 テレビ版と映画しか観てない自分はよく知らないが、コミカライズとソシャゲの方である程度掘り下げはされたらしいが、本編の活躍だけ見るとキャラデザに恵まれたモブキャラと言っていいほど、何もしてないキャラ。それがモニカというキャラクターである。

 

 さて、そんなキャラクターの紹介をなぜ、いま俺がしているかを説明しよう。何故かと言うと────

 

「アルバート? ここにいたの?」

 

 木漏れ日の中、ぼーっと物思いにふけっていたつい最近2歳になったばかりのアルバート・クルシェフスキーこと俺の顔を、金髪の少女が温かい笑顔で覗き込んでいた。

 

「あねうえ、こんにちわ」

 

「ふふっ、こんにちは。 アルバート。 一人でどっか行くとまたおかあさまが心配しちゃうわよ?」

 

「おそとがはれてたから、おさんぽにいきたかったんです。 ごめんなさい」

 

 俺はぺこりと頭を下げた────が、制御が上手くいかずに草っ原の上で前転してしまった。あねうえ────まだ5歳のモニカ・クルシェフスキーはそんな俺の間抜けな姿を見てしばらくこころから可笑しそうに笑った後に、俺を抱っこした。

 

「おさんぽはまたこんどね。おかあさまが心配してるからお屋敷に帰らなくっちゃ」

 

 そう言って彼女は俺を半ば引きずる様な感じで、屋敷まで連れて行った。ここまで書けば、なぜモニカというキャラクターについて説明をしたかお分かりであろう。

 

────モニカ・クルシェフスキー。彼女はコードギアス世界に転生した俺の姉なのだ。

 

 

 アニメやゲームの世界に転生というのは、まぁある意味でネット小説の華である。

 オリジナル、二次創作問わずによくある展開のひとつだ。そんな物語の主人公のような身の上に、まさかこの俺が置かれるとは思ってもみなかった。

 

 ぶっちゃけ、転生したこと自体はラッキーと思ってる。

 問題は、だ。転生先がモブキャラの命が文字通り死ぬほど軽いコードギアス世界であるということと、よく知らねぇモブキャラの弟だって言うことだ。

 

 彼女を好きだというファンには大変申し訳ないが、俺としてはモニカ・クルシェフスキーになんの愛着もない。

 だってさ、本編でのモニカとかまじで出番ないもの。なんか気がついたらスザクに瞬殺されてた程度の印象しかないよ、俺。

 

 友達にモニカ好きな奴がいたから、プロフィールはなんとなくは知ってる。上述の総登場時間もその友達に教えてもらったし。

 

 ぶっちゃけ、転生先が選べるならミレイ先輩の弟として生まれたかったね。ほぼモブキャラの弟とか、もうまじで完全にモブキャラでしかないじゃん。コードギアスでのモブキャラの扱いを考えると未来は暗澹としてると断言できるわ最悪だわ。

 

 当のモニカちゃん5歳は弟が可愛くて仕方ないのか、やたらと構ってくるが、俺は彼女に心を開くつもりは無い。

 俺はどうにかしてこの家を出て、本編のゴタゴタからできる限りの距離を置くつもりなのだ。独り立ちをできる年齢になったら早々に家出してやるわ。

 

 それまで、せいぜいお前の弟として、可愛く振舞ってやるよ!モニカお姉ちゃん!

 

 俺は心の中でニヤリと笑いながら、うんしょうんしょと甲斐甲斐しく弟を運ぶモニカを見上げてやった。

 

 

「お姉様! 今日は遊んでくれないの!?約束したじゃん!!!!うそつきぃーーーー!!!」

 

 4歳の俺は、ギャン泣きしていた。心の底から、ギャン泣きしていた。

 

「もうアルバートったら……今日はピアノのお稽古があるって言ってたじゃない」

 

「やだやだやだ!! お姉様と遊ぶんだー!!閃光のマリアンヌごっこやるんだーー!!!」

 

「ふふっ。 アルバートはマリアンヌ様が本当に大好きね。 でも今日はどうしてもお稽古に行かなきゃいけないの。 ごめんなさい」

 

「うわーーーん!!!」

 

 困り果てる世界最高のお姉様ことモニカのまえで、俺は床で駄々を捏ねすぎて、独楽のようにクルクル回転した。床の摩擦ヤバすぎだろ。

 いや、そんなことはどうでもいい。お姉様と遊べないのは死活問題だ。この世に神はいないのか?

 

「泣かないで、アルバート。ピアノのお稽古が終わったらたっぷり遊びましょう? それともわたしの言うことは聞きたくない…?」

 

 お姉ちゃんのこと、嫌いになっちゃった…?彼女はどこか悲しそうな表情で首を傾げた。

 刹那、俺の頭に衝撃が走った。そう、まるで絶対遵守の力が行使された時のような、そんな感覚。

 

「いえす、まいしすたー! アルバート、がんばってまってる!」

 

「えっ、あ、うん。 わかってくれたならいいわ。 お利口ね、アルバート」

 

 俺は立ち上がって敬礼の真似事をした。突然の豹変にお姉様は少し驚いたように目をぱちくりさせて、すぐに微笑んで俺の頭を撫でてくれた。

 使用人に連れられピアノのお稽古に向かうモニカお姉様に精一杯手を振りながら、俺は心の中でこう叫んだ。

 

────やっぱりモニカお姉様は最高だぜ!!!!

 

 ……うん、言い訳はしない。わかってるんだ、俺も。

 いやさぁ、モブキャラなんてバカにしてたさ。がねぇ、いやぁ、モニカお姉様尊すぎて感動したぁ。 いや本当にまじで。

 

 ただでさえモニカお姉様は最高なのに、弟という唯一無二の立場で彼女から愛を注がれて正気でいられようか。否、いられない。

 

 昔の俺は独り立ちできる年齢になればこの家から早々に出て行ってやるなんて言ってたのが、とても愚かしく思えてくる。

 なんで俺から望んでお姉様の元から離れなければいけないのか。アホか、過去の俺。

 

 モニカお姉様の素晴らしさ、そして神聖さを知った今、あの目標は完全に変更された。

 

『本編前も、本編中も、そして本編終了後もモニカお姉様と一緒にずっと幸せに暮らす!!!!!!』

 

 これが俺の目標であり、人生の意味だ。

 何処の馬の骨とも知らない第9世代KMFの枢木なんとかいう戦闘能力の権化と俺の厨二病を発症させるキッカケになったどこぞの黒仮面に、俺のモニカお姉様の命を奪わせたりしない。

 

「そのためにはつよくならないと……」

 

 俺は辺りに誰もいないことを確認して、その場でトレーニングを始める。

 と言っても軽い筋トレと庭を利用した持久走くらいしか今できることは無い。変に無茶をして怪我を負ってお姉様を傷つけるのは望むところでは無いからだ。

 

 ある程度の年齢になったときは、どうにかしてKMFの操縦技術も鍛えたい。俺は貴族でそれも一応嫡男だから──本当はモニカお姉様の方がふさわしいのに!!──学びたいと言えば融通は効くだろう。

 本編だとモニカお姉様がナイツオブラウンズになるくらいだし、そういう方向に子供が走ることに俺の実家が消極的とも思えない。

 

 モニカお姉様を助けるためにはできる限り早い段階から、パイロット技術を高めないといけない。

 やらなければいけないことはそれだけではない。モニカお姉様が幸せに暮らせる世界を作るためには、土台作りが必要なのだ。

 

 今はまだ皇族のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのように、水面下での根回しに、暗躍。そして枢木スザクや紅月カレンのような化け物たちから、モニカお姉様を守れるほどの戦闘能力。それこそが俺に必要とされる事項。

 

 それらを貯えるために、これから一秒たりとも時間を無駄につかえない。

 

────全ては、モニカお姉様のためにこそ。

 

 

 幸せな時間というものはあっという間に過ぎ去るもので、気がつけば時代は神聖モニカ歴10年を迎えていた。

 神聖モニカ歴というのは皇暦に変わる俺の考案した新しく、そして何よりも尊い暦のことである。言うまでもないよね。

 

 7歳を迎えた俺は、正式に軍人になるに向けての稽古を受けていた。

 俺が軍人になることを望んだ時、両親だけでなく、モニカお姉様までどこか複雑そうな顔をしたのを覚えている。

 

 現在のブリタニア帝国は絶賛、各地に軍事侵攻をしている。ちなみに前世の祖国(と言っても俺の世界の日本とは異なる点も多いが)は負けて、エリア11という名前に変わっている。哀れ。

 

 そういった事情もあって、ブリタニア帝国の首都ではかなり好戦的な風潮が増しつつある。戦時下の国において決して珍しくない現象だ。

 だから、その国の貴族の子供が戦火に当てられて軍人を志すということもやはり珍しくない。

 両親もモニカお姉様も、俺がそういった理由から軍人を夢見ていると、勘違いしてしまったのだろう。

 

 正直なところ、この反応は俺にとって予想外のものだった。というのも、本編でのモニカお姉様は皇帝直属という忠誠心が無ければ務まらないポジションにいた。

 だからきっと、俺が軍人になると言えば家族は喜ぶと予想していたのだ。しかし、実際の反応は決して歓迎するような感じではなく、寧ろどこか消極的な印象を受けるものだった。

 

 お姉様やお母様が俺が軍人になることを喜ばないというのはまぁわからんでもないのだが、お父様もどうやらあまり歓迎していない様子だった。

 

 俺が軍人になるための稽古を受けたいとお父様に頼んだ時も、かなり渋々といった様子で、挙句の果てには「少しでも嫌だと思ったら辞めてもいいんだぞ?」という、ブリタニア貴族としてはあまりに考えにくい言葉を添えてきた。これには正直、びっくりした。

 

 なぜクルシェフスキー家の人間はここまで子供が軍人になることに消極的なのか。その理由は、お母様が事故で重傷を負い、モニカお姉様が献血に名乗り出たときに発覚した。

 

「アルバート…わたし、私ね……あなたのお姉ちゃんじゃないみたい……」

 

 初めて見る泣き顔とともに、俺の部屋に飛び込んできたモニカお姉様は、そんな言葉を俺に投げ掛けたあと、寝惚けていた俺に抱き着いてきた。

 

 モニカお姉様は、俺の実の姉じゃない。本当は皇帝シャルルの娘で、実の母は死に、実家も反乱を起こしたことにより滅んでいる。

 泣きじゃくりながら放たれたモニカお姉様の、支離滅裂な言葉をどうにか繋ぎ合わせて導き出したのは、そんな残酷な事実だった。

 

 ようは、彼らは、両親は、皇帝シャルルの方針に対して懐疑的だったのだ。だから、俺が皇帝に忠義を尽くし、命を捨てることになる軍人になろうとしていることにも消極的だったわけだ。

 

「わたし……うぅ…わたしって……なんなんだろう……あぁ…」

 

 生まれて初めて聞く、お姉様の嗚咽に、死にたくなるほどの悲しみが俺を襲った。釣られて涙が出てくるが、いつものように泣きじゃくることは出来ずに、静かに頬を涙が伝う。

 

 今のモニカお姉様は、モニカ・クルシェフスキーというこれまでの人生が崩れ去るような虚脱感に苛まれているのだ。

 俺はなんて言えばいいのかわからずに、ただ抱きついてくるモニカお姉様の背中に手を回すことしか出来なかった。

 

 何が、嘘がない世界だと、ここにはいない皇帝へ憎悪を向ける。

 自身の子供たちを悲劇に追い込み、世界に戦火と死を拡散させ、挙句の果てにこんな少女を泣かせるのが、あの男が望んだ世界なのか?

 

 巫山戯るな。

 

 俺は歯を食いしばり、決意を強めた。

 何としても、俺はモニカお姉様を幸せにしてみせる。あの嘘まみれの皇帝なんかには頼らずに、この俺の手で。

 どこにあるともしれないCの世界じゃない。この世界で、モニカお姉様が幸せに暮らせる場所を、俺が作ってやるんだ。

 

 その日は一晩中、モニカお姉様と一緒に泣き続けた。この日のことはたぶん、一生忘れることは出来ないだろう。

 

 

 翌日から、俺の軍人になるための稽古にモニカお姉様も参加するようになった。

 それからだろうか、周りにモニカお姉様が皇帝やブリタニア帝国への忠義の姿勢を見せるようになったのは。

 

 俺は、その姿を見て、皇帝にも、そしてブリタニア帝国そのものにもより強い憎悪の炎を滾らせた。

 

 

 クルシェフスキー家。

 皇暦2015年におけるブリタニア帝国において、その家名が頻繁に話題に上がっていた。

 

 話題の中心にいたのは、常に若き姉弟である。

 

 姉であるモニカ・クルシェフスキーは入隊してからあっという間にKMFパイロットしての頭角を現した。EU戦線においても多大な戦果を挙げ、みるみるうちに昇進。

 結果として16歳という若さで皇帝直属のナイツオブラウンズにまで上り詰めた。

 

 対する弟、アルバート・クルシェフスキーも姉に負けず劣らず、KMFパイロットとして規格外の才能を周囲に見せつけている。

 まだ訓練兵の身分で実戦への投入はまだされていないものの、その類稀なる成績から姉に匹敵、或いはそれを上回る戦果を上げることを周囲は期待、いや絶対視すらしている。

 

 特筆すべきはその才能だけではない。

 彼らがもっとも優れている点、それはブリタニア帝国ひいてはシャルル陛下への厚い忠誠心であろう。

 

 彼らはその溢れんばかりの才能と命を我らがブリタニア帝国のために捧げることに対して一切の躊躇もない。

 これは本日執り行われたモニカ・クルシェフスキー卿の叙任式を見れば明らかな事である。シャルル陛下による皇妃へのお誘いという名誉な提案をモニカ・クルシェフスキー卿は拒み、あくまでシャルル陛下の剣として生きることを望んだのだ。

 

 一見、これは不敬に見えるかもしれない。

 しかし、これは彼女がブリタニア帝国皇帝の皇妃になるという女性としての至上の幸せを捨ててまで、シャルル陛下に忠義を果たすというこれ以上ない忠誠心の証明なのである。

 

 叙任式に同席していた弟君であるアルバート・クルシェフスキーもまた、これに感激した様子で、姉の極めて理想的なブリタニア軍人としての姿に涙を流していた。

 

 なんとも、世界を支配しつつあるブリタニア帝国の輝かしい未来を絶対にするような、素晴らしい叙任式であったことを筆者は確信した。

 

 

「なにがブリタニア帝国の輝かしい未来だ。 あと3年とちょっとで悪逆皇帝にいいように蹂躙されることになるというのに」

 

 俺はくだらない記事が書かれた週刊誌を嘲笑とともにぐちゃぐちゃに丸めて、ゴミ箱に放り投げた。

 今日の叙任式は本当に最悪だった。もっとも、この最悪をあの場に居て実感しているのは俺とお父様お母様、そしてモニカお姉様だけだろうが。

 

『モニカ・クルシェフスキー。 ふん、貴様は何を望む。 この私の皇妃の座か? 望むのであれば今すぐにでも私の寝屋に呼んでやろう』

 

 奴は、皇帝シャルルは、目の前で跪く実の娘であるモニカお姉様に対してそんな下卑た言葉を投げ掛けた。

 お姉様の肩が一瞬、僅かに震えたことを覚えている。きっと、あの変化を察知したのは俺だけだろう。

 

 お姉様は毅然とした口調でこう言った。

 

『僭越ながら、私にはそのような……あまりに名誉な地位は相応しくありません。 私が望むのはただ皇帝陛下のために、この命を捧げることのみであります』

 

 ああ、なんとも美しい。そして、なんと悲しいことだろうか。

 お姉様の心中を想像すればするほど吐き気が抑えられなくなる。そして、皇帝への殺意もまた同じように、心底から溢れて止まらなくなってしまう。

 

 仮にあの場に銃を持ち込めていたら、俺は皇帝に向けてきっと銃弾を放っていたことだろう。

 それほどまでに皇帝が放ったあの言葉は罪深く、許し難いものだった。

 

「ダメだ、まだそのときでは無い。 全てはモニカお姉様のために。 憎悪に流されるな…」

 

 俺は自分に言い聞かせるように向かい合う鏡の中で顔を歪ませる俺を見つめる。

 あと2年。コードギアスという物語が始動するまでに残された時間。

 日本人勢力への密かな根回し。資金源となる自動車会社の設立。さらには会社のエリア11への影響力確保。

 

 これらを身分を隠した上で行い、今のところどうにか軌道に載せられている。

 おいこらそこ、ルルーシュのパクリじゃんとか、劣化版じゃんとか言うな。モニカお姉様と幸せに暮らすためには俺、二番煎じもパクリも辞さない所存だから、そのつもりで。

 

 まぁ、とにかく、今のところは上手くいっている。

 あとはイレギュラーさえなければ……

 

 トントン、とまるで俺の願いを否定するかのように、自室にノック音が鳴り響いた。

 ノックの主は俺の返答を待つことも無く、ドアを開けて自室へと入ってきた。

 

「アルバート…」

 

「モニカお姉様、どうかされ……うおっ」

 

 合法なる侵入者、モニカお姉様は目に涙を浮かべながら、鏡に向き合っていた俺へと駆け寄ってきて、思いっきり抱き着いてきた。互いが礼服のままであることも構わずに、だ。

 モニカお姉様から生じるとてもいい匂いが、俺の鼻腔を刺激し、幸せ気分が俺の脳内を埋めつくした。

 

 んほおおおおぉおお!!!ヤバめのシスコンになっちゃうのおおおおおお!!!

 

 

 ………言ってる場合か。俺はモニカお姉様の抱擁に応えながら、できる限り優しく涙のわけを問うた。

 

「私……私は……あの人に……」

 

 モニカお姉様は俺の胸の中で、ただ『あの人』に対して嗚咽を繰り返した。

 それだけで俺はなぜ、モニカお姉様が悲しんでいるのかが理解出来た。俺は何も言わずに、じっと抱き着いたままのモニカお姉様の背中をさする。

 

「アルバート……私はあの人にとって……なんでもない存在なのかな……」

 

 お姉様の問いに俺は何も答えられなかった。

 

「騎士として名を挙げて……たくさんの敵を倒せばあの人はきっと……私の存在を見てくれる……そう思ってたのに……ああああっ」

 

 あの男は、裏切ったのだ。

 無知は免罪符にはならない。なぜなら、彼の身勝手によって、ここでこうして傷つき、涙を流している少女がいるのだから。それは、万死に値する罪ではなかろうか。

 

「なんで……私は産まれたの……? 誰からも望まれてなかったのに……私は……なんなの……?」

 

「……お姉様はお姉様です。 誰よりも、心優しい、僕の最愛の一人。 それがモニカお姉様です」

 

 俺がそう言うと、彼女は顔を上げて僕の目をじっと見つめた。

 その美しい瞳には大粒の涙がたまっており、顔も真っ赤で、なんとなく幼かった頃のお姉様を想起させた。それほどまでに、モニカお姉様は弱っていたのだ。

 

「アルバート……でも私は、貴方の実の姉じゃないのよ……?」

 

「そんなこと些細な問題です。 僕にとっての姉はモニカお姉様だけです。 そしてそれが、僕にとって何よりの幸せなのです。 だから、もうお姉様自身を傷つけるようなことを言うのは……お辞め下さい」

 

 俺の言葉に、モニカお姉様は何も応えずに、ばっと俺をベッドに押し倒した。さすが現役の軍人だけすごい力だ。まったく抵抗できなかった。

 

「あああああああああああぁぁぁ…!!」

 

 モニカお姉様はただひたすら、俺の胸の上で泣き声をあげ続けた。

 俺はこれ以上どうすることも出来ずに、ただじっと彼女が落ち着くのを待った。

 30分ほど経った頃だろうか、静かになった。どうやら、泣き疲れて眠っってしまったようだ。

 

「本当に、子供に戻ったみたいだな」

 

 不謹慎ながら、頬を緩ませながら寝息を立てるモニカお姉様の可憐な寝顔をじっと見つめる。さっきまでの憎悪もまるで嘘だったかのように、俺の心に平穏が齎されていた。幸せである。

 が、段々と冷静になってくるにつれて今の状況のやばさが分かってきて、こんなほんわかしてる場合じゃないことに気がついた。

 

 アルバート、大地に立つ。

 

 アルバートの何が立つかまでは言わせないで欲しい。が、とにかくこの状況でそれはまずい。

 俺はできる限り身体に接触している様々な柔らかさに対して鈍感であるように決心する。いや、やばいやばいやばい、これ無理だって。何がやばいってモニカお姉様の寝息が首元に絶えず吹きかけられるのもやばい。

 

 神聖なるモニカお姉様に欲情とか万死どころか兆死に値するわ。

 そんな俺の心とは裏腹に、身体は正直なようで、もはやいつ大地に立っても仕方がない段階まで来ている。

 

 このままだと俺が俺でなくなってしまう。それはダメだ。これ以上モニカお姉様を悲しませる訳には行かない。しかしどうしたものか。

 

 そんな時、俺に天啓が舞い降りた。

 

────そうだ、シャルルのヘアヌード写真を思い浮かべて、煩悩を晴らそう。

 

 その考えに至った瞬間から、俺の脳内では様々なポージングをした憎きシャルル陛下が、セクシーな表情とともにグラビアを飾った。

 ブリタニア帝国でもっとも売れそうな俺とシャルルだけの脳内撮影会は無事に朝まで続き、どうにか、大地に立たずにすんだ。むしろ沈んだ。

 

 お姉様は起床したあと、図らずとも添い寝する形になってしまったことを理解し、顔を赤らめて焦るようにそそくさと何も言わずに出ていってしまった。狸寝入りはバレなかったようだ。

 

 ちなみにシャルル陛下セクシーショット集は俺の記憶に焼き付き、それから一週間くらいは寝る度に魘されるようになった。最悪だ。

 

 許せねぇ!ブリタニア帝国!!!




モニカの過去についてはオリ設定ではなくロスストのものを参照しております。

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