マリナ・イスマイールが東方不敗の弟子になりました   作:ソロモンは燃えている

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ファーストデュエル、炭酸VS成層圏

 

 

 

 3大国は当初、ガンダムに対し物量で対抗しようとしていた。

 彼らの物量至上主義は、ガンダム捕獲作戦でピークを迎える。

 作戦全体で900機を超えるモビルスーツを持って一時はガンダムを捕獲することに成功する。

 当時は、刹那もまだ流派東方不敗の修行を始めて日が浅く、個の力で戦況を打開できるほどではなかった。

 しかし、トリニティー兄弟が駆る新たな3機のガンダムの介入により作戦は失敗に終わってしまう。

 それでも3大国の上層部は、方針は間違ってなかったと確信していた。

 途中まで作戦は順調に推移していたのだ。

 失敗したのは予想外の戦力によるもの。

 戦力の見積もりさえ正確なら、強大な戦力を誇るガンダムに対し、物量ですり潰す作戦は損害も大きいが確実に戦果を期待できる。

 世界は、物量によってガンダムを疲弊させる作戦を展開させていくことになる。

 

 しかし、そんな確信も揺らいでいくことになる。

 新たに現れた3機のガンダムによる強引な武力介入により世界の憎悪はソレスタルビーイングに集まるはずだった。

 だが、更なるイレギュラー『D・イナクト』の出現により彼らの存在感が薄くなってしまう。

 

 3大国は、D・イナクトとガンダム達の戦いに漁夫の利を狙って介入するもD・イナクトにより壊滅的損害を受けてしまう。

 更にエクシアが機体を輝かせ、そのD・イナクトすらも圧倒し、撃破する光景を見たことで、ついに物量を凌駕する個の存在を認めた。

 3大国は方針を転換し、個の力を追求するようになる。

 各国が持てる全ての技術を結集して造った最高の機体を最高のパイロットに与える。

 そんな世界の選択を簡単に言うなら、

 

 ガンダムにはガンダムをぶつけるんだよ!

 

 である。

 

 これほどまでに劇的な方針転換の裏には、その決定を後押しする要因があった。

 マリナ皇女のような圧倒的な個の力を持つ者達が各国で育ち始めていたのだ。

 彼らの存在が世界を変え始めた。

 軍同士がぶつかり合い、大量の血を流す戦争から自国の最強の駒をぶつけ合う決闘のような形へと。

 

 近い将来、国を代表することになる彼らと力を求め、世界各地へと散っていったガンダムマイスター達との間で偶発的に発生した後のガンダムファイトの原型となる戦闘。

 この一連の戦闘は、ファーストデュエルと呼ばれるようになる。

 

 

 

 フランス

 

 パトリック・コーラサワーは、師と仰ぐ男の下でその実力を高めていた。

 ある日、パトリックは師に呼び出されて向かった先である技術資料を見せられた。

 

「師匠、これは!?」

 

「今、AEUでは我がサンド家を中心にした巨大プロジェクトが進行している。

 ガンダムの動力源であるGNドライブの情報は手に入った。

 全ての企業から技術が提供され最高の機体も完成しつつある。

 これが、AEUの対ガンダム用ガンダム『ガンダムローズ』

 しかし、このガンダムローズはまだ決め手に欠ける。

 その最後のピースがこれだ」

 

「GNビット・・・」

 

「そう、サンド家が作り上げ、提供した技術。

 並の人間では使いこなせず、パターン化された攻撃しか出来ない。

 まさしく、パイロットを選ぶ兵器だ」

 

「そんな重要機密をなぜ私に?」

 

「このガンダムローズのパイロットとして君を推薦したからだよ」

 

「えっ、俺が!いえ、私がですか?

 私よりも伝説のパイロットと呼ばれた師匠の方が相応しいと思いますが」

 

「私はすでに引退した身。

 これからの世界を背負う者は、君のような若者でなければならない。

 このGNビットも君になら使いこなせる。

 いや、君にしか出来ない」

 

「師匠・・・

 分かりました!

 必ず期待に応えてみせます!」

 

「よろしい。

 では、さっそく機体を受領してきたまえ。

 慣熟訓練の地はアイルランドだ」

 

「アイルランドに向かうのですか?」

 

「あの地で再びテロリストが動き始めていると言う情報が入った。

 市民をテロリスト共から守るのが最初の任務になる。

 AEUのガンダムを世界にお披露目してきなさい」

 

 パトリック・コーラサワーが向かうアイルランドにて、ガンダムマイスターの一人もまた動いていた。

 

 

 

 アイルランド

 

 ソレスタルビーイング所属のガンダムマイスター、ロックオンストラトスことニール・ディランディは、故郷のアイルランドで双子の弟ライル・ディランディと会っていた。

 

「久しぶりだね、兄さん」

 

「ああ、そうだな、ライル」

 

「で、兄さん。

 話ってなんだい?」

 

「俺は今、ソレスタルビーイングでガンダムマイスターをしている」

 

「!!

 そんなことを俺に言ってしまって大丈夫なのか?」

 

「本来なら部外者に話すことは禁じられている。

 だが、俺はお前に協力してもらいたい。

 これは、誠意と信頼の証だと思ってくれ」

 

「変わったんだな、兄さん。

 昔は俺を頼るなんてことはなかった。

 いつも、助けてもらうのは俺だった」

 

「世界は広かった。

 変わらなければ、他のガンダムマイスター達の足手まといになっちまう。

 それじゃあ、戦争の根絶を掲げるソレスタルビーイングに参加した意味がないんだ」

 

「兄さんの事情は分かったよ。

 でも、そんな戦いに俺が参加すると思ってるのか?」

 

「思ってるさ。

 お前もテロを憎み、戦っている。

 カタロンに参加しているんだろ?」

 

「そこまで知っているのに俺を誘ったのか。

 別の組織に所属している者を引き込むなんて、兄さんの立場も悪くなるだろうに」

 

「立場なんかよりも大切なものがある。

 お前にも分かっているはずだ。

 世界は変わろうとしている。

 俺たちみたいなテロの犠牲者を出さない世界にするために何もできないままではいられない」

 

「そこまでの覚悟か。

 分かった、俺だって想いは同じだ。

 兄さんと共に戦うよ」

 

「ありがとう、ライル」

 

 その時、爆発音が響いた。

 街の何処かで爆発が起きたのだ。

 

「くっ、何だ!?

 まさか、またテロが起きたのか!」

 

「ライル、行くぞ!」

 

「えっ、兄さん?

 でも、そんな、いきなり!?」

 

「俺達はこれから戦争を根絶するために戦うんだぜ。

 なら、テロリスト相手に怯んでなんていられないだろ?」

 

「・・・そうだな。

 なら、一丁やってやるか!」

 

 ニールとライル、テロで家族を失った彼らは別の道を歩きながらも同じ目的を持って戦っていた。

 本来なら交わることのなかった二人の道が交差した時、新たなロックオン伝説が始まる。

 

 

 

 ニール達が乗るガンダムデュナメスがテロ現場に到着した時、すでにそこには別のモビルスーツの姿があった。

 

「何、別のガンダムだと!」

 

 それは、ガンダム捕獲作戦の時に介入してきたスローネとも違うが、ガンダム特有の特徴的なフェイスを持つ機体だった。

 

「ソレスタルビーイング!?

 いや、今はテロリストから市民を守るのが先。

 AEUのエース、このパトリック・コーラサワー様の実力を見せつけてやるぜ!」

 

 ニール達もテロリストから市民を守っているガンダムを邪魔するような真似はしない。

 ガンダムが2機。

 テロリスト相手では、1機でも過剰戦力だ。

 瞬く間に鎮圧され、街は平穏を取り戻していった。

 

 だが、これで一件落着、解散とはいかない。

 ガンダムローズは、AEUが作り上げた対ガンダム用ガンダムだ。

 目の前にソレスタルビーイングのガンダムがいて、何事もなく見逃すなど出来ない。

 

「テロリスト相手じゃ、お披露目のインパクトに欠けると思ってたんだ。

 ソレスタルビーイングのガンダム、マネキン大佐を安心させるために俺のガンダムの華々しいデビュー戦の相手になってもらうぜ!」

 

「ちっ、やっぱりこのままお開きとは行かないか。

 AEUのガンダム。

 想定外だが、デュナメスの新機能を試すにはちょうどいいかもしれないな。

 ライル、行くぞ!」

 

「OK

 でも、俺はガンダムは初めてだ。

 しっかりフォローしてくれよ」

 

「任せろ!」

 

 2機は、街から離れた所に場所を移し向き合う。

 3大国が作り上げたガンダムとソレスタルビーイングのガンダムが戦ったのは、後にマスラオガンダムと呼ばれるパイロットの正体が謎に包まれているブシドー仮面のマスラオと刹那のエクシアが最初なのだが、多くの人々の目がある所で行われたという点を持って、これがファーストデュエルの初戦だとする識者も多い。

 

「さあ、行くぜ!

 マネキン大佐、見ていてください。

 勝利を捧げてみせます!」

 

 ガンダムローズから無数のGNビットが射出される。

 

「これは、ビット兵器か!

 しかも、この動き。

 パイロットも只者じゃないな」

 

「兄さん!」

 

「ああ、分かっている。

 出し惜しみはなしだ。

 ドリフト・システムを起動する!」

 

 デュナメスのコックピットは複座型へと改修されていた。

 複座型コックピットの座席は縦に並び、前が機体の操縦、後ろがガンナーとして火器管制を担当するのが一般的だ。

 しかし、デュナメスのコックピットは縦ではなく横に並んでいた。

 操縦桿などの機器の配置も全く同じ。

 GN粒子の共感現象を用いた全く新しい操縦システムだった。

 本来、GN粒子による共感現象はイノベイターの純粋種として覚醒した刹那やイノベイド達のような一部にしか発現しない。

 しかし、双子など強い関係性を持つ者達の間でなら共感現象が作用していることが発見された。

 これを利用した並列コックピット。

 操縦と火器管制の役割分担ではなく、全ての制御を二人で協力して行う。

 どちらかが主で、どちらかが従ではない。

 どちらも主であり、従でもあるのだ。

 二人のシンクロ率が高いほど反応速度、精密性、ロックオンまでの速度などが跳ね上がる。

 

 今までのデュナメスは、その狙撃性能こそ他を圧倒するものの距離を詰められればその強みを活かせなくなる事も多かった。

 ドリフト・システムを使用したことで、その状況に劇的な変化をもたらしていた。

 他のガンダムに引けを取らない高速機動と精密狙撃を両立して、多数のGNビットを捌いていた。

 

 結局、この戦いは痛み分けで終わる。

 互いに相手を倒せなかったことに悔しさを覚えながらも、この戦いで新たな時代の到来を予感していた。

 

 

 パトリック・サイド

 

「すみません、師匠

 勝てませんでした!」

 

 こうまで清々しく、勝てなかった己の未熟を認められるパトリックにジョルジュ・ド・サンドは自分の選択は正しかったと確信していた。

 

「気にするな。

 まだ、機体を受領したばかり。

 GNビットの手動操作率も50%程度。

 お前は、まだまだ強くなる」

 

「はい!

 マネキン大佐のために必ず勝って見せます」

 

 変わったものだ。

 女好きの軽い性格を考えて並列思考の訓練を女性達とお付き合いをするという方法にしたが、ここまで一途に想う相手が出来るとは。

 だが、それでいい。

 大切な存在のためにここまで真剣になれるのなら、こいつは私の予想すら超えて化けるだろう。

 

 AEUを代表するガンダムファイターとなるパトリック・コーラサワーの伝説の始まりだった。

 

 

 ロックオン・サイド

 

「すまない、兄さん

 俺が足を引っ張ったから」

 

 ガンダムに慣れていないライルは、ミスをして何度もフォローしてもらっていた。

 自分がもっとちゃんと出来ていたら勝てていたのに。

 そんな風に自分を責めていた。

 

「そんなこと気にする必要はない。

 俺一人なら負けていた。

 お前がいてくれたから、あそこまで戦えたんだ。

 助け合うのが兄弟ってもんだろ?

 忘れるな、俺達は二人でロックオンストラトスなんだ」

 

「うん、そうだね」

 

 顔を上げたライルの表情は、覚悟を決めた漢の顔だった。

 強くなってやる!

 俺だってロックオンストラトスなんだ。

 足手まといになんてならない。

 今度は、俺が兄さんを助けるんだ!

 

 

 ニールは、双子の弟ライルを相棒にして新たなロックオンストラトスとして再出発した。

 ライルとのシンクロ率が上がっていけば人類最高峰の領域へと到達するだろう。

 二人で一つ、比翼連理の成層圏

 それがニールが出した答えだった。

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