夜空の綺羅星は、青空に癒されたい   作:アッド・ウィステリア

1 / 21
日刊ランキング(二次創作限定で)10位……!
お読みくださった皆さま、ありがとうございます!

また、7話の感想・評価、ありがとうございました!
少しでも余韻に浸れるようにあとがきは無しにしましたが、悶えてくれた方がいてくれたようで幸いです。

という訳で以前のあとがきに書いたように数話、断章・閑話に入ります。

今回のは初期から書き始めてたやつなので少し読みづらいかもですが、お楽しみいただけたら。



断章 Astronauts memory
I. 疑似■■■■モデル ■■■■・■■■■■■■


 異星の神――終局の悪たるビーストⅦを討ち、ノウム・カルデアは人類最後のマスターと共に人理を取り戻した。

 

 南極に残されていたカルデアの南極本部はその戦いの果てに8割が完膚なきまでに破壊され瓦礫の山となった。

 

 残り2割もストーム・ボーダーからの電力供給と、躰体の活動限界へ到り、その精神をゴルドルフ新所長によって建造されたホムンクルスに移したダ・ヴィンチちゃんが、設備制御のメインフレームとして()()()()()()いなければ非常灯もつかない有様だ。

 

 そんな中で生き残ったカルデアスタッフと、人理が取り戻された影響で退去せざるを得なかった英霊を除くサーヴァントたちが一堂に集まった。正確にはキャスターを中心に『陣地作成』スキルを保有する者たちが、外の吹雪や寒さを軒並み遮断した結界の中だ。

 

「オッホン。(みな)集まったな。では、どうか静粛に。これより英霊諸君らを交えたものとしては最後となるであろう、一大ミーティングを執り行う」

 

 そんな中でゴルドルフ新所長が厳かに口を開く。並みいる英霊たちの視線を一身に受けながら、(若干顔が引きつっているが)その立ち姿に微塵の揺らぎも感じられない。

 

 

 

 

「まず――感謝を述べたい。私がこの地へ来た日、そして襲撃を受け、地表のすべてが漂白されたあの日から、よくここまで付いて来てくれた」

 

 

 

 

「口にしたくはないが――――イヤホント、口にすると被害者意識とか、自己嫌悪とか、丸々買い取ったカルデアの被害総額でつぶれてしまいそうなのだが、あえて流そう。才気溢れるエッリィートとは言え、所長としては経験不足だった私を盛り立て、人理を奪還できたのはひとえに君たち全員の協力があってこそだ」

 

 

 

 

「ここに来るまでに払った犠牲は、多い。この場に負傷を経験していない者はおらず、これまでの旅路、我々カルデアに限定しても死者、未帰還者はマリーンたちも含めて数十名に登る」

 

 

 

 

「しかし、ここまで来て君たちに渡せる報酬と言えるものは、ない。これまでの旅路で手にした『聖杯』も、全てがあの最後の戦いに現れた『盾の騎士』が身を賭して、己が霊基を犠牲にただ無害な力として消し去った。……一つくらい残して欲しかったナー」

 

 

 

 

「加えて世界を救った、という名誉も与えられない。どんなに言い繕っても我々は『カルデア』のスタッフだ。カルデアスが人理漂白の原因であるのなら、その責任を誰しもが我々にあると糾弾するだろう」

 

 

 

 

「直に『カルデア』は完全に閉館する。施設も人員も培われた技術も何もかも、なかったことにされる。私も最大限努力はするが、この場のスタッフたちも全員、穏当にすむという保証はできかねる」

 

 

 

 

「我々に残されるのは――世界を救ったという事実と個々人の『誇り』だけだ。これだけは何者にも奪われん。いや、奪わせん。それが私の所長としての最大の責任であり、最後の仕事となるだろう」

 

 

 

 

「……湿っぽくなってしまったな。だがその責を負う前に片づけておかねばならんことがある」

 

 

 

 

「うんうん、分かるぜゴっさん。つまり完☆全☆勝☆利をお祝いして、記念のパーティーだなウェーーイ!!」

「うむ! 勝利したのだから、美酒を振舞うのは統治者として当然よな! 万事、余に任せるがよい! 余の美声をそれはもう、せぇーだいに大盤振る舞いしてやろう!」

「ネロが歌うというのなら当然私――いえ、私たちも歌うわ! 任せなさい、新生エリザーズがみんなの心臓(ハート)を鷲掴みにしちゃうわよ!」

「パーティってつまり宴? 宴よね? いっぱい呑んでもOKってことね!? よーし、お姉さんたっくさん呑むわよ~~」

 

「「(ちぃが)ぁぁぁぁぁぁう!!! まずやるべきは事後処理ッ!!! いや、それはそれでやるけども、そっちはせめてカルデアのハワイ支部からの迎えが来てからっ!」」

 

 ここまでのしんみりしていた空気に耐え切れなくなったのか、なぎこさん――清少納言の発言を機に、めいめい英霊たちが息を吹き返すように好き勝手にしゃべりだしたところで、表現としても()()()()()()()()()()()()()()

 

『『『『えー……』』』』

 

「『えー』じゃありませんっ! 言い出しっぺ四人以外も不満そうにしないの! というか、こんな極寒の地でパーティとか正気の沙汰じゃないんだよ!?」

 

「ちょっと藤丸あなたねぇ! 仮にもマスターなんだから、サーヴァントにちゃんと言い聞かせなさいよっ! っていうか、なんでこんなユルユルになってるのあたしのカルデア!?」

 

「いやぁ、俺に言われましても……」

 

 英雄たちに容赦なく説教を浴びせるゴルドルフ新所長を横目に、怪我と疲労、あと魔術回路の過剰使用でまともに立てないため、用意された車いすに座っている俺の膝の上に乗って罵声を浴びせかけてくるのは、なんと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 正確にはオルガマリー所長そのもの、とは言えない。

 

 ビーストⅦの眷属、異星の使徒『神』U-オルガマリーの残留霊基、及びカルデアスから可能な限り回収できたオルガマリー所長の魂と精神を、新たに召喚した大きなダ・ヴィンチちゃんが小さなダ・ヴィンチちゃんのために作った予備躯体(スペアボディ)に組み込んだのが、この小さなオルガマリー所長だった。

 

 そうなった経緯とか方法を、俺は知らない。用いられた魔術は説明されても全然理解できなかったし、ビーストⅦを前にして周りに気を配ることなんてできなかったから。

 

 知っているのは躯体(からだ)が限界に達する直前に小さなダ・ヴィンチちゃんがそう望み、大きなダ・ヴィンチちゃんがそれを受け入れたということだけだった。

 

 現在、小さなダ・ヴィンチちゃんの身体となっているホムンクルスも、本当は魔力を生み出す電池のような役割でしかなかった言っており、『そんなものを技術顧問に使うことになるならもっとしっかりと建造すべきだった』と新所長は悔やんでいた。

 

 ただ、小さなダ・ヴィンチちゃんは『うーん、BBたち電脳魔とはこんな感じなんだねぇ。この感覚――これは新発見だよ!』とモニターの中、以前の姿で目を輝かせていて実に前向きだったけれど。

 

 そんな所長だが、流石は『万能の人』が考案・作成した躯体というべきか。記憶の中の身体と異なることで生まれる違和感はあれど身動きに問題はなく、記憶の方はいくつかの欠落――というか強く印象に残る出来事を除いて記憶がないらしいのだが、精神面はほぼ完ぺきにかつての所長と同一とのこと。

 

 むしろUだった時の記憶もあるそうで、全体的には丸くなった印象を受ける。

 

 ………………でも、そろそろ落ち着いてくださいね。襟をつかまれガックンガックン揺すられても、こっちは一切抵抗できないんですよ?

 

「お、落ち着いてください、ロリガマリー所長……っ」

 

「オールーガーマーリーィーッ! マシュもこいつの言うことを真に受けて変な呼び方しないでちょうだい!」

 

「も、申し訳ありません……。ですが、所長の死は既に魔術協会にも報告が行っていまして……。アニムスフィアの一門もある程度まで継承の話が進んでしまっているそうで……。それなら別の名前が必要ではないかと思いまして……。このお姿では継承に『待った』をかけるにも無茶があるかと愚考するのですが……」

 

「そんなの新しいからだを作っちゃえばいいでしょう!」

 

 俺よりは軽傷とは言え、手や額、首に包帯を巻いたマシュがオルガマリー所長を抱き上げてくれた。それでもジタバタと手足を動かす所長に気付いた、大きなダ・ヴィンチちゃんが近寄ってきてこう口にした。

 

「うーん、素材があればイケるけどね。ビーストⅦとの決戦とその準備、戦闘中の魔力供給と戦闘後のサーヴァントたちの霊基修復のために、これまでマスター君たちが集めてくれてた魔術資源は軒並みスッカラカン。流石の『万能の天才』たる私と言えども、振るための袖がない以上はなーんにもできないんだなぁ、アッハッハッハ!」

 

「はい。それはもうこれまでの旅路の中でも、これほどの素寒貧ぶりはありません。城に帰れば服も財宝もある『裸の王様』のほうが百倍はマシだと判断します」

 

()()()()その旅路を知らないのが実に惜しい。また今度、君たちの旅路のレポートを読ませてくれよ?

 ……話を戻すけど、キミはビーストⅦの眷属化の影響で魔力回路が変質を起こしている。天体科、というかアニムスフィア家に戻っても危ない目に合うだけだと思うよ? それなら心機ならぬ()()一転して、ゴルドルフ君の所に身を寄せた方がいいんじゃないかなー?」

 

「っ、ぐ、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………!」

 

 今まで我が身が守り、そして守られてきた名声を手放すのが――――いや、家が紡いできた歴史とそれを受け継いだ誇りを手放さざるをえないことが悔しいのか。所長はぎりぎりと歯を食いしばって唸り声をあげている。

 

 そこにはきっと俺には分からない苦労が、苦痛があったのだろう。それを背負うだけの理由も、背負ったからこその自負もあるのだろう。

 

 

 

 ――――――けれど、

 

 

 

「所長、ゴルドルフ新所長の所に行くのはそんなに嫌ですか?」

 

「嫌よ! ………………いえ、嫌というか、あたしのプライドが許さないっていうか……」

 

「そんなものゴミ箱にポイっとしてください。――――お願いします。俺は、所長にちゃんと生きてほしいです」

 

 生きることは、例えどんな人生であっても苦しいのだ。それならせめて魔術師として誇りある生き方よりも――――人間として実りのある人生を、充溢した日々を、この人には甘受してほしかった。

 

 動かすのも億劫な身体で頭を下げる。俺の下げる頭に大した価値はないのかもしれないけど、少しでも、この見栄っ張りで、人が良いのに露悪的で、誰より寂しい思いをしてきたであろう人が、これ以上の重荷を背負わずに済むよう祈りながら。

 

「ふ、藤丸、アンタ……」

 

「先輩の言う通りです。……私はもう、例え似姿だとしても、所長が傷つくところなんて見たくありません……」

 

「マシュ……」

 

「あ。それと先輩の呼称は実に分かりやすく、馴染みやすい呼称かと」

 

「マシュぅ―――――っ!!」

 

「落ち着くンだッ、ロリータ・ウルトラ・オルガマリー所長! 地球大統領(Presidente)は慌てないッ!」

 

「レオナルド、アンタは悪ノリするんじゃないっ! あと、その呼び方(地球大統領)やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 天を衝く所長の叫び声。そのまま姦しくおしゃべりを続ける三人を眺める俺の顔は、きっとだらしなく緩んでいるだろう。所長に見られたらまた怒られるのだろうが、大目に見てほしいところだ。

 

 

 

 

 

 ……だって取り戻したのは人理だけではなく、かつて手を伸ばすこともできなかった――その後も助けられるだけ助けられてしまった“トモダチ”が、目の前にいるのだから。

 

 

 

 

 

 




藤丸「復ッ活ッッ! オルガマリー復活ッッ!! オルガマリー復活ッッ!! オルガマリー復活ッッ!!」

所長「したい……仕事が(後始末)したい~~…………訳ないでしょっ!? なんか目覚めて早々苦労っていうか書類地獄(デスマーチ)確定なんですけどぉ!!?」



ということでFGO原作でどうなるかは知らないが、拙作では所長生存?ルートです。

この人にも救いがなければ……あと、デスマーチはどうにもなりませぬ。初代様も「働け」と言っておられたでしょう?

次回は後編、伏せ字の部分もそこで明らかに。

感想・評価、お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。