筆が進まない、と言ったな。なんかやたら進んだ。…………どうしてこんなに波が……
あと、今回ちょっとだけ拙作における立香の闇、というか歪んだ部分が出てきます。
アラフィフ先生も言ってたでしょ? 「施設にいる子供たちは少しばかりとはいえ、他の子供とは、違う」って。
以下、本編に関係ない鬱考察なので反転。↓
少し思ったのですが、アイを殺した黒幕っていうか真相、彼女自身がそう望んだ、とかないですよね……?
カミキヒカルの当時の精神性・性格が原作通りの外道だったとして、アイもそれに少しは気づいていて、でも「死に際なら子供たちに抱くこの思いが、本当の『愛』かわかるかな?」みたいな感じで、半分自ら殺されにいった、とかないよね…………?
最悪、カミキは当時まだ少しはまともだった(少なくとも殺す気はなかった)けど、アイが自分から殺されに行って、彼女の死を無意味にしないために壊れた、とかない、です、よ、ね………………?
パクリとフレンチトーストの残りの一口を食べ終える。
歯を使わずとも舌で押すだけでほぐれるトロトロ具合、濃厚な卵黄と砂糖の甘さに思わず頬が緩む。アルコールを飛ばしたリモンチェッロというお酒とヨーグルトを合わせた自家製ソースが、ともすればくどくなりがちな濃厚さに爽やかな後味が加わり、いくらでも食べられそうだ。
というか、正直お代わりが欲しい。
隣に座るアイも、手にするスモモのムースケーキを名残惜しそうに完食する。足の短い透明なシャンパングラスの底の方から、スポンジ生地・ムース・ジュレの順に鮮やかにグラデーションするそれは目にも美しいものだった。
高級感溢れるそれを前に、最初は挙動不審だった彼女も一口食べた瞬間、「ほぁぁ……!」と恍惚とした声を漏らすほどだ。
……お見逸れしました店長。カルデア・キッチン、
「「ご馳走様でした!」」
「うんうん、いい食べっぷりだった。満足したかな?」
「「はい!」」
「…………いや、三人とも食べ過ぎだよ。どう考えてもカロリーと糖分過多だよー……」
両手を合わせ、おじいちゃんと店長に向けたお礼を口にしたところで、先生から野暮なツッコミが入る。自分もちゃっかりアフォガードなんて食べてるくせに、なんてことを言うのか。
アイもそんなにプルプルして怯えなくても、大丈夫。スパルタ式トレーニングで、この程度のカロリー全部消えるから。…………なんでプルプルが加速するの?
「夕飯までにはお腹がすくので
「星野君と二人でドーナツセットに、ホール半分のアップルパイまで食べてまだ入るのかね……」
「でも、おじいちゃんはそれ以上に食べてますよ?」
「うん、何時だって体こそ最大の資本だ。そして食事は体力・活力の源だからね。たくさん食べるべきだ。…………むしろ、ドクターは食が細いのでは?」
「君たちと同じにしないで欲しい! 普通、五十路の身体に君たちと同じ量は、毒にしかならないものだよっ!?」
と、絶叫する先生。まぁ、おじいちゃんの食べる量はちょっとおかしいと思う。何故あの巨大プリンの後に、大きめのエビカツサンド、大皿のナポリタンに、同じく大皿のサラダ、チョコレートパフェが入るんだ。
そして、今まさに大盛りフライドポテトを一人で平らげられた。胃袋にピンクの悪魔でも住んでいるんだろうか。
「────さて、リラックスできたところで本題に入ろうか」
食後のコーヒーを店主が持ってきたところで、おじいちゃんが切り出す。その場に立ち上がると深く頭を下げた。
「まずは、すまなかった立香。会いに来るのが、遅くなり過ぎてしまった。一人は、寂しかったろう?」
「…………一人じゃなかったよ。施設には色んな子がいたし、寂しくはなかった」
おじいちゃんの発言を否定する。はったりではなく本当に、この世界の俺は、寂しいとは思わなかった。
なにせ、物心つく頃には
施設での生活はつらいものではない。職員さんたちは基本的に親切だし、仲の良い友達ばかりとはいかなかったけれど、小さい子達は懐いてくれるのは嬉しいので、よく世話を焼いていた。
勉強は、
特に最近はアイと過ごすことが多く、先生から貰ったチケットで水族館に行ったり、買い物に付き合ったりしたので、充実していると思う。
…………ああ、でも、強いて言うなら────
「むしろちょっとだけ、申し訳ない、かな」
「? それはどうして?」
「…………俺、母さんのことも、父さんのこともよく知らない。だからさ────
苦笑と共に告げた言葉に、おじいちゃんだけでなく、アイからも息を飲む音が聞こえた。平静なのは先生だけで、それだって以前から知っているから。
両親のことは覚えてないけれど、アルバムが残っていたから顔は知ってる。声は分からないけれど、抱きしめられた温もりはなんとなく覚えがある。
逆に言えば────それだけだ。要は『両親が死んでいる』という事実に、俺は実感が湧かないのだ。
…………大切なトモダチによく似た在り方の少女がいた。生業も人種も違う別人だけど、似通った胡散臭さを漂わせる人がいた。
なら────両親も、何処かにいるのではないか。
もしかしたら、俺と同じようにカルデアのことを知っている誰かが、世界の何処かにいるんじゃないか。
日々の歓びと充実は本心でも、そんな願いが、執着が、心の奥に未練がましく今も巣食っている。
…………本当はわかっている。この世に両親はもう何処にもおらず、カルデアは、その記憶の世界は遠い遠い過去の話になった。
でも、だからこそ────
「だから、おじいちゃんに会うって決めてた。両親の事を、できる限り教えて欲しかったんだ。
────そうじゃないと、母さんたちのこと、ちゃんと見送れないから」
────だからこそ、きちんと別れを告げなくてはならない。
生きている以上、必ず最後には死ぬ。故に極論ではあるが、離別は避けられない。別れを経験しない人生はない。
ならばせめて、その別れは、寂しくとも悲しいものでなくなるように。それが生きる者としての努めだと、今の────カルデアの旅路を記憶を持つ俺は、知っているのだから。
「……………………そう、か。…………そう、だったか」
覚悟はしていたのだろう、罵倒されるものだと。しかし、孫の思わぬ本心を聞いて、おじいちゃんは痛ましそうに、懺悔するように表情を歪めて座り込むと、両手で顔を覆い天井を見上げた。
深呼吸を三度。それくらいの時間を置いた後、表情を隠していた手をどかして再び真っ直ぐ視線が向けられた。
「────それならば一度、一度でいい。充分だと感じたのなら日本に戻っても、他の国に旅に出てもいい。一度でいいから、私や私の妻と共に暮らそう。私たちの娘、君の母について、話したいことは、本当の本当にたくさんあるんだ」
「……ここじゃダメ?」
「この場で話せることもあるが、それでは時間も、物も、人も、
そう言って、おじいちゃんは只管、真っ直ぐに俺を見る。…………殺気はない。しかし、ある意味ではそれ以上の覇気を以て、何か言いたげにしていた口を開きかけたアイを黙らせている。
…………彼女のことは心配だが、逸らすどころか瞬くことも許さない、とばかりの視線を受け止めるだけで精一杯。しかし、テーブルの陰で伸ばされ、僅かに触れる指先を頼りに、安心させるように手を重ねてから問いかける。
「……何時まで掛かりそう?」
「それは分からない。自慢になるが、娘のことを可愛がってくれた人はそれなりにいる。
そして、それは私たちの住む国にとどまらない。特に可愛がってくれた者は北欧とアメリカに在住しているが、彼らにも仕事があり、それに伴う立場があり、守るべき家庭がある。
…………学生時代から腐れ縁が続いているから、ある程度優先してもらえるかもしれないが」
…………なんか、最後の方はなんとも忌々しいというか、憮然とした声音で締めくくられた。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
「最低でも半年はかかる、というのが私の見立てだ」
「…………ふ、む。そこまで時間が掛かるのであれば、藤丸君はそちらの学校に転校した方がいいかもしれませんな」
「私もそう思う。私たちの国では、入学は九月から。幸い、というべきかは分からないが、日本と違い飛び級、早期就学も認められている。学業の捗り具合によっては時間の都合も付けやすくなる」
「確かに。今年は英会話に重点を置いて勉強して、来年転入すれば「『必要ないよ』」………………何だって?」
おじいちゃんと先生の間で、学習計画を立てているところ申し訳ないが、あんまり時間をかけていると決心が鈍る。
『英語、喋れればいい?』
『……喋れたのか!?』
『あまり自信、ないけど』
少したどたどしい英語で話に割って入る。どうやらちゃんと通じるらしい。
カルデアでの勉強地獄で学んだのは技術・体術だけではない、『絶対に役に立つから!』と各種言語も学ばされた。…………いやうん、本当に役に立ったけど二度とやりたくない。多言語のスラングで罵倒するのヤメテ。
『俺の英語、大丈夫?』
『あ、ああ。少し聞き取りづらいが、キツイ訛りと比べれば問題ない』
『よかった。最初の手紙来てから、ちょっとずつ練習してた』
…………本当はしてないのだが、そこは誤魔化す。後でアイと先生には何か言われるかもしれないが、なんとかなるさ。
「…………いや、驚いた。だが、これなら今年からでも問題なさそうだ」
「よかった、ありがとう。…………そういえば、おじいちゃんは日本語どうやって覚えたの?」
「ん? ああ、妻が元々日系でね。先祖を辿れば日本の薬師だそうだ。当人も薬草学が専攻だったよ。…………娘は
「そうだったんだ………………………………………………ん? なんて?」
誤魔化しの一環として話題を降ったのだが、今、なんか、とんでもねぇことを、聞いた気がするのですが。
…………え、ちょっと待って? 俺知らないよ、そんな事実。確かに母さん、おじいちゃんみたいな金髪に、俺と同じような碧眼だったけど、普通に国際結婚とかじゃないの?
「…………いや、正確にはアレだな。『押し掛け女房』と、日本語では言うのだったか」
「ミスター、詳しく。詳しくお聞かせ願いますかな……!」
「おい、そこ。人の家庭事情を深掘りしようとしないでくれます?」
『ktkr!』『wktk!』と顔を輝かせるバカ医者。ペンとメモ帳を取り出すな。スマホで動画を取ろうとするな。ボイスレコーダーを取り出すんじゃない。オイ、聞いてるかオイ。
しかし、そんな俺の抑制に構わず、おじいちゃんは話し始めた────話し始めてしまった。
後に、これを聞いた時のアイの表情をよく見ておけば、と悔やむことになった。俺がね。いや、感謝もすることになるけどね? ホント、この医者ろくなことしないな。
…………そうして話を聞くに、どうやらこの世界の俺の両親は駆け落ちしたようだ。
正確には、あっちでの生活に馴染めなかった母さんがハイスクールを卒業と同時に家出&失踪、いつの間にかおばあちゃんの伝手を辿って日本にやって来て、出会った父さんを気に入り、即押し掛け女房、即モノにしたらしい。
おじいちゃんたちが方々を探し回り、母さんが日本にいることを知ったときには、既に妊娠の初期症状があったのだとか。ちなみに、失踪から妊娠までの期間がほぼ丸二年。日本に来て父さんに出会ってから数えると約一年…………四捨五入して、ぎりぎりで、一年。
……………………やだー、うちの母ってば、すっごく
『────何も言わずに家出してから数年。何の連絡もなく失踪しただけでも度し難いのに、流石に蛮行が過ぎるわよ、こんのバカ娘ぇっ!!』
とおじいちゃんたち(特におばあちゃん)の堪忍袋の緒がブッチブチに、ブチ切れ、あわや取っ組み合い*1の大喧嘩*2。そのままほぼ絶縁状態に、という流れらしい。
それでも数年に一度、様子を探るくらいのことはしていて、俺が生まれたことは知っていたのだとか。
「…………昔から馴染めていない節はあった。それを見逃していた私たちにも負い目があってね。頭が冷えてから、私も、妻も、援助はしようとしたのだが、娘は全部突っぱねてしまって」
「いや、流石私たちの娘だ」と、おじいちゃんは苦笑しつつ、何処か誇らしげだった。…………ただ、一つ疑問に思ったのだが。
「おじいちゃんはなんで怒らなかったのさ?」
「…………いやぁ、妻が怒髪天だったのもあるんだがね。怒る怒らない以前に『父娘とはいえ、そこは似て欲しくなかったなー』、という感想が強くてね」
ハハハハハ、と爽やかに、しかし目を逸らして冷や汗を流して笑う祖父。…………どうやら母さんのアマゾネス属性はおじいちゃん譲りらしい。一体、何をやったんだろうか…………?
とーじょーじんぶつしょうかい
父
拙作における立香の父。投稿時、モデルとなる人物無し。
黒目黒髪の東洋人男性。ひょんなことで出会った立香の母に気に入られ、押し入り女房され、哀れアマゾネスされた。
母
拙作における立香の母。モデルはCBC2021イベントの金髪ぐだ子。
金髪碧眼。帰宅の前にカフェでティータイムしているのが似合う、ビスクドールのような童顔の美女。しかし、中身はかなりのお転婆。部活の帰りにバーの店先でフィッシュアンドチップスを買い食いするのが日課だった。日本ではお好み焼きなど、粉ものにハマる。
ひょんなことで出会った立香の父を気に入り、押し入り女房の後、アマゾネスする。
立香はアマゾネスする方とされる方、両方の血を引いている。後は大体予想できるな? 型月(成人版)名物『ベッドヤクザ』の完成だ。
おじいちゃん
拙作における藤丸立香の祖父。モデルはプーサー主体、+αでガウェインが混じっている。
一応、アルトゥスという名前を設定してみたが、基本おじいちゃん呼び。若いころは『白馬の王子様』と呼ばれるに足る容姿で、今なおその名残を残す金髪翠眼の英国紳士。後に生まれる双子の金髪はこちらからの隔世遺伝という設定。なお立香の瞳の色はおばあちゃんから遺伝。大食漢。
学生当時、とある女学生の後輩(のちの立香のおばあちゃん)を、留学に来ていた悪友二人と仲良く喧嘩しながら取り合い、女学生に仲裁されを繰り返す青春を送った。最終的に自身の卒業式当日、白いオフロードバイクで
FGO原作へのリスペクトとして、『藤丸立香のビジュアルモチーフではあるが、遠坂凛(もしくは衛宮士郎)と血縁的には無関係』を採用。
そのうえでアクルビに金髪が受け継がれるよう、立香の父母かそれ以前の血筋に金髪要素があり、かつ立香とあんまり強い絡みがないキャラの方が関係性をねじ込みやすいよね、ということで彼に。同時におばあちゃんも決まった。原作でもパートナーだから違和感はないし、色々構想しやすい。やったぜ。
祖母
拙作における立香の祖母。モデルは沙条綾香。
日系英国人。黒髪碧眼。プーサーの嫁、かつFateの凛の要素も持ち合わせ、立香に青い瞳を受け継がせられる人物とか、この人しかいるめぇ。
薬師の家系でおじいちゃんとは学生時代からの付き合い。当時はあくまで一つ年下の後輩だったが、物理で掻っ攫われた。当然キレて尻に敷く。