夜空の綺羅星は、青空に癒されたい   作:アッド・ウィステリア

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評価人数、100名突破……!

ありがとう、ありがとう……! それしか言葉が見つからない……!


この喜びをっ、原動力に変えてっ―――施設編最終話を投稿するっ! 書きたいように書いていたら、8000字オーバーしたぜ!


これが作者にできる、現状最大のラブコメだァーーーー!


14. ■■の時来たれり、其は■■■■■もの

 

 

 夏休みも残りわずかとなり、その日はやって来た。

 

 アイと約束した夜から、今日までやってきたことを思い返す。

 

 残っていたアイの宿題を終わらせて、その後医務室を使わせてくれたお礼として先生の手伝いをした。

 

 低学年組と一緒にラジオ体操をし、宿題を終わっていない子達の面倒を見、施設の職員さんたちが組み上げてくれた竹で流しそうめんをした。

 

 施設の皆で集まって花火をした。流星群が見れそうなので天体観測をしようとして、夕方から降りだした雨に急遽、怪談語りをした。その時にきよひーとゴッホちゃん、ユゥユゥ、BBをモデルにした話をして、全員を阿鼻叫喚の渦に叩き落したことで『みんなで寝ようver1.2』が開催された。

 

 おじいちゃんと何度か顔を合わせて向こうに行った後の詳細を少しずつ詰めて、二人で色々食べたことがアイにバレて拗ねられて、寄付でもらったスイカとフルーツミックス缶でフルーツポンチ(白玉入り)を作ってご機嫌を取った。

 

 アイと顔合わせにやって来たスカウトさん改め斉藤さん*1と出会い、何故かその流れで昼ご飯にゴーヤチャンプルーを斉藤さんの分も含めて作ったり、施設に顔を出したおじいちゃんに職員さん(女性・既婚)が骨抜きにされたりと、本当に色んなことがあった。

 

 …………正直な話をすれば、やりたいことはまだある。海やプールで遊びたかったし、ユニバーサルなスタジオに行ってみたかった。

 

 しかし、それでもやり直しは望めない────望まない。

 

 心残りはある。でも、()()からこそ『次はこうしよう』、『今度はこうしたい』という思いとなり、それは今日よりほんの少しだけ先の未来を佳くするための道標になるのだ。

 

 だから────『日本の夏休みの学生』は昨日まで。

 

 本日、俺こと藤丸立香は日本を飛び立ち、母の生国にして祖父母の住まうイギリスへと向かう────

 

「アイさん、そろそろ降りてくれません?」

 

「えー、もうちょっと」

 

「そう言ってもう既に十分経つんですけど?」

 

 ────向かうべく空港にまでやって来たのだが、搭乗時刻まで時間があるのでベンチに座っていたら、アイが膝の上に乗ってきて動けなくなりました。あの、なんで空港(ここ)に(斉藤さんも一緒に)いるんですかね? 

 

「なんでもなにも見送りに来たんだよ?」

 

「いや、斉藤さんとの交流は?」

 

「築地で一緒にご飯食べてきたから、問題なーし。スイーツも食べたし、お昼はここで食べる予定」

 

「うーん、最早ただの食い倒れツアー」

 

 ぐでー、とこちらの肩にもたれ掛って来たので、ずり落ちないように腰に手を回しつつ聞いてみた回答がコレである。

 

 どうやら義理というか戸籍上とはいえ、続柄的には父親になる予定の人を、これでもかと振り回してきたらしい。

 

 養子縁組が成立するにはいくつか段階がある。大半を占める事務手続きを除いて実際にやるべきことは、

 

 ① 養子となる子ども、あるいは候補者との直接対面

 

 ② 相性を見るための数ヵ月の交流期間

 

 ③ 交流期間を経たうえで問題がないと判断されれば半年間の同居

 

 と、この三つを行う必要がある。

 

 その中で養子と里親の両者に瑕疵がなく、お互いに望んでいるのであれば、ようやく法的に認められるように動き出せる。更に、それ以前の里親としての登録などの事務手続き、養子となる子どもの斡旋を含めれば一年近い年月を要するものなのだ。

 

 先に対面を済ませて(スカウトして)から事務手続きに入ったとはいえ、アイも斉藤さんも例には漏れず現在交流期間が始まったばかり。期間は大体二ケ月が基準となるが、あくまで基準は基準。二人の関係性の構築が遅れれば伸びることもあるし、逆に短縮されることもある。

 

 小さいながらも芸能事務所の社長である斉藤さんは昼も夜もなく忙しく働いており、自然と比較的時間に余裕のある学生のアイの方が斉藤さんの都合に合わせて交流することとなった。

 しかし、それでも斉藤さんはよくアイに会いに来るし、積極的に交流を図っているため、おそらくあと一月ちょっとで半年間の同居が許可されると思われる。……映画版ジャイアンの理論だとか思ってませんよ? 

 

 ともかく、おじいちゃん(+ベディ似の運転手……執事……秘書? のおじいさん)が迎えに来る前にはアイは既に出かけていた。なので送別の時にはおらず、最後に別れが言えないままだったのは寂しかったので僥倖といえば僥倖だ。

 

「……ったく、朝からどんだけ食う気だお前。このまま食いまくって太るとか勘弁してくれよ……?」

 

「アイドルになったらそれこそ、やれ食事制限だー、やれ体系維持だーって、思うように食べられなくなっちゃうじゃん。

 っていうか、女の子相手に太るとかデリカシーがないよ、佐藤社長」

 

「斉藤だってーの、ったく」

 

 少し離れてこちらを見ていた斉藤さんが微妙に苦し気にお腹をさすりながら近寄ってきて、アイに苦言を呈す。

 しかし、のらりくらりとした発言と笑顔で誤魔化され、最終的に諦めたようにため息を吐いた。

 

「斉藤さん、すいません。アイが無茶言ってるみたいで……」

 

「……あー、いや。別にお前が謝ることじゃねぇよ。施設で特に仲が良かったんだろ? そいつが親族とはいえ引き取られて、まして海外に行っちまうとなりゃ見送りに来たいってのは当たり前だ」

 

 流石に心苦しくなってきたので、短く謝罪する。

 

 忙しい社長業の傍ら、時間を捻出してアイと交流しようとしているのに、当のアイに振り回されるならまだしも施設で一度顔を合わせただけの俺の見送りに駆り出されたのだ。色々と不満もあるだろうに、斉藤さんは逆に俺のことを気遣ってくれた。

 

 こざっぱりとした言動とさりげない気づかい、不思議と愛嬌のある表情、掲げる夢と立ち塞がる現実の差異を埋めんとする行動力────なるほど、ある種のカリスマ性を感じさせる。これは彼についていく人の多いことだろう。

 

 ……その分苦労も多いだろうけど、そこはまあ自分の選択の結果なので割り切って欲しい。

 

「…………ただ、一つ聞いておきたいんだが」

 

「なんですか?」

 

「なにー?」

 

「お前らの距離感がおかしいと思うのは俺だけか?」

 

 斉藤さんからの問いかけに『はて?』と、アイと目を見合わせる。……そんなにおかしいだろうか。【垂れたパンダ】か【リラックスしたクマ】のように完全に体重を預けてくる彼女を、横抱きにしているだけなのだが。こうしないとずり落ちちゃうし。

 

 斉藤さんの方に向き直り二人して同じ方向に首をかしげると、斉藤さんはますます困ったような怒ったようなどうにも形容しがたい表情に変わっていく。

 

「いや、近ぇよ近過ぎだろ。距離感ガバガバか?」

 

「普段からこのくらいだよ?」

 

「……来年からアイが中学に上がる前にはやめようとは思ってたんですけど、つい甘やかしちゃって」

 

「む、聞いてないよそんなの。別にやめる必要はないじゃん」

 

「『褒めて撫でて労わる』までならまだしも、人前でハグるのは年齢的にどうなの? 俺にも羞恥心くらいあるんだけど」

 

「本人がしていいって言うんだからいいのー。あと立香に……羞恥、心…………?」

 

「よーし、今年のクリスマスプレゼントは微妙なの送ろう。『まぁ、あれば困らない……いややっぱ困るな邪魔だなコレ。でも捨てるにはちょっと面倒だな』ってなるやつ」

 

「ウソウソホントにウソだからそういうのやーめーてー!」

 

「勿論冗談です」

 

「ウソだっ。立香は本気でやろうとするもんっ」

 

「……兄妹……ペットと飼い主……いやもうこれ親子、か……? いやでもなぁ」

 

 頬を膨らませペシペシとこちらを叩く怒れる一番星(プクプクアイさん)を鎮めていると、斉藤さんが何かを呟く。空港の喧騒に阻まれてよく聞こえなかったが、形容しがたい表情に納得の色が加わったような気がする*2

 

 

 

 そんな────日本での最後の語らいも終わりを告げる。

 

 

 

 飛行機の搭乗ゲート付近から、こちらを探してきょろきょろと視線を巡らせるおじいちゃんの姿を見つけると、膝に抱えていた少女を横抱きにしたまま立ち上がる。

 

「よっ、と」

 

「わわ。立つなら先に言ってよ、もう」

 

「ごめんごめん」

 

 そう言ってアイを降ろすと()()()()()()()()ずらしておいたボディバッグの位置を整え、ベンチ脇に置いておいたキャリーバッグを手にする。

 

 大き目のキャリーバッグをおじいちゃんから貰ったが……持って行くものはそう多くはない。

 

 入っているのは、()()()()両親の映った大切なアルバム、お気に入りの洋服、筆記用具に枕、酔い止めや胃薬などの医薬品、爪切りや歯ブラシなどの日用品、施設の子達から貰った記念品の入った箱くらいのもの────なので、余ったスペースには醤油や味噌などの和風調味料を大量にぶち込みました。

 

 アルバムと記念品以外は最悪紛失してもいいが、調味料(コレ)を忘れては向こうに行けない。

 

 なお、今の時点では知る由もないが祖父母の邸宅で開帳した時に祖母に泣いて喜ばれ、そばやうどんの乾麺すら満足に手に入らない事実に二人で涙した。しかしガレット用のそば粉はあったので、自分でそばを打ち祖母にさらに喜ばれたのは嬉しい誤算。……そば打ちを仕込んでくれてありがとう板長レッド(エミヤ)! 

 

 頭上に手を上げて振るとおじいちゃんもこちらに気づく。すぐさま歩み寄ろうとするそぶりを見せたが、俺の傍に立つアイに気づくと微笑ましいものを見るような顔になり立ちどまる。

 

 …………どうやらお別れが終わるまでは待ってくれるらしい。いつの間にか、斉藤さんも再び少し離れた場所に立っていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 …………たっぷり二呼吸ほどの時間を挟んでも言葉が出ない。彼女の本音は、あの日の夜に聞いた。それでも俺は選んだ。決断した。

 

 母のことを知り、もう両親はいないのだと納得するために────或いは、カルデア(あちら)のことを知る人は何処にもいないのだと、理解するために。

 

「……………………じゃ、行ってく「約束」──うん」

 

 未練を振り払うように、耐えかねて逃げ出すように僅かな言葉を残そうとした俺の耳に、喧噪に飲まれそうなほど小さい筈のアイの声音が確かに響く。

 

 もう一度しっかりと向き直り彼女を見る。そこにはいつも通りの────否、『いつも通り』を取り繕っても尚弱弱しい気配を隠さず、しかしいつも以上に真摯に星のように輝く瞳をまっすぐに向ける彼女がいた。

 

「約束、だからね?」

 

「…………指切りだけじゃ、信じきれない?」

 

「……………………」

 

 うんともすんとも言わず、けれどほんの爪先だけアイは俺の服の裾をつまむ。…………そっか、なら夜なべして作った甲斐があった。施設にいないって知った時は渡せないかなと思ったけれど。

 

 つぶれないようにしておいたボディバッグから()()()()()を取り出し、彼女の手に乗せる。

 

「じゃあ、()()。お守り代わりに持ってて」

 

「?」

 

 それは小さな体と四肢。白く艶のある毛並み。薄紫の瞳。ピンと立つ長い耳。ふわふわもこもこの尻尾。赤い紐で固定されたケープかマントのような布地を首輪のように巻いた小動物のぬいぐるみ。

 

「可愛い……」

 

「気に入った?」

 

「うん…………これ、何?」

 

「ぬいぐるみのフォウ君」

 

 手渡したのはヴラド公、ハベにゃん、ミス・クレーンたち、カルデア裁縫部から教わった裁縫技術を総動員して作り上げた力作────『1/1スケール フォウ君ぬいぐるみ』である。

 

 フォウ君のことは最後までよく分からなかった。マーリンと円卓の騎士たちに関わりがあったようだけれど、あんまり詳しいことは聞かずにいた。

 

 だから知っているのは、旅の中でふと気づくと側にいた彼のことだけ。そのぬくもりと毛並みに俺もマシュも癒され、そして救われていたのは確かだ。

 

 当人……当獣? の了承も得ずに勝手に作ったのは許してほしいけれど、最悪一回くらいは思いっきりタックル(フジマルトブベシフォーウッ!)されても構わない。

 

「もう一つ約束する。会いに行くときはまたフォウ君のぬいぐるみを持って行くよ。だから、アイもこの子を大切にね」

 

「……約束だよ?」

 

「うん、もう一度指切りする?」

 

「…………ううん。ね、この子、持ってて?」

 

「? いいけど────」

 

 差し出されたフォウ君ぬいぐるみを片手で受け取る。もう片方の手はキャリーバッグが転がっていかないよう、その取っ手に伸ばされている。

 

 手を伸ばすことで出来たスペースにアイが踏み込んでくる。いつものように抱き付かれるのかと思ったら、たおやかな繊手が俺の胸に置かれて────

 

 

 

────────────チュッ

 

 

 

 ────それを支えに背伸びをして、いつもより遥かに近く向き合った(かんばせ)を認識したと同時に、俺の口元でそんな湿り気のある音が響く。

 

 

 

「………………………………え?」

 

 俺が間の抜けた声を出した時には、アイは俺の手からフォウ君ぬいぐるみを取り戻していて。

 

「……えへへっ、じゃあね立香。()()、忘れないでねー!」

 

 いたずらげに輝く瞳が、チェシャ猫のような笑みとぱたぱたと足音を残して離れていく。

 

 俺はその場に固まったまま、彼女が斉藤さんを引っ張って行く姿を見えなくなるまで見送って、見えなくなるのと同時にフォウ君ぬいぐるみを抱えていた手の甲で唇へと触れて、

 

「? …………………………?! っ、~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」

 

 そこでようやく脳が現実に追いつき、先ほどの『()()』が『何』を指すのかを理解して、途端に灼熱が胸と顔から噴き上がり全身を巡って脳を焦がす。

 

 加速する鼓動、茹だる顔面と思考に立つこともままならず、その場にしゃがみ込む。

 

「うわー……うわぁ…………うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………

 

 口から零れるのは言葉にならないうめき声。その中にこもる感情は大多数が羞恥と高揚と悦びで、ほんのわずかに後悔が混じる。

 

 二年という歳月の中で、何時しか俺はカルデアの記憶を過去のこと──前世、のようなものだと思い始めていた。けれど訣別しきれずに、まるで行き来ができるかのように『あちら』と言う言葉を使って目を逸らしていた。

 

 それでも、と明確な訣別のために祖父と共にイギリスへと渡る決心をした。……その決心をしたのは、彼女が夢を追うと決めた日、その次の日のことで────

 

「ヤバイ……重症だ、これ…………」

 

 我ながら鈍感極まる。……いつしか、情が移ってしまった。いつの間にか絆されてしまった。

 

 ────いつからか、彼女(アイ)の一番傍にいたいと願い、そうなれた時のことを心のどこかで夢見てしまっていた。

 

「おや、もしかして自覚したかい?」

 

「……おじいちゃん」

 

 頭の上から響く祖父の声に顔を上げる。おじいちゃんは揶揄うような意地の悪い、しかし成長を言祝ぐような微笑みを浮かべていた。

 

 しかし、すぐにそれを引っ込めると、今度は厳格な表情でこう口にする。

 

「彼女を追うのなら止めない」

 

「……え?」

 

「色々な意味で『重い』少女だ。しかし、目を奪われるほどの天性の【何か】があるのも事実。きっと『彼女の隣にいたい』と思うものは多いだろう。…………日本に帰って来ても、誰かがもう彼女の隣にいるかもしれない」

 

「…………それは」

 

「私は妻を娶る時に、少し強引な手を使った。娘は己の人生を思うが儘に駆け、彼と出会い、君を生んだ。そこに、反省すべき点はあるが後悔はない。いや、()()()()()()()()()()()()()。…………立香、君はどうする?」

 

「俺は────」

 

 嘘偽りを許さない厳しくも穏やかな祖父の視線を受けて立ち上がり、彼女が人ごみにまぎれて消えて行った方向を一度だけ振り返って────

 

 

 

 ────それでも祖父の方をまっすぐに向き直る。

 

 

 

「…………後悔しないかい?」

 

()()()、絶対。後で『何で日本に残らなかったんだろう』ってなるに決まってる」

 

 いや、それも欺瞞だ。何せ、今だって駆け出して彼女に会いに行きたい。会って、抱きしめて、君が好きなんだって伝えたい。

 

「けど、()()()()()()()()。今のままじゃ、誰にも胸を張れない」

 

 でも、もし彼女が受け入れてくれても、今度はきっとおじいちゃんたちのことで後ろ髪を引かれる思いをするだろう。もし『カルデア』のことを知っている人がいても、後ろめたい思いをするかもしれない。

 

 それは、嫌だ。『駄目』でも、『悪い』でも、『間違っている』でもなく、『嫌』なんだ。

 

 約束した通り、次に彼女に会った時に────胸を張って告白できるような自分でいたいんだ。

 

 祖父の眼光を正面から受け止める。いっそ睨んでいるとさえ言えるほど、視線に意志と力を乗せる。

 

「…………『男子、三日会わざれば』とは、よく言ったものだ」

 

 時間にして数瞬の視線による真剣勝負。それを経て、やにわにおじいちゃんの表情が眩しいものを見るようにほころぶ。

 

「二度も聞くような野暮はしないよ。……これが立香の分のチケットだよ。行こうか、妻──おばあちゃんが首を長くして待ってる」

 

「…………うん」

 

 振り返り、搭乗口へと歩いていくおじいちゃんの背中を追う。歩く最中、唇に触れた右手の甲を見る。

 

 ……綺麗な、何も刻まれていない右手に赤い紋様を夢見て、誰に聞かせるという訳でなく言葉を紡ぐ。

 

 

 

「…………三画の令呪を以て、我が戦友たち、我が恩師たちに捧ぐ────」

 

 

 

 ────嗚呼、そういえば

 

 

 

「ありがとう。ずっと、絶対に忘れない」

 

 

 

────俺から先に、お別れを言ったことはなかったなぁ

 

 

 

「────────さようなら」

 

 

 

 ……………………応える言葉はない。身体に魔力が通る感触も、漏れ出た魔力で大気が震えることもない。

 

 

 

 

────けれど、俺はこの日になってようやく、この世界で生きていくに足る(ユメ)を手にしたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14. 離別の時きたれり、其は再会を誓うもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

【とある車内での一幕】

 

「社長~。昼ご飯だけど、テキトーにマックでも寄ってこ」

 

「…………オイコラ、聞いてねぇぞ」

 

「? 何が?」

 

「『何が?』じゃねーよ。言っとくが苺プロ(ウチ)でアイドルする以上、恋愛禁止だからな」

 

「…………立香と私は恋人じゃないよ?」

 

「悪いがウチみたいな弱小芸プロがアイドルを売り込むには────は? 今なんつった?」

 

「立香と私は恋人じゃないよ?」

 

「……………………いや、待て。それこそおかしいだろ。恋人同士だっていうならあの距離感も納得だったが、恋人でもないのにキスしたのか?」

 

「アレは、ほら。ノリっていうか、テンション上がっちゃったせいっていうか…………」

 

「ノリやテンションでキスしてんじゃねぇ……」

 

「…………でも、そっか。社長には立香と私が恋人に見えたんだ」

 

(恋人、かぁ……もし、立香と恋人になったら、二人で買い物……は、行ったね。水族館にデート……も、したなぁ。…………エッチなこと、とか? …………キスも、もっと深いのしたり、胸とか、お尻とか触られて、そのまま、は、裸でその、そういうこと、しちゃったり…………)

 

 

 

『────アイ』

 

 

 

「っ、~~~~~~~~~~~~~~!」

 

「うおっ!? こら、助手席で暴れんなっ」

 

「ゴメン社長でも無理っ!!」

 

(胸の奥が切ないのに、暖かい────ううん、熱い。立香のことでいっぱいになってるのに、キュゥッてして苦しい……。……………………そっか。私、立香に恋してるんだ……立香が好きなんだぁ…………)

 

「………………………………さっきも言ったがウチは恋愛禁止だぞ」

 

「…………社長、そこは空気読んで応援するべきじゃない?」

 

「ふざけんなよバカアイドル見習い」

 

「うわ。戸籍上だとしても娘(予定)にバカとか言ったよ、この人」

 

「うるせぇ、バカ娘。恋愛感情を捨てろ、なんて言わねぇが、恋愛すんならせめて俺の夢を叶えてからにしろ」

 

「…………確かドームライブだったっけ? ふーん。……………………ねぇ、佐藤社長?」

 

「惜しい、斉藤だ……って何度目だよ、このやり取り…………で、なんだ?」

 

 

 

「──────私、本気でやるね。アイドル」

*1
見た目は怖いけどいい人だった

*2
困り:納得:怒り=7.5:2:0.5くらい





……ということで、離別に至ってようやく自身の恋心を自覚する二人でした。

けどこれ、まだ『自覚』だけなんですよ。こんな長編に誰がした(戦犯:駄作者

本当はアイ視点も書きたかったんですが、途中で力尽きた。期待してた人もいるかもしれませんが、すまぬッ!


あと、とりあえずこの辺りで一回、休息をいただきます。と言うか、組んだプロットはここまでしかないんじゃ。
なので、本編の続きは九月中に投稿されてたら御の字くらいに考えていただきたく。
作者は『お盆休み? 帰省客が来るぞ。働け』な地方在住の客商売故、まとまった休みがなかなか取れんのです(Death)。しかも九月にもない。あー、温泉とか行きてー。

でも幕間は書く。予定としては離別後の「ドキドキプレゼント大作戦(視点別)」と施設での一騒動「ハロウィンエスケープ」の三話の予定だが、ハロウィンは抜くかも。

と言うことでアンケートを用意、ついでに匿名設定を外させていただきました。


正午には登場人物まとめを投稿します。


追記
9/4を持ちまして、アンケートの方を終了とさせていただきます。皆さま、回答ありがとうございました。

とある未来のプレゼントに付属する言葉。どの言葉がお好きですか?

  • ① 信頼・希望・運命・真摯
  • ② 二面性とその矛盾の解消
  • ③ 冷静・決意・希望・神秘
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