奏章Ⅱ「イド」解放……されたけど伝え聞くストーリー的に進められない……
インタールードを含む、メイン・ストーリーで出てきたアヴェンジャーズがアッセンブルして、『さよならバイバイ』するとか、マジか……。
いや、弊デアは今なお『ナニモン・ナンデス』ならぬ、『
その分と言っては何ですが、今回はわちゃわちゃ&クソガキムーヴ多め。佐藤、もとい斉藤社長の保護者力が高いのが悪い。
どうも、藤丸立香です。この度、三年ほど暮らしていたイギリスを離れ、日本へと帰って参りました。
飛行機代の他、諸々の経費を払ってくれた祖父母に感謝しつつ────早速ですが、現在お説教食らっております。
「……で、言いたいことはあるか、ガキども?」
「はーい。立香が悪いと思いまーす」
「んー……まぁ五割、いや、六割くらい俺が悪い、かな?」
「立香が十割悪いんですー。私は悪くないもーん」
「少なくとも斎藤さんが怒ってるのは、アイが置いていったのが悪いと思うんだけど」
「それだって立香が急に帰ってきたからでしょー。よって私は無罪でーす」
「そうかなぁ。そうかも……?」
「そーなのだ!」
「………………久しぶりに会ったから話は弾むんだろうけどな────アイはまず、置いてきぼりにされた俺に謝れ! で、お前は
斉藤さんの雷が再び落っこちるものの、アイは『私悪くないもん』とばかりにそっぽ向いて抵抗の構えだ。なお、カウンター席でアイと斉藤さんに挟まれる俺は防壁役である。
チラリとカウンター側を見れば、店長さんは『我関せず』と奥の方にある厨房で夜の仕込み。
一緒にかき氷を食べていた少年と少年によく似た少女は伝票、またはお盆を両手で持ってこちらをガン見。二人とも無表情ではあるが、その目は好奇心に輝いていらっしゃる。
さて、なんでこんなことになったのか────
『────抹茶オレ! 飲まずにはいられないっ! おかわり!』
『いやぁ、ごめんごめん。暑くてつい』
『ぷいっ!』
────そう、まずはいつの間にかやって来ていた【
結構な勢いでまくし立てられたため、よくわからなかった部分も多いものの、
『その髪色、何?』
『いつ帰ってきたの?』
『というか、来たなら連絡してよ、もー!』
『後、毎年二つもプレゼントありがとねっ!!』
と、以上の四点は分かった。
まあ、答えようとしたら『口答え禁止っ』と言われたので大人しく拝聴した、というのが正しいんだけど。
そうして息継ぎをしたところで隣に座ってもらって、飲み物を注文。外の暑さも相まってよく冷えた抹茶ラテを結構な勢いで飲み切ったアイは、そのままそっぽ向いてしまったのである。
『アイ? アイさーん?』
『つーん』
『アイちゃん、ほら飲み物来たよ? 飲まないの?』(子ども扱い)
『つぅぅーん』
『…………そういえば、会場からここまで結構離れてるけど、どうやって来たんだ? タクシー?』
『…………………………あっ!』
話しかけている途中で気づいたことを聞いてみたら、「やっば」みたいな顔をして声を上げるアイ。その瞬間、アイの持ってきていたカバンからコール音が響く。
慌てて取り出すとそろそろと耳を近づけて
『…………もしも『コラァ! アイ、お前今どこだコラァッ!!』ひゃうっ!?』
直後、隣に座る自分にも聞こえる音量で
なんか聞いたことある声だなー、と思い、話を横で聞いていたら相手は斉藤さんのようだ。どうも聞く限りではここの近くの駐車場まで送ってもらったのに、置いてきたらしい。
一応、このお店は一見さんはお断りしている。なので、斉藤さんを探しに慌てて出て行ったアイに付いて行き、その場で説教に移りそうだった斉藤さん共々お店に戻ってきたところ、現在のお説教に至ったのだった。
…………うん。呼んだ俺が言うべきじゃないかもだけど、やっぱりアイが悪いかな?
「あと、紛らわしい真似をすんじゃねぇ。グラサンかけた金髪褐色肌の兄ちゃんから、いきなり『オーラ、セニョール!』とか、ラテン系テンションで話しかけられたらびっくりするわっ!」
「そーだそーだ! 握手会の時もいきなり外国語で話しかけられてびっくりしたんだから!」
そんな風に考えていたのが悪かったのか、左右から叱責を食らう羽目に…………というか、アイさんは怒りの方向を俺に向けようとしてませんかね? この席順もアイが早々に端っこの席に着いたからだし。
一応、弁明するとすれば、色々と配慮した結果が
アイドルに限らず芸能人も生きた人間である以上、親兄弟・友人・敵味方中立など、仕事とは関係ない部分での人間関係は存在する。
そして余程近しい間柄でもない限り、それに口出しするべきではない。それはルールではなく、倫理・道徳、あるいはモラルとして引くべき一線だと思う。
…………それでも、人の心はままならない。
例え、行動そのものはまったく同じでも昨日と今日では感じるものは異なり、自分が感じる印象と他者から見たときの感想もまた異なる。
今日のことだって、変装せずに会いに行けばアイは喜んでくれるかもしれないけれど、『売り出し中のアイドルに、男の幼馴染が久しぶりに会いに来た』となれば、親代わりとしてはまだしも、社長としての斉藤さんはいい気はしないだろう。
ファンの人たちの推測・推察が意地の悪い方向に流れてしまうことだってある。それが悪質なデマにでもなれば、その火消しには時間と労力がかかるだろう。
自分が抱える
──ならばどうするか。
「そう考えた結果、『よろしい、ならば変装だ』という結論に至りました」
「くっ、結論はともかく、理由は真っ当な気遣いだから怒るに怒れねぇ……」
「むー。理由は分かったけど、金髪に日焼けまでして凝りすぎだと思うんだけどなー」
「や、変装は金髪だけだよ? 日焼けの方はちょっと前に無人島でガチサバイバルをやった所為だから」
『いや、何やってんの??』
自分の感情云々を省いてそんな風に伝えると、各々不満そうではあるが納得の表情を浮かべてくれた…………のだが、次の発言で双子まで釣られて突っ込みが入るのだった。
いやぁ、我ながら本当に何やってるんでしょうねぇ…………。(遠い目)
その後、そのまま少し早い夕食を共にしながら昔話────というか、向こうでの様々な体験談を話した。
途中で思い出したくない記憶が顔を出したり、お爺ちゃん
会計を済ませて外に出てみれば、辺りは街灯やビルの明かりを包むように夜闇の帳が下りていた。
「ん~~! お腹いっぱーいっ! 満足満足っ」
「他人の金だからって本当に遠慮なく食いやがったなコイツ…………」
「アハハ。でも、
「お前さんはもう少しこいつに厳しくしてくれ…………ってか、俺が食った分まで払ってもらったが、本当によかったのか?」
「元から奢るつもりだったので、気にしないでください。気になるなら今日のお詫びってことで」
そう説明すると、「大人としちゃ少し情けないが…………そう言うなら貰っとく。ありがとな」と、最終的には納得してくれた。
しかし、すぐに真剣な顔つきに戻ると、少し離れたところで両手を組んで背筋を伸ばしていたアイを呼びつける。そしてこう切り出した。
「久しぶりに古馴染と会ってモチベーションが上がってるところ悪いがな。お互いにあんまり近づいたりすんなよ?」
「? 何で?」
「『何で?』じゃねーよ、藤丸も言ってただろうが。こっから大事な時期だってのに、デマ・風評被害はおろか、もし『熱愛発覚!?』みたいなスキャンダル食らってみろ。【B小町】どころか、
「えー、めんどくさいー」
「めんどくさいじゃねぇんだよ、この能天気娘ぇ…………!」
(二人ともすっかり打ち解けたなぁ……)
言葉だけでなく、表情と態度でも面倒くささを隠そうともしないアイに、斉藤さんがキリキリと眉を吊り上げていくのを微笑ましく、でも少し寂しく思いながら眺める。
手紙の上では元気そうではあったが、どうあっても紙の上に並ぶ文字の羅列に過ぎない。やろうと思えば、いくらでも虚偽を告げることができる。
本当はどうしているだろう? 本当に楽しく過ごせているだろうか? 斉藤さんと仲良くやれているだろうか? ────寂しく、思ってくれているだろうか?
そんな風に少しだけ不安ではあったのだ。今日、実際に会って、言葉を交わして、目の前で斉藤さんに注意されながらも、口をとがらせて反論するアイを見て────
────よかった、と。
寂しさを覚えながらも、それ以上にそんなことを思った。
…………夜闇の中に
そんなことを考えていたら、斉藤さんの注意喚起がもはや説教の音域になっていたので割って入る。このままだと三度目の雷が落っこちそうで、それはさすがに近所迷惑になりそうだと思ったのだ。
「まぁまぁ二人とも。アイもあんまり斉藤さんを困らせない」
「…………立香はいいの? また会えなくなっちゃうかもしれないんだよ?」
「別に金輪際会うな、連絡するなって言ってるわけじゃないだろ? …………ですよね?」
不満そうに口をとがらせるアイ。その頭をポンポンと静めるように叩き、自分で言ってて少し不安になり斉藤さんの方に視線を向ける。
釣られて視線を向けるアイも含め二対の視線を受けて、斉藤さんは渋面を浮かべ、仕方がないとばかりに大きく溜め息を吐いてから口を開く。
「俺も鬼じゃねぇし、流石にそこまでは言わねぇけどよ…………まず当たり前だが、人目のある所に二人で遊びに行く、とかは無しだぞ」
「つまり、人目がないところに二人で行くのはOKだねっ」
「前言撤回すんぞバカ娘」
「男女……密室……二人きり……。何も起きないはずもなく…………」
「不穏ワード連発、やめろぉ! つか、唐突にボケるな!」
「…………でも、よかった。これで『会うな』って言われたら、ニンジャよろしくアンブッシュするところでした」
「おぉい! さっきまでの気遣いは何処にやった!?」
「あ、社長。立香はマジで忍者みたいなことできるからね? 施設の時も、窓と排水管の出っ張りで屋根の上までスルスル登っちゃうし」
「…………え、何、コイツそんなことできんの? 施設に居た時点で?」
「事前準備があれば『身代わり』もいけますよ?」
「お前さん、何処目指してんの???」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………何でいきなり黙るんだよ」
「「……………………………………………………………………(ガシィッ!)」」
「何だ、そのアイコンタクトと固い握手は!?」
「「うーん、ノリ…………?」」
「何で疑問形っ!?」
くるくると変わる表情と赤くなったかと思えば青くなる顔色。それでいて淀みなく返される突っ込みに、思わず所長たちのツッコミを思い出しす。思い出して、つい軽口を叩いてしまった。
ツッコミ疲れたのか。斉藤さんは大きく、本当に大きくため息をつくと、頭を振って消沈とした状態で口を開く。
「あーもー…………とりあえずクソガキども。連絡を取るなとも、遊びに行くなとも言わん。言わんが、絶ッ対に注意を怠らないようにしろよ?」
「はい、わかりました」
「やった! ありがと社長!」
「感謝するなら、ちゃんと結果出してくれよ? まったく…………さて、もういい時間だ。帰るぞ」
「お疲れさまでした」
「社長、またねー」
「オメーもこっちだよ、トンチキアイドルゥ……!」
俺の隣に立ち、しれっと斉藤さんを見送ろうとしたアイはこうしてドナドナされていった。………………まあ、連絡先は知ってるし、とりあえず俺も今日はホテルに戻ろう。
<簡易人物紹介、もしくは作者の覚書>
【藤丸】
相も変らぬ中立・善属性の逸般人。
三年間の留学の中で母、または祖父母の友人知人に可愛がられ、暇を持て余したシルバーズによるブートキャンプを強制受講。結果、『星天の加護(偽)』*1が十全に機能し始める。
【アイ】
多分、混沌・善*2属性の、天然
ハベにゃん式藤丸セラピーによって精神状態が多分に改善した結果、グループ内での軋轢も緩和されて嬉しい。代わりに(グループ内で)プライベートのポンコツぶりが露呈した。
【社長】
我らが佐藤社長。ゴッフ所長枠。
最初期はギスっていたグループ間の仲が改善されて、社長としても保護者としてもアイ以外に目を向ける余裕が生まれている。天然ボケ二人のせいで胃薬が手放せなくなりそう。
【
ゲスト出演。大学入学を機に上京してきた男女の双子という設定。
女子の方は店長に押しかけ女房しそうだし、男子の方は入学後に出会う女性陣に童貞もしくは生命を狙われそうだが、本編とは関係ないのでカットカット。