夜空の綺羅星は、青空に癒されたい   作:アッド・ウィステリア

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注)この先、特殊タグの使用でスマホ版画面だと文章の極一部に見切れがあります。
 可能ならばパソコンでの閲覧をオススメ致します。




03. 空には星の導きありて

 日本へ帰ってきて十日余り。俺はホテルからマンションへと移り住み、日用品を買い揃えて新生活をスタートした。

 

 その間に隣部屋に住んでいる人には引っ越しの挨拶として持ってきた紅茶とクッキーのセットを渡し、お爺ちゃんたちに無事帰国したことをメールで報告を済ませ、せっかくなので施設にまで顔を見せにも行った。

 

 職員の人は半分くらい入れ替わってしまっていたが、施設長と医務室の先生には会えたので良しとする……………………金髪に日焼けしたままで行ったらすわ何者だ、と言われたことに傷ついてなんかないですけど? 帰り道で美容室予約して髪色は戻しましたけど別に傷ついてなんかないですよ??

 

 それはそれとして、(誤解が解けた後)お土産を渡しに顔を見せに来た俺のことを、先生たちは思いのほか喜んでくれた。特に先生にはアイが斉藤さんと同居していた時にプレゼントを持って行ってもらったお礼として、お土産とは別にラズベリージャムの小瓶も添えて渡しておく。

 紅茶は勿論、スコーンやパンケーキにも合うのでご一緒にどうぞ。

 

『いやー、悪いねぇ。折角だし、今日はこれでティータイムと洒落込もうか。ついでに色々と話を聞かせてくれたまえ』

 

 ということで、広げられたお土産のご相伴に与りながら、あちらでの生活で印象に残ったことと帰国してすぐにアイに会いに行ったことを一通り話す。

 最初はあちらでの生活を物珍しそうにほうほうっと。

 

 母と祖父母の友人・知人によるブートキャンプのことを語ればドン引きした表情へ。

 

 アイの顔を見に握手会に行ったことを話し始めた辺りはそれはもうニッコニコで。

 

 その後、例のお店で再会した時の一幕を話したら『スン……』と真顔に。

 

 最終的に斉藤さんも合流して一緒に夕ご飯を食べて解散した(ドナドナされた)、と話したら、微笑ましいものと可哀想なもの、そして残念なものを同時に見るような、なんとも生温い目を向けられることとなった。

 

 そんな風に日々を過ごし、一段落着いた頃である。

 マンションからほどほどに近いスーパーで買い物中、()()()()()()()()()()携帯へ一通の電話が掛かってきた。

 

「? はい、もしもし?」

 

『あ、立香? 私私』

 

「…………え、アイ?」

 

『そだよー?』

 

「…………あの、携帯の番号教えた覚えがないんだけどなんで知ってるの?」

 

 これまでの文通でイギリスでの住所と電話番号、パソコンのメールアドレスは伝えてあるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()筈なのだ。伝えてあるのはイギリスの祖父母と緊急時の連絡先の一つとして先生くらいだ。

 

 にも拘らず、アイから電話が掛かってきたのは一体どう言うことか。…………なんとなく理由はわかるが、冤罪があってはいけないので一応聞いておく。

 

『先生が教えてくれたよ?』

 

「あのアラフィフ訴えてくれようか」

 

『あと一昨日、立香のおじいちゃんから送られてきたお手紙に住所もあったよ!』

 

「おじいちゃんは何してくれてんの??」

 

 アイの証言によって、あっさり下手人が判明(犯人が特定)。そう、アイに俺の電話番号を横流ししたのは、先日顔を見せに行ったときに緊急時の連絡先として教えておいた先生だったのだ…………!

 ………………まあ、そっちは大体予想通りだけど、おじいちゃんは想定外だったよ。二人して俺のプライバシーをなんだと思っているのか。とりあえず、次に施設にあいさつに行くときは(嫌がらせも兼ねて)加齢臭対策グッズでも持っていこう、そうしよう。

 

『そんなことより立香、今日の夜って用事あったりする?』

 

「え、個人情報の流出をそんなこと扱いしちゃうの?」

 

『まぁまぁ、いいからいいから。それよりどうなの?』

 

「よくはないんだけど。あと用事は特にないけど……」

 

『やたっ。じゃあ、今日晩ご飯作って!』

 

「え?」

 

『気分的にあっさり系がいいなー』

 

「あの?」

 

『じゃあ、そういう訳でよろしく! そろそろ出番だから切るね!』

 

「ちょっちお待ち??」

 

 そんな静止の言葉も虚しく、無情にも通話が切れる。ツー、ツーとスピーカー部分から漏れる軽い電子音を聞き流しながら、んんん? と首をかしげつつ脳裏に浮かべるのは部屋に置いてある冷蔵庫の中身。

 そして今現在、手にしている買い物カゴの中身をさっと確認する。出来合いのお惣菜に食パン、旬の野菜とドレッシング。そば、うどんの乾麺などが入っているが────

 

(…………足りない、かな?)

 

 踵を返して、新たに精肉やら何やらを買い足していく。とある特異点(グレイル・ライブ)で『アイドル』というものを身近で見ていた身として、その過酷な運動量を僅かなりとも自分は知っている。

『歌い』ながら『踊り』、その中で観客を沸かせる『パフォーマンス』を行うには、当然多くの体力が必要となる。そして消費した体力を回復させるには十分な休息と栄養補給が必要だ。

 

 栄養補給、つまりは食事。即ち()()()()である。

 

 しかし、悲しいかな。消費した分より補給した量が多ければ、肉体はその差分を排出しきれず貯め込んでしまうのだ。主に贅肉という形で。

 

 

『────ですので女性にとって、食事とは常に己の欲求と尊厳を秤にかける行為なんです』

 

 

 と、かつてお玉を片手に女神様(パールさん)が語っていたのを思い出す。神性が無駄に全開で、かつ女性陣の共感もあってその日の食事はやたらと厳かな雰囲気だった…………カーマは煽るようにドカ食いしてたけど。

 

 ……兎も角、下手な肉体労働より過酷で、その癖アスリートじみた栄養バランスとカロリーコントロールが必要、というのが【アイドル】というお仕事なのである。

 そりゃあ、その辺のことを任せられる人物がいるなら、任せてしまいたいだろう……………………任せられる側の状況とかを鑑みなければね! というか、何時くらいに来るのか聞いてないんだけど!? 

 

 アイドルと言っても、まだ中学生の女の子である以上、そうそう遅い時間になることはない。それは逆に言えばあまりのんびりできる時間がない、ということでもある。

 …………一人暮らしの男子の部屋にやってこようとする時点で『男として意識されてない』と言われているようではあるが、気になる女の子がやってくるのだから最低限の掃除はしておかなければならない。せめてファ〇リーズくらいはしなければ。

 

 そうして早急に買い物と掃除を済ませて約三時間後。食事の準備もあらかた終わったところで玄関の方からチャイムが鳴る。

 はいはい、と返事をしながらドアを開ければ、そこにはサングラスと帽子で顔を隠しているが満面の笑みを浮かべたアイ…………と呆れと苦みが迸った表情の斉藤さんがそろっていた。

 

「アイお前、本当に藤丸にお願いしたのか…………」

 

「だから、そう言ったじゃん。立香、今日の晩ご飯なにー?」

 

「まずは『お邪魔します』だバカ娘」

 

「…………色々言いたいことはあるけど、とりあえずご飯にしよっか。今日は蕎麦だよ」

 

「藤丸はちゃんと叱れ」

 

 というやり取りの後、とりあえずもう少しでできるし、玄関先に待たせる必要もないし、折角なので斉藤さんも一緒に食べましょう、と中に招き入れる。アイ? 静止することもなく、部屋に入り込みましたよ。

 

 ちなみに、借りているのはマンションによくある1LDK。一人暮らしの学生には少し広く家賃も高いが、お爺ちゃんたちが敷金礼金諸々を一括で払ってくれました。いや、マジで足向けて寝られません。

 

 生憎ソファも座布団もないので、ラグの上に直に座ってもらった。先に麦茶の入ったポットとコップを渡して自由に飲みながら待っていてもらう。

 斉藤さんは居心地が悪そう、というかすまなさそうにしているが、アイはきょろきょろと興味深そうに部屋の中を見回していた…………家探しとかしないよね? 

 

「はー、今日も疲れたー。お腹減ったー。お蕎麦、まーだー?」

 

「はいはい、今持ってくから」

 

 腹ペコを主張するアイが耐え切れずに家探しを始める前に、火を止めて茹でていたそばを一度ザルにあける。そのまま冷水でしめて水気を切り、使い捨てのどんぶりに個別で分ける。

 余った分はお代わり用にザルに残してラップ掛けて冷蔵庫へ、ついでに先に用意しておいた具材を取り出して小皿に分けて、と。

 

「はい、お待たせ。ばくだんそばでーす」

 

 お盆に乗せたそれらをローテーブルに並べていく。納豆とめかぶのパック、刻んだオクラとモロヘイヤ、さらに()()()とネバトロ食材がたっぷり。半熟卵は一人一つ(四つ茹でておいたが、斉藤さんもいるので一つは明日の朝ごはんにする)。

 あとは薬味としてワサビとショウガの他に刻んだたくあんと大葉。さらに角切りトマトをひき肉・にんにくと一緒にオリーブオイルで炒め、冷ました後で軽くレモン汁と黒胡椒をかけたそぼろも用意してみた。

 

「…………おい、藤丸」

 

「はい?」

 

「前に甘やかすなって言ったよな?」

 

「はい」

 

「オレの目にはカロリーとか、栄養バランスとかをちゃんと考えた献立に見えるんだが?」

 

「…………いやぁ、誰かと一緒に食べるなら美味しい方がいいなって…………」

 

 こればっかりは前世からの癖というか、宿業というか。自分一人だけならカップ麺におにぎりで済ませてもいいのだが、『誰かに食べてもらう』ことが前提になるとできる範囲で喜んでほしくて、つい。

 

「だからってここまで手間隙かけなくてもいいだろ…………」

 

「半分は冷食とか市販の物を使ってますし。そぼろ以外だと茹でたり刻んだりしたくらいで、半熟卵なんて熱湯に入れて放置ですし」

 

「うーん、ライブ前に電話してこの夕飯。立香はいいお嫁さんになれるね!」

 

「褒め言葉か、それ? というかお前、ちゃんと反省してんのか」

 

「もっちろん。反省してまーす」

 

「…………ちなみに後悔は?」

 

「まったくもってありません!」

 

 鉄板の合いの手に全力の『ドヤァ……!』顔を披露して胸を張るアイ。対して額に手をやって天井を仰ぐ斉藤さんの対比が実に面白いが、笑うのは流石に失礼と判断し曖昧な表情のまま、どうぞ召し上がれと声をかける。

 目の前の蕎麦の入ったどんぶりの中に次々具材を投下する俺を見て、二人も具材を手に取って自分のどんぶりへと入れていく。

 

「…………こう暑いとネギの代わりに大葉もいいな」

 

「ん! トマトってお蕎麦に合うんだねー。イタリアンみたい」

 

 それぞれ気になった薬味をめんつゆと共に入れてズルズルとすする。たくあんも食感が変わっていい感じだ。

 

 …………さて、いい加減叱るべきところは叱らなければ。

 

「アイ。食べながらでいいからちゃんと聞くように」

 

「んむ?」

 

「とりあえず今回はいいけど、いきなり夕飯を食べに来ようとしない。食べに来るなとは言わないから三日、いやできれば一週間前には連絡してほしいんだけど」

 

 今日も本来は出来合いの総菜とごはんか、ざるそばにするくらいのつもりだったのだが、急遽材料を買い足すことになったのだ。当然だが食べる人間が増えれば比例して食費も増える。

 それなりに蓄えはあるとはいえリソースは常に有限である以上、分配する割合を考え、減らせるところは減らしていかなければいつか困窮してしまう羽目になる。主に素材(骨・証)とかね。

 

「ついでに言うとこれから編入する高校の手続きとか、バイト探しとか、採用されればバイトもあるから時間作れなくなるかもしれないし」

 

「そうだぞ、アイ。藤丸にも藤丸の都合があるんだ。あんまり甘えすぎるなよ?」

 

「あと、時間があった方がちゃんと美味しいもの作れるし」

 

「甘えるなって言ってんのに甘やかそうとするんじゃねぇバカ野郎」

 

「……………………………………………………ん?」

 

 ポロっとこぼした本音を受けて、今度は俺が社長から説教を食らう羽目に。

 

 その間に蕎麦を咀嚼していたアイはふと何かを思い起こすように、あるいは考えを巡らせるように首を傾げ、ついでニンマリと口角を上げる。

 

「いいこと考えた!」

 

「…………な、何が?」(漠然とした不安がよぎる顔)

 

「…………一応、聞いてやる。どうした?」(嫌な予感がするが、聞かないと収まらないだろうなという顔)

 

 

 

「────立香もウチの事務所でバイトすればいいんだよ!」

 

 

 

「「…………What?」」





ただ、イドのストーリーにのうをやかれた。

なのに大統領特異点? アクアマリー? まほよコラボ? 加えてプーリンピックアップ? 寒暖差で(財布まで)殺す気かな?

なので次回は遅れると思います。
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