夜空の綺羅星は、青空に癒されたい   作:アッド・ウィステリア

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あらすじやタグにもありますが、BOXイベ周回のため執筆速度が駄々下がりいたします。執筆そのものは続けますが、報酬がおいしい、おいしすぎるんじゃあ……

とりあえず急ぎ書き上げた第3話を投稿。立香とアイが直接関わるお話は基本、星と空、あるいはどちらか一文字サブタイトルに入れようと思います。
そうでない場合はライトノベルとか、銀魂のサブタイトルにありそうなタイトルにしていきたい。

相も変わらず地の文とセリフのバランスが分からん……そんな作者ですがお付き合いくださいませ。




3. 男子はバカ話がしたい生き物 そこに年齢は関係ない

 カルデアの記憶を思い出してしばらく、俺は普通に施設で暮らしている。日中は学校で過ごし、休日には遊びに行ったり宿題をしたりの、健全な小学生生活だ。

 

 といっても俺の日常に『変化がない』ということではない。カルデアの記憶のおかげというか、そのせいと言えば良いか微妙だが、生活が少しずつ変わってきている。

 

 何せ、人間が老いて死ぬまでの一生分の記憶だ。その中から得られる知識はそれなりに多く、ましてや強烈で鮮烈な旅路の思い出が、その記憶の中心にして青春と言えるものなのだ。

 

 特に最後の二年間。これが強烈過ぎた。カルデアから帰るまでのたった二年で、大卒の新社会人レベルまで知識と技能を叩き込まれたのだ。

 

 聞く人が聞けば羨ましがられること間違いなしの、綺羅星のような英雄・傑物たちによる、やる気に満ち溢れた授業である。……もう一度言う、やる気に満ちた――――即ち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、(()()()()()()()()()()()()()()授業である。

 

 そんな教師陣の熱意ないしスパルタぶりは、当時最大の息抜きが散発的な微小特異点の修復であったことから推して知るべし。ゴルドルフ新所長やムニエルたちカルデアのスタッフが一度見学に来てくれたけど、扉をそっと閉じて以降、マシュ以外は近寄らなかった。

 

 多種多様な知識と技能を丁寧に教え込まれ、教材を以て実践し、できなくとも怒られはしないが、できるまでやればできますと笑顔で押し通される。

 

 俺は皆が時間を惜しんでくれていることが分かっているため、連日遅くまで予習・復習を行い寝不足でしょぼしょぼ。子供系サーヴァントは遊ぶ時間が取れずにしょんぼり。複数の抗議があった(のち)、教師陣は流石にやり過ぎたと消沈。

 

 そのお蔭で半年で高卒認定、次の一年で大卒認定の試験に合格できた時の喜びは一入(ひとしお)だった。……『よく頑張った! でも帰るまで時間はあるし、もうちょっとだけ教える(遊ぼう)ね?』 と笑顔で視界いっぱいの課題の『壁』*1の前に立たされた時は泡を吹いて気絶した。ハロウィンに続く、俺のトラウマである。

 

 それと比べれば小学生の勉強などは、まさに月とスッポン。いや、スッポンと銀河系くらい違う。

 

 勉強に関してだけ言えば、教科書さえ目を通してしまえばほぼ問題ない。問題は人間関係の構築――要は友人に関して、だ。

 

 カルデアの記憶があるために、どうしても周りと合わせようとするのが難しい。皆が皆子供のように見える。実際、俺も含めて義務教育も終わっていない子供だけど。

 

 年齢一桁くらいの子達は心置きなく子供扱いできるが、二桁に上がる子達は思春期に差し掛かり気難しい年頃となっている。この間も女の子の宿題を手伝っている時に思わず頭を撫でてしまい、その子は顔を真っ赤にして怒っていた。謝ろうと声をかけようにも避けられていて、しかもそんな感じで気まずくなったのがあと二人くらいいる。

 

 なので最近はちっちゃい子達といるか、職員さんたちの手伝いをするか。あとは少し身体を鍛えるようになったくらいだろうか。

 

「最近はどうだい、藤丸君。何か困ったこととか、あの子が気になるとか、性のお悩みとか、ラブコメ的なサムシングとか、そういうのはないかな?」

 

「強いて言えばもう少しキッチンに立たせてほしいです。あと、そういう繊細なことを明け透けに聞くのはどうかと思います」

 

「おや、知らないのかね? 老い先短い老人にとって若人の甘酸っぱい恋愛事情ほど健康にいいものは無い、と学会で証明されているのだよ?

 キッチンについては君が入ると、子供たちが君が作るお菓子の争奪戦を始めるからなー。大量生産可能ならワンチャンあるかもしれない。あとは最初に私に分けてくれたら施設長に掛け合ってみよう」

 

「それってどこの学会ですか? 最近、農家から寄付で不揃いのリンゴが来てましたよね。リクエストがなければ、ジャムでいいですか?」

 

「甘味なら私は何でも歓迎だとも。学会では主に麦茶の親戚と米で出来たジュースがよく出てくるねぇ。皆、熱心に討論しているよ」

 

「うん、居酒屋ですねそれ」

 

「うむ、そうともいうねぇ」

 

 ……とまあそんな感じで過ごしていたのだが、なんかすっごい胡散臭いというか、キワモノっぽい本業の医師とカウンセラーを兼任しているおじいさんに気に入られた。多分、以前手伝いをした時に作ったチョコバーをおすそ分けしたのが原因だと思う。

 

 というかナチュラルにワイロ要求しないでください。お世話になっているから作りますけども。

 

「まあ、居酒屋云々は置いといて、だ。……酷なことを言うがね。ここのような施設にいる子供たちは少しばかりとはいえ、他の子供とは、違う。

 心身両面に疵を負ったのだから当然だが、人間関係を構築するのが不得手な者が多い。例えば暴力的だったり、感情的だったり、依存的だったり。あるいは()()()()()()()()()()()()()()()()()、ね。

 そこに普通の人間でも制御するのが厄介な『惚れた腫れた』が絡めば、最早暴走としか言えないことにも繋がってしまう。そんなトラブルを未然に防ぐためには、多少、明け透けに接して、その反応を見て推察する必要もある。それで恨まれもするが……何、君たちの心身の健康と比べれば安いものだ」

 

「先生……」

 

「あとは、うん。単純に私の趣味、いや性癖だね。この仕事はまさに天職だよ。若い子の拗れたイチャコラとかマジ眼福。いやー、ホンット心の底から若返るようだ!」

 

「先生ェ……」

 

 居住まいを正して決め顔までして語り始めたのに最後の最後で台無しにする、この残念臭漂う発言。俺、先生のそういうところ…………嫌いじゃないよ!

 

 でもそれはそれとして、後で職員の誰かに密告するからね。大丈夫、渡すことになるジャムを半分提供するくらいで済むと思うよ?

 

「藤丸君は『キッチンの使用許可申請』、と。他に何かあるかな?」

 

「後は……うーん、特にないですね」

 

「そうか。では聞き方を変えよう――何か子供の中に様子がおかしかったり、気になる子はいないかな?」

 

「……なんでそれを俺に聞くんです?」

 

 ……本当にこの先生、普段の発言で損してるなぁ、と思わずにはいられない。

 

 先ほどの決め顔と比べてふんわりと笑っているはずなのに、その奥の眼光だけがまるでメスに変わったように、些細な変化一つ見逃さない真剣さながらの鋭さが宿る。

 

「君は周囲の子達、特に幼い子供たちの面倒をよく見ているだろう? それはね、私たち施設の職員よりはるかに近い距離感だ。

 私たちは大人として凝り固まった価値観がある。それはそれで社会で生きる上で必要なものだが、子供たちに共感し、理解するには邪魔になる。

 加えて言えば、君は周りの子と比べても早熟で大人びているが、まだ子供としての感性はまだ失われていない。ならば、我々では気づいていないことも、君は気づいているのでは、と考えたまでさ」

 

「……先生って探偵もやってたりとか?」

 

「いいや。私は只の、どこにでもいるスーパードクターだとも」

 

「でも臭――すごく胡散臭いですね」

 

「君、私に対して辛辣過ぎじゃない? ていうか今、臭いって言おうとしなかった?」

 

 

 


 

 

 

 

 

 医者となり幾年月。取りこぼした命も、掬い上げられた命も数えきるには難しくなったものだと一人ごちる。

 

 幸い、医者として才能はあった。当時の技術・医療機器は現在ほど充溢していなかったが、それでも己の腕で救える命は全力で掬い上げてきたつもりだ。取りこぼした方が多いだろうが、どんなに才能のある個人であれ、いかに優れた道具であれ、限界があることを自分はもう知っている。

 

 医術とは命を扱い、継ぎ接いででも繋ぎ止める術。メスを入れ、患部を切除し、肉と皮膚を縫合し、栄養と時間、それを支える資金さえあれば身体は自然と癒える。

 

 だが、心を病んでしまった者。こればかりは医術では如何ともしがたい。

 自殺を選ぶ者はこの世から絶えることはなく、そこに医術の挟まるスキはない。ましてやそれを選ぶのが未来ある若者であれば、命を救うことを生業とする自分にはなおのこと忸怩たる思いがある。

 

 彼らに必要なのは合理に支えられた冷たい刃ではなく、暖かな時間を共有し支えてくれるナニかなのだ。医者に、医術に、それを与えることはできない。

 

「しっかし、早まったかなー。でもまあ、『兵は拙速を尊ぶ』と言うし、早いうちから支えとなるものを見つけておいた方がいいよね?」

 

 職場である医務室の窓を全開にすると、ぱたりと。窓から飛び込んできた風が、とある二人の子供の心身の健康状況、およびそれに関わるであろう情報を記載したカルテを閉じる。

 

 最近お気に入りの少年には若干気の毒なような気もするが、どうも女難というか誑しの気配が垣間見える彼には、あの子くらい世話の焼ける娘っ子の方がちょうどよいだろう。

 

「いきなり肉体関係から始めるようなことにならなければ、私は応援するとも」

 

 まあ、そうなったらそうなったで面白――もとい美味しいしね! その時は先輩として歓迎するとしよう。ようこそ、人生の墓場へ!!

 

*1
ベルリンの壁位ある




とーじょーじんぶつしょうかい

先生
 立香達の施設に常駐する医師。ロマンスグレーのふさふさな髪の毛を丁寧に整えたおじいちゃん先生。なんか胡散臭い。前は髭もあったが、立香に正面から『うわ、胡散臭い』と言われて剃った。でもやっぱり胡散臭い。
 健全な意味で子供好きで、未来ある若者を守るのに意義を感じる好々爺。同時に子供たちの恋愛模様を全力で愉しみ、場合によっては誰にもバレずに、しかし率先してかき乱し誘導する悪い大人。破局・破滅させたいわけではなく、バラエティーのようなすったもんだが見たい愉快犯。恋愛リアリティーショーを生で見たい、厄介なガチ勢。お巡りさんコイツです。

 自分でも言っていたが、実際にスーパードクター。少なくとも施設にいい意味で常駐できるような腕前ではなく、今も時折都内の大学病院に出入りしているとか。施設内の人間全員の医療・健康面を統括する影の施設長。立香の作る甘味のファンの一人でもある。

 胡散臭さを強調する時点で分かる人もいるかもしれないがFGOの新茶がモデル。バーテン衣裳から白衣に着替え、髭を剃ったら、またはルーラーの方のモリアーティ(第一再臨)が、もし善性の道に進んだらこうなるかもしれないという空想から。

以降ネタバレのため透明化
施設職員の中では唯一、アイの虚言癖に気付いていた人物という裏設定。世界が異なり、似姿に過ぎないとはいえ、犯罪界における皇帝を誤魔化せるほどの虚偽を、高々十を数えたばかりの小娘に成せるはずもない。
見逃していたのは『彼女を救う要素を持つ少年がいたから』。ただ嘘を暴き立てるのではなく、虚偽をそのまま受け入れながら本当の心を見つけられる者がいれば安心だろう、という言葉にしない愛情故。原作における彼女が気づけなかっただけで、しかしちゃんと彼女の未来を思い、幸あれと祈る人はいたのだという作者の願望の投影。

後、立香から密告を受けた職員たちに渡されたジャム二瓶の中身、その7割を休憩時間に提供する羽目になる。
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