しかし、
という訳で一週間ぶりの投稿。あ、今度は仕事のシフト変更とかの関係で、早くて隔週更新位になりそうです。なんでこう、タイミングが……
相変わらず、ペースとかセリフ回しとか、特殊タグとかに慣れませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
その後、星野さんは体力が尽きるまで泣きはらし、尽きてからはそのまま俺に抱き付くように、もたれ掛るように眠ってしまった。今は、時折聞こえるしゃくりあげる声と寝息だけが夜闇に響く。
俺が着ているTシャツは、とっくにべたべたでビショビショ。いかに今の身体が小学生のものとは言え、肩から背中に沿って脇腹辺りまで濡れており、脱水症状が心配になるほどの涙を彼女は流した。
「…………それだけ不安だったんだなぁ」
そう呟いて改めて、そ知らぬふりをしていたことを申し訳なく思う。
この世界の
施設の皆と過ごすことでは埋まらない不安も寂しさもある。だが、両親に抱き上げられた時の温もりと安らぎを確かにこの身体が覚えている。
そこに
“俺”には両親のぬくもりがあった。俺にはカルデアの皆が一緒にいてくれた思い出があった。…………すっぽりと胸に収まる、俺よりずっと細く小さい身体の彼女は、不安も、寂しさも、悲しさも、愛おしさも、全部全部一人で孤独に抱え込んでいた。
「――――よっと、と、うわ、った……!」
少しよろめきながらも、なんとか眠ってしまった星野さんを抱え上げる。……むう、筋トレはもう1セット追加しよう。
さて、まずは抱えている彼女を寝かさないといけないのだが、
「………………………………どうしよう」
やるべきこととして、星野さんをベッドへ運ぶ必要がある。……Hな意味じゃないよ? 夜風で風邪をひかせないためだよ?
しかし、現在の状況として、時刻はド深夜。当然のことだが施設の門限はとうに過ぎ、就寝時刻、消灯時刻も現在進行形で大幅に超過中。
理由とか話した内容を抜かして考えれば、俺も星野さんも寝間着姿の軽装で二人っきりで密会。
加えて彼女の目じりには泣いた跡があり、抱き合っていたため、お互いに『話をしていた』と言い張るには無理のある不自然な服のシワ。
………この時点で既に詰んでいるような気もするが、上記を踏まえたうえで、選択肢として頭に浮かぶ案は以下の三つ。
【案①:俺の部屋に運ぶ】
俺の部屋は二階にあるため、窓からの侵入は不可能。いや、一人ならやれる自信はあるけど、彼女を抱えたまま戻るのは、今の貧弱ボディでは無理。
正面入り口から戻ろうにも、施設の子供が勝手に抜け出したりしないよう職員さんが巡回を行っており、そんな中スニーキングミッションを遂行できるほどの実力は流石にない。
というか、そもそも眠っている女の子(10)を連れ込むような真似、どう考えても事案です。当然、バレれば説教+反省文の山。
【案②:彼女の部屋に運ぶ】
施設のルールとして精神および肉体の成長によるトラブルを防ぐために、十歳以上となったら男女別で寝室が割り当てられており、就寝時刻を超えて以降、(逆はまだしも)女子用寝室及びその周辺は、緊急時以外は原則男子禁制である。
前述のとおり、正面突破は不可能。窓から入る手がないでもないが、真夏以外、夜は基本的に鍵が掛かっているので多分無理。かかっていなくとも、星野さんと相部屋の子に見つかったら、言い逃れはできないだろう。
なんにせよバレたら、もれなく説教+反省文の山に罰当番が加わりそう。
【案③:どこか別の部屋で寝る】
施設には男女別寝室エリア以外にも、談話室や図書室、まだ幼い子達が共同生活を行う部屋など、共用の場所も当然ながら存在する。
一部の子達が泣き始めて結局全員が泣き出してしまった時とかに、宿直の職員さんたちや(何故か)俺が駆り出されて一緒に布団を持ち出して雑魚寝したりするので一見、何とかなりそうである。
しかし、今夜は生憎と静かなもの。そうすると俺や星野さんが寝るスペースはないし、勝手に入って泣き出してしまったら即、バレる。
そもそも子供の安眠を妨げるものではない。『幼子の安眠を妨害するべからず。――また妨害する者を赦すべからず』って、お昼寝する子供系サーヴァントたちを眺めながら
毛布を持ち出して談話室で寝るとしても、俺の部屋に外から一度戻って調達したくとも、抱き上げた少女を一人にしないといけないわけで――というかガッチリ掴まれて、外せないわけで。
結論:割と、っていうか普通に詰んでいますね。――――どうしよう、助けてイマジナリーテペウ!(現実逃避)
『諦めましょう。
ですよね、知ってた。そして星野さんを抱える腕がプルプルと痙攣してきて、乾いた笑いすら出てこない。
そんなところでその声は聞こえてきた。
「…………おーい、藤丸君。こっちこっち」
「…………先生?」
声の聞こえた方を見れば、何故か医務室の窓から顔を覗かせる先生の姿が。
そちらに近づいていくと非常用の勝手口を開けてくれたので、外履きのままではあるがありがたく入れさせてもらう。
……にしてもこの人なんでいるんだ? 確か、この人が宿直する日ではない気がしたのだが…………………………もしかして
「先生、何してるんです? 家から追い出されて寝るところがないとか?」
「ホント、君ってば辛辣ぅ。私だってまがりなりにも医者の端くれだよ? 普通に君たちが心配で自主的に残っていたのさ」
「人にカウンセリング丸投げして、どの口が言うんですか」
「君を信頼して任せた、と言って欲しいねぇ。年寄りが口うるさく言うよりも、同年代の君、その真っ直ぐな言葉の方がよーく響くだろう?」
とりあえずベッドに腰掛けて、外履きを脱ぎながら囁き声で軽口を叩き合う。星野さんを抱きかかえているのは同じだが、膝の上に乗せる形になったので大分楽になった。
強張った腕をプラプラさせたり揉み解していると、するりと足音もなく近づいてきた先生が、今なお俺のことを拘束する彼女の腕にほんの僅かに指先で触れる。
そのまま、僅かな衝撃で割れてしまう玻璃の器にでも触るような繊細さで少女の細腕に指を滑らせていくと、あっさり拘束が解かれた。
目の前で見ていたはずなのに、きつく縛っていたはずの靴紐の結び目がいつの間にかほどけていた、ような感覚だ。
……流石は(自称)スーパードクター。どうやら硬直していた身体を、マッサージとも言えないような動作だけで瞬く間に弛緩させたようだ。
でも、その技術を悪いことに使ったりしてない? って思ってしまう俺は悪い奴だろうか。
とはいえ、チャンスである。あのままだと、なし崩しにベッドインしなければならなくなるところだった。
バレた時の説教も反省文も、勿論罰当番もできれば遠慮したいが、他の人に見られてバレるか、バレない代わりにこの先生に直接見られるか、どちらかを選べと言われたら断然前者である。
この愉快犯の目の前で、
子供を抱きかかえるような体勢から、膝の裏に手を入れ背中を支える――所謂お姫様抱っこへと体勢を変え、ベッドから身を下す。
掛布団の下に彼女の身体を滑り込ませて、布団の位置を整える。口元や目元にかかっていては鬱陶しいだろうと思い、紫の光沢を帯び艶めいた彼女の黒髪に指を滑らせる。
……泣き腫らして赤く染まった目元が痛々しく、眉根を寄せる彼女の頭を撫でる。俺にそんな資格はないだろうけど、彼女の慰めとなるように。よく頑張った、と褒めるように。
数回、それを続けているとほんのりと寝顔が柔くなっていった。いつの間にか、俺の隣で彼女の寝顔を眺めていた先生も微かに笑う。
「……ん、いい
「そうですね。そうなると嬉しいです」
「うむ。……ところで参考までに聞くが、彼女をどう口説いたのかな?」
口説いてません、と反論してから、とりあえずどのようなことを話したのかを掻い摘んで説明する。
説明するうちに表情が引きつり、終いには眉間のしわを伸ばすように指をあて、「……私が考えてたより、遥かに鋭角な
「(星野君より、むしろ藤丸君の未来が心配になって来たな……。分け隔てなく接する誠実な人柄もあって対立する子はそういないだろうが、良くも悪くも言葉がストレート過ぎてまともに打ち返せる子もまずいないだろう。幼い子達からの人気は言うに及ばず、だ。
学業も最近は頑張ってるようだし、調理技術は大人顔負け――というか大人の立つ瀬がないくらいだ。運動神経も悪くない……もしや最近行っているのは、体力づくりのランニングかな? このまま続くと仮定すると、高校生くらいには基礎体力という点では、昔からその競技を続けているアスリート以外には負けないくらいになるだろう。
……………………ダメだ。どうシミュレートしても修羅場か、夜道で刺されそう。特に後者は男女問わず来そうだな)」
「……………………よしよし」
「(後、君そうやって気軽に女性の髪や頭を撫でながら、微笑むものじゃないよ? 絶対に勘違いする子とか、いいなぁとか思う子出るからね? っていうか出てるから。
……………………うむ、これはアレだ。全力で応援してあげるしかないね。少なくとも彼らがご親族か、里親に引き取られるまでは、私が
「あ、そうだ。先生に一つ聞きたいんですけど」
「まずは手始めに――――っと、すまない。考え事をしていて聞いてなかった。もう一度いいかね?」
「いいですよ。で、聞きたいことがあるんですけど」
「うむ?」
「ど こ か ら 見 て ま し た ?」
「ぎくぅっ!?」
自分で『ぎくぅっ!?』とか言っちゃってる辺り、余裕あるなこの先生。
でも、普通におかしいんだよなぁ。この愉快犯が傍目にはラブロマンスにも、学園ドラマにも見えるあのシチュエーションを見逃すはずもない。
そういう性癖だって自分からカミングアウトしていた以上、絶対に何処からかデバガメしていることは明白だ。てっきりカメラでも仕掛けているのかと思ったが、よく見れば茂みのスペースから医務室は見えづらく、医務室からは茂みのスペースがよく見える位置にあった。
しかも暗視スコープ機能付きのビデオカメラ(カーテン裏にあった)で盗撮とは良い度胸である。ちなみにお値段、クソほど高い奴。何に給料使ってんだ。
誓って言うが、先生のことは嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、流石にこれはない。ちょっと物理的に痛い目見てもらおう――――と思い、踏み出そうとしたところで
「…………んぅ」
ぎゅっと、手を握りしめられた。
振り向けば、星野さんが眠ったまま俺の手を取っており、そのまま引っ張られ体勢を変えて胸元で抱えるようにされてしまう。……意外と力が強くて、無理にはがそうとすると多分起こしてしまうだろう。
ガチャリッ、と外から扉にカギがかけられる音に慌てて振り向けば、曇りガラスの先に見える人影。更にいつの間にか、カメラもない。今の一瞬で、完全に、してやられた。
……よーし、今度から丁寧に接する必要はなさそうだ。もう少し粗略にしてやるチクショウめ。
諦めてベッド脇に膝をつく。俺の手を包み込むように握る彼女の手を、何とはなしにもう一方の手で包んでみると、先ほどより寝顔が安らかになっていく。
「…………ま、しょうがないかな」
――――先生の泣き顔とかより、
そう自分で納得して、手を握りしめている間に俺は眠りに落ちて行った。
前回のあとがきで『一話挟んで幕間』と言ったな、アレは嘘だ。ていうか、無理だった。
書いてる途中でやる気が激変したり、あれこれ推敲しているうちに7,000字越えそうだったり、FGO世界の方々を引用しすぎたり、エルデンリングを求めてたら、このありさまだよ!
まして今月は休日出勤になりそうな気配が……会社滅びねーかな。
あと、今回出てきたイマジナリーテペウの他、イマジナリー○○は基本、異聞帯の協力者たちです。イメージとしてテペウは『ははっこりゃどうにもなんねぇな』、パツシィは『うるせえ泣き言ほざくな』の化身です。未来の
立香視点はいったん切り上げて、次回はアイ視点から始めてみようかと。ただ、パーソナルとセリフのクセを再度把握するために漫画一巻とアニメ一話をもう、一度、見な、い、と……(Over Kill
評価・感想、お待ちしております……(お通夜状態