新・日本国召喚   作:npd writer

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「戦争というものは、最も卑しい罪科の多い連中が権力と名誉を奪い合う状態をいう」ーートルストイ


第11話 蹂躙

 シャークンは海の向こうへ目を凝らして見つめていた。未だに姿が見えない敵に対して抱いている、言い表すことのできない不安感が尋常ではなかったためだ。

 彼らの姿が見えない以上、敵軍が待ち構える海域に接近し続けるしかない。幸い、此方には他国を圧倒できる軍事力がある。会敵した場合は接近し、乗り付ける方法で制圧できるはずだ。

 矢で敵艦隊を攻撃し、怯んだところへ突撃隊を敵艦へ突入させ、一気に制圧しようと考えていたシャークン。ふと、彼は何かを感じ取った。

 

「なんだ?何かが来ている……?」

 

 はたして、彼の予想は当たってしまう。

 殺戮の始まりは一瞬だった。突如、前衛を進んでいた船が爆発したのだ。一隻程度であれば、火薬庫が運悪く誘爆したと考えられたかもしれない。だが、シャークンが瞬きするうちに更に数隻が同じように爆発し、木片と乗組員や戦闘員の肉片を撒き散らしながら沈んだ。続けて巨大な水柱も上がり始め、その中心にいた船は、船体を維持できずに沈んでいく。

 

 ロウリア海軍への攻撃ーーイージス戦艦の「ミッキーマウス」、「アイオワ」、「陸奥」、「ヴァンガード」のR砲による攻撃は、発射後から音もなく超高速で接近し、敵艦隊前方に命中していく。レーダーで捉えることが難しい攻撃を、技術で劣る彼らが探知できるはすがないのだ。そしてアメリカ、イギリス、フランスのトリウム炉を搭載した潜水艦も長距離魚雷であるMk.50による攻撃を開始していた。

 

 無論、シャークンらも油断していたわけでない。敵の姿が見えずとも警戒を劣らないように再三に渡り、念を押すよう通告していた。にも関わらず、味方が次々に攻撃されていく。シャークン以下、生き残っている者たちは何が起きているのか、さっぱり分からない。

 

「な、何事だ!敵の攻撃か!?」

 

「分かりません!突如、前方を進んでいた船が沈没したということだけしか!!」

 

「そんなことは分かっている!敵の攻撃か!?それとも事故か、と聞いている!!」

 

「敵艦隊は未だに発見できず!敵からの攻撃とはとても思えません!」

 

 シャークンと部下のやり取りの間にも、数秒ごとに味方の船は沈んでいく。それも数隻単位でだ。正体不明の攻撃による混乱で統率は乱れており、艦隊行動は滅茶苦茶になっている。

 

「だが、攻撃を受けたのは事実だ!……どうやら敵には、ここまで届く巨大な投石機を巨大船に積んでいるようだ!このまま遠距離攻撃を続けられれば、此方が攻撃をできぬまま艦隊が壊滅させられる可能性が高い!!

通信士!!ワイバーン部隊に上空支援を要請しろ!『敵と思われる正体不明の連続攻撃で、既に数十隻を失うほどの被害を受けている。このままでは艦隊消滅の可能性大。至急救援を求む』とな!早くしろ!!」

 

 未だに敵部隊は姿を見せていない。その状態でワイバーン部隊の派遣を要請するのは決めて危険であることを、シャークンも理解していた。

 だがこれ以上の遠距離攻撃は防がねばならない。シャークンは「攻撃」ではなく、「防衛」運用としてワイバーン部隊の緊急出動を要請した。

 

 

 

 

「長官。「ミッキーマウス」、「アイオワ」、王立海軍(ロイヤル・ネイビー)の「ヴァンガード」、それに「陸奥」によるR砲攻撃は敵艦隊に全弾命中しています。R砲の強みを活かした間髪入れない艦砲射撃に敵艦隊は統率が取れておらず、艦隊行動は崩壊していますな」

 

「そうか。ネルソン中将の提案で、急遽戦艦を派遣している我々も攻撃を行なっているが、撃沈数はアメリカ海軍の方が上手だろう。ニミッツ提督、早々のお手柄だな。早速、国防省に連絡してやれ。

今頃、ワイバーン……だったかな。彼らが航空支援の為にぞろぞろ離陸している頃だろう。航空参謀!第4航空隊に出撃命令を発令し、上空で敵機を迎撃させろ。諸君、敵機が来るぞ。対空戦闘用意!」

 

 アメリカ海軍が受け持っていたイージス戦艦による艦砲射撃。だが、同じく戦艦を派遣していたイギリスのネルソンは、アメリカのみが手柄を総取りすることを良しとしなかった。そこで高杉に連絡を取り、日英でも戦艦による射撃を行おうと提案していた。ニミッツも初手の攻撃によってそれなりに成果を上げていたことから参戦を許可し、当初の作戦にはなかった日米英の戦艦群による攻撃が行われたのである。

 

 そして、敵航空部隊の出撃を予想した高杉の指令を受け、「建御雷」の甲板では格納されていた機体が次々と上げられ、兵装を取り付ける作業が急ピッチに行われる。

 第三次世界大戦で、日本の噴式制空攻撃機として使用された緑王の型を再利用した作られた「緑皇」、日米との共同開発で誕生した戦闘攻撃機の「海帝」、セラミックス素材が用いられたステルス戦闘機の「鴎台」などが次々デッキに現れていく。

 その光景を見ていたブルーアイは次々現れる鉄竜に目を見開いたまま、固まってしまう。彼の目線から見れば、突如甲板に穴が開いたと思えばそこから鉄竜が次々と現れ、それが次々飛び立っていくのだがら、理解が追いつくはずがない。

 

 それらの機体には、最新兵装である空対空ミサイル「射鳥」などが搭載されていき、離陸を開始していった。

 

 同時に米空母「ハリエット・アイゼンハワー」の第5空母航空団、英空母「クイーン・マーガレット」の第617飛行中隊、仏空母「ジャン・ド・ゴール」のFlottille 17F(ミサゴ)でも出撃命令発令の後、即座に出撃準備がなされていた。

 

 

 

米空母 ハリエット・アイゼンハワー

 

 アイゼンハワー甲板上では、第5空母航空団所属の主力戦闘機である「F-38A ザンダー」の他に、「F-35 ライトニング」、「F-23 レッドフィールド」、更に“航空機の墓場”から引っ張り出した退役済みの「F/A-20E スーパーホーネット」などがデッキに勢揃いしていた。

 敵航空戦力接近の警報を受け、発艦準備のため機体には空対空ミサイルが搭載されていく。武装装備やパイロットの搭乗を完了した各戦闘機は、電磁式カタパルトから次々に緊急発進する。

 

「提督、攻撃隊の発艦準備完了。マーヴェリックより、発艦許可要請が出ています」

 

「マーヴェリックへ通達、発艦を許可する。全機発艦!繰り返す、全機発艦!急げ!!」

 

 

 

「イーグル各隊へ通達、此方はマーヴェリック。諸君、今日のコンディンションは?」

 

『バッチリだ』

 

『隊長の足を引っ張るような結果にはならない。任せておけ』

 

「了解。だが、油断は禁物だ。各機、最新の注意を払い作戦にあたれ」

 

 隊長である“マーヴェリック”大佐の指示の下、彼に率いられたイーグル隊は日英仏の制空戦闘機編隊と合流し、接近するワイバーン部隊と異世界初の空中戦を展開するため、陣形を整え始める。

 

 

 

「ほぉ。あれが米海軍の誇るイーグル飛行隊か」

 

「隊長は“マーヴェリック”大佐。湾岸戦争でも活躍したエースパイロットであり、米国の英雄と呼ばれる天才パイロットです」

 

「建御雷」の艦橋では、空高く飛び立っていくイーグル隊を高杉らが双眼鏡を通して見ていた。一糸乱れぬ飛行形態を組んで敵を迎撃せんとする姿は、彼らから見ても勇ましかった。

 

「確かに練度は優れているようだな。流石は彼の国の太平洋艦隊の要たる航空隊だ」

 

「加えて周りを我々と英仏の航空隊が囲んでいます。敵さんの度肝を抜くにはこれ以上の歓迎はいらないでしょうな」

 

「現実世界ではそうだろう。だがここは異世界だ。大規模魔法による未知の攻撃もあるかもしれん。油断しないよう各隊に改めて通達しておくように」

 

 艦隊を先を飛行する航空隊は、既に接近しつつある敵航空部隊についてのデータを通じて敵戦力を分析していく。

 

 

 

「全機、こちらマーヴェリック。敵航空部隊を捕捉した。 全部隊、対空戦闘開始、ミサイル発射!」

 

『こちら、イーグル2。了解した。目標、敵航空戦力、距離2500……発射(Fox 3)!』

 

 空対空ミサイルの射程圏内に入った瞬間、マーヴェリックの号令の下、ミサイル攻撃が始まった。マーヴェリックの合図で離れたミサイルは三次元的な誘導によって正確に敵を貫く。

 日米英仏から構成される飛行隊はワイバーンの遥か射程圏外から、無慈悲にその力を振るったのだ。

 

 

 

 海軍救援に向かっていたロウリア王国竜騎士団。王国史上最大の規模である250騎による作戦行動。その勇姿は地上から見る者たちを圧倒していた。

 竜騎士団長アグラメウスは、地上を飛び立った時点で勝利を確信していた。魔信器より、正体不明の攻撃によって部隊壊滅の危機があるとの報を受けて出撃したものの、敵戦力はせいぜい50隻か多くても100隻程度であることは確認が取れていた。報告は間違いで海軍だけでも殲滅できるだろうが、司令官であるシャークン海将が被害を最小限にとどめるとともに、敵に対して圧倒的な物量と力を誇示するつもりであると、彼なりに考えていた。1回の出撃でこれほどのワイバーンを動員させることは王国史上初めての出来事。

 これほど部隊であれば、クワ・トイネ公国や伝説である魔帝軍でさえも打ち破れる気がした。

 

 空を威風堂々と飛ぶ竜騎士団。だが、その自信は一瞬で潰える。

 

「ん?あれは何だ?」

 

 初めは目のいい者の気づき。だがその遅れが彼らの命を奪う。突如として現れた黒点は、一瞬で竜騎士との距離を詰め、竜騎士諸共ワイバーンは轟音と爆炎に飲み込まれる。

 

「光のーー矢!?」

 

 刹那の瞬間、28騎か爆散し大小様々な塊となって海に落ちていく。何が起こったのかさえ理解できぬまま、間をおかずに第2の光の矢が30騎に襲いかかる。ようやく全員が事態を把握した数秒後にも34騎と、次々と一方的に落とされていった。

 流星のような光の尾を引くそれは、まるで意思を持っているかのような軌道を描き、ロウリア王国精鋭の竜騎士団をまるで赤子の手を捻るかのように次々に落としていく。逃げるまもなく撃墜された者、光の矢に対して回避行動をとるが追尾を振り切れずに爆死していく者……高威力の爆炎は周囲を巻き込む爆発を起こし、直撃を避けても仲間の爆発に巻き込まれ命を落としていく者も多数いた。

 

「何が!何が起きている!状況報告しろ!」

 

 叫ぶアグラメウスに誰も答えることができない。苦楽を共にした仲間、戦友、世界最強であるはずのワイバーン……これまで最強と信じて疑わなかった存在が、効率的に無慈悲に倒されていく。

 

『バカな!そんなバカな!』

 

『光の矢だ!矢が追ってくる!うわあぁぁーー』

 

 隊長騎の魔信器から入ってくる部下の悲鳴は、アグラメウスの精神を確実にすり減らしていった。

 

 

 

 

「制空戦闘機編隊、全空対空噴進弾を発射。全弾命中を確認、ワイバーン部隊の大半を殲滅した模様です。なお、こちらの損害は皆無です」

 

「そうか。だが、全てを撃ち落としたわけではあるまい」

 

 飛行隊の動きを最新鋭対空電探で補足していた「建御雷」には、常に最新の情報が入ってくる。艦橋にて航空参謀から報告を受けた高杉は、撃ち落とした数よりも残るワイバーン部隊の数を気にしていた。

 最強たるマーヴェリックの飛行隊でも、物量で勝るワイバーンの全てを撃ち落とすことはできない。事実、日米英仏の飛行隊の対空ミサイルを全て発射したところで、50騎がまだ飛行中であった。

 

「撃ち落とせなかった残りの騎は、間も無くロウリア王国海軍の上空に到達すると思われます」

 

「ふむ。となれば次は我々の出番だろう。航空参謀、マーヴェリック隊及び護衛隊の現在の位置情報を」

 

 「建御雷」と前衛艦であるミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦の対空レーダーでキャッチした情報は、全て同艦内の高速電算機に送られ、即座に戦況分析に回される。上空を飛行する国連軍の飛行部隊、及びロウリア王国のワイバーン飛行団の位置情報を正確に把握している国連軍側は次なる一手を素早く繰り出せることができる。

 

「イーグル隊は予定された任務を終え、「ハリエット・アイゼンハワー」に帰投中です。各国の護衛隊についても各国の空母に戻っているとのことです」

 

「ご苦労。恐らくミサイルを補充しての再度攻撃は時間が許さないだろう。

ーーならば対空戦闘で全てを撃ち落とす。作戦参謀、「陸奥」にロ号弾の発射を行うように発令してくれ。一撃で敵を全て片付けるぞ」

 

 高杉の命令は瞬時に国連軍の全艦隊に伝わる。対空用に開発された燃料気化爆弾であるロ号弾Ⅲ型は、炸裂箇所を中心とする周辺全域に渡ってくまなく危害を及ぼす兵器である。

 第二次世界大戦ではリーガン艦隊の攻撃隊の半数以上を撃ち落とす成果を筆頭に、アメリカやドイツに対して猛威を振るった。第三次世界大戦でもドイツ海軍を苦しめた三八弾と並行して活躍し、連合国側の勝利に大きな役割を果たした。

 

 日本が誇る最強の対空砲弾が、再びその威力を世界に振るう時が来たのだ。

尚、この爆弾は爆発の際に強烈な光を放つため、目を覆う、サングラスをかける、光が入らない部屋へ退避する、といった目を保護する行動が必要だった。その旨を伝えるため、高杉は国連軍の全艦船に通信を入れたのである。

 

「ブルーアイ殿、こちらをおかけください」

 

 「建御雷」で戦闘の様子を呆然と見ていたブルーアイは、作戦参謀が持ってきたサングラスを手渡される。先程から艦橋が騒がしくなったため、何か日本が行動を起こすことが予見されたが、一切の魔力を感じなかったため、何が起きているのかを把握することは、相変わらずできていなかった。

 

「これは……おお!?かけたら目が暗くなりましたよ!?」

 

「我々は、これを“サングラス”と呼んでいます。まあ、簡単に言いますと光を遮る効果があります。流石に太陽光を防げるまでではありませんが、一時的な光ならば遮ることができます」

 

 何故、突然この道具が渡されたのか皆目検討がつかない。

 

(“光を遮る道具”か……。日本国は強烈な目眩し魔法でも使う気なのか。いや、日本国を含めた国連軍を派遣している国々には魔法など無かったはずだ。

……考えても無駄か。最早、彼らを我々の常識で測ることなど不可能なのだから)

 

『各艦に緊急警告!これより日本国イージス戦艦「陸奥」がロ号弾を発射します。至急、各艦は外部で任務を行う作業員に退避命令を!また、各艦内員はロ号弾発射時には決して空を見上げないように!強烈な閃光によって失明の恐れがあります。繰り返します!これより日本国イージス戦艦「陸奥」がロ号弾を発射します!』

 

 警告ベルが「建御雷」を含めた全艦船に鳴り響く。外で作業を行なっていた者たちも警告放送に従って、即座に館内に避難する。

 けたたましいベル音と「失明する」という警告文句にブルーアイも持っていたサングラスを即座にかけ、命令通り空から視線を離した。

 

 

 

「ロ号弾、発射準備完了!いつでも撃てます!」

 

「照準、敵部隊を捉えました。必ず命中します!」

 

「分かった。……安らかに眠れ、戦士たちよ。

主砲、てぇーー!!」 

 

 陸奥の31cmR単装砲から放たれたロ号弾、その数2発。空中にある敵全てを焼き払う「死の砲弾」が、今新世界の空に放たれた。

 

 

 

 部隊が壊滅状態にあるロウリア王国竜騎士団は、光の矢の攻撃を警戒しながらも王国海軍を視界に捉えた。その様子に生き残った騎士たちは、唖然となる。騎士団が艦隊上空を飛行している今この時でも、敵の攻撃は続いていた。といっても、周囲に敵艦の姿は見えない。つまり、竜騎士団は敵の正体が分からないまま、攻撃を行わければならないのだ。

 アグラメウスは上空で隊列を再編成し、敵に発見されぬよう超低速飛行に切り替える。

 

「ん?あれか!!」

 

 やがて海を進むと、彼らは遥か遠くに巨大船を多数従えた敵艦隊を遂に捉えた。ロウリア王国の国民として、アグラメウスは遂に国連軍と対峙したのだ。敵は想像していた以上に巨大な船が多い。また、不思議な長い棒のようなものを艦前方につけている。実に珍妙な船だ。

 だが、やるべきことは変わらない。アグラメウスは目を向けたのは、他の艦船よりも先頭を進む大きな灰色の船。

 

(あいつらが……俺たちの大切な仲間を殺した悪魔どもか……!)

 

 一度混乱に陥った部隊は、「敵」が見えたことで冷静さを取り戻した。体勢を立て直した彼らが、標的を定め、再び上昇を開始したその時、先頭の船に乗る巨大な二本の棒が動き出す。

 上を向き、完全にワイバーン部隊に照準を合わせた形だ。

 

「ん?棒が動き出したのか?

諸君、敵は何かの攻撃をするつもりだ!その前にこちらが先手を打ち、敵の攻撃を阻止する!全騎、前方の巨大艦を狙え!」

 

 ワイバーン部隊が接近すると同時に、敵艦隊が次々に姿を現していく。どの艦も超巨大であり、とても蛮族が作った船とは思えない作りだ。だが、その考えはすぐに消え、戦闘準備に取り掛かるとすぐに消える。体勢を立て直した彼らが、その船に目標を定め、再び上昇を開始する。

 

「各騎、あの攻撃が来るぞ!迎撃体制をとれ!!」

 

 正直、あの敵の船が放つ「光の矢」を躱す術はない。だが、敵艦隊の前である以上、退くわけにはいかないのだ。それに、この場に来た以上、生きて帰ることができないことは彼らも薄々察していた。その証拠に、騎士団の目には今生の別れとなる家族を思う涙が浮かんでいる。

 せめて落とされる前に、一隻でも多く沈めることができればそれだけで大勝利だ。彼らが敵艦隊に突撃する覚悟を決めたその時、棒が光った瞬間に光の弾が発射された。やはり、味方を次々に落とした光の矢に近いものがあった。だが、それ以上に巨大且つやたら明るい。

 

「あいつかぁーーー!!!」

 

 嫌な予感がしたが、増悪の込もるアグラメウスは怒号と共にその感情を忘れてしまう。それほど彼は仲間を殺されたことに怒り狂っていた。

 だが、それ以上の言葉が艦隊上空で響くことはなかった。船が発した光の弾は上空で炸裂すると、内部の燃焼剤を加圧沸騰させ、瞬時に広範囲を爆発させたのである。

 

 急激に空気中の温度が上昇する中、ワイバーンとそれに乗るアグラメウス以下、ロウリア王国竜騎士団の生き残り50騎は高温と爆風に晒される。瞬時に衣服は燃え、騎士とワイバーンの皮膚を焦がす。続けて、外部の高熱は内部の臓器や血管を焼いた。勇ましい戦士であり、ロデニウス大陸最強の空の戦士である彼らは、最後の声を発することなく、超高温によって身体を焼かれ、海に落ちていった。

 

 彼らは、敵に一矢報いることもできぬまま、この世を去ったのだ。

 

 唯一、希望があるとすれば無能の烙印を押される心配をすることなく戦死を遂げたことぐらいである。

 




見えない敵からの一方的な殺戮、強烈な閃光と熱によって蒸発する竜騎士団、逃げても追尾してくる光の矢……想像を絶する敵の攻撃にロウリア海軍は手も足も出ない。阿鼻叫喚に包まれる艦隊は、制御不能に陥った。

混乱する敵軍の事情など構わず、国連軍はその距離を縮めていく。シャークンの心が折れかけたその時、ついにロウリア海軍の目の前に国連軍が姿を現す。




ロウリア王国竜騎士団を滅したロ号弾の演出を考えるにあたっては、色んなアイデアがありました。OVAと同じくあっさりとした演出でも良かったんですが、それだと味気ないと感じまして、より変化を強調してみることにしました。
イメージとしては、『進撃の巨人 The Final Season 完結編(前編)』にて殿を務められたハンジさんの最期が最も近いですね。あれを知っておくと竜騎士団が辿った運命がどれほどのものかが、想像しやすいと思います。
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