新・日本国召喚   作:npd writer

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みなさま、お久しぶりです。

諸々の用事がようやく終わらせることができましたので、投稿再開します。


第12話 撤退

「あああ!!!目がぁぉぁ!!!」

 

「目が……目が……見えねぇ……」

 

 大海原に流れた僅かな沈黙。その後、ロウリア王国海軍内には苦しむ声と絶望が木霊し始めた。誰もが目の前で起こったことを信じられずに唖然とし、また強烈な光に視力を奪われた者もいた。

 ワイバーンは、1騎落とすだけでも至難の業。それらが血の雨すら降らせず、落ちていった。いや、肉体を留めるだけで幸運かもしれない。

 

 これが夢ならば、どれほど良かっただろうか。いや、夢でもあってもこんな悲惨な結果にはならなかったはずだ。だが目の前の出来事は無常にも現実である。思わず頬をつねっても変わらない現実にシャークンは確信した。

 

「そんな……バカな……」

 

 圧倒的とも言える敵の強さ。歯向かうことすら許さないその力に、彼は言葉が出ない。

 

「我々は……伝説の魔帝軍を相手にしているのか……」

 

 彼の手はカタカタと震え、足も同じように震える。彼は、言葉で表すことができないほどの絶望に心を沈ませていた。その上、更なる悲劇が彼を襲った。水平線上の彼方に巨大な動くものが現れたのだ。

 

「提督、水平線の彼方を!あそこを見てください!」

 

「……んな!?なんだ、あの大きさは!まるで島ではないか!?」

 

 水平線の先には、島のような巨大な“ナニカ”が動いていた。徐々に接近すると、徐々に姿が明らかになる。どうやら島ではなく船のようだった。だが、その船はロウリア王国やパーパルディア皇国のものとは明らかに違っている。大きさ、形状、使用武器など、彼らの常識では測れない船なのだ。

 しかも、それは一隻だけではない。次々に姿を現す艦隊も、サイズこそ違うが、同じように形容し難い船ばかりなのだ。

 化け物じみた大きさの艦が数十隻と水平線上に広がってやってきたのだ。

 

 

 

 

 ロデニウス大陸の歴史において、海戦を制するのは白兵戦だ。そのため、水兵の数が物を言う。今回の侵攻にロウリア王国が用意したのは、軍船4400隻。それこそ、文明圏の列強相手でも渡り合えると考えていた戦力だ。

 

 ーーつい、2時間ほど前までは。

 

 国連軍連合航空機動艦隊の前面に出た戦艦群。日本の「陸奥」、アメリカの「ミッキーマウス」、「アイオワ」、イギリスの「ヴァンガード」を筆頭に、前衛艦であるミサイル巡洋艦やミサイル駆逐艦は、まるで害虫処理のように、R砲による砲撃を開始する。

 

「王立海軍の名にかけて一隻でも多く沈めなさい。これは、我々にとって最大の戦果になりますよ」

 

 イギリス艦隊を指揮するネルソン司令長官は口調こそ穏やかだが、高揚した声色で敵を滅するように命ずる。イギリス海軍の海外派遣が暫く行われなかった分、今回の戦いにおける艦隊の士気は盛り上がっていた。

 

「司令長官。これはまるで射撃演習ですな。文字通り、敵は木っ端微塵です」

 

「そうですね。日本と米国には抜かれていますが、フランスには負けられませんよ。限りなく、奴らより一隻でも多く沈めなさい!」

 

 

 

 

「クソ!なぜ本国は戦艦を遣さん!これではブリテンに総取りされるぞ!」

 

 一方、戦艦を一隻も派遣していなかったフランス艦隊は、やはり派手さに欠けていた。日米英が戦艦を派遣して大立ち回りしているのに対し、フランスはカナダと共におこぼれに預かっている状況だった。

 フランス艦隊司令官ミュズリエは腹立たしいと言わんばかりに、隣を進むイギリス艦隊を睨みつける。

 

「本国は艦隊派遣を急いだようで。どうやら戦艦の整備には間に合わなかったようですな」

 

「日本やアメリカに後塵を拝するのはまだいい。だが、ブリテン野郎に下に見られるのは気に食わん!見ろ、ネルソンの顔を!してやったりな顔じゃないか!!」

 

「生憎、私には彼の国の顔は見えませんが」

 

 参謀の生意気(彼はそう捉えている)な態度に嫌気を覚えたミュズリエは、艦隊無線を使ってフランス艦隊全艦に通達する。

 

「せめて腰巾着(カナダ)には負けぬよう、潜水艦もフル活用しろ!とにかく、数を稼げ!これが終わったら本国に戦艦について文句を言ってくれるわ!」

 

 

 

 国連軍艦隊内での戦果の奪い合いにより、攻撃は苛烈化していく。国連軍の砲撃の数だけ、ロウリア王国の軍船は沈むのだ。もし、ミュズリエの会話をシャークンが聞けば、どんな反応をするだろうか。

 

 既にロウリア王国海軍は混乱のためか隊列が乱れ、右往左往している。戦艦の主砲の射程に入らないほどの近距離になれば、今度は副砲であるレーザー砲や護衛艦のR砲が火を吹く。また、適時日米英仏の空母から発艦した攻撃機から発射された対艦ミサイルが発射され、海中からは米英仏の原子力潜水艦から大型誘導魚雷や対艦ミサイルが次々に撃ち込まれる。

 

 水上からはR砲やレーザー砲による艦砲射撃、空中からは攻撃機による対艦ミサイルの雨、海中から誘導魚雷や対艦ミサイルが襲いかかる。

 

 胴や甲板に穴が多数開いて船体が傾き、火矢用の油に松明の炎が引火して炎に包まれる。別の船は、喫水線からの浸水によって沈む。また、別の船は大質量の弾が間髪入れずに撃ち込まれることで、そもそも破片すら残らずに爆散した。

 

 辺りは狩場の様相を呈し、次々倒れる仲間の姿にロウリア王国海軍は大混乱に陥っていた。

 

「畜生……だめだ!あんなのに勝てるわけねぇ!うわあぁぁぁーー」

 

 シャークンはただ見ることしかできない。時間を追うごとに、信じられない速度で味方の船が撃沈されていく。海上から、そして上空からの攻撃は一切手を緩められることはない。

 ーー我々は、開けてはならない箱を開けてしまったのか。

 

「……だめ、だ」

 

 海将シャークンは絶望を通り越し、言葉が出なかった。強大すぎる敵にどうやっても勝てない。勝てる手法が湧かない。このままでは部下をただいたずらに死なすだけだ。しかし、降伏して捕虜になったところで、復讐に燃えているであろうクワ・トイネ公国がロウリア人が許す保証はない。彼に残された選択肢は撤退のみ。

 ロデニウス歴史上最大の大艦隊の8割以上を失っての大潰走。いや、これでは潰走とすら言えないかもしれない。国に帰ったら確実に死刑は免れず、歴史の教科書には無能の将軍として名が残るだろう。

 

 だが、これ以上部下を死なすわけにはいかなかった。船は時間と金さえあれば再建できるが、人はそういうわけにはいかないのだから。

 

『全軍……撤退せよ。繰り返す、全軍撤退せよ』

 

 魔力通信で撤退命令を下す。これを合図に、艦隊は我先にと全速力で海域を離脱していく。彼が搭乗する旗艦も撤退を始めようとした時、運悪くアメリカ海軍のミサイル駆逐艦のR砲の弾が直撃してしまう。

 その爆発の衝撃で彼は海に投げ出される。海上を浮かびながら見た光景は、自分が乗った船が真っ二つに折れ、沈んでいく様子だった。

 

 

 

「司令長官、敵が撤退を開始しました」

 

 「建御雷」から戦況を見ていた高杉は敵の撤退を確認すると、即座に次の指示を出した。

 

「全艦、撃ち方やめ。ーー生存者についてはどうなっているか」

 

「敵は海に浮かぶ仲間を見捨て撤退したようです。海面には多数の生存者が漂流しています」

 

「うむ。各前衛艦に通達、生存者の救助を急がせろ!」

 

 こうして、ロデニウス沖大海戦は国連軍の大勝利に終わった。この報は直ちに国連軍司令部と各国政府に通達される。だが、過剰報道によって国民の冷静さを失うことを恐れた各国政府は、報道規制によって海戦の結果については小さく報じた。

 

 そして海将シャークンはフランス艦隊に救助されることになる。それを聞いたミュズリエは、撃沈数ではブリテンに及ばぬものの、敵将を捕えれたことに関しては満足し、イギリスへの熱い思いを鎮めた。

 一方、イギリス海軍のネルソンはそんな事を気にする事なく、艦載機で「建御雷」に飛ぶと先に来ていたニミッツと共に高杉と冷静に戦局を分析していた。

 

 「建御雷」に同乗していたクワ・トイネ公国観戦武官ブルーアイは何が起こっているのか、理解できずにいた。艦橋で何らかのやり取りが繰り返され、不可視の距離から攻撃が行われていたそうだが、そこで何が起こったのかは全くわからない。

 何度も補給し、飛び立っていく攻撃機。それ以外に戦場を実感できるものはなく、傍観しているだけで海戦が終わってしまった。ロウリア王国軍が撤退を開始したと聞いたときでさえ、自分は何も見えていなかったため、実感が湧かなかったほどだ。

 

 しかし、救助活動のために海戦のあった海域まで進んだ時、その実感が湧いた。夥しい数の浮遊物、それに多数のロウリア人。周囲には圧倒的な力で粉砕した船の残骸が、とてつもない広範囲に浮かんでいた。

 海戦は目視できなかったが、圧倒的な勝利で終わったことだけは理解したブルーアイだった。

 

 

 

 奇跡に国連軍の攻撃から生き残ったロウリア王国海軍の800隻。その1隻の中でパーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは、失禁しながら自室で怯えていた。ロウリア王国の船が、見えない距離から次々に撃沈されていく光景を目の当たりにしたからだ。

 ロウリアの4400隻の艦隊がどのようにクワ・トイネ公国を蹂躙するのか、その経緯を記録するのが彼の役割だった。蛮族に相応しい大型弩弓に火矢、切り込みといった原始的戦法でも、これだけの数を揃えたらどうなるか。個人的にも興味のあったものだった。

 

 だが、現れた敵艦は彼の常識をも覆した。

 帆船を増速させる「風神の涙」を使った形跡がないのに、船足が圧倒的に速い。そもそも、帆と呼べるものすらなかった。

 他にも特徴はあった。100門級戦列艦よりも大きい船体に巨大な大砲らしきものを積んでいた。以前、ムーや神聖ミリシアル帝国を視察した際に目にした巨大砲に最も近いが、それでもどのモデルに一致するものはない。

 その不思議な攻撃武器を1個しか積んでいない船もあり、それを巨大化させたものを積んだ船もあった。蛮地にはないはずの攻撃方法に驚いたが、長距離攻撃はそう当たるものではない。なかなか当てられないものだからこそ、数を揃えた100門級の戦列艦が存在するのだ。なのに、彼らは水平線の彼方である30km〜40km後方から攻撃を行い、次々に命中させてきた。一撃一撃が高威力であり、一撃で船が沈むどころか木片すら残さず爆散したのである。

 

 さらに驚くことは、強烈な閃光によってワイバーンの波状攻撃を防ぎ、全滅させたこと。皇国であれば竜母を使用し、ワイバーンにはワイバーンをもって対抗する。蛮地で生産される個体よりも遥かに性能が良いため、同数ならば確実に勝つ。だが、今回の敵にはワイバーンは1騎として存在していなかった。

 そもそも海からの攻撃は空を飛ぶものには当たらないはずだ。しかし、彼らは閃光を伴った攻撃でワイバーンを消し飛ばした。

 

 彼らの存在はまさしく脅威だ。その力はパーパルディア皇国をも脅かすことになる。ヴァルハルは魔信を通じ、ありのままを本国に報告した。

 

 

 

ロウリア王国 王都防衛騎士団 総司令部

 

 敵主力艦隊発見の報を受け、その攻撃に飛び立った250騎。彼らの悲鳴ととともに魔信が途絶して3時間が経過しようとしていた。司令部には重苦しい空気が漂う。合流の報告もなければ、帰投時間になっても1騎たりとも竜騎士は帰ってこなかった。司令部は焦燥に包まれている。

 

「なぜ、1騎たりとも帰ってこない?」

 

 顔を青くするパタジンの問いに答えるものはいない。否、誰もが答えられないのだ。皆が彼のように答えを知りたかったのだから。

 

(まさか……全滅……?)

 

 ロデニウス大陸の歴史において、ワイバーンは最強の生物である。しかし貴重な種であり、数がなかなか揃えられないのが難点だ。

 ロウリア王国が配備した500騎は、ロデニウス大陸統一を前提にパーパルディア皇国から軍事援助も受け、6年かけてようやく達した大部隊だ。

 まさに圧倒的な戦力。これをもって、確実にロデニウス大陸を征服できるはずだった。海軍の支援に飛び立った精鋭250騎も、歴史に残る大戦果をあげて帰ってくるはずだった。

 しかし、現実はそうではなかった。考えたくもないが、全滅した可能性が極めて高い。

 

 敵が当初の想定を上回る大艦隊だったとしても、普通に考えて250騎のワイバーンを全滅できるとは考えられない。まさか、クワ・トイネ公国は伝説の神竜バハムートでも使役しているのか。

 この内容をロウリア王にどのように報告すれば良いか。

 

「……先遣隊へ通達、ワイバーン50騎ほど本陣に帰投させよと伝えろ」

 




ロデニウス沖大海戦は国連軍の大勝利に終わり、異世界にその力を見せつけた。一方、4400隻の大艦隊でクワ・トイネに侵攻したロウリア王国海軍は、800隻を残し壊滅的なダメージを被り、何の戦果も得られなかった。
この結果は、王国首脳部を震撼させることになる。想定していない敵の存在は、着実に王国を追い詰めていく。

そして、パーパルディア皇国観戦武官ヴァルハルは、この戦いで得た貴重な情報を皇国に持ち帰ることに成功する。この危険すぎる国家連合に皇国はどのような外交の道を選ぶのか。
列強国として対等的な地位を認めるか、それともーー

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