新・日本国召喚   作:npd writer

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ロデニウス沖大海戦終結後の各国の動きです。軍事描写はありません。
本話よりタイトルが2文字ではなくなります。特に意味はありませんよ笑


第13話 Battle of the Great Sea off Rodenius ends

中央暦1639年4月15日 日本国 大統領官邸 大会議室

 

「閣僚の皆様。お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本日の会議は、先の海戦と今後の外交方針についての議論を行いたいと考えています。大臣各位には忌憚なき意見を伺いたい」

 

 軍の統帥を指揮する大高の要請で開かれた国家安全保障会議には、木戸外務大臣や東郷国防大臣に加え、西郷総理大臣、幣原副総理兼総務大臣、伊藤副総理兼産業府長官、高橋大蔵大臣、池田工業型生産大臣、吉田環境型生産大臣、安倍海外協力庁長官ら内閣のメンバーに加え、高野海軍軍令部総長、桂陸軍参謀総長、黒羽空軍参謀総長などの軍からも出席者が多数参加していた。

 

「まず、国防省から最新報告をお伝えいたします。先のロデニウス沖大海戦では国連軍の攻撃により、敵は海上戦力の8割を消失。同海域から撤退した模様です。また、我々の被害は皆無との報告を受けております。今後の戦局を見る上でも、この勝利は大きいものといえます」

 

「外務省からも報告させていただきます。先の戦いでは多くの捕虜が発生し、その中には司令官である海将シャークンも含まれているようです。現在、彼の身柄を預かっているフランスにて治療と尋問が行われているとのことです」

 

 東郷からの戦況報告と木戸の捕虜情報を受け、参加していた閣僚の間には驚きが広がるがすぐに収まる。敵艦隊の大将を捕えたとはいえ、彼の一存で戦争が終わるわけではないためだ。

 

「うむ。木戸大臣、東郷大臣、詳しい報告をありがとう。

さて、敵は海上戦力の大半を失い、制海権も喪失。敵軍部が無謀でない限り、海上侵攻のリスクは大きく減ったことが予想できます。だが、陸上戦力についてはまだ健在なため、海路ルートが遮断された今、敵は陸上侵攻に力を入れてくるでしょう。そこで皆さんには本日、これからの戦いについて話しておきたいのです」

 

 大高がタブレットを操作し、空中ホログラムにとあるデータを写す。そこには「ギム防衛戦」の文字が大きく表示されていた。そして作戦立案責任者である桂が説明を行う。

 

「本作戦における主目標は、ロウリア王国を講和会議の席につかせることです。そのため、王国から派遣されているであろう陸上戦力の7〜9割の殲滅を目指します。本作戦の要は、圧倒的な火力の前にロウリア王国の戦意を完全に挫くことが目的ですので、陸軍による攻撃に加えて戦略空軍よる空からの大規模空爆も同時に行います。

また、前作戦と本作戦で敵の戦力を大きく弱体させることで、敵の交戦意欲を折り、ロウリア王国に対する降伏勧告をもって自主的な投降を促します」

 

「一つ、聞いても良いか」

 

 桂の発言が終わると同時に閣僚席から手が挙がる。その人物は池田だ。

 

「いくら国連軍といえども数で優っているロウリア王国の陸上戦力を事実上、殲滅することなどできるのか。いくら我々が技術面で優っていたとしても、流石に厳しいとは思うのだが」

 

「池田大臣のご指摘は仰る通りです。ですので、我々も当初の作戦計画からの兵力増強を行います。具体的には、「夜豹師団」に加えて第1空挺団、特殊通信部隊を新たに投入します。

また、アメリカからも第2軍団主力に加えて、第3軍団の第1機甲師団が投入予定です。イギリスは第12装甲歩兵旅団、第1砲兵旅団、フランスからは第3機甲師団が作戦行動に追加されます。カナダからも第10野戦砲兵連隊と第721通信大隊が投入される予定となっております」

 

 海上でロウリア王国海軍の度肝を抜いた国連軍であったが、それを陸上でも同様に行うつもりだ。兵力増派については、ロウリア王国軍が大規模魔法を使用する危険性があることが明らかとなったため、各国は一時的に軍備の制限を撤廃し、この様な大規模派兵と至ったのである。

 

「補給問題は大丈夫なのか?これほどの軍を送り込むということは、軍の兵站を圧迫すると考えられるのだが、その辺は対策してあるのか?」

 

「その点については私から説明しましょう」

 

 桂の代わりに閣僚席から立ち上がったのは伊藤だ。産業府長官として各国のインフラ整備をも統括していたため、この質問に答える適任者は彼以外にはいない。

 

「現在、クワ・トイネ公国の主要港であるマイハークからギムの街までの道路を急ピッチで整備しております。カナタ首相からも許可を得ているプロジェクトですので、補給が滞るようなことはまずないかと」

 

「我々空軍も現在、ギム後方に空軍基地を建設中です。輸送機が離着陸可能なスペースをしっかり確保しますので、陸路・空路の補給路が寸断され、兵站が悪化するような状態ではないことを池田大臣には申し上げておきます」

 

「うむ。確かにこれほどの戦力を運用可能であるならば、数で勝るロウリアといえども流石に戦意が折れるだろうな」

 

 満足げに頷いた池田は手を静かに下ろした。続けて木戸が更なる目標を語る。

 

「クワ・トイネ公国やクイラ王国の要請もありますので、我々としては短期に決着させることを考えております。そのため、圧倒的な戦力をもってロウリア王国軍の士気を叩き潰し、タイミングを見計ったうえで講和を呼びかける計画です」

 

「……失敗すれば?」

 

「その場合は、次なる作戦としてロウリア王の逮捕に踏み切ります。その場合、国連軍の陸海空の主力で王都ジン・ハークを包囲し、敵主力を引きつけつつ霞部隊による王城の制圧を行う必要があります。前述した作戦とは異なり、相手側にはかなりの出血を強いることになりますが」

 

「背に腹はかえられないでしょう。特に今回の場合は」

 

「しかし、ロウリア王国は交渉の席につきますかね?我々の常識がこの世界では非常識であることから察すると、寧ろ強硬な態度を王国がとる可能性もありますよ?」

 

「現在の王国はロウリア王の統治で成り立っていますが、その実は諸侯が乱立している状態です。仮に王が陸上戦力の大損失に怯まずに王城に籠った場合であっても、王を制圧できれば自然と王国は崩壊するでしょう。それに、各諸侯は兵力的にも経済的にもロウリア王国に従属している状態です。我々との交渉に応じやすくなるはずです」

 

 閣僚たちからは次々と作戦に対する質問や意見が上がるが、それを木戸や桂、高野らが丁寧に説得することで徐々に懸念や反対の意見は聞かれなくなった。

 

「では、閣僚の総意として私から意見を述べさせていただきます」

 

 意見が出尽くしたことを見計らい、西郷が発言する。

 

「日本国政府としては、外務省が計画しました早期講和を支持いたします。犠牲者数、対外関係、ロデニウス大陸の混乱、クワ・トイネ公国及びクイラ王国の要望を総合的に鑑みますと、国土全域を攻撃した後の無条件講和は全く利益がないと判断しました。それに我々には『良い負け』という矜持もあります。あくまでも体制転換のみをロウリア王国で実現できれば、それだけで十分です。以上の点から、早期講和を行うべきです」

 

「西郷総理、どうもありがとう。では日本国政府としては早期講和を支持する方向で今後の戦略を練る。木戸大臣、早速この旨を両国に伝えてほしい。また、各軍に関しては現在の態勢を維持しつつ、任務を遂行してほしい」

 

 

 

 

 日本としての意見を取りまとめた大高は、次いで国連軍のメンバーであるアメリカ、イギリス、フランス、カナダの首脳陣とオンライン会談を開催し、各国の意見との擦り合わせを行った。

 

『ミスター・オオタカ。合衆国も貴国と同様に、短期決戦で敵の戦意をへし折ったのち、早期講和で方をつけるというアイデアに賛成だ。私たちとしては、ロウリア王国が民主主義国家として、傷少なく終戦を迎えてほしい思いがある。別に彼の国に恨みがあるわけでもない。それよりは、あの大陸の市場価値に注目している。

敵の戦意を挫くための第2軍団と第1機甲師団だ。覇を唱える力が無くすことができれば、それだけで戦争の目的は達成できる』

 

 最初に発言したリーガンは戦争そのものよりも、ロウリア王国人口の多さや領土の広大さから試算される、潜在的な経済力に注目していた。なるべく被害が少なく済めば、ロウリアの膨大な人口と戦勝国としての地位を活かし、アメリカの製品を多く売り捌くことができると考えていたためだ。そのため、彼はなるべくロウリアが無傷のままで終戦を迎えてほしいと考えていた。

 

『手緩いな、ドワイド。それだけでは、敵の意思など変えられない。我が国の陸軍は陸の強みを活かす。第3機甲師団にはロウリア王国の反抗心を叩き潰してもらうつもりだ。大量虐殺(ジェノサイド)など、二度と起こさぬように徹底的なダメージを与えなくてはならない』

 

 一方、ミッテランは再びロウリア王国が民族浄化など馬鹿げた言動を行わぬよう、徹底的に王国を叩き潰す腹づもりだった。そのため、大高やリーガンが示す早期講和論には否定的だった。

 何より、フランスのナショナル・アイデンティティとして刻まれるナチスへの恐怖と、民族浄化への憎悪、それに避難民としてやってきたクワ・トイネ公国の子供たちの悲惨なドキュメンタリーを、連日マスコミが報じていたことから、フランス国民の対ロウリア感情は、他の諸国と比較して頭ひとつ抜けて悪化していた。今回の戦いにおいて、フランス国民は連日各都市でロウリア王国に対するデモを行っており、弱腰の姿勢はかえって国民を怒らせる危険性があった。

 加えて、家族をナチス・ドイツに殺害された過去をもつミッテランも、その主張には理解を示していた。社会党出身の政治家であり、戦争回避の外交努力を続けてきたミッテランであったが、国民の声と自身の過去に押され「戦争回避」から「積極的攻撃姿勢」に転じたのだ。

 

『連合王国としては、オオタカ大統領の意見に賛成ですわ。確かに亜人絶滅論など馬鹿げた話です。ですが、それを決めているのは一部の国家指導者たちと軍関係者のみ。大半の方は無実であり、彼らにまでその責任を背負わせるのは如何なものかと思いますわ』

 

 ロデニウス沖大海戦で大きな戦果をあげていたサッチャーはリーガンに同調し、戦争の早期決着を主張した。

 イギリスは海戦にて軍の面子は立っているため、これ以上の戦果を望む必要はない。また、フランスと同じようにロウリア王国の非人道的な扱いに憤慨するイギリス国民であっだが、マーガレット女王が国民に対して冷静に行動するように呼びかけたことで、ある程度自重するようになっていた。ロウリア王国を作り替える面倒臭い政治的案件(国連による信託統治)よりも、多くの人口を抱えるロウリアの潜在的市場価値に重きを置いていたのである。

 そして、この巨大市場の原動力は膨大な人口だ。そのため、一般市民に被害を出すような大規模侵攻には消極的だったのである。それは派遣した陸軍部隊の少なさにも現れている。

 

『カナダ政府も日本、アメリカ、イギリス両国同様、早期の講和を望みます。クワ・トイネ公国やクイラ王国の目的はロウリア王国の影響力の排除です。余分に戦線を拡大すれば、その後の復興にも大きな影響がありますからね』

 

 マクミランもリーガンやサッチャー同様に早期講和に前向きだ。そもそも、彼が党首を務めるカナダ自由党は早期終戦と、戦勝国の権利を利用した優遇措置を望んでいたのだ。

 こうして、既に大高を含め5カ国中4カ国が早期講和に傾いている中、大高が仲介に乗り出す。

 

「各国政府首脳の皆様はこのように仰っていますが、ミッテラン大統領は徹底抗戦を唱えられております。ミッテラン大統領閣下、何か追加でご意見はありますか?」

 

 モニターを一通り眺めた大高の次のミッションは、フランスをどのように宥めるかについてだ。フランスの自尊心を傷つけることなく、上手く早期講和に同意してもらわなければ、ここに来て足並みが乱れることになるからだ。

 

『我々としては、あくまで悪は滅するべきだと考えている。この考えは今でも変わらない。だが、戦後国際社会の礎となってきた平和と協調も大切だ。我々が納得できる条件をロウリア王国側が提示するのであれば、こちらもそれに応ずるつもりであることは述べている。最後まで王国がその信念を折らない限りは、徹底して攻撃を加えるべきだ』

 

『フレッドの言い分も理解できる。だが、王国に無条件降伏を突きつけるほど壊滅させたとして、誰がその後始末をする?クワ・トイネ公国やクイラ王国の国力では、広大なロウリア王国を統治することなど不可能だ。無論、我々も国連憲章で民族自決の項目を定めている以上、過度な介入はできない』

 

 リーガンとしては国連軍が王国を再起不能に追い込んだ場合、そのツケを払うことに対する忌避感があった。アメリカ資本を投下するだけならいいが、戦後責任の名の下にインフラの整備までをアメリカが負うことに対して、「亜人廃絶」という“自由と民主主義”を踏み躙る行為を行った対ロウリア感情が悪化していた世論が許さないためだ。

 

『私としては国連直下のロウリア管理委員会を設置し、我々とクワ・トイネ公国及びクイラ王国で戦後処理を話し合うことも選択肢の一つだと考えている。無論、関与した我々もその責任を負うべきであり、両国が一時的にでも王国の分割を望んだ場合は、我々にはそれに応える義務がある」

 

『随分と頭が吹き飛んだお話ですね。イギリス政府も亜人殲滅を掲げて宣戦布告したロウリア王国に対する支援には抵抗がありますし、勿論私もその1人です。ですが、我々が力を入れるべきなのは、更なる外交の拡大です。何も、世界はロウリア王国だけではありません。更なる強大な国家がいくつもいます。一大陸の国家に対して全外交努力を注ぎ込む必要はないと考えますが』

 

『クワ・トイネ公国やクイラ王国の意見も聞かなければなりませんが、大統領閣下の要求は少しハードルが高いのでは?彼らの意見を無視して戦線を拡大しては、足並みを乱れさせることになります。ここは両国の意見を聞いてからでも遅くないと考えますがね』

 

 イギリスを巻き込んだ委員会の設置を提案するミッテランを、サッチャーとマクミランは一蹴する。彼らは既にその目をロデニウス大陸の北上、第三文明圏があるフィルアデス大陸に向けていた。ロウリア王国の戦後処理を戦勝国になるであろうクワ・トイネ公国とクイラ両国に一任(丸投げ)するつもりであり、必要ならば武器を含めた軍事支援を行うつもりなど、徹底的な支援を行うことは確認していた。

 

「皆様、活発な議論をありがとうございます。どれも納得ができる意見だと考えております。我々、日本政府の考えとしては早期の降伏勧告又はロウリア王の逮捕を行うことで、ロウリア王国単独で戦後復興を行える余力を残したまま、終戦を迎えることができると判断しました。

無論、クワ・トイネ公国とクイラ王国の影響下に置かれることは確実でありますから、彼の国の方針が色濃く反映されることは確実です。この方法ならばミッテラン大統領の望む、国是の変更も成し遂げられるはずでしょう」

 

 会議のまとめ役である大高の言葉に頷くリーガン、サッチャー、マクミラン。当初は強硬路線を主張していたミッテランも大高の言葉には素直に頷き、フランスの影響力と主張が保たれるのであれば特に異議ないと譲歩する。

 

「では、我々国連としては次なる戦いである「ギム防衛戦」でロウリア王国に出血を強要させます。それを行うことで彼の国は体制を維持できなるでしょう。無論、徹底抗戦を行う場合にはロウリア王を逮捕することで、強制的に体制を崩壊させます。その上で全交戦国で講和会議を開催し、その場で改めて議論することにします」

 

 戦後処理について粗方のメドをつけた日米英仏加は後日、戦争当事国であるクワ・トイネ公国及びクイラ王国にも参加を要請し、全交戦国で関係国会議を開催することで合意し、閉会した。この後、木戸外務大臣が両国の首都を訪れ、行政の最高指導者、外務を統括する大臣若しくはこれに準ずる者の出席を要請することになる。

 

 

 

中央暦1639年4月20日 クワ・トイネ公国 政治部会

 

 先日、国連軍がロウリア王国海軍を撃退の模様が、参考人招致した観戦武官ブルーアイの口から報告されていた。政治部会としては異例の参考人招致であり、国の存続を左右する戦いの報告を国の代表者たちは真剣に聞く。

 

「ーー以上が、ロデニウス沖大海戦の戦果報告及び国連軍連合航空機動艦隊のタカスギ司令長官の報告になります」

 

 政治部会の面々の手元には、ブルーアイ製作・国連監修の報告書が配られていた。

 

「……では何かね。日本、アメリカ、イギリス、フランス、カナダはたったの50隻でロウリア艦隊4400隻に挑み、3600隻以上を海の藻屑とすることで敵の戦意を完全に挫き撃退。さらに、ワイバーン200騎以上の空襲も全て撃退し、その上で被害が全くないというのかね?」

 

「はい。敵が接近する前にアメリカ海軍の戦艦「ミッキーマウス」、「アイオワ」、日本海軍の戦艦「陸奥」、イギリス海軍の戦艦「ヴァンガード」による超遠距離攻撃をもって攻撃開始、その後は航空攻撃やれーざー砲、れーるがんによる艦砲射撃などを行ったとタカスギ長官は述べられています。ですので、被害は記述通りゼロかと……」

 

「こんなもの信じられないが……これが真実なのでしょうね」

 

 開戦前は転移国家群に否定的だった保守派の議員達もその信じられぬ戦果に驚きを通り越していた。

 

「国連軍側の人的被害はゼロと記載されている。死者どころか怪我人すらなしだというのか?我が国の艦隊は出る幕すらなかったと?御伽話でも出来すぎた話だ。こんな場で君が態々嘘をつくとも思えないが、あまりにも現実離れしていて信じられないのだよ」

 

 頭を抱える外務卿リンスイの言葉は、誰もが抱いていた感想を代弁したものだった。

 

「外務卿!彼らは本当に平和国家なのですか!?とても信用できませんぞ、これは!」

 

「それになんだ、れーざー砲やれーるがんは?そんな武器、聞いたことがないぞ!」

 

「第三文明圏の牽引式魔導砲とは違うのか?全く訳が分からん」

 

 会議室からは次々ヤジが飛ぶ。本来であれば、ロウリア侵攻を防いでもらったことを喜ぶべきなのだが、1海戦の戦果としてはあまりにも度が外れているため、政治部会には国連に属する国家に対するある種の恐怖が宿っていた。

 

「各国に派遣した使節団からの報告によれば、彼らは魔法を使えないと聞いた。しかし君らの報告書では『大規模爆裂魔法様のもので、ロウリア王国海軍軍船が木っ端微塵に粉砕された』と記載されている。どちらが本当なんだ?」

 

「彼らが行った攻撃は、あくまで『大規模爆裂魔法の様なもの』です。魔法とは断定できず、それほどの威力を発揮するためには我々の身近なところだと爆裂魔法くらいしかありません。ですのでそのように表現しました」

 

「では国連軍は魔法なしで大規模魔法を連発し、ロウリア王国軍船を破壊したと?そんなことは不可能だよ」

 

 再び野次が飛ぶが、ブルーアイはこれ以上説明しても無駄だなと考え若干不機嫌になる。様子を傍観していた首相カナタは慎重に口を開いた。

 

「いずれにせよ、今回の戦いで海からの侵攻は防ぐことができた。ロウリアにはまだかなりの船が残っているはずだが、たった50隻にここまでやられては、警戒して再侵攻にはかなり時間がかかるだろう。いや、ここまでの被害ならばこれ以上無益な海上侵攻は中止するかもしれない。軍務卿、陸の方はどうなっている?」

 

「現在ロウリア側地上部隊は、ギム前方20kmに陣地を構成しております。海からの侵攻が失敗したため、電撃戦によるギム侵攻は無くなったと見ていいでしょう」

 

「よく分かった。

ーーここで、皆様にお伝えしたい。私と外務卿は本日開催される、国際連合の安全保障理事会に紛争当事国として出席することが許可された。この会議には日本国のオオタカ大統領、アメリカ合衆国のリーガン大統領、イギリス王国のサッチャー首相、フランス共和国のミッテラン大統領、カナダ連邦のマクミラン首相が出席予定である。また、クイラ王国からもクイラ国王とメツサル殿が出席されるらしい」

 

 会議室にはざわめきが起こる。同時に使節団として各国を歴訪した外務関係者、これらの国々に観光に赴きその力を実感した面々は、この招待に色めき立っていた。

 彼らからしてみれば、文明圏外国の弱小国が列強国が集う国際会議に招待されたも同然であり、2年おきに開催される先進11カ国会議と同等かそれ以上の栄誉であった。

 

「首相。失礼を承知でお聞きしますが、超大国が出席する会議に我々のような弱小国家が出席しても良いのでしょうか?この会議の出席にあたって、何か理不尽な要求がなされてはたまりませんよ?」

 

「安全保障理事会ーー安保理は紛争当事国である国連加盟国であれば、どんな国でも出席可能と聞いている。詳しくは外務卿から」

 

「えー、この度の安保理開催事由は対ロウリア戦の今後の作戦、及び戦後処理について話すことが目的であると聞いております。また、我々が国を離れることは危険であるため、今回はオンラインと呼ばれる魔信が使用されるとのことです。詳しい事項については外務機密のため、申し上げられません」

 

 戦争が終わっていない状態での戦後処理ーー、予想外の内容に会議室内は騒然とした。傲慢とも思える5カ国の態度に不信感を抱く議員たちは不満を噴出させた。

 

「首相!今後の戦況分析ならまだしも、戦後処理ですと!?戦いを終えていないのになんと呑気な!」

 

「確かに、事態を正確に把握していないとも言えるな」

 

「本当に大丈夫か?もし彼らが負けるようなことがあれば……我々は終わりだぞ。それを彼らは理解しているのか?」

 

 次々と上がる不安や不満の声をカナタは手を挙げて制する。

 

「とにかく、本日の安保理にて我々の主張は強く主張するつもりだ。彼らについては未知数の部分が多く、みなさんが信頼できないのも理解している。故に、私は彼らから納得できるだけの軍事援助を要求する。どうかご理解を」

 

 首相に頭を下げられては流石の議員たちも黙るしかない。いくつもの不安を残しながらも、やや強引に会議の了解を取り付けたカナタはその勢いで通信設備が整えられた日本大使館に向かった。

 




クワ・トイネ公国とクイラ王国は、超大国が集う国際会議に出席する。その場では、ロウリア王国に対する講和条件が話し合われ、両国はその中心として動くことになるのである。

一方、国連軍によってロウリア王国に止めを刺す作戦が計画される。いよいよ終戦が近くに迫ってきたのだ。
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