新・日本国召喚   作:npd writer

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今回は国連安保理会合、ロウリア王国、第三国の動きを描写します。

「推しの子」に絶賛脳を焼かれております。あかん、沼る。


第14話 各々の動き

『本日はお忙しい中、安保理の緊急会合にお参加いただき、ありがとうございます』

 

 開戦後、初となる各国の首脳級が集まる安保理会合が開催された。

日本からは大高大統領、木戸外務大臣、東郷国防大臣

アメリカからはリーガン大統領、ローディ国務長官、エヴァンス国防長官

イギリスからはサッチャー首相、ディズレーリ外務・連邦大臣、ジョンソン国防大臣

フランスからはミッテラン大統領、リシュリューヨーロッパ・外務大臣、フィリップ軍事大臣

カナダからはマクミラン首相、ゴールド外務大臣、グディ・ホランド国防大臣

クワ・トイネからはカナタ首相、リンスイ外務卿

クイラからはクイラ国王、メツセル外務大臣がオンラインで出席する。

 また、非交戦国からはゴスグレイヴ首相とロッペン大統領が招待された。

 

 大高の短い開会の言葉の後、いよいよ会議が始まる。

 

「今回の安保理会合は、対ロウリア戦争における今後の作戦と、戦後処理について話し合うと事前に通知を受けております。今回の会議では、その真意について詳しくお聞きしたいと考えております」

 

『カナタ首相に同意だ。ロウリア戦争の詳しい作戦について、軍事的に優勢であることは把握している。だが、戦後処理についてはやや時期尚早なのではないか。失礼だが、貴方方が傲慢にも見えてならない』

 

『……なるほど。貴国らの懸念は今後の作戦よりも戦後処理についての方が大きいようですな。では、本日は戦後処理をメインの議題とします。前者については序盤に説明し、残り大半を後者に当てましょう』

 

 

 

 

「ーーなるほど。でしたら、我が国はロウリア王国の直接支配は考えておりません。また、王国民たちを奴隷にするといった考えもありません」

 

『我が国も同様だ。彼の国に思うところはあるが、同じ穴の狢に落ちるつもりはない』

 

 対ロウリア戦争の今後の反攻作戦についてはクワ・トイネ軍の戦力がロウリア軍とかけ離れていることもあり、国連軍に一任することが改めて確認された。

 問題はロウリア王国の戦後の扱いについてだった。あくまで被害を少なく済ませたい日米英加に対して、「亜人殲滅」の国是を叩き潰すためにも徹底的に攻撃することを主張する仏との間で意見が割れている現状、当事国であるクワ・トイネ公国、クイラ王国と、非交戦国であるアイルランド、東方エルサレム共和国の意見が今後に大きな影響を与えることは確実だ。

 

「我々、クワ・トイネ公国はあくまでロウリア王国の進出を抑制できる安全保障環境を構築することができれば、それで構わないと考えています。正直、我々だけでロウリア王国の広大な土地と膨大な人口を管理するだけの能力はないですから」

 

『クイラ王国は宣戦布告こそ受けているが、直接的な被害を受けていない。ロウリア王国に対する抑止力は我が国も欲しいが、それ以上は望まない』

 

 ロウリア王国より宣戦布告を受けている両国は、あくまでロウリア王国の直接支配は考えていないという意思を明確に表明した。両国に王国の膨大な人口と広大な領土を管理するだけの能力が無かったことに加え、ロウリア王国の統治に関して関心を抱いていなかったことがその理由だ。

 敵を叩き潰すような大規模作戦はその後の混乱を招くことから望んでおらず、この時点でフランスの意見は否決されたも同然だった。

 

『どうやら、ミッテラン大統領閣下は熱が入りすぎていたようですな。其方の事情も分からなくもないが、やり過ぎだと思いますよ』

 

『左様。両国が望まぬことを我々が行う必要はない。過激的行為は国家そのものを暴走させる危険性もあり、制御が大切だ』

 

 アイルランドと東方エルサレム共和国の2カ国の後押しもあり、遂にミッテランは決心する。

 

『……よく分かりました。両国が望むのならば、フランスとしても異存ありません。両国にとって最適なプランを実行することこそ、我々の責務ですからね』

 

 宣戦布告を受けた2カ国の意見には、例え欧州の大国たるフランスといえども無視できない。国内世論向けの口実も見つけたミッテランは早々に切り替え、他の4カ国と足並みを揃えることにする。

 

『失礼、よろしいか?』

 

 ミッテランが引っ込むと同時に発言したのはリーガンだ。仏と両国のやり取りを静かに聞いていた彼は、待っていたと言わんばかりにマイクのスイッチを入れた。

 

『この世界は我々のいた世界とは異なり、砲艦外交が主流だ。我々のように平和的な接触を行うだけの方が珍しいと聞いている。

この華夷思想が渦巻く世界では力ある大国が発言力を持つ。特に我が国が警戒しているのは、両国の北西にある第三文明圏の覇者、パーパルディア皇国だ。彼の国の外交政策は非常に危険であり、クワ・トイネ公国とクイラ王国には国家侵略から祖国を守る効果的な対策が必要となるだろう。

同盟国を守るため、アメリカ政府はクワ・トイネ公国及びクイラ王国の国連安保理非常任理事国入り、及び武器輸出の緩和を提言したい』

 

「本当ですか!?」

 

『それが本当に行われるなら大変我が国にとっても名誉ある事だ』

 

 超大国の一角であり、第三次世界大戦後の国際社会を超大国として牽引してきたアメリカ合衆国の大統領の発言は重い。オーバーテクノロジーである地球産の兵器を輸出することで、両国が反抗する懸念がアメリカ国内にないわけではない。

 だが、駐留米軍による国内予算の圧迫、自国は自国で守る国家原則、覇権国に対する牽制など、武器輸出によって得られるアメリカの国益の方が懸念よりも大きかった。リーガンは国連安保理の非常任理事国に両国を就任させることで、武器輸出の口実を得ようと考えていたのである。

 

『只今の大統領の提案、日本国としても前向きに進めていく事案であると考えています。特に両国の国連安保理入りについては、国連のアップデートと国際社会に我々が積極的に進出していく事を示すメッセージにもなるでしょう。我が国も支持いたします』

 

 大高は両国の国連安保理入りを強く支持する。新世界事情を深く知る両国を国連の中枢に加盟させることで彼らの助言の下、現地に合った外交政策を展開できると考えていたためだ。

 また、日本経済を支える両国の安全保障を国連が担保することで、有事の際に各国が見捨てることができないような体制を構築できるとも考えていた。

 

『イギリス政府も、アメリカ政府の提案を全面的に支持いたしますわ。

両国と我が国は親愛なる関係を結んでいます。そして、悪しき帝国主義が蔓延る皇国の侵攻から国を守るためには、それ相応の力が必要です。我々は両国が自立できる支援を惜しみませんわ』

 

 サッチャーは、ロデニウス大陸の管理を両国が担うことに期待していた。イギリスとしては、北方のパーパルディア皇国との衝突の可能性が高いとの情報機関の分析があったこともあり、戦力を北に転じさせる必要性に迫られていた。ロデニウス大陸の2カ国がしっかりと管理すれば、イギリスは後顧の憂なく対峙することができる。

 非常任理事国入りは、こうしたイギリスの期待を込めての先行投資であることを暗示していた。

 

『我々、フランスとしても反対する理由はない。私自身、積極的に国連改革を推し進めていくべきであると考えている。両国の国連安保理入りは、我々にとっても、そして世界にとっても大きなインパクトを与えるだろう。国家の規模に関係なく、すべての国に平等な権利を与えることを示すのに絶好の機会だ。ただ、武器援助に関しては慎重な審査をもって行いたい。両国に与えた武器が第三国に渡り、それが我々を脅かすことになってはならない』

 

 フランスは両国の国連安保理参加が、自国の国際的優位を高めることに繋がることから前向きな反応をする。従来から柔軟な国連改革を主張していたミッテランは、両国の国連安保理参加をフランスが全面的に支援することで、国際社会におけるフランスの地位向上を狙っていた。

 両国に恩を売っていくことでイギリスやアメリカと対立した際には、諸国の支持を手繰り寄せ易くなる狙いもある。

 

『カナダ政府もリーガン大統領の提案は実に良いものであると思います。前の世界でも実現した世界平和を実現させるため、最初の一歩は重要です。両国の更なる国連への関与は国連の理念を実現させるための重要となるでしょう。

また、フランス政府が提唱しました武器輸出を厳格に管理する措置の設置には、我が国も賛成いたします。我々の使用武器が他国に不正に流出すれば、紛争の頻発を引き起こします。故に、厳格な管理が求められると考えます』

 

 アメリカの庇護に置かれ繁栄してきたカナダは、世界における地位向上のための稀代のチャンスを活かすための外交活動を活発化させていた。

 

 転移前の世界では、第三次世界大戦において多大な貢献をした日本、アメリカ、ヒトラーから領土を奪還したイギリス、フランス、ロシア、巧みな外交交渉によって体制保障を取り付けたアルゼンチン、敗戦国であるものの自国内のクーデターによって終戦へと結びつけたドイツやイタリアと比較して、カナダの国際社会における地位は一歩とくれていた。それは大国と分類される国々の中で、安保理の常任理事国ではないことにと繋がっている。

 

 それ故、この転移をカナダの地位向上に繋げられるベストな機会と捉え、この機に両国への関与を強めることで、大国カナダの威厳を高めようと考えていた。

 

『両国の国連安保理入りは実に素晴らしいことだ。国連の門戸は常に開かれており、自由と平等、民族自決、自由貿易の精神を掲げる国家を国連の枠組みに加えることは重要な意義を示すことになる。我々東方エルサレム共和国はアメリカ政府の提案に賛同の意を示させていただく』

 

『アイルランド政府としても同じく賛同の意を示させてもらいます。両国の参加によって、この世界の各国の参加ハードルが下がることにも繋がります。また、この世界から戦争をなくすことにも大いに貢献するでしょう。ただし、武器支援については慎重な対応を求めます』

 

 国連安保理の非常任理事国でありながら、対ロウリア戦争へ宣戦布告していない両国も賛成の意を示す。永世中立国であるこの2カ国は転移前の世界において国連には加盟していても、安保理の理事国として安全保障に関わることは少なかった。

 転移を受け、安保理が機能不全に陥ることを危惧したアメリカやフランスの提案で非常任理事国となっている両国は、転移後の世界の国家が増えることで大国の制御が行いやすくなると考えており、その点から両国の安保理入りを支援していた。

 

「各国の首脳陣の皆様。この度の喜ばしい提案、ありがとうございます。国連安保理という、世界の安全保障に関わることのできる重要な会議の末席に加えていただく名誉に感謝し、アメリカ合衆国の提案を喜んでお受けするつもりです。政治部会の議決を得る必要がありますが、ロデニウス沖大海戦で我が国を救っていただいた貴国らの提案は受諾される可能性が高いです」

 

 クワ・トイネ公国にとって、文明圏外国であった国家が超大国が一堂に会する国連の中でも特に重要度の高い安保理に理事国として参加できることは大変な名誉だった。

 この世界では文明圏外国と呼ばれる弱小国家は国際会議すら招待されず、中小国同士で細々と小さな地域会議を行うことが限界だ。また、大国の発言力は大きく、中小国の意見は通らないことが当たり前とされてきた。既存の秩序に楔を打ち込む公国の加盟は国際的にインパクトが大きい。そのことを理解するカナタは国連安保理入りを好機と捉えていた。

 

『クイラ王国としてもアメリカ合衆国の提案を謹んでお受けする。国連安保理の理事国に加えていただけることは大変光栄なことだ。協議を経て前向きな回答を送ることを約束する』

 

『カナタ首相、クイラ国王、ありがとうございました。それでは改めて確認させていただきます』

 

 全当事国の発言が終わったことを確認した大高が音頭を取り、確認を行う。

 

『次なる作戦であるギム防衛戦では、海戦の敗北で動揺しているロウリア王国に対して更なる一撃を加えます。国連軍の戦力をもってギム周辺に陣を構える侵攻軍を壊滅させ、敵方に降伏を迫る作戦です。

尚、降伏しなかった場合は敵国の首都ジン・ハークへの急襲を行い、国王ハーク・ロウリア34世を拘束、国王の名で停戦の呼びかけを行うことになるでしょう。

同時に国連改革を行い、クワ・トイネ公国及びクイラ王国の国連安全保障理事会非常任理事国選出、及び武器輸出の緩和を行います。以上ですが、何かご要望があれば付け足していただければと思います。何かありますか?』

 

 リーガン、サッチャー、マクミランは即座に首を横に振り、ミッテランが一息空けてゆっくりと頷く。ロッペン、ゴスグレイヴも民間人への被害を最小限に済ませることを条件に作戦に同意した。

 

「我が国には、ロウリア王国を撃退するだけの戦力はありませんでした。貴国らの支援がなければ我々は滅んでいたでしょう。国交を結んで間もない我が国とクイラ王国の為に立ち上がっていただいたことに深い感謝を。どうか、ロデニウス大陸に平和をもたらしてください」

 

『我がクイラ王国は貴国らの投資でかつてない繁栄を約束されている。その繁栄が人間至上主義の彼の国に脅かされるのは容認できない。クワ・トイネ公国同様、戦力に欠ける中で軍事支援を行っていただいた貴国らは間違いなく我が国の英雄だ。深く感謝する』

 

 

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城

 

「ワイバーン250騎を失い、更に艦隊の8割を喪失ぅ!?貴様ら、何をしてくれたんだ!!」

 

 ロウリア王国34代大王ハーク・ロウリア34世は、将軍パタジンの戦闘結果報告を聞き、激怒した。先日のロデニウス沖大海戦で国連軍と名乗る新興国家連合軍が参戦し、ワイバーン250騎を殲滅。

 さらに軍船3600隻が撃沈され、艦隊の約8割以上を喪失するという前代未聞の大損害。しかも、ロウリア王国の攻撃は一切確認されていない。

 文字通りの完全敗北である。

 

「この度の海戦、何故国連軍に負けたのだ?」

 

「……海軍からの報告があまりにも荒唐無稽な内容のため、現在は原因の再調査と報告の信用性の確認を急いでおります」

 

 曰く、国連軍が放った「避けても目標を追い続ける光の矢」が飛竜隊を襲い、「光の尾を持つ光弾」が上空で爆発すると凄まじい光線と熱風によって、全てのワイバーンが肉片すら残さず撃墜されたという。これらの情報から推察するに、何らかの新しい魔導兵器であると推察していた。

 

(何かって何だ?)

 

 パタジン自身も要領を得ない表記に頭を悩ませた。他の報告では一発で軍船を破壊するほどの威力を連続で撃ち出す魔導兵器や、海底からの攻撃で船が木っ端微塵にされたという内容のものもある。全く理解ができない。

 

 神話に登場する「古の魔法帝国」でも復活したのだろうか、何を相手に戦ったのかも分からないのだ。

 ロウリア王国は昔から人口だけはとにかく多いが、人的質はあまり良くなかった。ロデニウス大陸統一のため、6年の歳月をかけてできる限りの教育を施し、そこそこの質ではあるものの圧倒的な頭数を揃えることができた。だがこうなると、手も足も出ないまま殲滅される恐れもあった。

 

「いずれにせよ、被害は甚大だぞ!今後はこのようなことがあってもらっては困る!!」

 

「ははっ!!海戦敗北の原因が判明するまでは、海軍の出撃は中止します。

ただ、陸上部隊は数かものを言います。現在は、国境の街ギムの攻略に力を入れております。作戦には万全を期しておりますゆえ、陸上部隊だけでも公国を陥落させることは容易にございましょう。陛下におかれましては、戦勝報告に大いにご期待くだされ」

 

「パタジンよ、此度の戦いは其方にかかっている。期待を裏切ることのないようにくれぐれも……くれぐれも頼むぞ……!」

 

「ははっ!!」

 

 質がものを言う海と空。しかし、陸は数がものを言う。陸戦ならば何とかなるかもしれない。王はその日、想定外の敗戦に苛まれ、寝床で震えながら眠れない夜を過ごした。

 

 

 

第三文明圏 パーパルディア皇国

 

 薄暗い部屋にほのかなオレンジ色の灯りが灯る。光源は精霊の力で輝かせたガラスの玉で、その光は二つの影を映し出していた。

 

 影を作る2人の男たちは、国の行末に関わる話をしている。

 

「……国連?聞いたことのない名前だが……」

 

「ロデニウス大陸の北東にある国家群のことで、大日本合衆国、アメリカ合衆国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、フランス共和国、カナダ連邦が連合を組んでいるようです」

 

「いや、それは報告書を見れば分かるが……今までこのような国はあったか?大体、ロデニウスから1千km離れた場所にある国なら、我々が今までの歴史で一度も気付かなかったとは考えられない」

 

「あの付近は海流も乱れておりますので、航路の難所となっております。なるべく近寄らないようにしていたため、調査もしておりませんでした」

 

「しかし文明圏から離れた蛮地であり、海戦の方法が極めて野蛮なロウリア王国とはいえ、たったの50隻の敵に3600隻も撃沈されるとは。現実離れして神話の戦いに見えるぞ」

 

「『爆風と熱波を放つ光弾』や『百発百中の大砲』など馬鹿馬鹿しい。観戦武官も長い赴任で精神異常をきたしたのかもしれません。今度交代させましょう。しかし閣下、我々の100門級戦列艦「フィシャヌス」が仮にロウリア海軍の軍船と戦えば、似たような状況になるやもしれません」

 

「ふむ。その理由とは?」

 

「高さも装甲もあり、連中には沈められません。距離2kmから、大砲の弾の続く限り一方的に攻撃できます。いずれにせよ、50隻というのは何かの間違いでしょう。国連軍が何千隻使ってロウリア海軍を撃退したのかは不明ですが、軍船の破壊状況を見るに、彼らも大砲を作れる技術水準に達していると判断すべきでしょう」

 

「蛮族の分際で大砲か……。今までロデニウスや周辺国家に侵攻してこなかったのは、自分たちの力量を弁えていたのかもしれんな。ようやく大砲を作れるようになって、この機会に顔を出してきたと判断するのが妥当か。ところで、よもやロウリアが負けることはあるまいな?我々の国家戦略に支障をきたすぞ」

 

「陸戦は海と違い、数がものを言います。ロウリアは人口だけはとにかく多いので、大砲を持ち始めた程度の国に大敗することはありますまい」

 

「今回の海戦の報告は信用に値しない。真偽を確かめるまでは、陛下への報告も保留とする。分かったな?」

 

「了解いたしました」

 

 

 

 

同国・国家戦略局本部

 

「何故ですか!?」

 

 国家戦略局の一室でヴァルハルは納得いかないと言わんばかりに、テーブルに両手を叩きつけ吠えていた。ロデニウス沖大海戦で見た真実を全てを報告したものの、その末路は精神異常者とされ長期休暇を言い渡される始末だ。

 

「私が嘘をつく必要がありますか!課長、私は見たんですよ!光弾や、百発百中の大砲、光の矢を!確かにこの報告書の内容は荒唐無稽です。私でもそう思います。

……ですが、普通の海戦でこんなふざけた報告をするわけがないでしょう!全ては真実なんです!!」

 

「一々鬱陶しいな!!」

 

 必死の訴えを上司は全く聞き入れなかった。正直、ヴァルハル自身も期待していたわけではない。どう見ても精神異常と受け取られてしまう内容だと、書いていて何度もそう思った。きっと受け入れられないことも。だからこそ、できるだけ真実であることを強調するために様々な工夫をしたというのに。

 

「大体、このような兵器を使う国家が本当にあるのならば、何故今まで周辺諸国に侵攻してこなかった?この報告書が真実だとすれば、それはあの古の魔法帝国並みの技術力の持った国家が複数存在することになる。ミリシアルも黙って見ているはずがない」

 

「馬鹿馬鹿しい話と思われるかもしれませんが、これは真実です。仮にこの力を発揮する陸上兵器があれば、間違いなくロウリア王国は敗北します。いや、それどころか皇国の世界戦略を大きく揺るがすことになりましょう。早めに外務局のあらゆる資源を使って調査を行うべきと進言します」

 

 ヴァルハルは一歩も引き下がらない。仮にあの力が皇国に向けば、少なくとも皇国海軍は壊滅的な被害を受ける。正直、熱波を発するあの光弾に対抗できる皇国の航空戦力はない。ロウリア海軍と同じく一方的に蹂躙される未来しかないのだ。だが、課長の判断は変わらない。

 

「君の報告を上を回し、その上が判断したんだ。勝手な物言いは出世に影響するぞ。

……ああ、そうだ。ヴァルハル君、お前には長期休暇が言い渡されている。しっかりと精神を休めることだな。全く羨ましいよ、面倒な仕事を他人に任せられるその境遇に」

 

 その言葉を最後に課長は何を言わなくなった。ヴァルハルは課長の部屋を退出すると、拳を壁に叩きつける。

 

「クソッ!確かに信じられないとは覚悟していたが……これほどの扱いとは!」

 

 皇国の未来のために書いたのに、この程度の扱いになるとは流石の彼も考えなかった。肥大化した国家はどんどん腐敗していくが、今日彼が見たのはまさにその例だ。

 

「だが……あのまま行けば皇国はいずれ国連軍とぶつかる。少なくとも、海戦で我々に勝ち目はない。どうする……?どうすれば衝突を回避できる……?」

 

 ぶつぶつ呟きながら館内を歩くヴァルハル。「長期休暇」はこの局内では事実上、左遷処分と同義だ。ここから動く場合、彼は戦略局の助けなしに独力で動かなければならない。

 皇国を破滅に導かないためにはどうするか、何をすれば良いのかーー

 

「失礼いたします。ロデニウス沖大海戦で観戦武官を務められていたヴァルハル様ですね?」

 

 頭を悩ませるヴァルハルの背後から響く女性の声。彼が、振り返るとそこにはメイド服に身を包んだ何処かの屋敷の従者の姿があった。ただ、その上質な服と振る舞いは、どこかの上級貴族の使いにも見えた。

 

()だ。今は長期休暇を言い渡されている。事実上の謹慎処分だ」

 

「そうですか。それは好都合です」

 

 メイドの発言にコイツも俺のことを馬鹿にしに来たのかと、怒るヴァルハルをメイドは落ち着かせた。

 

「それで……お前は何しにここに来たんだ?」

 

「私はヴァルハル様をお呼びするよう申しつけられております。彼らの実力をその目で見た者として、忌憚なき意見を聞きたいとのことです」

 

「……その者の名前は?」

 

 

 

「ーーレミール様です」

 




国連安保理後の大高大統領

瑞穂市内・路面電車

大高「どうも、御厨先生。ご無沙汰しております」

御厨「いやはや、大統領も御壮健で何よりですとも。今日はロウリア王国との戦争についてですかな」

大高「はい。是非とも先生のお力をいただきたいと思いまして」

御厨「……この戦争、とてもロウリア王国だけでは収まりますまい」

大高「……やはり」

御厨「ええ。諸悪の根源を断たぬ限り、第二・第三のロウリアが生まれましょう。大統領、くれぐれも鈴を忘れずに。用心に楽観は無用ですぞ」

大高「肝に銘じておきましょう。もとより、そのつもりですが」

御厨「最も、その必要もなくなるかもしれませんよ。同類が我々だけという保障もありませんからね」














大高「ところで先生、その格好は何ですか?」

御厨「これですか!?これはですね今日私は推しのアイドルのライブに行くんです!勿論バックにはサイリウムをしっかり装備してあります!今日は私の推しがドーム公演を開催するんですよ!!もう堪らんです!!」

大高「はは、先生は彼女が大好きですからな」

御厨「ええ!彼女はまさに一番星の生まれ変わり!欲張りで最強で無敵のアイドル!その嘘の向こうには何を隠すのか!?
ーー推しの愛を世界に広めることこそ私の使命!いや、天命ですとも!



ーーそう!あの天才アイドル、星野アイ!!」
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