新・日本国召喚   作:npd writer

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今回は短めです。

私事なのですが、本日7月19日は私npdの誕生日でございます。お祝いしていただくと、npdが喜びます。


第16話 レミールの策略

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 その日、ヴァルハルは私的な招きを受け、皇都エストシラントの中でも特に警備が厳しく、一般官僚すらも立ち入りが難しい皇族が住む地区にやってきていた。

 

 彼を呼び出したのは皇族レミール。現在は外務局監察室に属する皇族外交官であるが、局内で「変人」として浮いた存在だった。というのも、彼女はとある日を境にして突如人が変わったかのうように、大きく変貌したのだ。

 

 20歳になるまでは高慢かつ独善的であり、「狂犬レミール」と揶揄されるほど、彼女の性格は皇国の悪所を詰めたようだったと言われていた。だが、20歳の誕生日を迎えたその日、突如彼女は冷静で理知的な性格へと変わっていたのだ。それは彼女に付き従ってきたメイドすら戸惑うものであり、外務局内では彼女は影武者であり、本物はどこかに隠れているのではないかと疑うほどだったという。

 

 その後、彼女は外交政策において急進的かつ融和的になり、特に属領に対する政策では公然と異を唱えるようになった。彼女は頻繁に属領を訪問し、現地の民と対話を試み、皇国の政策の悪所を次々と議会や御前会議にて主張するようになった。属領からの人気は皇帝ルディアスよりも高くなる一方、本国からは「邪魔者」、「変人」と悪評が立ち、現在は外務局監査室の経理部門へ事実上、左遷されている。

 

 そんな彼女からの呼び出し。左遷の身ではあるが、皇族の生まれであり、何より国家戦略局は外務局の下部組織だ。何か下手なことをすれば、一族の首が飛ぶ。ヴァルハルは失礼ないように心しながら、彼女の屋敷へと向かった。

 

 

 

 

「国家戦略局のヴァルハルくん。突然の呼び出しにも関わらず、よく来てくれた」

 

「いえいえ、レミール様からのご要望ではあれば、どこからでも駆けつけます」

 

「ふふ、そう畏まるな。これは私的な懇談であって正式な会談ではない。どうか、気を楽にしてくれ」

 

 皇族に似合わなぬ質素な応接間。縦巻きロールの髪型に垂れ目は噂通りの生意気な容姿だが、雰囲気はそれとは真反対に穏やかだ。

 

「それでレミール様。左遷中の身の私にどのような御用でしょうか?」

 

「ふむ。世間話は苦手か。ならば早速本題に入ろう」

 

 彼女はソファからぐっと身を前に寄せる。豊満な胸の谷間がより強調される体勢なので、独身のヴァルハルは思わずそちらに目を向けてしまう。

 

「君は海上自衛隊ーー引いては日本国と戦い、どう感じた?」

 

「……!?どうしてそのことを……?」

 

 驚くヴァルハルを面白く笑ったレミールは事について述べる。ヴァルハルが書いた報告書は国家戦略局内で荒唐無稽の存在として扱われており、それを興味深く感じたレミールが処分されるならと、引き取ったのだ。

 

「恐れながら申し上げると、あれは私でも半ば確信が持てない報告書です。そんな馬鹿げた内容をレミール様は信じられるのですか?」

 

「信じるとも。以前の私なら信じなかったが、多くの世界を見たことで大きく考えを変えたからな。ーーヴァルハルくん、世界には我々の常識が通じぬ場所が山ほどある。皇国の基準で物事を見るのは愚策の極みだ」

 

 メイドが持ってきたお茶を一気飲みした彼女は続けた。

 

「我々の常識を超える敵は、この世界にいくらでもいるとも。例えば、神聖ミリシアル帝国にグラ・バルカス帝国、アニュンリール皇国、ラヴァーナル帝国、そして日本国だ。ルディアス陛下はいずれ世界を皇国の手で平定させる気だが、私にとっては愚かな考えと言わざるを得ない。

ーー言っておくが、私は皇国が世界覇権を取れるとは思っていないぞ。それを目指した国家がどうなったのかをよく理解しているからだ」

 

「……言い切りますね」

 

「気に入らぬか?……まぁ、無理もないだろうが」

 

「……いいえ、ロデニウス沖大海戦でよく理解しました」

 

 

 

「それでレミール様。結論から申しますと、皇国が日本国と戦って勝てる可能性は低いと存じます。少なくとも海上戦ではほぼ負けます」

 

 ヴァルハルはこの言葉を口から発することで自らの命が潰えることを覚悟の上で話した。ところがレミールは怒るどころか、彼の見識に指摘を加える。

 

「海上戦だけではない。陸戦も航空戦も全てにおいて我々が不利だ。彼らの技術は我々が200年かけても到達できない水準であり、勝負にならないだろう。皇国がムーに対抗できる航空戦力として、開発を急いでいるワイバーンオーバロードも等しく無力だ。我々ができることは相手に戦費として、多少の血税を支払わせるくらいだ。

ーー加えて()()()相手が日本国だけではない。アメリカ合衆国、イギリス王国、フランス共和国もいるそうだな?」

 

「は、はい。ですが、彼らの国々についての情報はーー」

 

「言うまでもない。彼らは最強だ。彼らは強大な力を持った国家であり、核兵器ーーコア魔法を大量に保有する国家だ」

 

「コア魔法!?…‥そ、それはあの「古の魔法帝国」が使ったという伝説の!?」

 

 飲みかけていたお茶を吹きかけたヴァルハルは咳き込みながら驚き、そして震えた。

 

「そうだ。そしてそのコア魔法を敵大国の大陸に届けかせるICBM(大陸間弾道ミサイル)ーー誘導魔光弾を多数保有している。加えて敵国を1ヶ月で降伏に追い込む(湾岸戦争)戦力を持った怪物が、彼らなのだ。

これだけで分かるだろ?彼らは野蛮な民族が集まっただけの弱小国家ではない。「古の魔法帝国」を単独で滅ぼすことができる力を持ったリヴァイアサンなのだ」

 

「……それが真実ならば、皇国の地盤を揺るがすとんでもない情報です。しかしレミール様はどこでこの情報を?」

 

 震える気持ちを抑えて、努めてヴァルハルは問いかけた。

 

「ヴァルハルくん。君は私が遥か未来を見てきたと言ったら……狂ったと思うか?」

 

 まさかの問いかけにヴァルハルは理解が追いつかなかった。

 

「にわかには信じられません……」

 

「信じられないのなら、もっと別のーー未来の出来事を聞けば良い。未来を見てきたなら、これから世界や皇国がどうなるかとな」

 

「……どうなるのですか?」

 

「現在、我が国はアルタラス王国に圧力をかけているだろ?中央暦1639年11月24日に皇国はアルタラスに軍事侵攻、27日は同国を下し占領下に置く。また、同年の9月にフェン王国で開かれる軍祭に介入し、小競り合いを起こす」

 

 ヴァルハルも第3外務局がアルタラス王国のシルウトラス鉱山の割譲を要求していることは小耳に挟んでいた。確かにレミールの言う通りである。

 

「そして翌年の1640年1月18日に皇国は次なる標的をフェン王国に向け、軍事侵攻を行い、そこで日本人を多数殺害する」

 

 ヴァルハルは目を丸くし、顔色を悪くする。それを見ながら、レミールは静かに告げた。

 

「どうも()()()皇族がそれを()()と勘違いし、本国の同意なしに勝手に実行してしまったのだ。当然、日本国はこれに激怒し、皇国に最後通牒を突きつける。これを黙殺し、1月28日のルディアス陛下の殲滅戦宣言と同時に、皇国は日本国と戦争状態に突入する」

 

 皇国にとって最悪の事態に転がっていく未来に、ヴァルハルは震えは更に強まる。カップを手に取ろうとするも、思うように掴めなくなるほどだ。彼女の追撃は止まらない。

 

「開戦後、日本国の圧倒的な軍事力と技術力を前に皇国は敗退を重ね、5月22日にアルタラスを奪還され、8月6日に建国史上初めてエストシラントが空爆を受ける。同日、エストシラント沖大海戦が発生し、皇国海軍は実質的に消滅。海軍本部も日本の攻撃を受け、バルス海将やマータル参謀が戦死する。8月15日には新国王に即位したルミエスによって、全属領に対して一斉蜂起が呼びかけられる」

 

「そ、そして……?」

 

「8月19日にデュロが空襲を受け、皇国の産業基盤は完全に破壊。8月25日には、皇国の全属領で反乱が発生し全ての属領を喪失、列強の座から転落することになる」

 

「ま……まさか、そんな……!」

 

「9月3日にはリーム王国の裏切りもあり、アルーニが反乱軍によって制圧される。全てを失った皇国は9月14日に講和を申し入れ、何も得ることなく、降伏する」

 

 長い話を終えたレミールは、代えのお茶を喉に流し込む。対して、ヴァルハルは衝撃的内容に言葉が出ず、ただ固まるのみだ。

 

「安心しろ、ヴァルハルくん。これは私が見た未来であって、今はまだ確定していない。我々がーー神ではない、人間が歴史を変えるのだ」

 

 そこで言葉を区切り、レミールはゆっくりと問いかけた。

 

「ヴァルハルくん。とある帝国の鉄血宰相はこう言ったそうだ。『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』と。君から見て、私はどうだ?」

 

「当然、賢者です」

 

「ありがとう。私から見ても君も彼らの実力を見たことで賢者となったと信じている……未来を見たからこそ断言する。このままでは遅かれ早かれ、皇国は滅ぶ。我々の道標は間違っていたのだ」

 

 ヴァルハルは深く頷き、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「私は皇国を『良き負け』へと導く。過激派からは手緩いと批判され、命を狙われることになるだろう。民衆から石を投げられるかもしれない。だが、皇国の未来永劫の繁栄のため、私は信じた道を突き進む。

これは不可視ーー不可知の海への出航なのだ」

 

 そしてレミールは問いかけた。

 

「ヴァルハル。君には改めて、私の同志となってほしい」

 

「勿論です、レミール様」

 

 躊躇なくヴァルハルは答えた。今、目の前の女性は皇国の中で最もマトモな人間だろう。レミールが変わったことは間違いないが、それはかなり好ましい方向へ変わっているといえる。

 

 

「未来で得たものに関して、君と話し合いたい。覚えている限りのことを伝える」

 

「分かりました。すぐに行いましょう」

 

「まずロウリア王国に関する支援を全て停止するよう、圧力をかけてほしい。彼の国がクワ・トイネに手を出した時点で、彼らに勝ち目など無かったのだ。早急に手を入れる必要がある」

 

「ですがレミール様、私は左遷の身でしてーー」

 

「私の知人に第3外務局局長のカイオスという人物がいる。彼は未来を見た人間ではないが、それでも内の中では最もマシな人物だ。私が会談を用意するので君が第3外務局に赴き、彼にロウリアへの支援の無駄を説き、支援を停止させるように要請を出させてくれ」

 

 何故、レミール自身ではなくヴァルハルに頼むのか。それをヴァルハルは理解できない。

 

「何故私ではないのかーーそんな顔をしているな。私は現在、ルディアス陛下の弟君に目をつけられている。おまけに臣民統治機構のパーラスが私の悪評をふれ回っているとのことだ。私が不用意に動けば、カイオスまで被害が出る。警戒対象の私よりも、同じ外務畑を歩んだ君が訪れた方が怪しまれにくい」

 

「そういうことですか。分かりました、早急に局長との会談の予定を組みます」

 

 

 

 

「ところでレミール様。貴方の仰る未来を見たという事実を知っている方は他におられるのですか?」

 

「ん?ああ、君の他にはここへ案内したメイドは知っているとも」

 

「彼女も……ですか?大丈夫なのでしょうか?」

 

 ここまで彼を連れてきた連絡役のメイド。彼女もレミールが未来を見た予知者であることを知っていると言うのだ。

 

「彼女は私が小さい頃から付き合いがある友人でもある。口の硬さは私が保証しよう」

 

「なるほど、そうなのですね」

 




皆様ご想像通り、レミール様は転生者でした。

この世界のレミールは、大高総理のようなポジジョンになる予定となっています。
因みに、紺碧の世界では転生自体は起こっているものの、記憶を受け継ぐ転生は極めて稀だそうですよ。


なぜ、レミールを転載させたかと言いますと、単純に彼女のポテンシャルが高かったことと、転生する物語が少なかったからです。5巻特典でレミールの理知的ぶりに驚いたこともあります笑

あ、転生者は他にもいますよ?それがパーパルディア皇国内なのか、それとも外国なのかは本編が更新されていくと分かると思います。
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