新・日本国召喚   作:npd writer

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「とにかく敵を見て撃ち続けろ。そうする限り、その判断は正しいと私は評価する」
ホレーショ・ネルソンイギリス海軍中将・初代ネルソン子爵

ハロウィンにお届けする話ではありませんが、どうぞご覧ください。


第21話 王都急襲

ロウリア王国王都ジン・ハーク 北側港

 

 海将ホエイルは、不安げに港を眺めていた。

 1500隻にも及ぶ軍船が整然と並ぶ姿は、常時艦隊を指揮している彼の目から見てもため息が出るほど壮観だった。これほどの大軍を見ると、どんな相手でも負けるはずがないという自信が溢れ出てくるはずだった。

 

(しかし……)

 

 彼はロデニウス沖で行われた大海戦を思い出し震えていた。

 

(あれは“戦い”と呼べるものではない。ただの殺戮だ……恐ろしい)

 

 自分たちの技術では到底届かない高距離から、一方的に撃破される屈辱。鍛え上げた大人と生まれたばかりの赤ん坊が戦ったような、見るも無惨な大敗だった。

 

(もしあのとき、国連軍の撤退指示に従っていれば、状況は変わったのだろうか)

 

 彼の上司であるシャークンも、先の海戦によって行方不明となっている。実際はフランス海軍の捕虜となっているのだが、撤退行動中だった彼がそれを知る由もない。

 権限移譲によって海将となったホネイルは1500隻の軍船と5万人余りの兵という強大な力を預かったにも関わらず、どう展開しても彼らと戦って勝つ作戦が思いつかなかった。

 

「どうやれば、あの存在に勝てる……?」

 

 思考を巡らせる彼。

 そんな彼に、再びあの嫌な感覚が蘇った。

 

「何だ?」

 

 そう呟いた瞬間、港に並んでいた軍船十数隻が突然木片を散らして、木っ端微塵となった。強烈な閃光と音を発して爆発炎上したのである。

 辺りには、軍船の残骸である木片と船員だったものと思われる肉片が飛び散り、偶然この光景を見た者たちはその悲惨な運命に、一瞬で恐慌状態に陥った。たった一度の爆発で軍船を何隻も沈める威力を持った攻撃が、続けざまに港中を襲う。

 

「何だ!?一体何が起こっているんだ!!」

 

 港を襲った攻撃はアメリカ空軍の「F-35」、日本戦略空軍の「海帝」による対艦ミサイルや機銃による攻撃だ。

 加えて沖に展開するアメリカ海軍主力戦艦「アイオワ」に搭載されているR砲やレーザー砲による艦砲射撃も加わっている。

 

 第三次世界大戦後、アメリカ海軍は超弩級戦艦の動力源をトリウム炉に変更する改良を加えていた。この大改革によってレールガンやレーザー兵器の運用を可能としたのである。尚、これはかの「日本武尊」に尊敬の念を寄せていた、旧太平洋艦隊司令長官のニミッツ提督による強烈な後押しもあったことは、後世世界では有名な話である。

 

 攻撃機による爆弾投下とイージス戦艦のレーザー砲撃は、確実にロウリア王国海軍にダメージを与えていく。ある者は肩に拳大の木片が突き刺さり、その激痛に呻き声を上げた。またある者は続発する被害に狼狽する。

 

「来た……国連軍が攻めてきたのかぁ!!」

 

 次の瞬間、彼らの上空を攻撃機が猛烈な速度で通過していく。猛烈な爆風を巻き起こしながら飛行するそれらは、ワイバーンよりも超高速で動いており、上空で旋回しては停泊中の軍船に再び爆発の雨を浴びせていく。港から退避しようとするも、「アイオワ」のレーザー砲によって木造船である軍船は一瞬で焼き尽くされるため、ろくに船を移動させることすらできない。

 

 敵襲を知らせる鐘は、敵によって軍船の被害が拡大している中ではあまりに間抜けに聞こえる。それでも水夫たちは恐れに負けず、船や設備を守るべく動き始めていた。

 

『海軍本部から王都防衛本部!!現在、敵の攻撃を受けてる!竜騎士団を……竜騎士団の上空支援を至急求む!空からの攻撃に対処できない!!至急上空支援を!!繰り返すーー』

 

 魔信による緊急応援要請を受けた王都防衛本部は、即座に竜騎士団に緊急発信指示を出す。けたたましい鐘の音がロウリア王国内で鳴り響き、緊張はかつてないほど高まっていた。

 

『王都防衛本部から第1竜騎士団へ緊急伝達。現在海軍本部が空からの攻撃に晒されている。待機中の竜騎士団は緊急発進、海軍本部の救援へ向かえ。続いて、第2、第3竜騎士団へ。敵は王都を攻撃してくる可能性もある。待機中の竜騎士は緊急発進後、王都上空の警戒にあたれ。繰り返すーー』

 

 指令を受けた第1、第2、第3竜騎士団は迅速に準備を整えると、竜舎に向かって走る。その中には、新人騎士ターナケインもいた。第2竜騎士団に配属されて間もない彼だが、訓練通りに命綱を確かめ、短剣を腰に装着し、革製の兜を被る。

 

 石畳の舗装されていない、土の地面を走り、竜舎に到着した彼は、相棒であるワイバーンがいる竜房を開ける。

 

 相棒のワイバーンの甘えた声に手を翳し、手綱を付け、高空でも落下しないように鞍をつけ、固定状態を確認する。

 既に待機状態であった先輩たちのワイバーンは、離陸を開始している。

 

「おっと……出遅れたか」

 

 ワイバーンの腿に足をかけ、背中に乗る。

 自らは王国を守る竜騎士。王国の守護者、剣となる者ーー自分がこの国を守るのだと胸が熱くなる。

 

 戦況の詳細を末端の一般兵が知る由もなく、今回の港攻撃は奇襲的に空から敵がやってきたのだと先輩以下、誰もが思っていた。ターナケインも、自分と愛騎がいればあっさりと敵を撃退できると自負していた。

 

「いけっ!!」

 

 ターナケインの愛騎が離陸を開始する。土の滑走路を、竜の足が蹴り飛ばし翼を広げる。走り始めたワイバーンは、離陸可能な速度に達すると、重い巨体を浮き上がらせ、透き通るような青い空へ飛び出していった。

 

 

 

 

 

 だが、その様子をただ見ている国連軍ではない。ギム近辺の国連軍飛行基地から飛び立った日本戦略空軍の「海帝」と、アメリカ空軍の「F-35」攻撃機がロウリア海軍の港を攻撃している中、超高高度からロウリア空域全体を警戒していた長距離空中作戦機の「銀鵬」や、マイハーク沖を飛行していたアメリカ空軍の「E-12」早期警戒管制機のレーダーはその様子をしっかり捉えていた。

 

 半分を王都防衛に、残り半分は港に向かっている様子はロウリア王国の知らぬところでしっかりバレていたのである。

 

 レーダーに映し出される光点は150にも及び、その量に管制員は圧倒された。とはいえ、数こそ多いが、速度は時速にて230km程度であり、海戦で撃墜したワイバーンと同じか同等の戦闘力を有する空戦兵器と推測された。つまり、彼らにとって脅威ではない。

 

 「銀鵬」は念のため、上空を飛行しているであろう戦闘機群に通達する。

 

「こちらアガツマ。イーグル1、応答せよ」

 

『こちらイーグル1。何かトラブルか?』

 

「現在、客人(敵航空戦力)舞台(敵軍港施設)への入場(防御)を急いでいる。十分な注意をもって、対応してもらいたい」

 

『了解、アガツマ。感謝する』

 

 ワイバーン迎撃のために飛び立った国連軍の制空戦闘機部隊は、空中作戦機の報告を受けて即座に迎撃体制に動いた。彼らの目標はロウリア王国防衛のために出撃してくるワイバーン部隊を排除し、制空権を確保すること。並びに敵戦闘機を撃滅することだ。

 

 極超音速で飛行する「銀龍」や、音速飛行が可能な「F-35」、「F-38」などの最新鋭音速戦闘機は強力な電子機器とエンジンが持ち味の機体だ。最高推進力はマッハ3.0、航続距離は2500kmにも及ぶ。

 国連軍の制空戦闘機編隊は、既にロウリア王国王都上空と先の港上空に展開する多数の飛行物体を感知している。パイロットたちは定められた手順に従い、迅速的確に攻撃準備を行う。

 目標との距離は既に100kmを切り、対空噴進弾「炎蛇Ⅱ」などの全空対空ミサイルの有効射程距離に入っている。

 

「攻撃開始、攻撃開始!!」

 

 40機の制空戦闘機に装備されたミサイルの固体燃料に火が灯る。射程100km以上という中距離空対空誘導弾炎蛇ⅡやAIM-4Gは、ウェポンベイやバードポイントから発射直後、マッハ4以上の速度で空を飛翔していった。

 

 

 

 

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク上空

 

 第2、第3竜騎士団は王都上空を警戒するため、旋回していた。100騎ものワイバーンたちの姿は壮観で、王都に住む国民たちはその勇姿を一目見ようと街に溢れていた。その中にはターナケインも混じっている。

 

「ん?」

 

 若い騎士が感じた一瞬の違和感。視線を動かすと、さっきまでそこにいた先輩のワイバーンが消し飛んでいた。飛竜と人だったものは肉片となり、墜落していく。

 

「な!?」

 

 ターナケインの驚愕の声と共に、彼の駆るワイバーンが突如として急降下を開始する。まるで死神が逃れるように全速力で戦線離脱していく。

 

「おい!おい!!勝手に動くな!!」

 

 彼は愛騎と一体となる素晴らしい機動技術を持っていたが、戦場において飛竜が本能的に恐怖した場合の対処方法はまだまだ未熟だったのだ。だが皮肉にも、そのことが彼とワイバーンを救うことになる。

 

「くっ……!!怯えているのか!空の王者たるお前が!?」

 

 ターナケインの叱咤も構わず、急降下を続ける飛竜。地面に近づくと、ギリギリで体勢を立て直すが騎士を振り落とさずに着陸することはできず、彼とワイバーンは無様に王都外周の壁に叩きつけられる。

 

「痛た……ち、ちくしょう!!相棒、何を勝手に……」

 

 相棒に詰め寄るが、その相棒の目は上空に向けられている。瞳孔を見開き、ガタガタと身を縮めながら震えていた。ターナケインもつられて上空を見上げると、そこには悲惨な光景が広がっている。

 

「な……何っ!?」

 

 彼らの目線の先には、何らかの攻撃によって次々と爆散する仲間たちの姿があった。100騎いたワイバーンは一瞬にしてその数を減らし、僅か2騎となっている。ワイバーンの生存本能を掻き消すことに慣れているベテラン騎士たちは皮肉にもその技によって全滅していたのだ。爆発、炸裂音、血肉の飛散。明らかな異常事態が上空で繰り広げられ、不気味な断末魔が王都ジン・ハークにこだました。

 

 王都に住まう人々は、精鋭たるワイバーン部隊に何が起こったのか分からず、誰しもが目を疑った。炸裂音と共に降り注いだ赤黒い雨を浴びたことで、現実を理解した人々は次第に事態を認識し始める。

 

「う、うわぁぁぁ!!何だ!?何が起こってるんだ!?」

 

「いやぁぁぁ!!」

 

「これは……天罰じゃ……!」

 

 血をまともに浴びたとこで狼狽する商人たちはその場を逃れようと走り、凄惨な光景に耐えられない女性はその場にうずくまり、金切り声を上げる。王都全体が大混乱に陥り、防衛騎士団が異変を察知するまでそう時間はかからなかった。

 

 1人生き残ったターナケインは再離陸すべく、相棒のワイバーンに喝を入れていたが、頑として相棒は動かない。一瞬、超高速で飛ぶ「あれら」が王都上空に現れたが、ワイバーンを狩り尽くしていたこともあり、雷鳴のような轟音を轟かせながら空の彼方へと消えていってしまった。その速度は竜騎士のワイバーンや王国民の誰もが見たこともない速度だった。

 

「ば……バカな……夢なら早く醒めてくれ……」

 

僅か3分もしないうちに、ロウリア王国王都ジン・ハークの制空権は敵に取られたのである。

 

 

 

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク 北側港

 

 海将ホエイルは言葉を失っていた。港に攻撃を加えた敵騎は甚大な被害を与えた後、迅速に離脱した。ロウリア王国第1竜騎士団が港に到着した頃には、全てが終わっていた。港の上空を乱舞する竜騎士たちが戻ろうとした時、突如上空の竜騎士が十数騎、白い煙に包まれ、遅れて爆発音が轟く。

 港の兵たちは、今度は何事かと上空を見上げた。撃墜された竜騎士たちの残骸が飛び散る中、さらに数騎が消し飛び、遅れて矢じりや円盤のような形をした何かが竜騎士たちに攻撃を加えていることを理解する。竜騎士に攻撃を加えた「それ」は、軍船に爆撃を加えた騎によく似ていた。歴戦のホエイルでさえ見たことがない速度で飛行し、信じられないほどの上昇力で空に消えていく。

 

 たったの数分で、海軍の応援に駆けつけた第1竜騎士団は、部隊消失してしまった。ホエイルの心には自分たちの無力さと、部下や仲間たちを無惨に殺した国連に怒りが湧く。

 燃え盛る軍船と港施設。悲鳴と怒号が飛び交い、地獄絵図と化していた。

 

「こうなったら……」

 

 彼は考える。見たところ、400隻はまだ残っている。港施設についても破壊を免れている施設もある。兵舎もまだ現存している。目算で兵力2万人は動員可能だ。

 海上では一方的に撃破されており、話にならない。クワ・トイネ公国へ再侵攻すると見せかけて、国連の中で王国から最も国土の近い日本に進撃し、夜間のうちに上陸。一気に日本本土へ攻め入ってやろう。そうすれば、残りの4カ国は日本救出のため、兵力をそちらに向けざるを得ない。

 海上や空では勝てないが、あらゆる戦術で大部隊を翻弄できる陸上ならば……援軍を送る国連を直接叩くことができ、国内に引き上げさせることでロウリア王国に対する攻撃も弱めることができるだろう。

 

 ホエイルはロウリア王に日本を含めた全国連加盟国本土攻撃の進言を決意する。

 

「な……な……!海から船が上がってきたぞ!?」

 

「それだけじゃねぇ……!あ……あれは……国連の船だぁ!!!」

 

 港から悲鳴が上がり、ホエイルも沖に目を向けた。港の沖合、約8km地点。伝説の幽霊船(フライングダッチマン)を彷彿とさせる浮き上がってきた超大型船を筆頭に、小島のような船が現れる。

 

「ーーあいつかぁ!!」

 

 ホエイルを何度も悪夢で苦しめる、決して忘れられない形状の艦。ロデニウス沖大海戦で友軍3500隻を、60隻で沈めた恐怖の船がそこにはあった。港から約10kmといった距離。彼はこの距離でも敵の攻撃が届くことを前回の海戦で理解していた。

 彼は思考を加熱させる。すぐ近くにいるのであれば、多数の軍船で出撃すれば港から退けさせるか、一撃を与えることはできるかもしれない。だが10kmも離れていれば、軍船が到達する前に奴らの魔導攻撃によって全滅してしまう。たとえ、攻撃しなくとも奴らの攻撃は港を破壊するのだから。

 

「……軍船は使うな、的になるぞ!ボートを!ボートを使え!!限界いっぱいでオールを漕ぎ、散開しつつ一気に敵船との距離を詰めろ!!使えるボートは全て使え!」

 

 だが、兵たちは一向に動かない。それどころか、ホエイルの周りにいる兵士たちの大半が国連軍の出現と同時に蜘蛛の子を散らすかの如く、全速力で港から逃げていたのだ。

 この間にも敵の攻撃は苛烈さを増していく。とてつもない装填の速さで高威力の爆裂魔法攻撃が連続して港に投射され、残っていた軍船や港湾施設、そして兵站が次々に破壊されていた。

 

「ひ……ひぃ!あんな奴らに勝てるわけねぇ!俺は逃げるぞ!」

 

「お、俺もだ!こんな戦い、やってられねぇぞ!」

 

「な!?貴様ら、敵前逃亡は許さんぞ!」

 

 ホエイルの叫びは誰も受け入れず、集まっていた兵たちも次々に逃げていく。彼が次の言葉を発しようとした瞬間、潜水戦艦「サラトガ」の艦砲射撃が直撃した。国連に一矢報いようと立ち向かおうとした海将ホエイルは、何もできずに猛烈な光とともにこの世を去った。

 

 この日、国連軍のイージス戦艦、及びミサイル駆逐艦群の艦砲射撃により、ロウリア王国の港湾施設は灰燼に化した。港と海上戦力の完全破壊を確認した彼らは、沖合の目視範囲から全速力で立ち去った。

 

 今回の国連軍の作戦行動により、残っていた軍船は全て沈み、兵站、港湾施設は残さず破壊された。その中には海軍の修理施設や本部施設も含まれていた。

 こうしてロウリア王国海軍は完全に消滅した。

 

 




今回はロウリア軍に対して無慈悲に力を行使した国連軍。海上戦力を完膚なきまでに叩き潰されたロウリア軍。
果たして彼らは迫り来る強大な軍事力に対抗する術を持ち合わせているのか。

国連海軍による総攻撃は、海軍士官から兵士にかけて多くの人員が強行状態に陥いれ、その大半を精神病院にぶち込んだ。また、この戦いを見ていた海軍上層部を中心に次々に辞職届が総司令部に届くことになった。
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