新・日本国召喚   作:npd writer

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皆さま、お久しぶりでございます。
失踪してから最早、一年以上が経過しました。私、まだ生きております(笑)
プライベートが多忙だったこと、創作に対する意欲が薄れていたこともあり、暫く離れておりました。久しぶりに冷戦史に関する学術本を読んで、再びモチベが高まった衝動で書いております。

英気を養うため、3月には欧州歴訪の旅に出ました。イギリス、フランス、オランダを訪問する中で、色んな価値観に触れましたので一年前とはまた違った見方で筆をとっています。

しかし欧州、チャーチル元首相の銅像多すぎィ!戦勝国になれば、過去の全ての罪は無くなって、“英雄”になるんだなあ(イギリス、国会議事堂内のチャーチル像を見ながら)


第22話 Will go

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

 夕刻。

 竜騎士ターナケインは、震えて動こうとしないワイバーンを、必死で基地まで引っ張っていこうと奮闘していた。未だ落下地点の城壁付近からろくに動けず、町からも離れた場所にいる。

 

「ええい、くそ!!動けっ!動けっ!!」

 

 ターナケインが奮闘していると、生存者を探して見回りに来た防衛騎士団員がやってくる。彼らの力も得て、嫌がるワイバーンをようやく竜舎に入れることができた。

 

「ありがとうございます。ご協力感謝します」

 

 彼は謝意を述べる。

 

「いや、構わんよ。貴重な竜騎士の生き残りだ」

 

「しかしとんでもない敵でしたね。私がワイバーンを制御できなかったため、迷惑をかけてしまいました。先輩方には後で絞られるでしょう。見た限りでは、ずいぶんと被害を受けているようでしたから……」

 

 ターナケインは悲痛な顔になる。ワイバーンの敵前逃亡に付き合わされた形だが、軍人は己の未熟を言い訳にできない。しかし、防衛騎士団員は顔を伏せて静かにターナケインに声をかける。

 

「その心配は……しなくていいと思うぞ」

 

「何故ですか?」

 

「第2、第3竜騎士団は君を除いて全て撃墜、港湾施設に向かっていた第1竜騎士団も全て殲滅された。完全なる部隊消失、完全敗北だ。君1人がいたところで、結果は変わらなかった」

 

「……え?」

 

 ターナケインは、彼の言葉の意味がすぐには理解できなかった。

 徐々に「部隊消失」という言葉の重みを実感し、心が挫けそうになる。その衝動から、彼は防衛騎士団員の肩を掴み、激しく食ってかかった。

 

「バカな!そんなバカなことが!?

竜騎士が被害を受けることなく、完全敗北するなんて!!ワイバーンは人の制御できる中で、世界最強の生物ですよ!!そんな安易とやられるわけがない!!

全部で150騎、150騎もいたんですよ!!!敵は港側も含めて何百騎で来たというのですか!!!」

 

「……確認された範囲だと、敵は50騎だよ」

 

「ご、ごじゅう……?」

 

「今回の敗北は王国民も見ていたことから隠せない。あまりの被害に王国民の間では『歴史的大敗北』『ロウリア王国は『古の魔法帝国』と戦争しているのではないか」とさえ噂されている。

ーー君も間もなく知ることになるだろう。ああ、それと王都北の港に海軍本部があるのは知っているな?」

 

「……それは、はい」

 

「敵の海と空からの攻撃によって壊滅したよ。空の敵が猛烈な爆裂魔法を投射した後、海中から現れた海魔のような船が、天文学的魔力量の魔法投射で軍船や港湾施設を粉砕した。もう再起は不可能とされている」

 

 ターナケインは震撼した。150騎の竜騎士団を殲滅した上で港湾施設を破壊し尽くすなど、それほどの軍備を備えてきたというのだ。

 

「今、城では王都侵攻をどうやって防ぐか、会議をしているようだが……会議は紛糾しているだろうね」

 

 防衛騎士団員の言葉通り、王城にて開かれていた軍の会議は紛糾していた。参加者には悲痛な表情しか出てこない。

 

 

 

 

「竜騎士団が全滅するとは、どういうことだ!!」

 

「……返す言葉もございません」

 

 パタジンの吠えに竜騎士団大隊長は力なく項垂れた。

 

「国連が参戦してから、敗退を繰り返している。このままでは奴らは確実に王都まで来るぞ!!航空戦力を全く持たずに、空からあれほどの攻撃をできる相手に一体どうやって戦うのだ!!!」

 

 緊急会議の場を沈黙が満たす。作戦最高指揮官の怒りに答えられる者はいない。

 

「国連に関してですが……陸軍を見た者がおりませぬ。空からの猛烈な攻撃、そして海の魔神が如き艦船。これらを見た者はおりますが、未だに陸軍の姿は確認していないのです」

 

「ギム攻略に向かった東部諸侯からの通信は途絶したまま。彼らほどの戦力を容易に潰すことができる戦力が王都に来た場合、それに対抗できる力がこちらにあるのかね?」

 

「敵は王都に進軍する前に、南東の工業都市ビーズルを必ず落としにかかるでしょう。そこで国連陸軍の強さを測り、王都防衛に役立てるしかありませぬ。陸軍が弱ければ、つけ入る好きもあるかと」

 

 空からの攻撃のみでは、決して王都は落ちない。都市を陥落させるためには、必ず陸の兵士による力が必要だ。ひょっとすれば、あの国連軍の弱点を見出せるかもしれない。

 まだ希望はあると意気込む軍の参謀たちを文官たちは冷ややかに見つめた。

 

「……やはり、あの時に素直に彼らの要求を呑んでいれば、いたずらに兵を減らすこともなかったのではないでしょうか?」

 

 ふと、出席していた一人の文官の一言が響く。これまで国連軍はロウリア王国に対して、警告を繰り返してきた。にも関わらず、それを無視した王国軍は進軍を続けた。結果として、王国側は一回も敵に勝てていないのだ。

 

 敵とはいえ、警告を受け入れていれば結果は変わったかもしれない。文官の言葉は胸に思っていても口にすることを憚れる、ロウリア王国国民の内心だ。

 

「それは敵方の要求を受け入れ、降伏を受け入れろと?」

 

「古今東西の歴史から見ても、妥協的な講和などない。それに、亜人迫害を国是としている我々を彼らが許すわけがない。戦わずして奴隷の身に落ちるよりも、戦いにより死んだ方が名誉を守れるというものだ」

 

「大体、敵方の要求を安易に受け入れては国民に示しがつかない。この戦争を始めるまでにどれほどの金と手間をかけたと思っている?『敵の戦力が強大すぎました、なので降伏します』では最悪政府が崩壊し、国家が内乱状態になる。今更、無責任な行いはできんよ」

 

 軍関係者は当然反発した。国民や国家が戦勝国の奴隷になることを何よりも恐れる彼らは、国連を信用できていなかったのだ。列強ですらそう簡単には生み出せない戦果を易々と作り出していく国連軍が、どうして列強にも劣る王国を奴隷化しないと言えるか。事の本質が分からないが故、疑心暗鬼に陥らざるを得ない。こうして、継戦的意見が多数になったところで、改めてパタジンが継戦を宣言する。

 

「今回の竜騎士団の壊滅は、国連軍が強力な空の兵と海の兵を持っていることを裏付けた。しかし陸が弱ければいくら強力な軍であろうと町は落とせない。まだ王都には強力な騎兵、重装歩兵、弓兵、歩兵が残っている。ここで兵を退くのは、死んでいった者たちに対する裏切りだ」

 

 そして黒いローブを着た男に顔を向けると、非常に言いづらそうな口調で頭を下げる。

 

「……パーパルディア皇国の使者殿。第三文明圏唯一の列強国、貴国の援軍があればまた戦況を、我々優位に運べるのだがどうだろうか。再度援軍を送ってもらうわけにはいくまいか……?」

 

 パタジンも脳裏に焼き付いているパーパルディア皇国魔導戦列艦隊の凄まじい強さ。数々の文明圏内及び文明圏外の国家を支配下に置き、70を超える属国を抱える、第三文明圏フィルアデス大陸の盟主。世界に五つしかない列強国の一つに数えられるパーパルディア皇国は、その強力な軍事力を背景に国力を拡大しつつあった。

 あの軍事力があれは、国連軍など恐るに足りないだろう。

 

「ーー我々、パーパルディア皇国はロデニウス大陸統一のための支援を十分過ぎるほど行なった。兵もワイバーンも限りがある中で、ただ消費させるほどの余裕は我々にない。これ以上支援は行えん」

 

 皇国の突き放すような振る舞いに、誰も言い返すことができない。実際、クワ・トイネ公国もクイラ王国も下せるほどの軍備を備えていた。それをパタジンは忘れていなかったのだ。それ故、パタジンもこれ以上要求を押し通すことはできない。

 

 一方、皇国側も革新的外交政策を掲げるレミールの影響で、強硬な姿勢で臨めずにいた。というのも、これまで誰よりも()()()らしいと評されるほど強欲で傲慢だったレミールは、人が変わったかのようにあり得ないほど堅実、謙虚に変わってしまっていた。

 

 皇国軍の侵略軍から防衛軍への変革、積極的な国内投資を呼びかけているレミールは、各局の予算配分を口実に外部への干渉を控えるよう圧力をかけていたのである。

 

 これ以上の話はないーーパーパルディア皇国の使者団はそそくさと帰ってしまった。これから列強の支援なしに戦う敗戦濃色の王国を視線の端にもかけずに。

 屈辱に塗れる上層部を見かねた幹部が話題を変えようと手を挙げる。

 

「国連軍の主力である日本、イギリスは島国らしいので軍事力が空と海に特化し、陸に関しては大した強さを発揮しない可能性すらあります。王都は港から40km以上離れていますし、港を滅した魔導艦であっても攻撃が届くことはないでしょう」

 

「むしろ脅威なのは大陸国家であると主張していたアメリカ、カナダ、フランスですな。これらの国々の陸軍戦力については警戒する必要があるかと。また、空からの攻撃は脅威ですが、国民や防衛騎士団からの証言を参照すると、数自体は少ないようです。海軍については生存者が少なく、まだ尋問に答えられそうにありませんので対地攻撃力については不明ですが」

 

 情報は現場から上に行くほど簡略化し、都合のいいように書き換わる。報告する者が不在になるほどの殲滅により情報がうまく伝わっておらず、各国の思惑とは異なり、ロウリア王国の判断を誤らせた。

 

 

ハーク城

 

 王都防衛騎士団将軍パタジンは王室へと場所を移し、冷や汗をかきながらロウリア国王ハーク・ロウリア34世に謁見した。

 

「ーー以上が国連軍によるものと思われる被害状況と、王都防衛計画の概要になります」

 

「……本当に大丈夫なのか?超高速で飛行する飛行騎に、強大な爆裂魔法を使用する魔導艦隊……これほどの力を持つ軍に勝てる道筋が見えないのだが」

 

 パタジンを王座から見下す国王の表情は暗い。開戦直後のあの威風堂々としたオーラは消え、今や王国最後の王になるかもしれない恐れに心を乱される一人の男がいた。

 

「陛下、申し訳ありません。……しかし、国連陸軍の強さはいまだ全容が把握できておりません。国連軍は王都進軍前に南東の工業都市ビーズルを通過する必要がありますゆえ、間違いなく攻撃してまいります。この機会に、かの国々の弱点を必ず調査いたします」

 

 想定外とも言える国連軍の強さ。

 列強の技術・資金の支援を受け、彼らに並ばずともロデニウス大陸では頭一つ抜けた軍隊を保持していたはずのロウリア王国。だが、突如出現した彼らは、手塩にかけて育てた王国軍を最も簡単に倒して見せた。まるで赤子と象が戦っているかのように。

 先の会議ではまだ戦えると言ったパタジン自身も、戦争を継続して勝利を得られるか、その確証が持てずにいる。

 

「希望的観測だな、パタジン。問うが、仮に列強パーパルディア皇国が今回のように港と王都上空に侵攻してきたとして、今回ほどの被害になると思うか?」

 

「恐れながら陛下、列強国は別格にございます。艦隊数、ワイバーンを性能で凌駕するワイバーンロード種など、いずれも我が国を上回っています。数百隻の魔導戦列艦と竜母から飛び立つ数百のワイバーンロードが我が国に襲いかかれば、おそらく今回の数倍の被害を受けるでしょう」

 

「……はっきり言うな。王都防衛騎士団の将軍ともあろう者が」

 

 ロウリア34世自身も薄々分かっていたのだが、国家の最高権力者に堂々と意見したパタジンの肝の据わりようには驚かされた。

 

「パーパルディア皇国の強さは作戦本部でも、仮想敵国として何度も模擬演習を実施いたしました。その結果として、戦力、国力、技術力の差から勝つことは不可能と判断します。国連軍に関しては、本当に情報が少ないため判断できないのです」

 

「北の港にあれほどの被害を与える国家が突如として現れた原因については?」

 

「恐れながら申し上げます。群島の民族が集まった新興国家が、あれほどの力を有することは不可能です。かと言って、彼らの主張である『国ごとの転移』など神話の世界のようなことが、現実に起きたとも考えられませぬ。恐らく……列強が支援しているかと」

 

 列強の支援。それもパーパルディア皇国の技術力を上回るとしたら、列強序列第一位の神聖ミリシアル帝国、もしくは序列二位のムー国あたりか。しかし、王には第一文明圏や第二文明圏の列強が、端にもかけない世界の外れの国家を支援するという行動が信じられなかった。

 

「……いずれにせよ、王都は死守しなければならないぞ。ここが最後の砦なのだ」

 

「ははっ!このパタジンにお任せください!!」

 

 将軍パダジンの前では王たる振る舞いを最後に見せた彼であるが、国連軍に対する恐怖は確実に彼の心身を蝕んでいく。

 王国の行末を案じ、一人頭を抱えながら王は夜を過ごした。

 

 

 

国連軍 王都攻略作戦本部 

 

 太陽は沈み、辺りは暗闇に包まれた。電灯などの設備のない、漆黒の闇が支配するこの空間で、無機質な光に車両が照らし出される。数多くの車輌は整然と並び、出発準備を完全に整えている。

 

 彼らはロウリア王国の意思を完全に屈するための精鋭部隊だ。これと時を同じくして工業都市ビーズルに攻撃を加える別動隊もいる。

 各車の無線からは、総司令官であるアイゼンハワーの訓示が流れた。

 

『諸君、我々はこれより極めて危険な作戦を決行する。困難な目標達成のため、諸君らには多大な敵を迎え撃つという最も厳しい任務が与えられる。本作戦が失敗すれば戦争は泥沼化し、禁じ手を使わざるを得なくなり、より多くの人命が失われることを肝に銘じてほしい。作戦の成功を祈る。以上だ』

 

 これを合図として、各地に展開する車輌及び航空機は砂埃を巻き上げながら次々に出動していく。

 ーー目指すは、王都ジン・ハーク。そして工業都市ビーズル。王国に降伏を促す大一番の作戦は開始された。

 

 




「人類が生きながらえるためならわしは、殺戮者と呼ばれることもいとわん」
ーー『進撃の巨人』より、ドット・ピクシス。
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