新・日本国召喚   作:npd writer

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衆議院、解散しましたね。

選挙は、我々の先人たちが命をかけて勝ち取った意思表示の場であり、我々が直接為政者たちに訴える事ができる唯一の機会です。

今、万年与党の土台は大きく揺らいでいます。こんなに面白い選挙、なかなかありません。

これ読んでいる皆々さまがその手に渡された選挙権を放棄することなく、一票を投じられることを切に願います。
保守であっても、中道であっても、リベラルであっても、あなたが自らの生活と命を託す事ができると少しでも思える政治家や政党に、大切な一票を託しましょう。
皆々さまが面倒だと思う時間と手間が、将来の生活や運命を変えます。



第25話 降伏、または玉砕

 

 クオリッチが全面攻勢を仕掛ける前まで時を遡る。

 

 ロウリア王国王都防衛隊の兵士たちは、1人の蛮勇の活躍に勢いづいたのか、次々と敵に向かっていく。正面からくる光弾、打ち下ろされる強烈な流星雨、上空の虫から放たれる爆裂魔法を有した光の矢が飛来し、味方は何人も倒れた。その犠牲の甲斐あり、なんとか敵との距離を縮めることに成功していた。

 

「このままいけば、我が方の刃が届くでしょう。あの流星雨のような攻撃も、味方がいれば使えないでしょう」

 

 軍師は眼下の兵たちの死に様を、被害の大きさに歯噛みしつつ戦況を見守ることしかできない。それは隣にいるパタジンも同様だ。多大な犠牲を払いながらも着実に敵との距離を縮めている自軍。

 

 このまま行ければ、我々が有利となる白兵戦に持ち込めるのではないか。だが、その希望は一瞬で絶望に変わった。

 

 何の前触れもなく、猛烈な爆発が戦場を覆いつくす。平地で突如火山が噴火したかのように広範囲にわたって爆発は連続して続いた。上空にてホバリングするヘリ部隊が攻撃を開始したのだ。

 

 爆風の中にいた兵士たちは一瞬で薙ぎ払われ、土煙が晴れた先には肉片すら残らず、黒い爆発跡が残っているだけだ。

 

「ば……バカな!て、撤退だ!!直ちに生き残っている友軍を王都に引き上げさせろ!」

 

 パタジンは顔を真っ青にしながら吠えた。まるで人間の巨大な足から逃れる蟻のように、兵たちは一直線に王都の入り口に逃げ帰ってくる。

 その間、クオリッチは逃げ続ける敵にも容赦なく攻撃を続け、敵の戦力を削ぎ続けた。流石に城壁内へ逃げた敵に対する攻撃は行わなかったものの、城壁外の敵に関しては容赦なく機関砲やミサイルでの攻撃を繰り返した。 

 

 コックピットのクオリッチはこう吐いた。

 

「蛮族はこうやって倒す。国連加盟国ではない国々に対して、我々が国際法を守る義理はない」

 

 この日、ロウリア王国王都ジン・ハークの北側に展開した、国連ジン・ハーク方面軍主力部隊は、迎撃のために出陣したロウリア王国王都防衛隊を壊滅に追い込んだ。各国戦車隊による機関砲の斉射及びアメリカ海兵隊攻撃ヘリ部隊によって王都防衛の戦力は大幅に削られ、ロウリア王国指導部の継戦意志を削いだ。

 

 特にクオリッチによる高度からのミサイル攻撃は、逃げ回るロウリア兵すら逃すことなく殲滅したため、恐怖と絶望を王都防衛隊に植え付けたのだった。

 

 

 

 時刻は深夜。城壁の上では、国連軍による再度攻撃に備えて松明が焚かれている。赤々と揺れる炎は、絶望と諦めにくれる兵士たちを照らし出した。

 軍の損耗は壊滅、たった1回の戦いにしては考えられない被害だ。ある者はあまりの敵の強さに恐怖し、泣いていた。そしてある者は重症の傷の痛みに悶え、呻き続けている。総力戦とも言える王都防衛隊は広範囲に発生した戦場の大噴火で、残存兵力の大部分を喪った。

 パタジンが撤退を即座に判断したことで多少は兵も生き残った。だが、現状のロウリア王国軍ではどう足掻いても勝つことはできないだろう。

 

 ロウリア王国史上、最強、最恐、最狂の敵ーー日本、アメリカ、イギリス、フランス、カナダが連合した国連軍。ビーズルを守っていた守備隊は壊滅したのか、救援要請の非常魔信を最後に魔信は途絶えた。これが意味すること、それはロウリア王国にとって経済の心臓部である工業都市ビーズルは敵の手に落ちたことの表れだ。残る主要都市はジン・ハークのみ、つまりビーズルを攻略した軍が合流し、更に強力になった敵の戦力が王都を包囲することを意味する。

 

 そして、無駄死ばかりの戦争に対する怒りが兵士たちの間に溜まっていることも確かだった。まだ敵兵の1人でも殺せていれば士気も維持できていたのだが、信じられないことにまだ敵に対して弾薬以外の損耗すら与えていない。理不尽な殺戮に対する不満は政府ーー特に王城から出てこないハーク・ロウリア34世に向かいつつあった。

 

 国連軍の再度侵攻、そして沸々と沸きつつある革命の危機に頭を悩ませながら、パタジンは緊急作戦室で軍師や軍幹部、行政担当者たちを集めて会議を行った。

 

「敵はまだ攻めてこない‥‥。いつ王都へ再攻撃を仕掛けてくるつもりか」

 

 魔導師が将軍の質問に答えた。

 

「あれほどの魔力投射を行う軍です。一旦守りに入り、我が兵を精神的にも兵站的にも損耗させる作戦かもしれません。戦いは攻めよりも守りが楽ですから」

 

「いや……彼らが本隊とも限りませぬ。もしかしたら本隊の到着を待って、今日以上の一斉攻撃を仕掛けてくる作戦かも」

 

 軍師の予測は、作戦室内の空気を鉛のように重くした。憶測が更なる心配を生み出し、皆が疑念に囚われる。

  

「何とか彼らに有効打を与える方法はないのか?現状、我が軍の攻撃可能範囲に届く遥か手前で、敵の攻撃によって全滅している。これでは話にならぞ」

 

「どうやって敵に近づくというんだ?あれだけ強大な敵では、我々の槍と鎧など紙切れも同然だ。兵を肉壁とする作戦も効果がないと分かった今、列強の支援なしにあの敵を打ち負かすなど極めて難しい」

 

 軍師や魔導師が頭を悩ませる中、一人の人物が手を挙げた。

 

「ーー将軍、私が行きます」

 

 細い吊り目、キツネのような顔を持つ男ーー防衛騎士団第3騎兵隊大隊長カルシオ。彼の部隊は即応力が高く、南の城門を守っていた彼らは数少ない無傷の部隊だった。

 

「カルシオ、策はあるのか?」

 

 パタジン自身、彼に幾度も助けられてきた。ロウリア王国が現在の地位に至る過程で、多大な功績を上げた男がカルシオだった。それ故、パタジンは慎重になる。彼自身が()()()()()のロウリアを託すことができる人材と評した男を、こんなところで失うわけにはいかないのだ。

 

「いかに強い兵であろうとも相手が人間であれば、休みが必要なもの。夜は休みの刻、我々の兵は夜目がききます。暗闇に紛れて奴らを奇襲し、機動力を生かして敵に打撃を与え、離脱いたします」

 

「浅はかだな、カルシオ。我々が夜目がきくのならば、敵も同様に夜目がきくと考えるべきだ」

 

「今日は大勝しておりますゆえ、宴でもして気が緩んでいるかもしれません。もし見張りがいたとしても、全員夜目がきくとは考えられません。今宵は新月、隙ができるとすれば今夜しかありません。次を逃せば、王国は滅びます」

 

 パタジンを悩ませる重い決断。確かにカルシオの言い分も理解できる。新月である今夜は夜襲が最も成功しやすい夜だ。仮に成功すれば、敵に対して小さくも確実に傷を与えられる。だが失敗すれば、有能な人材を失うだけでなく、敵の王都占領を誘発させる可能性すらあった。

 

「……確かにカルシオの言い分も理解できる。私自身、すぐに出陣を許可したいくらいだ」

 

「ならば将軍、今こそーー」

 

「だがならん!ならんのだ……カルシオよ。今、前線の兵は怯え、脱走も続出している。我々が考える以上に王国軍はガタガタなのだ。そして、今や王に対する革命の危機すら出る始末。ビーズルが落ちた今、王国の継戦能力など無きに等しい」

 

 カルシオの言葉を遮るようにわ机上の机を強く握られた拳で強く叩く。力無く座ったパタジンに最早、王国軍を率いてきた将軍としての覇気はなかった。

 

「実に皮肉な結果だ。人的資源が強みだった我々が、今や一兵一兵を大切にしなければならないのだ。

……皆には話していないが、脱走は兵だけでなく、今や王国政府の役人にも現れている。もはや、これ以上の戦争は国の崩壊を招くだろう。

ーーいいか、カルシオ。国家とは人・民族がいる限り、例え国土が消えようとも心や伝承で残り続ける。だが、人を失えば誰がロウリア王国を残し続ける?」

 

 パタジンの言葉に室内にいた全てが耳を傾ける。

 

「私は国是をクワ・トイネ公国及びクイラ王国侵略から、ロウリア王国存続へと転換することを提案したい。例え、この場にいる我々全員が命を落とそうとも、未来の世界にロウリア王国を残すことが、この戦争を始めた者の責任だと考えている。

ーーこれに異議がある者、反対する者は遠慮なく私を殺せ。最後まで王国が分裂するのは本意ではない。その罪は私が免除することを誓おう。それを文章として残しておく」

 

 部下に取って来させた紙にその旨を記し、サインした。

 

「パタジン将軍……」

 

「将軍……」

 

 パタジンの覚悟に涙する者も現れる。彼は自分が死のうとも、この国を未来に残すことに賭けたのだ。大高が見れば、前世である第二次世界大戦終戦直前の大日本帝国首相であった鈴木貫太郎予備役海軍大将の姿に見えただろう。

 

「もし皆が私に賛同してくれるのならば、私はこの意を王に奏上し、ご決断を仰ぐつもりだ。臣下がやってはならぬことゆえ、死刑は覚悟している。

もし私が処刑され、王が総玉砕をご命令されたら……全軍の総指揮を、カルシオお前に託したい」

 

「……それは私に王国最後の将軍として、王国と共に死ねと?」

 

「頼む」

 

 机に手をつき、深々と頭を下げるパタジン。そこに王国の指揮官としてではなく、一人の王国民として願う男の姿があった。

 

「一生に一度の、一大貧乏くじを引かせますね。パタジン将軍」

 

 一つ息を吐くカルシオ。そしてゆっくりと告げた。

 

「分かりました。将軍には助けられてきましたご恩があります。それに軍人として、王国のために命を燃やして尽きるのは本望ですよ」

 

 パタジンがゆっくり顔を上げると、そこには意を決したカルシオがいた。その目にはうっすら涙も浮かんでいる。部下に全責任を押し付ける行為にパタジンは申し訳なさでただ何度も頭を下げた。彼に断られた場合は、最悪王都にいる民を根こそぎ徴兵し、自らと共に突撃させる愚策すらも用意していた。

 王国を存続させるため、パタジンは行動し始める。

 

 

 

「パタジン殿がそこまでお覚悟を決められていたとは……ならばこのヤミレイも共に奏上いたしましょう」

 

 作戦室の面々に別れを告げ、王城の廊下を歩くパタジンはその道中、魔導師ヤミレイと出会った。王宮主席魔導師として、パタジンと共に幾度となく戦場を共にした彼はパタジンから意志を聞き、共にその運命を背負うと言うのだ。

 

「ヤミレイ殿、貴方にまで責任を負わせる訳には……」

 

「パタジン殿。私は開戦を支持した者の一人、貴方と同じです。そこまでの覚悟を貴方が決めているのに、どうして私は平気な顔をして生きていられようか」

 

「しかし……」とパタジンも引かない。

 

「ハッハッハ。私のことを心配してくれるのは嬉しいが、生憎私も歳です。この老耄一人消えたところでこの国には痛くも痒くもないでしょう」

 

 後進の弟子たちの育成も終わった。老人である自らが消えたところで国家にとっては一人の死を待つだけの人間がいなくなっただけーー長らく王国を支えてきた男は、共に戦った戦友を一人で死地に向かわせるわけにはいかないと覚悟を決めたのだ。

 これ以上の問答は彼の意志を踏み躙ることになる、言葉はいらぬとパタジンはそれ以上は語らずに王のいる謁見の間へと向かった。

 

 

 

王城 謁見の間

 

 謁見の間に入るパタジンとヤミレイ。向かい合う形で見下ろす王ハーク・ロウリア34世の側には、近衛隊大隊長ランドが控えている。

 度重なる国連軍の攻撃、想像を絶する王国軍の被害の大きさ、身内からの離反者続出ーー王国の未来を薄々察していたロウリア34世の顔は窶れ、そこにかつて上り調子であった生気溢れていた王の姿はなかった。

 

 謁見の間に入った両者は、一度入り口で深々と頭を下げると、間の中央まで進み、ひざまずいた。

 

「パタジン、ヤミレイよ……其方らも王国に別れを告げにきたのか……?」

 

 疲労の色が浮かぶ目を謁見の間に立つ二人に向け、静かに問いかける。

 

「いえ、国王陛下。我々は決して陛下を、王国を見放したりは致しません。最後の瞬間まで王国とと共にあります」

 

「ええ。仮に王国と共に我が身も滅ぶのであれば、喜んでその運命を受け入れましょう」

 

 パタジンとヤミレイは王の言葉を否定するが、それでも幾人の臣下が国から脱出していることを把握していた王には疑心暗鬼が付き纏い続ける。

 

「……それで、敵の攻撃が迫る中で私に何用か?」

 

「……陛下、単刀直入に申し上げます。敵ーー国連軍の要求を全て受け入れ、この戦争を終わらせましょう。王国が未来永劫残り続けるには、これしかありませぬ」

 

「それは敵に対して全面降伏を宣言しろと、そう言いたいのか」

 

 国王への死刑を覚悟して臨む直訴。当然、王が受け入れなければその場で首を刎ねられる。文字通り、決死の覚悟で口を開いた。全面降伏など、受け入れ難いことは分かっているが、そうでないと国が滅ぶ。二律背反の葛藤の末、捻り出した結論なのだ。

 

 もう出した言葉は取り消せないーーあとは、奇跡か死の二者択一だ。

 

「陛下。国は民が生き続ける限り、存在し続けます。ですが民が死に絶えてしまえば、ロウリア王国は名実共々滅亡する運命なのです。今、我々が戦う敵はこの王国を文字通り消滅させることも可能だと、私は考えております」

 

「クワ・トイネ公国とクイラ王国との開戦も、両国の占領が主目標となっておりました。最早、両国を占領することは不可能でしょう。また、多くの兵が犠牲となり、工業都市ビーズルも陥落しました。当初の戦争目的遂行が不可能になり、悪戯に民が死にゆく中で、これ以上の戦争継続にどんな意義がありましょうか」

 

 パタジンに続いてヤミレイも王に言葉を述べた。王に対して意見を申す、それも国王の本意に反する可能性すらある降伏に。二人は冷や汗をかきながらも続けた。

 

「国王陛下、敵に降伏するということはそれ即ち、国の運命を敵に委ねるということ。確証もないまま、国の未来を掌中から手放すことは耐え難い苦痛であるとお察しします。ですが、陛下の言葉一つでロウリア王国は滅亡の運命から逃れられます。

ーーどうか、国王陛下のご決断を!」

 

 必死の形相で頭を下げる2人をロウリア34世はただじっと見つめるだけだ。数刻の時を経て、返答が返ってきた。

 

「二人は、もしも直訴が失敗した暁には死罪となることは分かっているのであろうな?」

 

 ロウリア34世は鋭い眼光で両者を見据えた。二人の覚悟を尋ねるその問いに、彼らは無言で頷いた。

 

「ランド大隊長、近衛隊を束ねる貴様にも尋ねておきたい。戦争継続か、それとも降伏か。どちらの道を選ぼうとも、王国に順ずるか?」

 

「国王陛下。私は王をお守りする近衛隊であります。その隊が恐れ多くも国王に反旗を翻しては、示しがつきませぬ。王がどちらの選択肢を選ばれようとも、我々近衛隊は決死の覚悟で王と王国と共にお進みいたします」

 

 側に控えていたランドにも尋ねた王は、彼の答えを呑み込んだ後、暫く考えた。その時は一瞬とも、永遠とも感じられる時間だった。その間、パタジンとヤミレイはひざをついたまま、頭だけを王に向け続けた。

 

 やがて王が口を開く。

 

「この戦争を始めるにあたり、用意周到に準備を重ねてきた。資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をして軍を作った。そしてパーパルディア皇国との屈辱的な条約と引き換えに支援を取り付け、列強式兵隊教育を6年もかけて施した。民には重い負担をかけており、だからこそこの戦いでの敗北は許されなかった」

 

 王の言葉から降伏や講和の言葉は聞こえてこない。パタジンとヤミレイの顔色は悪くなる。

 

「だが蓋を開けてみればどうだ?海軍は全滅に近い被害を受け、陸軍も敵に対して攻撃を一回も当てられておらぬ。圧倒的な戦力を前に、我々はただ踠くことしかできなかった。このままでは、かの“古の魔法帝国”に滅ぼされた国家同様、我々も滅びを待つのみであろう。私もロウリア王国が存続するのならば、迷わずそれを手にしたい」

 

 だが、と言葉を区切る。

 

「私は確信を持てぬ。強大な敵が王国の存続を認めるかどうか、王たる私には判断が出来ぬのだ。

ーーパタジンよ、お前はロウリア王国の存続を引き換えに敵に降伏を申し出るつもりなのであろうが、勝算があってのことか?」

 

「……正直、敵が我々の条件を受け入れる確証はございませぬ。しかし、彼らは我々よりも兵力で劣るクワ・トイネとクイラの味方をし、この戦争に参戦してきました。我々が誠意ある姿勢を見せれば、あるいは」

 

 この場にあって嘘偽りは無意味ーーパタジンは誠実に、現実的に、そして注意深く王の質問に答えた。自らの死地はこの王が握っているのだ、今更何のために嘘をつく必要がある。

 王は顳顬に指を当てたまま、動かなくなった。パタジン、ヤミレイ、ランド、そしてロウリア34世の間に永遠にも感じられる沈黙が流れる。

 

「良かろう。パタジン、ヤミレイ、お前たちの勝利だ。この王国を未来の子孫に残すという考え、国を思う臣下として実に素晴らしい大義であった」

 

 謁見の間に鎮座する玉座から立ち上がり、ゆっくりと二人へ歩み寄ったロウリア34世は二人の前にかがみ、彼らの目をしっかりと見た。

 

「ーー降伏後は困難な試練が待っているであろうが、必ずやロウリア王国は復活するであろう。私はお前たちの示した未来にこの命を賭ける。

頼むぞ、必ず講和を実現するのだ」

 

 ロウリア王国民をまとめ上げ、強国に育て上げたカリスマ性溢れる王が帰ってきた。パタジンとヤミレイは目に涙を浮かべながら、固く誓う。

 

「は!この命に代えましても必ずや!」

 

「国王陛下のお覚悟、確かに受け取りました。ロウリアを滅びの運命から救うことに全力を注ぎます!」

 

 王は続けて、敵が降伏を受け入れなかった場合を口にした。

 

「もし仮に敵が我々の降伏を受け入れなかった場合であっても、お前たちの処分は問わぬ。もしもその時になれば、私は王国軍を率いて前線に立つ。そして、パタジン、ヤミレイ、ランドそして王国民と共に敵に最期の足掻きを見せてやるつもりだ。死す時、私はお前たちとと共に死にたい」

 

 王も覚悟を決めたのだ。仮に降伏が受け入れられない場合、王国民を根こそぎ動員の上、王国の全住民で一斉攻撃を行うーーつまり、総玉砕する決意なのだ。

 

 民のため、愛する者のため、そして国家のために必ずや成功させるーーパタジンとヤミレイは腹を据えて、交渉に臨むための準備を整え始めた。

 




「パトリオティズムとは初めに自国民を愛する心にあり、ナショナリズムとは初めに他国民を憎む心にある」

ーー元フランス大統領シャルル・ド・ゴール
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