新・日本国召喚   作:npd writer

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激動の時代、既存コンテンツの衰退と新たなツールの台頭……コロナ禍以降、明らかに時代が変わっているのを感じますね。

まさに“新時代”って感じです。


第30話 講和後の世界

講和会議から数日後 クワ・トイネ公国政治部会

 

「ーーということで、ロウリア王国国王ハーク・ロウリア34世は、条約批准と同時に退位を宣言しました。今後、王太子が新国王として即位するとのことです。

しかし、年齢が3歳と幼いこともあり、暫くはマオス宰相、パタジン将軍、ヤミレイ魔術師を中心とした摂政評議会が、事実上の執行機関として公務代行を行なっていくことになります。

また、軍縮も順調に行われており、竜騎士団の全滅、騎兵、歩兵の大きすぎる喪失、王国海軍の壊滅も相まって、ロウリア王国が既に我が国を侵略できる戦力は無くなったと判断できます」

 

 政治部会の場はどよめきと共に納得の空気に包まれた。当初、日米英仏加の国力を疑問視していた議員たちは立場が無くなったことで沈黙し、大多数が親国連派になっている。最早、彼らの実力を疑う者などいなかった。

 

「国王と対立していた諸侯の一部は講和に反発しているものの、アメリカ海兵隊の航空部隊による殲滅作戦およびマオス宰相による改革によって力を失いつつあるか、新たに新設された貴族院の椅子に収まっており、目立った反乱は確認されていません。

また、国連の求めによって行われた第一回庶民院議会総選挙では、保守勢力である立憲君主派が過半数を確保して安定政権を作り出しました。この政党は国内復興と対外関係の再構築を訴えており、対外的に復讐を掲げる政党ではありません」

 

「ロウリア王国政府ならびに王国軍は、国連軍に対して強いトラウマを抱えている模様であり、同盟国である我が国を侵略する意欲は今のところないようです。あと、戦争に関して民間人の死者はゼロとのことでした」

 

 外務局と新設された防衛局の官僚が発言し、ロウリア王国の情勢を説明した。

 

 ロウリア王国では、国連の求めに応じてロウリア王国議会開設と議会総選挙が速やかに行われ、立憲君主派が第1党を確保した。ロウリア王家の存続を認めつつ、国家主権を国民に委ねることを掲げる穏健派政党であり、また周辺国との関係改善を訴える国際派の政策を掲げていることが、戦争のトラウマに苦しむ王国民に受け入れられたのだ。今後、第3党である民主同盟、第4党の自由党との大連立内閣が構成され、組閣が行われるだろう。

  

 また、完全に国連軍にトラウマを植え付けられたロウリア軍は急速な軍縮を行い、それまで掲げていた対外拡大政策の放棄を宣言した。軍備縮小に伴って軍から解雇された兵士もいたが、進出している日米英仏加の商社や企業の現地採用によって新たな稼ぎ口を得たことで、経済不安が起こるリスクも減っている。

 

 ロウリア王国に関する報告を聞き終えた首相のカナタは手を挙げ、ゆっくりと息を吸うと出席者に呼びかけた。

 

「いずれにせよ、我が国は助かった。これは本当に喜ぶべきことだ。この戦いで我々と共に戦った同志国とは、友好関係を続けたいものだ」

 

 

 

 グラ・バルカス帝国 情報局

 

 並べられた電子式受信機に、電子音が連続して鳴り響く。その音はまるでモールス信号のようだ。

 

「閣下、ロデニウス大陸の情報について、現地からの報告です」

 

 煌びやかであるが、すっきりした黒い制服の男が報告を始める。

 

「ロウリア王国によるクワ・トイネ公国ならびにクイラ王国への侵攻は、国連軍と呼ばれる多国籍連合軍によって失敗に終わった模様。国王は退位し、ロウリアは立憲君主制を支持する政党が大連立内閣を形成、新体制を発足させたようです」

 

「何!?我々の分析ではロウリア王国が圧勝し、ロデニウス大陸全域がロウリアの所領になるはずだったが……。しかし、多国籍軍とはな。現地の軍勢か?」

 

「現地からの情報によりますと、大日本合衆国、アメリカ合衆国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、フランス共和国、カナダ連邦と呼ばれる新興国家の様です。この5カ国が介入ーーもとい全面参戦したことにより、戦局が一変しました」

 

 閣下と呼ばれた男ーー情報局の将校は片眉を吊り上げた。

 

「ロウリア王国海軍4400隻の大艦隊は、国連軍の艦隊に一方的に撃破され、地上でも国連軍に傷を負わせることなく敗れています。

なお国連軍の兵装についてですが……」

 

 男の口が澱む。そして報告書を何度も見返した。その内容が信じられないと言わんばかりに冷や汗を流しながら、何度も間違いではないかと読み返した。

 

「何だ!勿体ぶらずに言え!」

 

「は、はい。ロウリアの首都ジン・ハーク及び北の港での目撃情報を総合したところ、以下の戦力を確認したとのこと。1万トン級重巡洋艦、5千トンの巡洋艦、それに……推定排水量10万トンを超える超巨大空母、推定排水量8万トン前後と予測される潜水戦艦……」

 

「は!?ま、待て!10万トンの空母!?8万トンの潜水戦艦?何だそれは!?」

 

 男の報告に将校は思わず口を挟んでしまう。いや、挟まずにはいられない。そんな空想世界にしか存在し得ない規格外の兵器など、この世に実現できるはずはないし、まして存在するはずがない。

 

「は、はい。空母については説明を省略しますが……潜水戦艦というのは、潜水航行を可能にした戦艦でして……」

 

「ええい!そんな嘘など、どうせ現地民が針小棒大に言っているにすぎないのだろう!?この話はここで終わりだ!二度とそんな馬鹿みたいな報告を持ってくるな!」

 

 どうせ転移国家であろうが、我々の敵ではない。そんな戦場伝説など、どうせ現地民に言わせているに決まっていると、将校は言い切る。そして、軍の運用方法や戦後の敗戦国に対する扱いなどからも、彼らは大層平和な世界に住んでいたのだろう、と将校は結論づけた。

 

 こうしてグラ・バルカス帝国の運命を左右する大切な情報は、虚偽情報として扱われ、上層部に報告されることはなかったのである。

 

 

日本国 大統領官邸 大会議室

 

「大統領、お久しぶりです」

 

「いや、高野総長こそお疲れ様です。先のロデニウス大陸での戦争、陸海空の連携が光り、無事に勝利を収めることができましたな」

 

 日本国大統領官邸にて定期的に行われる国家安全保障会議。大統領、内閣総理大臣、副総理兼総務大臣、副総理兼産業府長官、外務大臣、防衛大臣、大蔵大臣、海外協力庁長官らが参加が参加するほか、陸軍参謀総長、海軍軍令部総長、空軍参謀長ら国防軍制服組トップも出席する。出席者各々がロデニウス大陸での戦争を労う中、会議が始まった。

 

「ーー本日の議題に急遽加えたい案件がございまして、皆さまにはこちらの画像をご覧いただきたいと思います」

 

 定例報告と情勢会議が終わったところで、会議開始2時間前に急遽追加された議題を高野が紹介する。彼がタブレットを操作して表示した一枚の衛星画像。そこには1隻の船が写っていた。

 

「これは我が国の軍事偵察衛星『アンノ』が撮影した衛星画像です。撮影海域は第二文明圏西方、クワ・トイネ公国からの情報提供では列強国レイフォル近くと思われる場所です」

 

「総長、それが何の写真なんですかね?鋼鉄の大きな船が浮かんでいるようにしか見えませんが」

 

 参加者を代表して高橋大蔵大臣が高野に聞いた。彼にとってはよく見る鋼鉄製の船が撮影されただけであり、高野が態々国家安全保障会議で態々見せるにしてはその真意が分からなかった。

 しかし、この後の高野の説明を聞くにつれ、閣僚たちの顔色は悪くなっていった。それは高橋自身もそうだ。

 

「この写真を国防省、情報省、各研究機関で分析したところ、推定全長約260m、全幅約40m、推定排水量約7万3千トン、そして46cm三連装3基9門を主砲とする戦艦クラスの船であることを確認しました」

 

「ま、まさか……!」

 

 全長、全幅、排水量、主武装……その姿に誰もが衝撃を受ける。

 

「ええ。我々がよく知る前世帝国海軍の象徴、世界最強の主砲を搭載しながら太平洋戦争では一発も放つことなく沈んだ世界最大の戦艦。日本国民に最も知られた軍艦、戦艦大和と酷似しています」

 

「そ、そんな!あれば前世の遺物ですよ!?それがなぜこの世界に!?」

 

「……偶然にしては出来すぎていますね」

 

 西郷総理は思わず声を上げ、東郷国防大臣も驚きのあまり目を見開いた。後世の大戦では、戦艦大和の意志と技術を受け継いだ「日本武尊」を完成させた日本にとって、大和とそっくりの戦艦がこの世界にあるという衝撃は大きいものだ。

 

「この戦艦はレイフォル沖を航行し、途中迎撃に出た防衛艦隊を迎撃、その勢いのまま湾岸都市を砲撃し、粉砕した模様です」

 

 戦艦の単独運用など前代未聞であり、とても現代の海軍ドクトリンを研究しているとはいえない。しかし、大和型戦艦を実戦運用出来ることーーそれはつまり、前世大日本帝国のような技術と軍事力を保持した国家が存在することを意味する。流石に複数保持することは国家財政上あり得ないが、それでも強大な高速戦艦や重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦、潜水艦を多数保持している可能性は高い。

 

 

 

 この瞬間、閣僚たちには帝国海軍の技術力とアメリカの工業力を持った国家と軍事衝突するかもしれないという最悪のシナリオが共有された。お気楽に聞いていた閣僚たちも、徐々に真剣な表情でメモをとった。

 

「東郷大臣、あの大和型もどきの戦艦を持つということは、大日本帝国若しくはそれに準ずる国家がこの世界に存在するということですかな?」

 

 閣僚の中で比較的冷静に写真を見つめていた伊藤副総理は隣に座る東郷に話しかけた。それでも内心では他の閣僚に劣らぬくらい驚いていたのだが。

 

「私も今この写真を見たばかりなので、詳しいことは省内で分析しないことには分かりません。ですが、民間人の退避なく沿岸都市を完膚なきまでに破壊したならば、残念ながら友好関係を構築することは難しいかもしれません」

 

 東郷はモニターまで歩み寄り、戦艦が破壊したと思われる街が写った衛星画像を示した。いくら戦闘状態とはいえ、民間人がいるかもしれない都市を砲撃することは非人道的な行為だ。無論、政府の監視が効かない戦時下だからこそ攻撃したのかもしれないが、これを常套手段でやっている可能性もある。十分過ぎるほど危険であった。

 

「攻撃が行われたのは第二文明圏西方。我々にとっては遠い大陸の出来事ですが、決して他人事ではありません。かの戦艦を保有する国に関する情報を至急収集します」

 

 覇権主義国家である場合、ロウリア王国の比にはならない強さを誇る国家が敵となる。無論、技術力では日本側が勝るが、物量で押し切られた場合はその限りではない。木戸は会議終了後、すぐに情報を集めることを宣言した。

 

「いずれにせよ、万が一に備えて我々も用意する必要がありますね。彼の国が第一文明圏を手中に収めた場合、次のターゲットになるのは我々ですから」

 

「財務省としても緊急の予算に関して対応できるよう、予備費を増額させます」

 

 幣原副総理はいつか来る衝突に備るべき時代に備え、総務省として出来ることにすぐに取り組むとし、高橋大蔵大臣も戦時特例国債発行のための準備を行うとした。

 

「海軍軍令部としても、大和型戦艦に酷似した戦艦を持つ国家の存在が確認された以上、警戒レベルを上げるべきだと進言します。衛星写真からも、ロウリア王国の比にはならない強敵になることは確定的です。勿論、彼らが平和主義国家であれば良いのですが、民間人がいるかもしれない都市を砲撃する以上、可能性は低いと考えます」

 

 高野の不穏な言葉で臨時の議題の報告が終わる。続いて報告を行ったのは木戸だ。

 

「続いて外務省の報告です。ロデニウス大陸での戦争の講和条約である『マイハーク条約』ですが我が国とイギリス、カナダ、クワ・トイネでは既に批准済みです。フランス、クイラでは議会による承認が済んでおり、後はミッテラン大統領とクイラ国王による批准のみであり、アメリカも残す上院が承認すればすぐに批准が行われると報告を受けています」

 

 最初の報告は「マイハーク条約」の批准進捗状況についてだ。既に各国での審議が終了しており、あとは議会の採決や国家元首による批准を残すだけとなっている。

 

「ロデニウス大陸にある全ての国家と国交を結ぶ目処がたった今、我々は次に国交を結ぶ国家としてフェン王国、アルタラス王国、そしてパーパルディア皇国を挙げたいと思います。特にアルタラス王国はロデニウス大陸と第三文明圏のチョークポイントにある戦略上の要所であること、パーパルディア皇国はフィルアデス大陸の盟主であることから、早い時期に国交を樹立したいと考えています」

 

「木戸大臣。アルタラス王国はよく知りませんが、パーパルディア皇国との外交交渉は上手くいくでしょうか?クワ・トイネやクイラの外務関係者から話を聞く機会がありましたが、正直彼らと友好関係を構築できるとは思えないのですが」

 

 西郷が木戸の提案に難色を示した。専制主義、絶対君主制、覇権主義国家であるパーパルディアとの外交関係が上手くいくとは思えない。最悪、難癖をつけて軍事衝突、そして全面戦争となれば、ロウリア王国との戦争の比にならない結果になると懸念したのだ。それこそ、世界大戦規模の大戦争になるかもしれないと。

 

「確かに西郷総理の言う通りですね。ロウリア王国の性質を考えると、皇国の国益にならないと分かった時点で外交交渉は破綻するでしょう。何なら、我々はロウリア王国にバックについていたと思われる皇国の面子を潰してますから」

 

「うーむ。しかし、今後我々が世界進出するのならば、皇国と接点を持たないことなどできないだろう。覚悟を決めて交渉するしかないと思うよ」

 

 西郷、幣原ら女性閣僚はパーパルディアに対する嫌な予感が拭えきれず、否定的になってしまう。一方、伊藤は嫌なのは分かるが仕方ないと割り切るべきだと主張する。

 

 閣僚たちの議論の結果、フェン、アルタラス、パーパルディアに対する外交政策を重点的に置くこと、大和型戦艦を有する国家に対する情報収集を強化することが決定された。

 そして、日米英仏加の首脳会談でも同様の議論が話題となったが、大和型戦艦という()()()()などに恐れる必要はないと主張するアメリカとイギリス、覇権主義を絶対に許さず寧ろ叩き潰す口実が出来て内心喜んでいるフランスは、寧ろ強気に対峙すべきと主張した。

 

 パーパルディアに関しても中小国の意思を踏み躙っている皇国に対して強硬にいくべきだと主張する米英仏に、比較的融和派のカナダも同調した。

 無闇な対立を避けるべきと主張し、大和型戦艦保有国に対する外交を慎重に行うべきとの大高の主張に賛同したアイルランド、東方エルサレム共和国さえもパーパルディアに対しては、米英仏加の主張に近い意見だ。特に民族浄化(ジェノサイド)の歴史を持つ、東方エルサレムのロッペン大統領は、身を怒りに震わせながら決して融和になってはならないと各国に呼びかけた。

 

 国際協調を重視する大高が折れる形で、パーパルディア皇国に対する外交は強硬な姿勢で臨むことが決定されたが、大高が強く望んだ大和型戦艦保有国に対する情報収集については各国の情報機関が協力することが決められた。

 




前回のコメントで多かった内容

なんでクワ・トイネ公国にウマ娘いるの?唐突じゃない?
→クワ・トイネ公国とクイラ王国は人間種と亜人種との仲が非常に良く、多種多様な種によって構成されています(首相カナタさんもエルフでした)。そのような国ですから、ウマ娘がいてもおかしくはないと思って導入してみました。

あと、筆者が最近競馬で脳焼かれたのも理由の一つです笑(先日の天皇賞秋のドウデュースには本当に痺れました)

好評でしたら、クワ・トイネ公国にて開かれたエキシビション・レースの模様も書きたいと思います
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