私は絶賛喉がやられてしまい、地味に違和感が数日続いてます(辛い!)
中央暦 1639年9月25日午前 フェン王国 首都アマノキ上空
ガハラ神国神軍風竜隊隊長スサノウは、隣国フェン王国の首都上空を飛行していた。今日は、フェン王国が5年に1度開催する「軍祭」が行われる為、その親善交流として派遣された風竜3騎で編隊飛行を披露する。この祭りには、文明圏外国家の武官も多数参加している。彼らは、技を競い、自慢の装備を見せることで自国の軍事力の高さを見せつけ、他国の牽制にも活かしていた。
スサノウは上空から眼下に広がる大海原を見下ろす。数々の文明圏外の木造船が浮かんでいる中、一際目立つ常軌を逸した大きさの船が35隻が目に映る。そのうち、4隻は風竜が着陸できそうなくらい大きかった。ガハラ神国より東に位置する国、日本、アメリカ、イギリス、フランスの船だという。
『まぶしいな』
スサノウが騎乗している相棒の風竜が話しかける。空に溶け込むような青い体、魔力を利用して飛ぶ翼はほのかに輝く。風竜は知能が高く、人の言葉を理解するが人には仕えない。ガハラ神国に伝わる神通力によって神国民は契約を交わすことで、使役することを許されていた。
「確かに。今日は雲一つない快晴だからな」
『いや違う。太陽ではない。あの下の灰色の船から線状の光が様々な方向に高速で照射されている』
「船から光?何も見えないけどな」
『人間には見えまい。我々風竜が遠くの同胞と会話に使用する不可視の光だからな。何が飛んでいるかも確認できるその光に似ているのだ』
風竜によって個人差はあるが、スサノウの相棒は120km先までその光を飛ばせる。しかし、灰色の船ーー日米英仏空母機動艦隊のレーダー波は、より遥かに強く、光を収束させていると風竜は語った。スサノウは彼らが秘める強さに感心した。
日本国防海軍 ミサイル駆逐艦『響』
「信じられないな……」
「ええ。しかし艦長、これは間違いありません」
艦隊上空を飛行する、ガハラ神国所属の風竜と呼ばれる生物から、レーダー波に酷似した電波が照射されていることに各国艦隊の司令部は驚く。航空戦力として申し分ない出力であり、中小国がこれだけの竜部隊を保持していることは、大量に運用している文明圏の国がある可能性が出てきた。
これを機に各国ではステルス機の急速配備が行われることになる。
フェン王国 首都アマノキ 軍際
「あれが日本、アメリカ、イギリス、フランスの戦船か……まるで城だ」
剣王シハンの言葉に、武将マグレブが頷いた。
「いやはや、ガハラ神国から事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属でできた船を海に浮かべるとは……。私も数回、パーパルディア皇国へ行ったことがあり軍船も見たことがありますが、こんな大きさの船自体、見たこともありません。まして金属製なんて初めてです」
彼らの視線の先、アマノキ沖合には空母機動艦隊から別離した日米英仏のミサイル駆逐艦4隻が浮かんでいた。
「剣王、間もなく我が国の廃船に対して、日本、アメリカ、イギリス、フランスの艦から攻撃が開始されます」
剣王シハン直々に各国に頼んだ、『力を見せてほしい』という依頼。その回答が今、示される。
標的船として浮かぶ廃船4隻。距離は4km以上、駆逐艦から離れている。シハンは望遠鏡を使って、4隻の船をそれぞれ見た。
「あの距離から攻撃するというが、本当か?我が国最強の軍船、旗艦『剣神』ですら、あの距離では攻撃できまい」
「はて……あの距離ならば、艦船に接近するところから始めるつもりなのかもしれません」
日本国防海軍ミサイル駆逐艦『響』、アメリカ海軍ウィルソン級ミサイル駆逐艦『ズムウォルト』、イギリス海軍87型ミサイル駆逐艦『インターセプター』、フランス海軍ナシオン級駆逐艦『ナシオン』に搭載された射撃管制システムに制御された、150mm単装レールガン砲が旋回し、標的に狙いを定める。
レーザーとレーダーで標的との距離を正確に計算し、砲の初速、弾道を電算機が正確に割り出す。揺れる水上でも砲身を安定させ、寸分違わず標的を捉える。
その時間は僅か一瞬だった。バンっ!という特徴的な砲撃音がシハンたちの耳に届く前に、船が木っ端微塵にされた。海面から水飛沫をあげ、船の残骸が空を舞っている時、遅れるようにして発射音が響き渡る。
標的船4隻は原形をとどめないほど爆散し、瞬時に轟沈する。
「……凄まじい。声も出なかった……」
「そんなバカな!」
「信じられん!」
剣王シハン以下フェン王国中枢は、自らの攻撃概念とかけ離れた威力にただ唖然としていた。4隻からの同時攻撃とはいえ、全て正確無比に命中させ、あっさり沈めてしまった。
連写速度に関しては分からなかったが、列強パーパルディア皇国でもあんな芸当はできないことなど、見ている者全てが理解できた。
「すぐにでも各国との国交開設、国連加盟への準備に取り掛かろうぞ!不可侵条約はもちろん、できれば安全保障条約も取り付けたいな……!」
剣王は各国の力を認め、満面の笑みを浮かべ側近たちに指示を出した。
「司令長官。フェン王国へ接近中、多数の所属不明機を捉えました」
「うむ。私の感覚だが、どうやらお呼びでない客人のようだ。各国旗艦に繋いでくれ」
フェン王国に派遣された第ニ連合航空機動艦隊司令長官坂元玲次郎海軍中将は、探知機監視員からフェン王国西方約50kmより接近中であった機影に関する報告を受け取った。報告によれば、時速350kmであり、ロウリア王国が以前保有していたワイバーンよりも若干速い。念のため、坂元は各国空母機動艦隊の司令官とも連絡を取る。
『うむ。こちらでもレーダーで捕捉している。ここから西といえば、パーパルディア皇国に関係する何かと考えて間違いないだろう』
坂元とともに今回参加しているアメリカ海軍旧大西洋方面艦隊司令官ハワード・リーヒ海軍中将も接近する飛行物体を認識しており、対空戦闘用意を指示していると坂元に報告した。
『こちらも飛行物体を認識しています。念のため、フェン王国側にも問い合わせを行なっているところです』
『我々も同様だ。万が一招待国であった場合、撃ち落とせば陸にいる外交屋が困るだろうからな』
対ロウリア王国戦で活躍したネルソン中将率いるイギリス海軍空母打撃群、ミュズリエ少将率いるフランス海軍航空打撃艦隊でも接近中の飛行物体に関して棒情報収集を行なっているとのこと。
敵機の可能性が高いが、フェン王国に招待されている可能性も考慮し、各国はフェン王国に問い合わせを行った。しかし、王都に近づきつつあったにも関わらず、フェン王国側からの返答が来ることはなかった。
パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊所属のワイバーンロード20騎は、フェン王国懲罰のため、首都アマノキ上空に飛来した。今、下で行われている軍祭には各国武官がおり、皇国に逆らった国の末路がどうなるかをその目に焼き付け知らしめるため、あえて祭りに合わせて攻撃の日が決まっていた。
攻撃が成功すれば、皇国が持つ軍事力の強さと恐ろしさを再認識させることができる。また、服従しない国に関わるだけで攻撃対象となると自覚させ、フェン王国を孤立させることも可能であろう。
ガハラ神国の風竜という、ワイバーンロード部隊でもどうにもならない存在が首都上空を飛行していることが気になるものの、それは計算済みだ。
部隊長の竜騎士は苦々しく思いながらも、後続の隊員たちに魔力通信器を使って指示する。
『……ガハラの民には構うな。フェン王城と、そうだな……あの目立つ赤い船に攻撃せよ!』
飛来したワイバーンロードが、軍際で賑わう首都上空で二つに分かれ、一つはフェン王国王城に向けて急降下を始めた。
何かの実演かと誰もが疑問に思ったその時、急降下していた竜が口を開け、口内で火球を形成する。
「まずい!ワイバーンロードだ!逃げろ!!」
騒ぎを聞きつけて外に出てきた王城の奉公人が、城内に向かって叫ぶ。次の瞬間、10騎のワイバーンが放った火球は王城の天守閣に着弾し、木造の王城を炎上させた。
「ーーッ!カナダ巡視船『ロバートソン』にワイバーン10騎が急降下中!」
戦略空母『建御名方』の艦橋で悲鳴に近い報告が上がった。坂元は座っていた司令長官席から立ち上がるとすぐに指示を出した。
「対空戦闘用意!敵の攻撃が来るぞ!各艦、回避行動!」
次の瞬間、パーパルディア皇国の皇国監察軍東洋艦隊所属のワイバーンロード10騎は、直下約500m付近に停泊中だったカナダ沿岸警備隊巡視船『ロバートソン』に向け、導力火炎弾を放出した。
『フェン王国軍祭に、事前通達なき飛行物体多数接近中』との報告を受けていたカナダ沿岸警備隊巡視船『ロバートソン』は、素早く機関を始動させ、上空警戒監視に集中した。
「未確認飛行物体、我が方への攻撃準備開始!」
「機関出力最大!直ちに回避せよ!」
9900馬力にも及ぶ水素エンジンの出力を最大にし、船体後方に白い尾を作る。一気に加速して最大速度に達した『ロバートソン』は、次々と降り注ぐ火炎弾を回避していく。幸い、小回りがきく船体であったことに加え、いち早く反応した『インターセプター』のレーザー砲による迎撃が間に合ったことで、全ての火炎弾直撃回避に成功した。
「な、何ィッ!?あのタイミングで全てかわされただとぉ!?」
急降下から水平飛行に移行したワイバーンロードは10騎は、必中タイミングで撃ったにも関わらず、全てをかわされたことに唖然としていた。
「リーヒ司令長官、同盟国の艦船が攻撃を受けました!反撃の許可を!」
「許可する。敵を一機たりとも逃すな、全て撃ち落とせ。ただ、ガハラ神国のドラゴンには当てぬよう注意を徹底させろ」
原子力空母『エイブラハム・ケネディ』のCICで指揮をとっていたリーヒは、同盟国であるカナダ艦船に対する国籍不明機の攻撃を、「警告なき戦闘行為に対する自衛措置として、反撃を行う」と定めた国連憲章に違反していないと判断した。そして、『敵』と判断した国籍不明の未確認飛行物体への全力反撃開始を命じる。
司令長官の命を受け、『ズムウォルド』、そして帯同していた『ウィルソン』、『ノーマン』のR砲が上空に展開する『敵』に向けられる。また、日本の『響』、イギリスの『インターセプター』、『スコット』、フランスの『ナシオン』も同様に主砲を上空に向けた。
各艦で目標が被らないよう、即座に目標をコンピューターで振り分けられた。射撃管制システムによって敵との相対速度が計算され、飛行する敵の未来位置で迎撃できるよう、寸分違わず、主砲の砲身が方向を調整する。
次の瞬間、各艦のR砲が炸裂し、上空にいたワイバーンロードは極超音速で飛んできた砲弾によって全て消滅させられた。
ワイバーンロードが撃墜される様子を、空から見ていたスサノウと風竜は感嘆の声を上げていた。
『すごいものだ……あの船は、人間には見えぬ光をトカゲに浴びせ、船の砲はトカゲから反射した光の方を向き、飛行する未来位置に向かって撃った。見た目以上に技術の塊だ』
「そ、そうなのか?そんなにすごいことなのか?」
『古の魔法帝国の伝承にある、対空魔船以上だ。特にあの大砲の発射速度が速すぎる。我々ガハラの竜でも逃げ切ることはまずできない。恐ろしい技術だ』
「マジか……そんなにすごいことなのか。帰った後の報告書が大変になりそうだ」
「………」
剣王シハンと彼の側近、軍祭に参加していた各国の参加者たちなど、この光景を見ていたすべての目撃者は信じられない光景を前に、ただ唖然と恐怖を抱いていた。1騎落とすだけでも大変な犠牲を強いるワイバーンロードが、自分たちの目の前で20騎以上が、一瞬で消し飛んでしまったのだから。
フェン王国をはじめ、ワイバーンロードを落とすなど多くの中小国家とっては夢のような話だった。しかも、今回襲ったのは練度が優れているであろうパーパルディア皇国のものである可能性が高い。戦闘態勢にあるワイバーンロードを仕留めるのは、フェン王国だけだと事実上不可能だ。
文明圏外の国で、1騎でもワイバーンロードを落とすことができれば、国として世界に誇ることができる。それを日米英仏はいともあっさりと、虫を踏み潰すが如く自軍に被害を出さずに、列強の精鋭であるワイバーンロード部隊を20騎も叩き落とした。
歴史を動かす、世界を間違いなく変えた出来事になると誰もが感じる。
ワイバーンロード部隊は、フェン王国への懲罰的攻撃に来ていた。国連という超文明の国家連合巻き込めたのは天運ではないかと、シハンは笑みを隠しきれない。
燃え盛る王城を見ながら笑う剣王は、前世界にて孤立主義色に染まっていたアメリカを世界大戦に参戦させるため、日本に真珠湾を攻撃させるよう誘発させたフランクリン・ルーズベルトの戦略に似ていたと、後の政治家は語る。
「よく考えてから行動せよ。しかし、行動する時が来たら、考えるのをやめて進め」ーーフランス元皇帝、ナポレオン・ボナパルト。