新・日本国召喚   作:npd writer

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第37話 アルタラス王国、強大な緊張

中央暦1639年11月5日 王都ル・ブリアス アテノール城

 

 第3大陸圏、フィルアデス大陸南端に存在する大きな島。ここをアルタラス王国が統治している。人口は1500万人を超え、文明圏外国家としては国力も人口も規格外の規模を誇る有力国家の一角。

 

 温暖な気候のために年中過ごしやすく、王都にある建築物は円を基調としたデザインが多くと入れられている。

 魔導鉱山を有する資源輸出国として、昨今主に異世界から来た国家の中で熱烈なブームを巻き起こしているウマ娘文化を持つ国家として、最近は活気に溢れている。

 

 しかし、そんな賑やかさと裏腹に国王ターラ14世は王城で頭を抱えていた。苦渋に満ちた表情で手に握られた文章を眺める。それはパーパルディア皇国からの要請文だった。

 

「これは……正気とは思えん!」

 

 毎年送られてくる文章であるが、『要請』とは名ばかりの実質命令書である。しかも今回は明らかに王国を挑発する内容だった。

 

・アルタラス王国内の魔石採掘場・シルウトラス鉱山をパーパルディア皇国へ献上せよ

・アルタラス王国王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出せ。

・以上2点を2週間以内に実行することを要請する。

 

 そして最後の一文にはこう記されている、『できれば武力は使用したくないものだ』と。

 

「ありえない……ありえないぞ!」

 

 パーパルディア皇国は前皇帝崩御後、現皇帝ルディアスに代替わりしてから、明らかに覇権主義的な姿勢が目立つようになった。彼は国土の拡大、富国強兵を掲げ、各国に領土の割譲を迫っていた。それでも今までであれば、無益な場所の割譲や相互利益があったりと穏当な場合が多かった。

 だが……

 

(しかし、今回は……!我が国に全く利がないではないか!)

 

 皇国が要求の一つとしたシルウトラス鉱山は、アルタラス王国最大の魔石採掘場であり、王国経済の心臓だ。その埋蔵量が世界でも5本の指に入るため、軍備拡張を進める皇国にとっては確保しておきたい戦略的要所なのだろう。これを失えば、アルタラス王国の国力は一気に低下する。

 

 それに加えて、正気とは思えない王女の奴隷化。王族を奴隷としてタダで渡すなど、外交要求として持ち込むことなど断じてあってはならない。

 

 これは、アルタラス王国を怒らせるための方便に過ぎない。皇国は最初から戦争に持ち込もうとしていることが、ターラ14世には手に取るように分かった。

 

(何故だ……今までも皇国からの要請は屈辱的であったが、我慢すれば飲める範囲ではあった。それ故、友好的な関係を保っていたはずなのに、いきなり掌を返したかのような受け入れ難い要求……あの皇帝は、やはり野心を抱いていたか)

 

 ターラ14世は、ル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局の管轄、アルタラス出張所へに出向き、真相を確かめることにした。

 

 

 

アルタラス王国内 パーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所

 

 アルタラス出張所は、王国内の建築物とは異なり、優雅かつ細部の造りまでこだわった皇国風の建築デザインで建てられている。明らかにアルタラス王国との国力の差を感じさせる意図が透けて見える。

 ここはあくまで一国の外務関係の役所、つまるところは大使館だ。  

 

 ターラ14世は外交官を供に連れ、職員に案内されて館内を歩いていく。一国の国王が直接訪ねてきたというのに、館内には特に混乱は起きていない。皇国人にとってはどんな立場の人間であれ、文明圏外というだけで差別されるのだ。

 

「待っていたぞ、ターラ14世!」

 

 大使の部屋に入ると、パーパルディア皇国第3外務局アルタラス担当大使カストが大仰に椅子に座り、足を組むという無礼な態度で国王を呼びつけていた。

 カストが座っているのに対し、ターラ14世は座ることを許されず立ったまま応じた。大使室にはカストが座る椅子以外はソファの一つもなく、床が一部変色していることから事前に全て撤去したことが容易に想像できた。カストの背後にいるパーパルディア上層部は、なんと悪趣であろうかとターラ14世は心の奥底で憤慨する。

 

「あの文章の真意を伺いに参りました」

 

 無礼な態度には此方も無礼で、と挨拶に抜きに会話は始まる。

 

「内容の通りだが?」

 

 わざと両手を上げておどけて見せるカスト。

 

「シルウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です。これを失えば、我々は国力を大きく低下させるばかりでなく、王国民を飢えさせることになります」

 

「それがどうした?鉱山ならそこら中にあるだろう?無ければ新たに掘ればいい。それともお前たちは何か?ルディアス様の意思に逆らうのか?」

 

 品のない表情を見せるカストに、ターラ14世も我慢の限界を超え顔を顰める。

 

「とんでもございません。……しかし、これだけはどうにかなりませんか?」

 

「しつこいぞ!ならんと言ったらならんのだ!!」

 

 まるで駄々をこねる子供のように意固地に引かないカストに、内心呆れつつも次の話題に流れを変える。ここからは自国の外交官たちを刺激させる恐れもあるため、外交官を下がらせたターラ14世とカストの一対一で行われる。

 

「では我が娘ルミエスのことですが、何故あのようなことを?」

 

「ああ、あれか。ルミエスは中々上玉じゃないか。俺が味見をするためにつけさせてもらった」

 

「……は?」

 

 信じられない回答に、ターラ14世は抜けた声を出す。仮にも一国の大使が、相手国に対して最大級の無礼と侮辱を働いたのだ。

 

「俺が味を見てやろうというのだ。まあ、飽きたら適当な淫所か売春宿にでも売り払うさ」

 

「……それも皇帝ルディアス様の御意思なのですか?」

 

「ああ!?なんだその態度は!!皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思でもある!その反抗的な姿勢、蛮族風情が誰に向かって口を利いていると思ってる!!」

 

 もはやこれは国家間交渉ではない。怒るターラ14世は話は終わりと言わんばかりに背を向けた。

 

「待て!おい!話は終わってないぞ!」

 

 カストがターラ14世に罵声という罵声を浴びせ続けるも、国王はさっさと部屋を出て行ってしまった。自分の言葉と要求が無視されたということにカストは腹を立て、怨嗟の言葉を静かに吐いた。

 

 

 

王都ル・ブリアス アテノール城 

 

 怒りが収まらない国王は文官、武官を緊急招集し、カストとのやり取りを全て明かした。その内容を聞いた全ての者が怒り、強硬な姿勢を取るよう王に呼びかけ、これに彼も答える。

 

「あの馬鹿大使をすぐに皇国に送り返せ!要請文の返答には、外務省から『国交を断絶する』とはっきり書いてクソ野郎に送り返す!同時に我が国にある皇国資産を全て凍結しろ!!

ーー外務大臣、すぐに国連安全保障理事会の緊急開催を要請してくれ。国連大使にはあの馬鹿大使とのやり取りを全て公開し、各国の支持を取り付けるよう伝えろ!」

 

 屈辱的な条件を容易く呑んでいては、もはや国家ではない。威信を示すためにも断固要求は蹴る。幸いにアルタラス王国は国連加盟国であり、また太平洋防衛機構加盟国でもある。

 皇国の中でも旧式装備な武装の監察軍相手ならアルタラス王国軍も少しは戦えるが、念には念を入れ国連加盟国の力を借り、その強さを見せつけた上で早期の白紙講和へと持ち込む。

 そうすれば全面衝突になることなく、問題を解決できるとターラ14世は考えていた。

 

 国王は夕日に赤く燃える空を見上げ、皇国に一矢報いる決意を固くした。

 

 

 

アメリカ合衆国 ニューヨーク 国際連合本部

 

 アルタラス王国に対してパーパルディア皇国が提出した『要請文』という名の命令書は、アルタラス王国が緊急開催を要請した国連安保理でも議題として取り上げられ、各国はその野蛮な要求に開いた口が塞がらなかった。

 領土割譲は無論、一外交官の欲望がそのまま国家の要求となる事態に、集まっていた大使たちは勿論、国連本部の職員、詰めかけていた記者たちも驚きを隠せなかった。

 指導者原理がさらに歪んだ外交政策など、地球からすれば4.5世紀は前に消えた外交手法だ。それを国連加盟国に対して行うこと、国連全体への明らかな挑発と受け止められた。

 

 アルタラス王国国連大使より、文書の内容が発表されると議場の各国から非難の声が上がったが、特に苛烈な反発を示したのはアメリカ、フランス、そして関係国として招致された東方エルサレムだった。

 

 アメリカは覇権主義的なパーパルディア皇国が、既存の国際秩序へ明確な挑戦する意志を見せたことに強く反応した。そして、パーパルディア皇国の要求は、主権国家であるアルタラス王国を侮辱するものであり、即刻撤回されなければならないと批判した。加えて、一国の王女を外交官の趣味で凌辱するなど、野蛮という言葉以外に当てはまるものはないと、国連大使は机を叩きながら猛抗議した。

 

 フランス、東方エルサレムは王女の奴隷化を口実に、パーパルディアがアルタラス王国民の総奴隷化を計画していると批判し、あの『ナチス』以来の世界的な危機だと各国に訴えた。

 

「合衆国は、アルタラス王国の王女と国民の尊厳を踏み躙り、卑劣な要求を行ったパーパルディア政府に対し、断固たる非難を表明する。加えて、パーパルディア皇国が多大な犠牲の上に国際連合が築き上げた世界平和に対し、真っ向から挑戦する姿勢を見せたことに遺憾の意を示すと共に、直ちに当要求の撤回を求めることとする。

 アルタラス王国が行う自衛策に対して、アメリカ合衆国は最大限の援助を行うと約束する」

 

「フランス国連代表部はパーパルディアのアルタラス王国に対する要求に対して、断固反対・拒否の意を評する。即刻、要求の撤回と謝罪を要求する。

 我々は、パーパルディアを『ナチス』の蘇り、ルディアスを現代の『ヒトラー』と捉えている。新たなる独裁者が誕生したことを、我々は認識しなければならない。

 今、『ネオナチ』パーパルディアによって、小国が目の前で呑み込まれようとしている。我々は一致団結し、再び蘇ったナチを滅ぼすべきなのだ。これは国際連合全体が果たすべき義務なのである」

 

「東方エルサレム共和国、そして全てのユダヤの民を代表して、世界に呼びかける。

 パーパルディアは我々の平和に鉄の鉤十字を突き刺し、その滴る血で国家を潤している。我々は侵略を受ける全ての国連加盟国を、独善的で専制的で野蛮な国家から守る義務があり、一歩も引いてはならない。

 もし仮にパーパルディア皇国が我々の平和の上に専制主義の拳を振り下ろすならば、我ら東方エルサレム共和国の国民、そして全ユダヤの民はその持てる全ての力をもって、敵を迎え撃つことを宣言する」

 

 交戦的な安保理常任理事国に対し、安保理に招待された中小国の中には、皇国に対して正面から喧嘩を売ることも辞さない議論に不安な声を上げる者もいた。しかし、日米英仏加が国際防衛に基づき、各国の防衛政策に注力することを発表したことで、そのような不安は取り除かれていった。

 

 決議案の中には、仮にパーパルディア皇国との戦争が勃発したとしても、参戦は各国の自主判断に任せる配慮が加えられた。強制的に皇国との戦争に参加させられると警戒する周辺諸国を宥めるため、日本が安保理決議に加えるよう提案し、それが受け入れられた結果だった。

 

 また、この国連の動きに呼応し、アメリカでは『アルタラス王国独立維持防衛法』が議会上下両院全会一致で可決され、衣食住、医療物資、インフラ整備の無償供与が実行が可能となった。

 

 日本でも木戸、東郷、新渡戸の助言を受けて大高が作成した『アルタラス防衛法』が衆議院と賢議院にて全会一致で可決され、仮にパーパルディア皇国が侵略行為を持ってアルタラス王国に侵攻した場合、即座に宣戦布告することが決定された。

 

 イギリス、フランスではいよいよ皇国による侵略行為に対して立ち向かう時が来たという世論が強まった。そのため、サッチャーとミッテランは世界大戦時のチャーチル元首相とド・ゴール将軍以来となる共同戦線を構築することを共有し、有事に備えた早期動員体制を布告することなる。

 

 

 

アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス

 

「大統領。本日議会にて『防衛法(アルタラス王国独立維持防衛法)』が可決され、アルタラス王国に対する支援が法的に可能になりました。具体的には衣食住支援に加え、道路や水道、空港、港湾施設などインフラ設備への無償支援です。

 またこの法案には、パーパルディア皇国による対アルタラス王国戦争が開始された際にはより幅広い軍事支援、並びに合衆国の参戦も盛り込まれています」

 

 法案成立後にリーガンは、ウィルソン副大統領、ローディ国務長官、ハミルトン財務長官、エヴァンス国防長官ら関係閣僚、ウィーズリー主席補佐官、サリバン国家安全保障担当大統領補佐官などのホワイトハウス上級スタッフ、ウォルターズ統合参謀本部議長らアメリカ軍制服組トップ陣を大統領執務室に招き、会談を行っていた。

 法案に関する説明をウィーズリーから簡単に受けた後、即座に法案に署名したリーガンは今後のアメリカの方針に関して、閣僚たちから意見を聞いた。

 

「大統領。私はパーパルディア皇国の屈辱的な外交によって虐げられようとしているアルタラス王国を、合衆国の総力をもって防衛する考えに賛成です。

 一方で、パーパルディアとの戦争回避と相互平和維持のため、外交交渉は最後まで行うつもりです。また、先制攻撃が国連憲章によって明確かつ厳格に禁止されている以上、パーパルディアによる対アルタラス宣戦布告まで表向きには中立の立場を取るべきだと考えます」

 

「パーパルディア皇国を刺激しないためにも、その政策は有効でしょうね。戦争を回避するための交渉はわたしも支持しますわ。その上で国防長官に聞きたいのですが、仮にパーパルディア皇国との戦争が開戦した場合、どの程度で展開が間に合いますか?」

 

 ウィルソンとローディはパーパルディア皇国との外交交渉の並行を条件に、アメリカの対パ参戦に賛成した。2人は孤立主義者(モンロー主義者)ではないが、レミールというパイプを得られた以上、簡単に交渉を放棄することには反対していた。

 

「仮に我々が参戦した場合、海軍は即座に展開できるだろう。問題は陸軍と空軍だな。陸軍は動員したとしても現地到着には時間がかかるほか、事前に駐屯するにしてもアルタラスの同意が必要になる。空軍についても同様だ。その同意を合衆国は得られていない」

 

 エヴァンスは、既にリーヒを司令長官とする空母機動艦隊をアルタラス王国周辺海域へ派遣している。この艦隊だけでも木造船であるパーパルディア皇国海軍に対抗できる戦力はある。が、魔法攻撃を警戒する統合参謀本部の提案を受けて、ロウリア王国との戦争で活躍したニミッツが指揮を取る空母艦隊も、ロデニウス大陸に待機させていた。

 

 一方、陸空軍についてはアルタラス王国との軍事通行権をめぐる交渉や基地に関する取り決めが定められていなかったことから、まだ軍の展開ができていない。この問題に際して、サリバンとアルタラス王国担当者がクワ・トイネ公国にて調整する手筈となっていた。

 

「現在のアルタラス王国の戦力、パーパルディアとの技術差を考えれば、アルタラス王国は1週間持ち堪えることができれば上々です。最新装備を用いるパーパルディア皇国と、一歩遅れた技術を有するアルタラス王国とでは勝負になりません。我々から見ればロストテクノロジーであっても、19世紀の大英帝国を上回る戦力をパーパルディアは保持していますから」

 

「19世紀とはいえ、当時の覇権国と同程度の国力を持つ仮想敵国か。それが相手では国土・技術・人口で負けているアルタラス王国では勝ち目がない。いくら国王や王女が徹底抗戦を唱えても、英国のように上手くいかないことはよく分かった」

 

 エヴァンスに続けて発言したウォルターズは、アルタラス側から提供された情報およびクワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国よりもたらされた資料から、アルタラス王国がどの程度パーパルディア皇国の侵攻に耐えられるかについての推定予測を伝えた。

 統合参謀本部が出した結論は、国連の援助なしのアルタラス王国では、いかに降伏を遅らせることができるかについて述べられており、アルタラス王国が目指す白紙講和は実現性がないとしている。

 

「ありがとう、エヴァンス、ウォルターズ将軍。統合参謀本部には引き続き、アルタラス王国防衛に関して尽力してもらいたい。さて、ハミルトンにも聞いておこう。合衆国は長らく戦時下から離れていたわけだが、仮に開戦となった場合の国家財政については大丈夫なのか?」

 

「戦時国債についてどの程度発行するかも含め、現在省内での議論を進めております。当分は年予算で割り当てられている防衛費で賄う予定ですが、不測の事態に備えて各企業にも協力を要請しております」

 

 好調なアメリカ経済が土台としてある以上、多少の費用増加は許容範囲となっている。それにアメリカ単独で戦争を行うわけではなく、日本、イギリス、フランス、カナダ、アイルランド、それに永世中立国である東方エルサレムが何らかの形で、パーパルディアとの戦争に参画することになっていた。アメリカ経済を脅かすような財政圧迫は起こらないと、ハミルトンをはじめ財務省の官僚たちは楽観論を抱いていた。

 だが念には念を入れ、仮に戦争が1年を越す長期戦となった場合には、戦時国債を含めたあらゆる財政支援策が検討されている。

 

 相手はこの世界の列強であり、慢心などあってはならない。限られた時間の中で、アメリカは来る戦争に備え万全な準備を進めていった。

 

 

 

日本 瑞穂 大統領官邸 

 

 大統領官邸内の会議室には大高内閣の面々が集まり、アルタラス王国防衛に関する国家安全保障会議が開催されていた。

 出席者は大高、西郷、木戸、東郷の4大臣に加え、幣原副総理兼総務大臣、伊藤副総理兼産業府長官、高橋大蔵大臣、安部ら常任閣僚、桂陸軍参謀総長、高野軍令部総長、黒羽空軍参謀長ら国防軍制服組トップ、吉田環境型生産大臣、池田工業型生産大臣、新渡戸人的資源開発大臣ら臨時招集者が出席した。

 これほどの閣僚が集まるのは前例がなく、それだけ日本国政府内でもパーパルディア皇国の一件を重視する表れだと評されている。

 

「本日、女性議会にて『アルタラス防衛法』が可決されました。陛下の御承認はまだですが、既に文章は皇居に奏上されていますので、事実上可決されたと見做して、今後はこの法律に則って国策を決めていこうと考えております」

 

 大高の挨拶を皮切りに、可決された新法律『アルタラス防衛法』に基づく防衛計画『大局作戦』の説明が開始された。

 

「今作戦は、パーパルディア皇国がアルタラス王国に宣戦布告した場合にとられる防衛作戦です。

 具体的には、アルタラス王国へ侵攻するパーパルディア艦隊を空母機動艦隊および我が国の秘匿兵器で殲滅します。アルタラス王国侵攻に割り振られた上陸部隊および護衛艦隊を、アルタラス王国とパーパルディア皇国間にある公海上で殲滅することを計画しています。

 その後、アメリカ、イギリス、フランス海軍と共に、決戦に挑むであろうパーパルディア皇国海軍主力に対し、敵戦力8割ーーつまり、海外派兵を行う力を削ぎ落とす総攻撃を仕掛けます」

 

 最初に高野が説明する。アルタラス王国へ攻め込んできたパーパルディア皇国艦隊を海上で殲滅、その後は各国と連携しながら、海上封鎖実行とパーパルディア海軍の戦闘能力を限りなく削るというものだ。

 島国であるアルタラス王国の地理を利用し、押し寄せる敵艦隊を海上で迎え撃つ作戦は理にかなっていると言えた。

 

「パーパルディア皇国は人口が多く、そのため陸軍も大規模作戦を展開をすることが予想されます。しかし、制海権を失えば海外派兵は行えません。艦隊殲滅と海上封鎖は、パーパルディア陸軍を大陸外へ出さない意味も持ちます」

 

「多大な時間、人員、費用を消費しても戦争に勝気が見えず、悪戯に兵が犠牲になる事で、パーパルディア世論は皇帝や政府に対して不満を向けるでしょう。そのタイミングで現在は非主流派になっている皇女レミール殿にクーデターを起こしていただきます」

 

 高野に続いて桂、そして木戸が作戦の続きを説明した。海上封鎖とパーパルディア皇国海軍の殲滅によって、皇国民に対して圧倒的な衝撃を与えるとともに、無謀な相手に突撃を命じ悪戯に兵を死なせる政府への不満を募らせる。

 講話もやむなしという声が強まったところで、レミールによるクーデターによって現政権を打倒、彼女率いる新政権との速やかな講和交渉に移行するというものだ。

 

「……木戸大臣、私はこの作戦が簡単に推移するとは思えません。皇国政府が国家総動員と『竹槍でも戦う』精神で徹底抗戦を主張すれば、戦いは長引くのではないでしょうか」

 

「確かに少し見通しが甘いように感じる。パーパルディアはとてもプライドが高い国と聞く。そんな国の国民が講和のためとはいえ、我々に頭を下げるなど許さないだろう。

 私は、現在は皇国の属国になっている国々への解放作戦を伴う上陸、もしくはパーパルディア皇国のインフラ施設を破壊する本土爆撃を行わない限り、クーデターは起きないと思う」

 

 作戦に対して懐疑的な姿勢を見せたのは吉田と池田だ。2人は皇国政府の頭が入れ替わろうとも、本質が変わっていない以上、パーパルディア皇国が講和に応じるとは考えにくいと主張した。特に吉田はドイツ人の父から、ナチスの行いを耳にタコができるほど聞かされており、指導者原理が染みついた彼の国が、簡単に変わるとは信じられなかった。

 

「確かに2人の意見も分かります。しかし、私はこうも考えていますわ。ーー今まで、パーパルディア皇国は連戦連勝、負けを知らないわけです。そんな国が圧倒的な技術力と物量の軍と戦って敗北したら、皇国民はどう思うでしょう?初めて味わう肉親や親しい友人を失う悲しみ、自らが滅ぼされるかもしれない恐怖、国家の面子を優先して戦争を続ける政府への不満、次々に湧き出る未知の感覚に普段の正気を保っていられますかね?」

 

 西郷は、連戦連勝しか知らないパーパルディア皇国民だからこそ、有効打になると反論した。圧倒的な敗北による衝撃、次は本土が攻撃対象になる考えから来る怯えを前に、皇国民は皇帝や政府に対して不満や反発を必ず抱くだろうと考えていた。

 だが、彼女の発言に対して前世の大日本帝国やナチス・ドイツのように、強力な統制によってそういったものは押し殺されるのではないかとの意見も閣僚から上がる。

 

「パーパルディア皇国の内情は情報が不足しているため、その全貌が掴めていません。しかし、ここ近年の情勢を鑑みれば、彼の国は足りない物資を戦争で補う、前世の我々と同じ外交戦略を繰り広げています。我々がその皇国の絶対的な牙城の一角を崩すだけでも、パーパルディア国民の心情は大きく動揺するでしょう」

 

 木戸は内閣内に広がる懐疑論に対して、粘り強く説得を続けた。彼はパーパルディア皇国を安易に国連が倒してしまえば、他の列強諸国民が警戒を強めてしまうことを懸念していた。

 世界に5つしかない列強をその座から引き摺り下ろすことは、良くも悪くも他の列強を刺激する。彼の国の侵略行為を止めさせることは当然であるが、同時に亡国化させるようなこともあってはならない。

 

「我々は、“良き負け”を通して世界平和を実現してまいりました。パーパルディア皇国と戦争になることは避けたいのですが、万が一の場合は力を行使することも厭わない覚悟です。しかし、圧倒的な力で他国を蹂躙することは避けたい。多大な犠牲は戦後に禍根を残すことになります。パーパルディア国民が、自らの意思でもって対話に応じてほしいのです」

 

 議論が紛糾する中、内閣は外交・軍事を統括する大高に結論を委ねた。彼は、パーパルディア皇国に対する海上封鎖、他国への軍事侵攻に対する防衛については積極的に関与する姿勢を見せる。一方で、パーパルディア皇国本土上陸を含めた作戦には、消極的な姿勢だ。あくまで、パーパルディア国民が自ら平和を選択するようにしておきたかったのだ。これを内閣の全体方針とすることが決された。

 

 内閣の大凡の方針が決まり、各省庁は有事に備えて対応を開始した。

 

 

 

イギリス ロンドン ダウニング街10番地

 

 サッチャーは首相執務室にて議員時代からの習慣である、新聞『Times』の一面を読んでいた。「 パーパルディア皇国、(The Empire of Papardia) アルタラス王国に対する(will strengthen its coercing stance) 強硬姿勢を強める。(against the Kingdom of Altaras.)」との見出しの下、イギリス政府による早期動員体制布告に賛同を示す社説が掲載されていた。

 サッチャーは、新聞一面に目を通した後、雨が降り続ける中庭の窓をふと見つめる。その目には、戦争が迫る中で覚悟を決めた彼女の意志が映っていた。

 

 ミッテランとの英仏首脳会談以降、イギリス世論の対パーパルディア感情は悪化の一途を辿っている。特に、ミッテランが『パーパルディアはナチの再来である』と演説したことで、ヒトラーによってその地を蹂躙されたイギリス・フランス両国民のナショナル・アイデンティティは一気に点火されることになった。

 イギリスはイングランド地域を中心にヒトラーによる占領を経験しており、そのトラウマは時が経とうとも、癒えることはなかったのである。

 

 かねてより、パーパルディア皇国に対する警戒感を強めていたサッチャーは、この世論の流れに乗じて皇国に対する態度を一気に硬化させた。例え、この流れが緊張を激化させて戦争に発展しようとも、戦後の国際社会をリードしてきたその一角として、彼女はイギリスを引かせるつもりは最早無かった。

 

「……首相、本気でパーパルディア皇国と事を構えるおつもりですか?」

 

 入り口から聞こえてくる声に顔を向けたサッチャー。執務室入り口に立つのは、外務大臣のディズレーリだ。老獪な保守政治家は、杖をついて歩くなど限界が見えており、顔色も以前と比べると悪くなっている。ロウリア王国との戦争で疲弊していたディズレーリは、再び訪れるかもしれない戦争の危機を前に、ストレスを悪化させていた。最近は回復しかけていた持病を拗らせ、議会答弁がままならないことも多くなっている。

 

 サッチャーを陰で支え続けてきた重鎮であったが、野党である労働党の辞任要求、更に保守党内部で広がる世代交代の声に、彼は限界を迎えつつあった。

 

「アイク、我が国にはアルタラス王国防衛の義務があります。今、彼らを見捨てれば、1938年のミュンヘン会談の過ちを繰り返すことになります。国連加盟国の我々に対する信頼は、地に堕ちるでしょう。

 それに、アルタラス王国が陥落すれば、ロデニウス大陸を経て我々が狙われます。パーパルディアとの戦争時期が早まっただけに過ぎませんわ」

 

「しかし……パーパルディア皇国とは、ようやく交渉が始まったばかりです。……折角、掴めた対話の芽を摘んでしまうことは、我が国にとっても大変損ではないでしょうか……。私は、パーパルディア皇国に対してある程度の力を見せることで、蛮族の国家と誤解することは避けられると考えています。誤解を解けば、戦争を起こさせる要因はなくなるでしょう」

 

「文面圏外国家として括られている我々に、彼らが真摯に耳を傾けるとは思えません。恐らく、我々に対しても隷属化に等しい条件を提示してくるでしょう。外交交渉は続けますが、あくまでそれは副次的なプランとして考えるべきです。

 我々はパーパルディア皇国と手を結ぶことより、アルタラス王国を決して見捨てぬという姿勢を世界に見せるべきであり、力が伴う政策が必要です」

 

 強硬な世論に推される形で支持率が上がっていたサッチャーは、パーパルディア皇国に対する強硬姿勢を一向に崩さない。元来、対パーパルディアとの全戦戦争すら覚悟していたイギリス政府は、妥協しての交渉など考えてすらいなかった。これで宥和政策に走れば、国内世論や保守党内部から『弱腰内閣』と猛烈に批判され、サッチャー政権はあっという間に倒れるだろう。

 チェンバレン元首相の二の舞など、サッチャーにとって一生涯の不名誉である。

 

 日本やアメリカが開戦まで中立の構えを取るのに対し、フランスとイギリスは最初から戦争すら辞さぬ強硬姿勢を強めていたが、その背景には覇権主義国家に怯える世論の沸騰があったのだ。

 

 サッチャーとディズレーリがパーパルディア皇国の扱いを議論していたところ、ジョンソン国防大臣、ウォルポール筆頭国務大臣兼財務大臣ら閣僚、マウントバッテン国防参謀総長、フィールドハウス第一海軍卿兼海軍参謀総長ら参謀本部の面々が執務室へ現れた。

 

「首相、対パーパルディア皇国に関する国防戦略の概要についての資料をお持ちしました」

 

「ありがとう。ちょうど、ディズレーリ大臣もいらっしゃっていることですし、情報を共有しておきましょう」

 

 ディズレーリは、そのメンツを見てサッチャーが今日自分を官邸に呼び出した理由が、国防戦略会議への参加、国防戦略の有無を言わさぬ同意をさせるためだと気付いた。だが、既に退出できる状態ではなく、椅子に収まるしかなかった。

 

「さて。海軍参謀総長、空軍参謀総長。パーパルディアは、海上から大規模侵攻を行うのでしょうが、これに対する我が軍の展開状況を聞かせてもらえるかしら?」

 

「はい。現在、ネルソン提督率いる空母打撃艦隊をアルタラス王国防衛のため、ロデニウス大陸に待機さていますが、これに加えて新たにミサイル駆逐艦を7隻ほど追加派遣すべきと考えます」

 

「『ユーロファイター2010』20機、『F-35』15機、計35機をアルタラス王国防衛に配備予定です。敵の航空戦力となるワイバーンは数が多いものの、一騎あたりは弱いと想定されます。対空戦闘能力に優れた空母艦隊もいることですから、空軍戦力しては以上で十分かと思われます」

 

 フィールドハウス海軍参謀総長、ヒュー・ダウディング空軍参謀長がアルタラス王国防衛に関する見解を述べていく。まだアルタラス王国からの許可は得ていないが、パーパルディア皇国の圧力に晒される同国政府の判断を待ってからでは遅いと、独自に立案に取り掛かっていた。

 

「パーパルディア皇国は膨大な艦艇数を有するとされます。これにダメージを与えなければ、敵の継戦能力は維持されるでしょう。パーパルディアの本土防衛に必要な海軍戦力を残し、その他は全て撃沈するべきだと考えます」

 

「私としては全て沈めた方が良いと思っていましたが……専門家の意見に従いましょう」

 

 ジェームズ・チャットフィールド海軍大将・国防参謀次長の提案を、サッチャーは即座に了承した。

 

「外務大臣にはパーパルディア皇国との交渉をギリギリまで行ってもらう一方、我が国の方針としてはアルタラス王国防衛に関して全力を注ぐつもりですわ。国防省には改めて、あらゆる事態を想定した作戦計画の作成を急いでお願いします」

 

「了解しました。必ず我々の友邦を救うために、全力を注ぎます」

 

「……首相の方針は分かりました。内閣の方針に極力沿うようにはいたします。しかし、戦争回避のため、我々は尽力いたします」

 

 あくまで戦争も辞さないサッチャーや閣僚たちと、平和的な解決を模索するディズレーリの溝は深まるばかり。

 戦争が勃発するのか、あるいは回避されるのか。世界がどの道を選ぼうとも、彼は来たる新時代に後輩に道を譲る決意を密かに固めた。

 

 

 

フランス パリ エリゼ宮

 

 フランス世論は烈火の如く、第3大陸圏覇権国に対する怒りで燃え上がっていた。この国は他の国々とは異なり、国全体でパーパルディア皇国を『血塗られた暴君国家』、『ナチスの再来』、『悪魔ヒトラーの蘇り』などと痛烈に批判していた。左派から右派に至るまで、これほどフランス国内が団結したことはないと、ニューヨーク・タイムズ紙が評したほどだ。

 

 連日パリやリヨン、マルセイユといった主要都市では、パーパルディア皇国への大規模抗議デモが頻発していた。混乱に乗じた、パーパルディア皇国とは無関係の商店や施設の襲撃も増加してしまい、主要都市の首長が非常事態を宣言するほどだった。

 

 約80年前の戦禍を繰り返してはならないと、義憤に駆られたフランス市民の軍への志願者も急増しており、国全体でいち早く戦時体制への切り替えに取り掛かっている状況だ。

 

 そして今日とて、国内各地で歌われる『ラ・マルセイエーズ』。

 

ーー「 武器を取れ、市民らよ!(Aux armes, citoyens!)隊列を組め!(Formez vos bataillons!)進もう!進もう!(Marchons! marchons!)

汚れた血が我らの畑の畝を満たすまで!(Qu'un sang impur Abreuve nos sillons !)

 

 フランス国歌の一節を拳を振り上げて歌うパリ市民たちは、エッフェル塔から始まり、凱旋門、シャンゼリゼ通りを経て、革命の聖地たるコンコルド広場に至るまで、行列を成して歩いた。パーパルディア皇国への罵詈雑言を記したプラカードを掲げ、フランス国旗を靡かせるパリ市民たちは、コンコルド広場にて皇国の旗を燃やし、ネット上で広まったルディアスの写真を引きちぎった。

 

 かつて革命にて、自国の君主自国の王政(ブルボン朝絶対王政)を終わらせた国民は、その熱気を現代に再現する。

 

 皆がパーパルディア皇国へ激昂し、そしてナチスの再来という怯えに、フランス国民はある種の狂気に染まっていたのだ。

 

 ミッテランはこの機会を利用して、フランス国内の引き締めと国際社会におけるフランスの立場向上を狙っていた。国内に様々な政治派閥が存在し、時には激しく衝突してきた各々が共通の敵を前に団結したのだ。これを彼が利用しないわけがない。

 

 とある夜、ミッテランはエッフェル塔の眼下に広がるトロカデロ広場にて演説を行い、集まった国民たちとともに『ラ・マルセイエーズ』を熱唱した。かつてド・ゴール将軍がパリへ帰還した時のように、フランス国民のナショナリズムを奮い立たせる。

 

「我々は今、半世紀の時を超えて再誕したナチの脅威に晒されている。彼らは我々の友邦に対し、血塗られたナイフを突きつけているのだ。

ーーフランス国民よ、今こそ団結の時だ!イデオロギー、党派、主義主張の壁を超えて、専制主義たるパーパルディア皇国の圧政から、諸国民を救うために結集しようではないか!」

 

「大統領万歳!共和国万歳!」

 

「頼むぞ、ミッテラン!憎きルディアスを引き摺り落とせ!」

 

「アルタラス王国絶対死守!フランスはナチに負けない!!」

 

 拳を高く掲げたミッテランに、多くのフランス国民は熱狂し、彼を“戦時の大統領”として押し上げた。直接的に被害を受けたわけではないフランス国民が、これほどの熱量でどうして抗議できるのか、と視察に来ていた第3大陸圏の文明圏外国大使たちは引いて見るほどだ。

 

 かつてない安定的な政権基盤を得たミッテランは、エリゼ宮で開いた閣議で閣僚たちに呼びかけた。

 

「諸君、今我々は試練の時を迎えている。我々の同志、アルタラス王国は覇権主義を隠さないパーパルディア皇国による謂れのない、卑劣で、凶悪で、身勝手な行いによって国家が消滅の時を迎えようとしている。これをただ座してみることは、民主主義と国際平和を重んじてきた歴史に対する恥辱だ。持てる全ての力で、アルタラス王国を防衛するべきである」

 

 ミッテランの言葉に閣僚たちは大きく頷く。

 

「現在、全軍に対して早期動員体制を布告しています。アルタラス王国防衛については、既に空母機動部隊、戦艦部隊を核とした海軍、『ミラージュ2005』と『ラファイエット5000』で編成された制空戦闘機部隊をロデニウス大陸にて待機させているところです」

 

 フィリップ軍事大臣の説明の後に、フランス軍の制服組達が詳細の説明を行う。

 

「アルタラス王国は島国のため、パーパルディア皇国は制海権と制空権を取らなければ上陸は困難を極めます。そのため、ワイバーンを主軸とした大量の制空部隊と戦列艦の大規模展開という、物量で押し込む作戦で侵攻してくるでしょう。当面の目標は大規模侵攻してくる敵軍に対する、徹底的な防衛になります」

 

「空母『ジャン・ド・ゴール』と戦艦『ルブラン』には出動待機命令を下令しています。制空権・制海権を我々が手中に収めるには、圧倒的な火力と柔軟な航空戦力の運用が必須だと参謀本部は考えており、この2隻ならばそれが可能でしょう。相手のパーパルディア皇国は列強ですので、フランス海軍の全力をもって敵を迎え撃つ覚悟です」

 

「ワイバーンに対して、超音速で飛行するミラージュとラファイエットは圧倒的な優勢を誇るでしょう。加えて、日本、アメリカ、イギリス、カナダも戦闘機部隊を展開しています。仮に開戦となれば1時間以内の展開が可能でしょう。アルタラス王国には指一本触れさせません」

 

 シャルル・ドゥアン統合参謀総長と、フランソワ・デュルヴィル海軍参謀総長、ルネ・モンテスキュー航空宇宙軍参謀総長が作戦の方向性と、アルタラス王国防衛時の海空軍の動きを出席者に説明した。

 

「パーパルディア皇国には、自らが犯した罪を自覚させ、二度と同じことをさせぬよう、徹底的かつ破滅的な被害を与えたい。諸君らの奮闘を期待する」

 

 ミッテランは、閣僚や制服組を一瞥し、必ず独裁者からアルタラス王国を防衛するように力強く訴えた。リシュリュー外務大臣には、多国間の緊密な連携維持を、マクロン経済・財務・産業大臣には戦時に備えた戦時国債発行を含めた経済対策を早急に取りまとめるよう指示した。

 




ーー「首相は、ドイツから名誉の平和と共に帰還した。私はこれが我らの時代の平和であると信じる」
ミュンヘン会談後、ロンドンの大衆に向かって演説したネヴィル・チェンバレン元首相より。
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